Horn2022/07/17 20:01

 ストーンズの長大なバラードを聴いているうちに、"You Can't Always Get What You Want" もそれの一種かなと思った。実際には、合唱団の導入という特徴があるが、どちらかと言えば、ちゃんとロックな曲だ。
 さて、"You Can't Always Get What You Want" といえば、冒頭から入ってくる合唱団が印象的なのと、続くホルンの音色が素晴らしい。



 ところが、こちらの2002年のライブでは、ホルンのパートをトロンボーンが担っている。



 これはイカン!トロンボーンはイカン!なぜなら、トロンボーンはスラーが出来ないのだ!

「俺はスラーのできない楽器は嫌いなんだ」(「モーツァルトは子守唄を歌わない」森雅裕,ベートーヴェン先生の台詞)

 トロンボーンはタンギングをしないと、音程の変化を明確に演奏できないのである。タンギングをせずに音程を変えるためにスライドするときに出る、トロンボーン独特の液体のような音色は、その良いところでもあり、同時にスラーが出来ないという欠点でもあるのだ。その点、ホルンはリップスラーと言って、唇の形を変えるだけでタンギングをせずにスラーで、かつ明確に音程を変えることが出来る。
 "You Can't Always Get What You Want" のホルンは、アル・クーパーが吹いていると言うことになっている。これは本当だろうか?ホルンというのは俗に「最も難しい金管楽器」と言われている。確かにこの演奏は中学生の吹奏楽部員でも吹ける程度ではあるが … Wikipedia によると、アル・クーパーはディランの "Self Portrait" と "New Morning" でもホルンを吹いていると言うことになっているから、とりあえず本当に彼だということにしておこう…

 ホルンを使ったロックの名曲と言えば、やはりビートルズの "For No One" である。このセンスの良さ、さすがジョージ・マーティンとポールの黄金コンビ。



 これはさすがに中学生の吹奏楽部員というわけいはいかない、上手さである。アラン・シヴィルというホルン奏者によるもので、彼はドイツ人以外でベルリン・フィルのメンバーになった最初期の人の一人だそうだ。ビートルズの録音の時期は、BBCシンフォニー・オーケストラの主席ホルン奏者だった。

 ポールはさすがで、80年代の映画 "Give My Regards to Broad Street" でのレコーディング・シーンでも、ちゃんとホルン奏者を連れてきている。もっとも、チューニングもせずにベルカットをあわてて装着して吹き始めるというは、嘘くさいが…



 要するに、私はホルンという楽器が好きなのだ。高校三年間吹奏楽部で無理矢理ホルンを吹いていたと言う経験がその理由だろう。音楽高校だったのだから、なにも部活動で音楽をやる必要もないのだが … 楽しいホルンの3年間だった。