Don't Forget Me2010/08/08 22:24

 最近のニューヨークの風景が見たいので、「お買いもの中毒な私!Confession of a Shopaholic」という映画を見た。
 音楽はごく普通、最近はやりのポップスなのだが、ある良いシーンで、良い曲 ― オリジナルはハリー・ニルソンの ― "Don't Forget Me" が流れた。映画で使われたのは、マーシー・グレイのカバー・バージョン。



 ほぼオリジナルに忠実な、丁寧な演奏で好感。

 オリジナルは、ハリー・ニルソン,1974年のオリジナルアルバム、[Pussy Cats] に収録されている。淡々としたピアノの演奏に、ハリーの味わい深いヴォーカル,一歩間違えれば大袈裟になってしまいそうなところを、絶妙に抑えたストリングスが効いている。



 [Pussy Cats] は、ジョン・レノンがプロデュースしたことでも良く知られている。この時期(いわゆる「失われた週末」)、ハリーとジョンは気の合う(飲み)仲間として、徒党を組んでいた。その仲間たち ― リンゴや、キース・ムーン、ジェシ・エド・デイヴィス、ジム・ケルトナー、クラウス・ヴォアマンなどと共に作り上げたのが、このアルバム。
 私にとって、このアルバムはかなり好きな方だ。フィル・スペクター風のエコーがちょっと鼻につくが、選曲も良いし、ちょっとルーズだけど、熱気が緻密に組み込まれたアレンジも素晴らしい。ジョン・レノンとしても、私はこの時期が好きなのだ。
 クレジットをよくよく見ると、ジミー・アイヴィーンがアシスタント・エンジニアを務めていた。トム・ぺティはジミーのことを、「同世代だからすぐに仲良くなった」と言っているが、厳密にはジミーの方が少し若い。1953年生まれだから、ベンモントと同じ。つまり、この[Pussy Cats] に参加したときは、なんと21歳だったと言うことになる。
 ハリーとジョンがつるんでいたこの時期の飲みっぷりと、馬鹿騒ぎぶりは尋常ではなかったようで、クラウスなどは、かなり辟易したそうだ。そんな時期の、こんな大物と仕事をするとは…ジミー・アイヴィーンは凄い。フロリダから出てきた純朴な連中にとっては、貫禄十分に映っただろう。

 ところで、映画「お買いもの中毒な私!」だが。娯楽として見る映画としては、手頃で結構。元気で夢を追いかける女の子が、恋も、仕事も一生懸命!…というありきたりのコメディだが、その「お決まり」目白押しの展開がかえって、安心感があって良い。
 衣装は、「SATC」で一躍名を挙げ、同じような映画である「プラダを着た悪魔」も担当したパトリリシア・フィールド。ド派手なファッションに、楽しそうなマンハッタンの町並み、キラキラしたショーウィンドウ、おしゃれなニューヨーク暮らしに、イカしたオフィス。元気だけどちょっと突飛なヒロインの率直さが、逆に受け、美人でにくたらしいライバルが出現する。ヒロインの欠点が露呈し(この場合、買い物中毒)、ピンチに陥るが、結局は虚飾の向こうに本当に大事なものを見つけて、めでたしめでたし。
 この映画の場合、ヒロインの友達が良かった。これはSATCの影響だろうか。それから、ジョン・グットマン演じるヒロインのパパが最高。難しいことは考えず、おしゃれで軽い物で楽しみたいときにはお勧めだ。