All Along the Watchtower2018/06/07 21:07

 もし、ジョージに会えたとして、何か彼に訊くとしたら。このとき、ディランと何を話していたのか、訊いてみたい。



 1988年ロックンロール・ホール・オブ・フェイムで式典でのディランの様子は、「ジョージがやっとの思いで楽屋から引っ張り出し、ステージ上でも、かろうじてジョージの存在だけがディランを支えている」― かのようだ。
 演奏が始まってもしばらく、ディラン待ち。ジョージがかなり長く話しこみ、彼が歌い出して初めて、やっとディラン様が発声するのだから、みんな本当にヒヤヒヤしただろう。居並ぶ大物ミュージシャン達が、揃いも揃って不安そうな顔をしているのが笑える。一人、「ジョージがいるから大丈夫」という顔をしているのは、リンゴだけ。
 ありがとう、ジョージ!あなたがいなかったら、どうなっていたことか!
 ジョージだって周りの色んな人を見たり、絡んだりしたいのだが、ディラン様の「ジョージを独占したい熱視線」が、とどまるところを知らない。ディラン様、ジョージはみんなのジョージであって、ディラン様だけのジョージじゃないんです!

 "All Along the Watchtower" という曲は、言うまでもなくディランを代表する名曲の一つだろう。ロックンロールとしてかなり完成度が高く、詩もクール。
 私は特に最後の、"And the wind began to howl" が好きだ。乾いた、冷たい風が吹き抜けてゆく音まで感じられるような、臨場感がある。

 Wikipedia によると、旧約聖書,イザヤ書, 第21章に登場する「見張り台 watchtower」にインスパイアされたのだという。聖書ではバビロンの陥落を知らせる使者が、この "watchtower" から見えるということになっているが、ディランの詩の内容とは、ほとんど関連していない。

 2013年11月28日、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールでディランを見た時、アンコールの一曲が、 "All Along the Watchtower" だった。
 この時ばかりは、ホール全体が沸き立ち、熱気が空間に溢れたことを思い出す。