Delaney & Bonnie2021/07/02 22:36

 アルファベット順に CD を聞いてゆき、処分する CD を探すローラー作戦。ビートルズとボブ・ディランはもちろん対象外なので、飛ばす。
 今週、デラニー&ボニーになって、これはなかなか素晴らしいバンドだという、認識を新たにした。
 彼ら自身の演奏もさることながら、その影響の大きさも見逃せない。D&B が存在しなかったら、"Layla" だって生まれなかっただろうし、ジョージのソロ・アルバムがあれほど成功した大作にもならなかっただろう。
 もっと言えば、[Concert For Bangda Desh] のような、社会貢献活動にまで影響を及ぼすことになったと思う。

 1969年のツアーにはジョージとクラプトンも同行しており、いろいろな動画がある。このツアーの楽しさもまた、ジョージの心をビートルズから離すきっかけの一つだったろう。



 ジョージはフェンダー,ストラトキャスター "ロッキー”、クラプトンはギブスン,レスポール…黒いのかな?デラニーは、ジョージからのプレゼントである、ローズウッドのテレキャスターに違いない。
 デラニーのソロのところでジョージがヘッドでちょっかいを出すのが可笑しい。

 残念ながらデラニーとボニーは1972年に離婚して、バンドも解散となってしまい、息の長い活動とはならなかったが、それでも十分、彼らの CD を持っている価値がある。はい、合格!

Angel Dream (Songs and Music From The Motion Picture "She's The One")2021/07/06 21:02

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの [Angel Dream] が届いてからずっと聴いている。
 "105 Degrees" が格好良い。これがどのアルバムにも収録されなかったのは不思議だが、よく聴くと、サビが尻切れトンボなのかもしれない。歌詞ができあがらなかったようにも思えなくもない。
 それにしても、バンドとしての完成度は素晴らしい。



 それはそうと…この [Angel Dream] というアルバムは、一体何なのか?
 こんな時、頼りになる Heartbreaker's Japan Party さんの情報によると、「元々は 6月12日開催の<Record Store Day>のための限定アナログ盤を、一般発売することになった」ものであり、その CD 版ということえらしい。
 RSD 向けのアナログって、せいぜいミニアルバムか、シングル程度のものが通例だったような気がするが(アナログに興味がないので詳しくない)、今回は12曲も収録されており、しかも未発表曲もある…から、CD 派のためにも、発売してくれたという点においては、実にありがたい。

 しかし、副題についている Songs and Music from Motion Picture "She's the One" というのが、しっくりこない。
 映画のサントラとして発表された [She's the One] を、ハートブレイカーズの正式なスタジオ録音アルバムに改めて並べたいなら、ちゃんと "Walls (Circus)" などの全ての曲を網羅してリミックス・リマスターし、再発特典として未発表曲や別バージョンを添えた、盤(箱?)を作れば良かったのに。
 去年出した [Waildflowers & All the Rest] と、企画が中途半端に被ってしまったようで、どうにも据わりが悪い。

 要するに、トムさんはこの時期、トムさんのソロ・アルバムを作っていたつもりだけど、マイクなんて最初からべったり一緒だし、バンドも、スタッフも、結局ハートブレイカーズを形成することになる、メンバーも揃ったスタジオ仕事が、膨大にあって、まとめるのが難しいみたい ―― ということは分かる。
 セッションとしては一貫性があるが、後年そのまとめ方としては、とっ散らかっていると。まぁ、そういうことらしいなぁ…

 最後につけくわえるが、"French Disconnection" はとても名曲。尺が合っていないので、合わせる形で録音して欲しかった。ティン・ホイッスルかなにかと、合奏したくなる。

The Lowground, Beehive2021/07/10 21:09

 チャンネル登録しているタリスク TALISK が新しい動画を上げたというので、早速チェック。題して "AURA" ――  新アルバムの予告かもしれず、ちょっとワクワクする。



 相変わらずの素晴らしい技術に裏打ちされた、演奏の格好良さ。私のウクレレの先生は彼らを見て、「演奏するための『体格』がガシッとしている」という表現をした。これは良くわかる。
 でもこの曲 "AURA" のプロデューシングはどうかな … かなり微妙。というか、オーバープロデューシング。ここまでオーバーダビングを駆使して、リバーブもかけまくると、ちょっとついていけない。もっと素朴な方が好きなんだけどな…
 実力もしっかりして、国際的な評判を勝ち取ると、こういう路線に行きがちなのだろうか。ボシー・バンドのように無骨一辺倒というのは、ビジネス的にダメなのか…?。

 うーん…と思っていたところで、コンサティーナの、モーゼン・アミニがかつて所属していたバンド、ザ・ロウグラウンド The Lowground の動画が出てきた。短命に終わったバンドのようだが、実のところ、これはアイリッシュ・バンドで、凄く良い。
 私としては、タリスクでこの路線の録音をして欲しい。

Exit Wounds2021/07/14 19:33

 週末のお届け物。ザ・ウォールフラワーズの新譜 [Exit Wounds] と、ツィメルマン&ラトルによる、ベートーヴェンのピアノ・コンチェルト全曲録音。  もちろん、ウォールフラワーズから聴く。



 ウォールフラワーズのアルバム発表は、9年ぶりだそうだ。このバンド、いわゆるバンドというより、ジェイコブ・ディランがロック・バンド・サウンドでやるときの名前と言った方が良さそうだ。
 今回のアルバムは、これと言った派手でパンチの効いた曲があるわけでもなく、けっこう淡々と進み、気がつくと終わっているという印象だ。

 それでも、一曲目の "Maybe Your Heart's Not In It No More" はドラムの入り方が最高。二曲目の "Roots And Wings" は、ジョージ・ハリスン風のスライドギターが印象的だ。このギター・サウンドはこのアルバムに何度か出てくる。私はマイク・キャンベルでも参加しているのかと思ってクレジットを確認したが、そうではないらしい。

 比較的スローなバラードが多い中で、中々格好良かったのは、"Who's That Man Walking 'Round My Garden" ―― サビが何かに似ていると思ったら、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズで、マイクが一曲だけ「頭に穴が!!」と歌っていたやつだ。

 ジェイコブ・ディランもそれなりに年を重ねて、ソロアルバムでは弾き語り系のサウンドをやっている。そういう影響もあってか、ロックバンドであるはずのウォールフラワーズとしては、ちょっと大人しすぎたかなぁという印象。
 ジェイコブも、もっとこのユニットでの活動を増やして、ロックサウンドを生かしたアルバムを作って欲しい。それが出来る人だと思うし、そういう彼のファンでもある。

monsters (Tom Odell)2021/07/18 21:40

 トム・オデールの最新アルバム [monsters] が到着。
 これがどことなく、聴く前から期待値が低かった。なんとなくジャケットがイケてない。うーん、これは内容を反映して、ぱっとしない感じなのだろうか…
 実物が届いてみると、更にうーん。なぜ今更プラスチックケースなのだろう?これまで通り、紙でよかったのに。

 アルバムを聴いてみると、またまたうーん…どうしちゃったかなぁという感じ。
 歌詞は良いと思うが、メロディラインがこれまでに比べて窮屈で、ジャケットのとおり鬱屈のたまった感じが漂う。
 しかも、サウンドが最近の R&B っぽくって、私の守備範囲ではない。もっとロックバンドサウンドにしてほしかった…
 まぁ、まだキャリアも浅いわけだし(他の大物に比べて…)、いろいろなアルバムがあって、その中でイマイチな一つとなるのかな、という感じ。

 それでもそこは、実力派のトム・オデール。良い曲もある。
 "lose you again" は、彼らしくてとても良かった。
 公式ビデオがあって、横長。ウェンブリー・スタジアムと言えば、先日のフットボールの暴徒ども、許さん。よくも私のランドー・ノリス君をボコボコにしてくれたわね。まぁ、予選を見る限りは、元気みたいだからよかったけど…ノリス君、あまり派手な車で派手なところに行くもんじゃないよ。早々にセバスチャンを見習って、私生活はひっそりスタイルで行って欲しいな。
 あと、オデール君。ピアノの上に立つのはやめなさい。腰掛けるのもやめなさい。

Shadow Kingdom2021/07/22 23:03

 ボブ・ディランが初めて、パフォーマンスをネット配信した、[Shadow Kingdom] ―― これが想像以上に素晴らしかった。
 私はすっかりディラン様が「生で」パフォーマンスを配信するものだと思い込んでいたのだがこれは誤りで、ライブパフォーマンスをミュージック・ビデオに仕立てて、配信したものだった。



 なんと言っても、選曲が良かった。"The Early songs of Bob Dylan" と銘打っただけあって、60年代、70年代の名曲が並んだ。
 やはり彼が若い頃、その才能を溢れるままに紡ぎ出していった楽曲の威力は凄い。アレンジがかわり、今回のタバコの煙立ちこめるクラブという舞台設定があったとしても、若かりしディランの魅力は、決してあせることはなかった。
 特に "Forever Young" などは泣ける選曲だし、私は "Queen Jane" にぐっときた。

 良かったことはまだまだある。ディランがギターを弾いている!なんて素晴らしい!そしてハーモニカも!ピアノは弾かなくて本当に良かった!
 声の衰えの目立つここ数年だったが、今回のパフォーマンスは良い意味でのディラン節が冴え渡っていた。

 やっぱり、シナトラでも、アメリカの懐メロでもない、エッジの効いた時代のディランを、彼の演奏で堪能できるというのは、最高だ。この路線を続けて欲しいし、そもそも今回の "Shadow Kingdom" はソフト化するべきだろう。
 他にも、60年代、70年代の名曲をやっていたとしたら、聴かずにはいられない。
 ディラン様の偉大さを、改めて認識した、今回のネット配信だった。

L.v.Beethoven / Complete Piano Concertos2021/07/26 20:25

 クリスチャン・ツィメルマンが、ベートーヴェンの生誕250年記念に、ピアノ協奏曲五曲全てを、サイモン・ラトル指揮,ロンドン交響楽団と録音したという。

 こ れ は 買 い だ ろ !

 迷わず、買いだろう!今この世に、それ以上のものを望めるだろうか?
 そもそも、ツィメルマンは安易に「全集」に手を出さないタイプだ。その彼が、満を持してベートーヴェンのピアノ・コンチェルト全曲を、しかも盟友ラトルと録音するというのだから。
 値段なんて見ずに即買いである。

 

 現物が届き、開いてみると … おお、きれいなアルバム。
 私は CD の装丁にはあまり興味のない方だが、ただでさえクラシック界きっての美男子であるツィメルマンの笑顔と、綺麗な緑色のCD盤が三枚並ぶのは、圧巻だ。

 演奏内容も文句なし。
 私は2番と3番にあまりなじみがなかったのだが、両方とも5番にも劣らないような華麗さ、美しさ、力強さを兼ね備えていて、聴き応えがあった。
 今年、66歳と65歳になるラトルとツィメルマンだが、重厚さを強調するのではなく(そもそも曲そのものが重厚だし)、あくまで軽やかで、爽快に、ドライブ感いっぱいに、縦横無尽に、踊るように奏でる。

 これは本当に凄く良い。かなりお薦め。国内版で5500円 ―― 3枚組で、ベートーヴェンのピアノ・コンチェルト全曲なのだから、お買い得ではないだろうか。

Living Mirage2021/07/31 20:17

 ザ・ヘッド&ザ・ハート2019年発表のアルバム [Living Mirage] を聴いた。
 聞き応えのある素晴らしいアルバムだ。

 これまでのフィドルなどを加えたフォーキーなサウンドに対して、今回のアルバムはよりポップ,ロック色が強くなっている。
 特に良かったのは、"Up Against The Wall" ―― サビの軽やかさが効果的でキャッチーだ。さらに、壮大な曲調,プロデューシングも冴えている。



 このバンドのちょっとした欠点として、少し気になっていたのは、女性ヴォーカル,チャリティ・ローズ・シーレンの使い方。時として、わざと拙く歌うことがあって、私はこの演出が好きではなかった。
 このアルバム [Living Mirage] ではそういった彼女の起用はなく、それなりにちゃんと技量を発揮している。それにしても彼女、体型の変化が激しいようだが、大丈夫なのだろうか…

 思い切りの良さ、威勢の良さでも、"I Found Out" も印象的だった。まさに、「見いだした」という爽快感と開放感が溢れていて、幸せな気持ちになれる。



 最近のバンドの、最近のお薦めアルバムとして、自信をもって挙げられる素晴らしい作品だった。