Bob Dylan in Tokyo 2014 初日2014/04/01 00:00

 ボブ・ディランの日本公演、初日は Zepp Diver City で19時開演。

 登場するなり驚いたのは、なんとディランがシマ柄のベストに、ちょびヒゲ、眼鏡、黒いゴム長靴、そして頭には白いハンカチの四隅を結んで作った帽子を被った、「ガンビー」スタイルで登場したことだ。
 「ガンビー」とは、モンティ・パイソンのスケッチに登場する、有名なキャラクターである。



 そして開口一番、「へろぅ!!!」…とガンビーの真似。
 しかしディラン以外のバンドメンバーは全員、いつものように格好良いスーツで身を固めている。まさか本当にこのまま演奏はするまいと思ったが、本当にピアノの前に立って歌い始めたではないか。

 歌い始めるとガンビーは忘れるらしく、普通のディラン節。
 しばらくは去年のロイヤル・アルバート・ホールで歌ったようなお馴染みのナンバーが続いたが、時々変な曲をさし込んでくる。
 突然、ウェイターが登場して缶ビールをディランに渡す。そしてプシュっと開け、観客に向かって乾杯の仕草をして一口飲み…予想はしていたけど、本当にパイソンの "Bruces' Philosophers Song" を歌い出した!

 セットリストの半ばでは、"Oliver Cromwell"。さすがにショパンの「英雄」は弾けないので、若い日本人のお兄さんが出てきて弾いてくれた。たぶん、どっかの音大のバイトに違いない。それにしても、ディランのあの口調で歴史を語られると嬉しくなる。

 終盤になると、ピアノをつまびきながら、何か語り出した。例によって何を言っているのか、皆目分からない。ひとしきりブツブツ喋っていたのだが、急に 「こんなこと、やりたくなかったんだ!」とはっきり分かる英語で言い出した。うわ、やな予感。

 「ぼくがやりたいのは…そう、ランバージャックだ!」

 突如、バンドメンバーが一列に並び、一緒に "The Lumberjack Song" を歌い出した!どこから雇ったのか、どこの誰とも知れない謎のお姉さん…(たぶん、オカマだと思う)が飛び出してくる。
 お馴染みの「ランバージャック・ソング」を披露して、お姉さんは泣きながら袖へ引っ込んだ。残されたディランが、頭をかきながら、ピアノを弾き始めると…それはなんと、"Always look on the bright side of Life" !
 やがてバンドメンバーたちがそれぞれの楽器の位置に戻り、演奏に加わる。観客も一緒に口笛を吹き鳴らす。Zepp全体が温かく、感動的な空気に包まれた。会場内を見回すディランの笑顔が、穏やかで、心から楽しんでいるよう。
 ディランはガンビーの格好のままなので、笑えるはずなのだが、なんだか感動のあまり涙が出てしまった。

 結局、セットリストのうち、3分の1はパイソンソングだった。最後の挨拶でも、一列に並んだ格好良いバンドマンの中に、ひとりだけ小柄なガンビーが混じっているのが最高だった。
パイソン・ファンとしては十分楽しんだこのライブ。さて、明日以降も続けるのだろうか…?