British GP / Williams FW14B (1992)2022/07/05 20:17

 盛りだくさんのブリティッシュ・グランプリだった。色々な意味で…

 まずなんと言っても、ジョウとアルボンが無事で良かった。ジョウのクラッシュは本当に吹っ飛んだ感じで、ぞっとする。ラッセルじゃなくても、誰だって全速力で駆け寄らずにいられなかっただろう。チェッカーの後で、ジョウがちゃんと立って話しているのを見て、心底安心した。次戦に影響しなければ良いが。

 あのタイミングで、あそこで止まるオコン、ピットストップで分かれる明暗…去年の最終戦でも同じようなものを見たような気がする…。サインツの初ポール、初優勝はめでたいが、ルクレールのタイトル争い的にはどうなのか。ルクレールの不運がどうにも歯がゆい。
 いっそのこと、ペレスがチャンピオンになれば、私的には良いような気がしてきた。そもそも、レッド・ブルが嫌いというわけではない。(ちなみに飲みものとしてのレッド・ブルは大好物である。悪癖。)ペレスがチャンピオンになる分には、全然オッケーだな!頑張れ、チェコ!応援してる!
 ハミルトンもかなり良くなってきたので、かなりワクワクした。悪いシーズン前半ではあったが、彼のフィードバックもあっての、メルセデスの改善だろう。諦めずに、頑張って欲しい。

 ミックも初ポイント、おめでとう!多くの言葉は要らない。この人が充分祝ってくれている。

Vettel Congratulates Schumacher On His First F1 Points! | 2022 British Grand Prix

 セバスチャンこそ、お誕生日おめでとう!
 F1 の中でも特別感のあるシルバーストーンで、セブが所有(!)するウィリアムズ FW14B ―― ナイジェル・マンセルが1992年にチャンピオンになったマシンをデモンストレーション走行するという素敵なイベントがあった。なんだかもう、突っ込みどころ満載!



 格好良いなぁ。マンセル、プロスト、ヒル、ヴィルヌーヴをチャンピオンにした時代のウィリアムズ。ステアリングなんて、あんなモノだったっけ…?あまり手を振ったりすると、間違えてエンジン・ストップのボタンを押したりするから、要注意。(いつの話だ…)
 そもそも、これがセブの私物で(オークションで手に入れたらしい)、カーボン・ニュートラルの燃料で走っているという。一体どこの誰がどうやってそういう改造をしたのか?言い出したのはセブ自身なのか?シルバーストーンでデモ走行という素敵なアイディアはどこからの企画なのか?
 何はともあれ素敵なイベントの中心に、私のセバスチャンがいるのは、この上なく嬉しい。

 マンセルもお変わりなく。後ろにいる若い子は?お孫さん?ヘルメットにマンセルのサインをもらっていたのは、セブの広報担当のブリッタさん。



 「信じらんない!手が震える!」と、はしゃぐセブ!Happy Birhday の大合唱を受けるセブ!見物に来るルイス。ルイスとマンセルが手を挙げると異常に盛り上がる観客席!いいなぁ。F1 ってスポーツマンシップとか、爽やかさとは縁遠いスポーツだけど、こういうシーンを見ていると、気持ちが温かくなるじゃないか。

 最後に。川井ちゃん…。現地解説復活!…と盛り上がったら、やおら PCR 検査陽性で、日曜日にはホテルに自主隔離になってしまった!おおーい!川井ちゃーん!ルクレール並みに運が無いぞー!右京さんじゃないけど、これはびっくりである!
 ともあれ、川井ちゃんだっていい歳だ。発症したら大変だろうし、大事に至らないと良いと思う。7月はあと3レースあるし、お大事に。復活を待っています。
 クラッシュした人、勝った人、悔しかった人、嬉しかった人。みんな元気で、安全に、良い F1 シーズンにしてほしい。

Bob Dylan one-off release of Blowin’ in the Wind2022/07/09 21:24

 ボブ・ディランが去年、60年ぶりに "Blowin' in the Wind" をスタジオ録音し、新たな録音媒体,"アイオニック・オリジナル" のディスクに記録されたという。
 その一点もののディスクがクリスティーズのオークションにかけられ、予想を大きく上回る178万ドル(約2億4千万円)で落札されたという。

ボブ・ディラン、“Blowin’ In The Wind”を再レコーディングした音源が2億4000万円で落札

 Tボーン・バーネットが開発した新しい録音媒体、アイオニック・オリジナルというものは、どうやらアナログレコードに近い機構であり、従来のヴァイナルの盤に比べて保管クォリティが高くなると言うのだ。
 なんだかよく分からないが、とにかくアナログ・レコードにかなり近い感じが、このクリスティーズが作った動画から分かる。



 さぁ、こうなるとその唯一無二の媒体に記録された "Blowin' in the Wind" がどんな演奏なのか?唯一無二の盤に、それなりの再生器具が必要なのだろうから、おいそれと聞くことは出来そうにないのだが、どうやらその録音らしきものが、YouTune に上がっているではないか。



 明らかに音質はクリアではないので、何かいくつかの媒体を介した音ではある思うが…たぶん、その去年60年ぶりにスタジオ録音したものなのではないだろうか。雰囲気的に、ネット配信されたライブに近いような感じもする。
 「シナトラ期」を経て、どうやらディラン様は歌を丁寧に歌い上げる方向にシフトしつつあるようだ。それはそれでファンとしては嬉しいし、彼自身の曲の魅力がさらに伝わってくる。

 ディランは北米ツアーを無事終了したとのこと。さぁ、こんどはワールドツアーに出るのだろうか。それとも、こちらか見に行くことになるのか?楽しい未来を想像したい。

Memory Motel2022/07/13 20:45

 ランダムにアルバムを聴いていたら、ザ・ローリング・ストーンズの "Black and Blue" (1976) になった。
 改めて思うに、このアルバムの白眉は "Memory Motel" だろう。



 この曲の最大の特徴は、ミックとキースが、リード・ヴォーカルを分け合うところである。キースがリード・ヴォーカルを取る曲は、まるまる一曲を歌うのが普通なので、こういう「ウィルベリーズ・スタイル」は非常に希だと思う。他に何か思い当たる方は、教えて欲しい。
 サウンド的には、やはり鍵盤の重層的な使われ方が印象的だ。どうやらミック、キースの二人とも鍵盤を弾いているらしくし、しかもビリー・プレストンも参加しているのだ。良くならないはずがない。

 ストーンズの何がストーンズをストーンズたらしめているのか。無論、典型的なロックンロールのエッジと躍動感のある曲想はもちろんなのだが、私は個人的にこういう典型的なロックンロール・バンドが作る、堂々たるスロー・バラードの大曲というのも、大好きなのだ。特にストーンズには名曲も多い。"Out of Tears" , "Streets of Love" などもその例だ。
 攻撃的なほど元気な曲との対比もあるし、誰の心にもある、切なさや悲しみに対する共感がにじみ出て、それをいい歳したベテラン・ロックンローラーに歌い上げられると、胸が締め付けられるような気持ちになる。
 人生は常にポジティブというわけにはいかないし、苦しみや悲しみにも耐えて生きなければいけない。せめてそれらを美しい、力強い楽曲に託してくれれば、少しは報われる時も来るよう気がするのだ。

 ライブ映像は1998年。若いなぁ。

Horn2022/07/17 20:01

 ストーンズの長大なバラードを聴いているうちに、"You Can't Always Get What You Want" もそれの一種かなと思った。実際には、合唱団の導入という特徴があるが、どちらかと言えば、ちゃんとロックな曲だ。
 さて、"You Can't Always Get What You Want" といえば、冒頭から入ってくる合唱団が印象的なのと、続くホルンの音色が素晴らしい。



 ところが、こちらの2002年のライブでは、ホルンのパートをトロンボーンが担っている。



 これはイカン!トロンボーンはイカン!なぜなら、トロンボーンはスラーが出来ないのだ!

「俺はスラーのできない楽器は嫌いなんだ」(「モーツァルトは子守唄を歌わない」森雅裕,ベートーヴェン先生の台詞)

 トロンボーンはタンギングをしないと、音程の変化を明確に演奏できないのである。タンギングをせずに音程を変えるためにスライドするときに出る、トロンボーン独特の液体のような音色は、その良いところでもあり、同時にスラーが出来ないという欠点でもあるのだ。その点、ホルンはリップスラーと言って、唇の形を変えるだけでタンギングをせずにスラーで、かつ明確に音程を変えることが出来る。
 "You Can't Always Get What You Want" のホルンは、アル・クーパーが吹いていると言うことになっている。これは本当だろうか?ホルンというのは俗に「最も難しい金管楽器」と言われている。確かにこの演奏は中学生の吹奏楽部員でも吹ける程度ではあるが … Wikipedia によると、アル・クーパーはディランの "Self Portrait" と "New Morning" でもホルンを吹いていると言うことになっているから、とりあえず本当に彼だということにしておこう…

 ホルンを使ったロックの名曲と言えば、やはりビートルズの "For No One" である。このセンスの良さ、さすがジョージ・マーティンとポールの黄金コンビ。



 これはさすがに中学生の吹奏楽部員というわけいはいかない、上手さである。アラン・シヴィルというホルン奏者によるもので、彼はドイツ人以外でベルリン・フィルのメンバーになった最初期の人の一人だそうだ。ビートルズの録音の時期は、BBCシンフォニー・オーケストラの主席ホルン奏者だった。

 ポールはさすがで、80年代の映画 "Give My Regards to Broad Street" でのレコーディング・シーンでも、ちゃんとホルン奏者を連れてきている。もっとも、チューニングもせずにベルカットをあわてて装着して吹き始めるというは、嘘くさいが…



 要するに、私はホルンという楽器が好きなのだ。高校三年間吹奏楽部で無理矢理ホルンを吹いていたと言う経験がその理由だろう。音楽高校だったのだから、なにも部活動で音楽をやる必要もないのだが … 楽しいホルンの3年間だった。

オタマトーン2022/07/21 20:08

 オタマトーンが欲しい。
 オタマトーン自体は、2009年からあるが、最近この動画を見てしまい、俄にめちゃめちゃ欲しくなっている。



 "Got Talent" はある程度の演出も入っているだろうから、上手く盛り上げているのだが、とにかくこのギタリストのお兄さんの演奏が凄すぎる。あの可愛くて間抜けなオタマトーンの見た目と、上手すぎる演奏、素晴らしすぎる歌声(?)しかも、超名曲 "Nessun dorma" なので、何度見ても感動してしまう。
 演出上、おじさん審査員は渋い顔をしなければならないのだが、あきらかに頭を抱えて笑うのをこらえている。その後の展開はお約束通りで、無用に感動してしまう。とにかくこのお兄さんと、オタマトーンは圧巻だ。さすがプロは違う。

 オタマトーンは、あの明和電機の開発した楽器,玩具である。明和電機としては、間抜けな味わいとオンチな楽器という馬鹿馬鹿しさを狙ったのだろうが、その上を越える人が居るのだから、びっくりである。
 そもそもあのネック(?)の短さで、あの音域の広さである。音程調整がかなり微妙だろう。F1 で言うと、オーバーステアリング状態で、オンチになることを前提としているような気がする。

 明和電機の土佐社長はさすがに上手 … なのだが、途中でオタマトーン演奏を放棄(?)するのが最高。



 欲しいな~欲しいな、オタマトーン…器楽好きとしてはたまらない…だが、ギタリストのお兄さんのように上手に弾けるはずがない。それは分かっているのだが、"Nessun dorma" を熱唱するオタマトーンをまた見てしまう、そして欲しくなる…!

The Fool on the Hill2022/07/26 21:48

 ホルンがどうの、オタマトーンがこうのと、要するに私は器楽が好きなのだ。歌が歌えないので(要は音痴)、楽器の演奏に走る。面白い楽器も好きだ。
 様々な楽器が効果的に用いられている楽曲の一つが、ザ・ビートルズの "The Fool on the Hill" ―― ポールによる1967年の名曲である。



 なんと言っても印象的なのは、全曲に渡ってフィーチャーされているフルート。これは専門のフルート奏者3人が演奏していると、予想がつく。
 私はリコーダーも本職の人か、フルート奏者が吹いていると思ったのだが、確認してみると、ポールが自らリコーダーとティン・ホイッスルを吹いているそうだ。リコーダーやティン・ホイッスルというのは、あれでけっこう難しい。音程と音量の調整が難しく、正確に演奏しようと思ったらかなり耳が良くないといけない。
 ポール、本当に上手い。ヴィヴラートがちょっと大袈裟で、タンギングが多いところは少し素人臭いが、それ以外は完璧ではないだろうか。ポールのこういう器用さが、彼の可愛くないところだ。モーツァルト型の万能天才で、音楽なら何をやらせても出来てしまうタイプだろう。管楽器にはそれなりの勘が必要だが、親から最初に買い与えられた楽器がトランペットというのだから、攻略できてしまうらしい。

 この曲、フルートやポールの演奏する楽器の他にも、ジョンとジョージがハーモニカや、ジョウ・ハープを演奏しているし、リンゴはドラムズのみならず、マラカスとフィンガー・シンバルも演奏している。
 ビートルズ後期の作品なので、ライブ映像がないのだが、このオランダのビートルズ・トリビュート・バンドが素晴らしい再現をしている。笛もさることながら、大きなハーモニカでの再現性が素晴らしい。
 このバンド、面白いなぁ。ちょっと気になる。

Nessun Dorma2022/07/30 21:07

 木曜日に飛び込んできた大きなニュースに関して、いま私は一日一日、ゆっくりと消化しようとしている。そうして理解して、自分を納得させる必要がある。だから、 とりあえずこの週末、ハンガリーGP が終わって、夏休みに入ってから整理しようと思う。
 やはり、悲しいことを乗り越えるには、少し時間がかかるのだ。

 オタマトーンのせいで、すっかり “Nessun Dorma“ ばかりが動画の履歴に残っている。
 そもそもは、プッチーニのオペラ「トゥーランドット」に登場する、テノールのためのアリアであり、日本語では「誰も寝てはならぬ」の題名で知られている。
 劇中では、最初から最後までテノールがソロで歌うわけではなく、合唱も加わった形式になっている。宇野昌磨がこの曲で滑った時は、その合唱の加わったバージョンの、ホセ・カレーラスの歌唱が用いられた。私はカレーラスのファンでもあるので、とても良い選択だったと思う。
 カレーラスというのは、言うまでもなく最高のテノールだが、独特の悲哀や脆さ、危うい雰囲気をその声に持っていて、少し音程も不明瞭な時があるのだが、それがかえって個性となり、感情に訴えかけてくる。女性ファンが圧倒的に多いのも頷ける。



 近年の “Nessun Dorma“ 人気を作ったのは、ルチアーノ・パヴァロッティと言って良いだろう。クラシックでは異例のことだが、彼はこの曲をシングル盤として発売して、大ヒットを記録したのだ。
 そのおかげで、コーラスを省いたテノールだけの短いバージョンがコンサートでよく歌われるようになり、パヴァロッティ自身や、その後のアンドレア・ボチェッリ、そして Britain's Got Talentの初代優勝者ポール・ポッツ、果てはオタマトーンまでもが、”Nessun Dorma” を熱唱するに至るというわけだ。

 もう一つ、動画を貼り付けようと色々な動画を見たが - それこそ、アレサ・フランクリンなども見たが、これはさすがにダメだった。 - 結局1990年7月7日カラカラ浴場での三大テノールほど豪華なものはないという結論に達した。指揮のズビン・メータも含めてのパフォーマンスである。動画冒頭でのメータのジェスチャーは、「寝ては、ならぬ!」という意味である。確か、これはアンコールだったような気がするが、ちょっと記憶が定かではない。
 ともあれこれを聴くと、音楽をやるものは誰しも、この曲に挑戦してみたくなるものだ。



 面白いところでは、ジェフ・ベックによる演奏というものもある。これはこれでアリかな。ただ、ギタリストはジェフ・ベックなのだし、別に技巧的に難しいことはない。ただ、プッチーニの曲が絶対的に素晴らしいのである。そこに目を付けたセンスを評価する。