How to Pronounce German F1 Driver Names2021/08/05 19:23

 オリンピックが始まってから、一番面白かったもの。
 それは、F1 ハンガリー・グランプリだ!

 そりゃぁもう、面白いレースだった。雨、多重クラッシュ、赤旗、どひゃぁー!な再スタート、晴れ ―― 追い抜きあり、ブロックあり、タービュランスに、新しい優勝者、そしてガス欠 ―― いやぁ、面白かった。
 結果として、セバスチャン・ベッテルが18ポイントを逃したのは事実だし痛いが、あのもの凄い展開の中で、二番目にフィニッシュしたのは間違いないし、ハンガロリンクじゃない、ほかの抜けるサーキットだったら、たぶんオコンの前に出ていただろう。ついでにハミルトンには簡単に抜かれて、優勝はしていないだろう。

 ホンダ ―― ね。それから、みんなが大好きなフェルスタッペンね。私は F1 においては日本のメーカーやドライバーを、それほど贔屓にしているわけではないので。
 そもそも、前からフェルスタッペン好きじゃないし。まぁ、あれだけ応援されているんだから、私ひとりくらい、ハミルトンを応援しても良いんじゃない?

 面白い動画を発見。
 ドイツ人 F1 ドライバーの名前を、正しく発音したまえ!という動画。



 ひとしきり発音をしてから、ビールを飲んでスイスを罵り、ドイツ人じゃないけど、ライコネンの発音に一家言あって、「わかったか!!」とぶち切れる。
 ライコネンもしぶといんだよね…アロンソもしぶといけど。セブにしても、この二人にしても、やっぱりワールド・チャンピオンってひと味違う。
 F1 も夏休み。来年のシートの話も色々でているけど…まぁ、とにかく面白いレースを見せて欲しい。私の希望は、セブとノリス君の、わたし的ダブル表彰台だな。

Old Blue2021/08/10 19:50

 それほど海外ドラマ好きというほどではないが、まぁドラマを見るとしたら、海外物である。できればミステリーで、重苦しくない方が良い。
 そういう点で、「シェイクスピア&ハサウェイの事件簿」は手ごろな作品だ。英国物で、舞台はストラッドフォード・アポン・エイボン。探偵役は元刑事のフランク・ハサウェイと、最初は依頼人だったルエラ・シェイクスピア。この二人は容姿がイケてるわけでも、とんでもない変人で天才というわけでもないが、親しみ深くて、楽しい気持ちにさせてくれる掛け合いが良い。
 現役の刑事がマーロウ(女性)というのもイケているし、お気に入りは探偵事務所の助手セバスチャン。長身でかわいく、変装もうまくて、名前がイイ。

 英国では2018年にシーズン1が制作され、日本では Amazon prime で鑑賞できる。このシリーズは好評で、今年はシーズン4の放映が予定されている。
 特段、新しいこともないし、重厚な人間ドラマがあるわけでもない。ただ、かるい娯楽として鑑賞するには気持ちの良いものだし、所々にシェイクスピアネタが仕込んであるのが楽しい。

 シーズン2を見ていたら、犬の話になった。ある富豪の相続人が犬であるという、この手の話ではよくあるケースだが、面白かったのは、ここに登場する犬が、"Old Blue" という曲が好きだったということである。
 作品中では、ジョーン・バエズの歌として取り上げられているが、彼女の録音が有名なのであって、もとはミンストレル・ショーで歌われた、いわばトラディショナル・ソングである。



 これ、どこかで聞いたことがあるなぁ・・・と、思ったら、ザ・バーズだった。1969年の [ Dr. Byrds & Mr. Hyde] に収録されていた。



 ジョーン・バエズがどこか哀愁のただようフォーク風だったのが、面白いことにバーズのカントリー風の味付けになると、なんだか能天気な曲に思える。その能天気さの向こうに、哀愁を感じるべきなのだろうか?

All Things Must Pass / 50th Anniversary2021/08/16 19:39

 [All Things Must Pass / 50th Anniversary] は、一週間以上まえに手元に届いてたのだが、再生機器の問題で、今日から聞くことが出来た。

 まずは、リマスターされた、本編 [All Things Must Pass] からじっくり聞き込む。
 私が買ったボックスには、Blu-ray Audio がついていた。オーディオのことはよく分からないが、とにかくこれが一番、音が良いのだろう。
 問題は Blu-ray ということで、普通のCD プレイヤーでは再生できないし、ファイル形式をコンバートしてしまうのも、意味がない。
 そこで、パソコンで再生し、仕事中は Bose のワイヤレスで聴いていた。Work From Home 万歳。しかし、Bluetooth だと、これまた音が悪くなる言う話もきいているので、いまは有線の Bose で聴いている。うん、やっぱりこっちの方が音が良い。

 さて、50周年のリマスターである。事実上、ダニーが施した「ダニー版リマスター」と呼んで良いだろう。
 これが色々な意味で「凄い」。フィル・スペクターっぽさが吹っ飛んでしまい、全てがクリアで、一つ一つの音が手ざわりで分かるようなサウンドに、大変身したのである。
 これは賛否が分かれるのではないだろうか。
 オリジナルのフィル・スペクター・サウンドだからこそ、[ATMP] は名作なのだと考える人やファンもいるだろう。そういう人たちにとって、今回のリマスターは邪道であり、「ジョージが望んだ物ではない」と考える人が居てもおかしくない。

   私の評価はというと、これはもう、文句なしに大絶賛である。そうだ、これが聴きたかったんだ!私は元の性分として、ボワーンとしたリバーブの多い音が嫌いなのだ。
 この50周年 [ATMP] は、もの凄くライブ感があるのだ。まるで目の前で大編成のバンドが演奏しているように聞こえる。ブラスやストリングスもいるが、後ろの方で控えめにならしており、核になるのはロックバンドの編成である。
 音の一つ一つが、その演奏者の仕草、手元、表情を想像させる。手触りのしっかりした、立体的でエッジ利いた音 ―― 最高ではないか。
 「この音なんだろう?」というベッタリとした油彩画の壁ではなく、繊細な線描写の施されたされた細密画。ストリングスが鳴り響いても、一本一本の弦の音がちゃんと重なって聞こえるし、コーラスも一人一人の喉を通して発せられていることが、生々しく感じられる。
 ベースを鳴らす指先のしなり、ピックがギター弦を捕らえるその瞬間、ピアノの鍵盤にすいつく皮膚の感覚 ―― ジョージがマイクに向かっているその喉と唇を、感じることが出来る。全ての音の出てくる「場所」が、くっきりと浮かび上がっているのだ。
 いままで霧の向こうに霞んでいた、どんな些細な音も、ぼやけず、潰されず、鮮明に出現したのある。

 このサウンド、何かに似ていると思った。
 アレだ、[Concert for George] だ!あのサウンドにそっくりなのだ。大編成のバンドと、ブラスとストリングス。バンドのメンバー一人一人の演奏する様子が、音を聞くだけで目に浮かぶ。そういうサウンド。
 [CFG] は、エリック・クラプトンとジェフ・リンを筆頭とするスタッフたちが、「ジョージのライブはこうだ」というものを突き詰めた、「理想の形」に近い。あそこまでにたどり着くには、オリジナルの [ATMP] があり、ディランとの交流があり、[Concert for Bangla Desh] があり、70年代のポップなジョージ、80年代のジェフ・リン・サウンド、ウィルベリーズ、日本公演、そして [Brainwashed] に集約されされてゆく。そういう「ジョージのサウンド」が最後にたどり着いた、ライブ形式の理想ではないだろうか。
 同時に私は、ディランの最近のライブっぽいなと思うことも多い。ベースにのって気持ちよさそうに浮遊するサウンドなどがそれだ。
 大好きな [CFG] とディランのサウンドが合わさったような、最高のサウンドだからこそ、私の感覚にぴったりはまったに違いない。

 もう一つ、私がこのリマスターが気に入った理由として、ダニーと私が同世代のため、ずっと聴きなじんできた、好きな音楽に、共通点があるという点も、見逃せないだろう。第一、私はトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの大ファンであり、ダニーもまた、トムさんをもう一人の父として慕っていた人だ。マイク・キャンベルも友達だし、ジェフ・リンに至っては説明不要の関係だ。
 そういうダニーが合わせた照準に、私の感覚がピタリとはまるのは、自然なことに違いない。

 さぁ、困った。私は [ATMP] の本編としては、この50周年記念リマスター・バージョンが一番好きになってしまった!
 これからジョージのソロ・ワークを聴くという人にも、真っ先にこの [AHMP] 50周年バージョンを薦めてしまう。それぐらい、もの凄く良かった。
 多幸感に満ちた、珠玉の名曲の連続、生々しいミュージシャンたちの息づかい ―― これこそ、ロックンロール・ミュージックの、一つの頂点に違いない。これは本当にお薦め。ぜひ聴いて欲しい。そう、50周年ダニー版リマスターを!

All Things Must Pass / Day 1, 2 Demos2021/08/20 20:10

 私が購入した [All Things Must Pass / 50th Anniversary] は、5CD/BR Super Deluxe である。
 本編のリマスターが CD 2枚、さらに音質の良い(はず)Blu-Ray 1枚。
 そして、1970年5月26日と、27日のデモセッションが、それぞれ1枚の CD になっている。

 二日分のデモを聴いていて、まず印象的だったのは、ほとんどジョージの頭の中では、曲のイメージが完成形としてできあがっていたのだということだ。最終的にアルバムに収録された曲の多くが、バンド・バージョンとしては固まっていて、あとはブラスとストリングス、コーラスを足すだけという感じなのだ。
 "Wah-Wah" などは、ジョージのヨタっとしたヴォーカルが、完成形の重厚さとのギャップがあってよく笑われていたが(ブートで知られていた)、実のところ、ジョージの中では重厚なサウンドはもうイメージができていたのだろう。たまたま、一人で歌って見せたから、ああなっただけ。
 ディランが散々苦労していた "If Not For You" なんて、ジョージの威勢の良い感じの方が、説得力がある。

 アルバムに最終的に収録されなくて、もったいなかったなと思うのは、"Dehra Dun" と、"Om Hare Om (Gopala Krishna)" の二曲。どちらもインド風の曲だ。
 これらをいわゆる「ラーガロック」風の重厚でカラフルなサウンドで仕上げていたら、さぞゴージャスで格好良かっただろう。

 これは私の知識の問題だが、"Beautiful Girl" もこの頃に、ほぼできあがっていたとは、知らなかった。私はてっきり、オリヴィアに出会った後の曲だと思い込んでいた。名曲だから、[ATMP]期のサウンドで作りあげたら、どうなっていたか、興味がわく。
 "I Don't Want To Do It" も同様。これはディラン様が作った曲で、60年代末につるんでいた頃にディランからもらったのだろう。

 意外だったのは、"I Dig Love" ―― これは、アルバム収録バージョンと大きく異なる、数少ない曲の一つだ。
 これ、デモ・バージョンの方が断然格好良い。凄くエッジの効いたロックンロールで、このままドカンと爆発させててくれたら、もっとよかったのに。



 "I Dig Love" も含めて、[ATMP] ゴージャス・サウンドで仕上げて欲しかったという曲は、これからダニーが、ライブでやってくれれば良いのではないだろうか。彼は友達も多いし、簡単に大編成が作れそう。私は期待している。

All Things Must Pass / Session Outtakes and Jams2021/08/24 20:24

 [All Things Must Pass / 50th Anniversary] の最後を飾る5枚目が、[Session Outtakes and Jams] ―― これがかなり楽しい。

 初っぱなから、感動の超名曲 "Isn't it a Pity" を、"so shity" と歌い出し、「この曲、いったい何テイク目だ。おなじことばっかりやってるんだけど ――」という笑える歌詞から始まる。
 長時間、スタジオに缶詰めになると、そう歌いたくなる気持ちはよく分かる。

 アルバムに収録された本編バージョンが、本当にベストだったのか考えさせられたのは、"Art of Dying" だ。これが Take 1 だと言う。この初期バージョンの方が良いではないか。



 アルバム収録バージョンもギターが何重にも鳴るハードな響きだが、分厚いブラスの音がパンパカ鳴りすぎるという印象もある。それに対して、このバージョンは、シンプルでいい。
 似ているのは、ビートルズの "While My Guitar gently Weeps" だろう。あの曲にブラス隊を重ねるような野暮なことを、さすがのビートルズはやったりしない。
 うーん、この判断はどうだったのだろう?そもそも、誰の趣味か?フィル・スペクターか?ジョージ・ファンは、何か都合が悪いことがあると、何でもポールかフィル・スペクターのせいにする、悪い癖がある。ジョージ自身の判断だったかも知れない。
 ともあれ、アルバム収録バージョンは、ブラスを省いて、クラプトンとジョージのギターバトルに終始して欲しかった。

 面白い選曲だったのが、"Get Back" ―― あのビートルズの、"Get Back" である。



 [Concert for Bangla Desh] のリハーサルやジャムで、レオン・ラッセルが何を歌おうかとなったときに、「みんなが知っている曲」ということで、"Jampin' Jack Flash" が選ばれたのは、有名な話。
 この "Get Back" が演奏されたのも、同じような理由だろう。"Get Back" のシングルが発売されたのが前年の春。1年以上経っていたから、みんなちゃんと覚えていたのだろう。
 それにしても、この "Get Back" 格好良い!悪いけど、本家ビートルズの "Get Back" よりも数段格好良いじゃないか。さすがジョージ、絶好調である。

 最後に嬉しかったのが、"It's Johnny's Birthday" の、オリジナル。アルバムに収録された、グニャグニャしたのじゃないバージョンが聞きたかったのだ。
 本当に、ジョージが仲の良い友達と楽しく音楽をやっている感じが出ていて最高だ。

Charlie Watts2021/08/28 20:49

 2021年8月24日、チャーリー・ワッツが亡くなった。
 私にとって、ミュージシャンとしてはジョージ・ハリスン,トム・ペティ,ハウイ・エプスタインらに並ぶ大きな喪失体験となった。
 ただ、チャーリーに関しては、心のどこかで覚悟していた節もある。2004年に癌を患っているし、今年の北米ツアーは、「手術を受け、その療養のため参加しない」と告知されていたからだ。
 ストーンズの公式ホームページは、現時点でもチャーリーの写真のみを掲載し、一切の情報を発していない。プロモーターなどが、今年の北米ツアーは予定通り行うと発言しているが、ストーンズ自体が、今後どうなるのかは分からない。

 ザ・ローリング・ストーンズの魅力を語ったら、いくら時間があっても足りないが、その一部を2018年12月13日の記事 Keith Richards Has Cut Back on Drinking で、言及している。
 このときの私に言わせると、ストーンズには独特のグダグダ ―― ルーズなところがあり、それをチャーリーの完璧さが支えている。「ここまで凄いと、なぜチャーリーがストーンズに居るのかではなく、チャーリーが居るからストーンズなのだとすら思えてくる。」 ―― 本当に、いまでもそう思う。



 キースが「ストーンズは(ミックでもキースでもなく)チャーリーだ」と言ったエピソードはよく知られているし、21世紀になってから、チャーリーが引退するという噂が立ちつつ、結局そうはならなかったのは、ミックとキースが本気でチャーリーを説得したからだと思う。チャーリーがいなければ、ストーンズではない ―― と。
 特にキースがチャーリーに向ける視線は、いつも愛情と敬慕の念があふれ、こんな最高のドラマーのバンドにいられる幸福感が彼を満たしていた。私が何度か見たストーンズのライブでも、その思いは観客たちに伝わった。
 2003年、日本武道館でのライブでは、メンバー紹介のチャーリーの番になったとき、チャーリーの背後からキースがチャーリーの頭にキスをした光景は、いまでも私の脳裏に焼き付いている。

 ストーンズは、チャーリー亡き後も、ストーンズであり続けることが出来るだろうか?いま、ストーンズ自身とその関係者、そして多くのファンが直面している問題だろう。
 ハードコアな人に言わせれば、ブライアン・ジョーンズ脱退後はストーンズではないかも知れないし、ビル・ワイマン脱退後をストーンズではないとする人もいるだろう。
 私は、ミック、キース、チャーリー、ロニーの四人がいれば、ストーンズだと思う。彼らは十分にザ・ローリング・ストーンズとして私を魅了してくれた。
 でも、チャーリーのいないストーンズは?どうなのだろう。いま、私には自信がない。あの、独特の前のめりの、つんのめった感じのグルーヴは、代えがたいストーンズの要素だ。なにせ、この "Mixed Emotions" では、イントロの1拍 ―― せいぜい一秒だけで、もうストーンズであることがわかってしまうのだから。



 もしかしたら、ストーンズは終焉を迎えるのかも知れない。チャーリー生前の音源の発表こそあっても、ストーンズの新レコーディングや、ライブは行われないかも知れない。The Glimmer Twins with Ronnie Wood になってもおかしくない。
 でもやっぱり、未練がましい、厚かましいとは思いつつ、ストーンズにすがっていたい。だって、ミックも、キースもいるのだもの。ロニーだっていてくれる。たった三人になって、年老いた彼らをまだ酷使するのかと非難されようとも、いちロック・ファンとして、ストーンズにはどうしてもこの世に存在していて欲しい ――
 私は特に、好きなミュージシャンに早く死なれたという気持ちが強いので、なおさらそう思うのかも知れない。
 いま、ストーンズ自身、それを取り巻く人々は、真剣にストーンズをどうしていくのか、考え、話し合っているのではないだろうか。

 最後になったが、チャーリー・ワッツの魂が安らかであることを祈っている。彼がこの世の音楽に残した業績は、言い尽くせないほどだ。
 今まで、本当にありがとう。お疲れさまでした。