伶楽舎 芝祐靖作品演奏会 その2 / 王昭君2012/01/28 10:54

 1月26日、新宿区の四谷区民ホールで開かれた、伶楽舎の雅楽コンサート「芝祐靖作品演奏会 その2」。その1は一昨年の5月に開催されている。
 今回のコンサートで驚いたのは、客の入りがいつもよりやや多めだったこと。仕事を終えて演奏会場に行ってみると、1階席はほぼ埋まっており、席を確保するのにやや苦労した。芝先生が去年、文化功労者になったことが影響しているのだろうか。応援している伶楽舎だけに、これからもたくさん入って欲しい。
 演奏開始前に芝先生にご挨拶すると、にこにことしてお元気そうだった。

 演目は、まず横笛、細腰鼓、銅鑼、銅拍子による『伎楽より 呉女、崑崙、迦楼羅』。大仏開眼法要に備えて、伎楽の練習をしている風景を再現するという趣向。物語性があって面白いのだが、スクリーンを使って各伎楽面を映し出すなどの演出があるともっと良かった。
 次に、箜篌(くご。大きな竪琴の一種)、竿(う。大きな笙)による、『斑鳩の風』小編成で、とても静謐。しかし雰囲気のある作品だった。
 前半の最後は、笙、篳篥、龍笛、琵琶、箏による、『二つの面』。「採桑老」と、「綾切」という二つの伎楽面にインスパイアされた作品で、特に前者「採桑老」は、死相の表れた老人の面とのこと。
 プログラムには「古典舞楽曲として、楽曲・装束・面とそそっていますが、この舞を舞うと、間もなく他界するとい言い伝えで、宮内庁楽部の歴史百年の間、一回も上演されていません」…とある。なんとも凄まじい。
 ともあれ、今回の演奏は、面にインスパイアされた小品。老人と若い女性という、対照が面白かった。
 
 後半は、古典雅楽様式による雅楽組曲『呼韓邪單于~王昭君悲話~』。フル編成の管絃に、歌唱がつく。やはり雅楽は古典雅楽様式が一番好きな私には、これが一番印象的だった。
 王昭君(おうしょうくん)は、古代中国,漢時代の女性。宮廷に仕える女性だったが、匈奴の王呼韓邪單于(こかんやぜんう)に嫁ぎ、遙か匈奴の地でふるさとを思いながら亡くなったという「悲劇の」女性ということになっている。

 王昭君と言えば、能にも「昭君」という曲がある。とっさには詳細を思い出せなかったのだが、私のイメージでは三番目物 ― つまり、美しく優雅な女性がシテとなる演目だった。
 しかし、あとで確認してみると、全然違った。観世流百番集には入っていなかったので(續百は持ってません。高いんだもん)、能楽学習者必須の便利アイテム「能楽ハンドブック」で確認した。
 なんと、昭君は五番目物 ― 切能だった。これはびっくり。前シテと前ツレは、故郷に残った昭君の老父母。後シテは鬼神の姿をした呼韓邪單于、後ツレが昭君とのこと。
 能はおおかたワンパターンな演目が多いが、時々、びっくりするような展開になっているものがあって、油断できない。

 演奏会のプログラムには、50年にもわたる芝先生の作曲歴がついていた。どれも意欲的で、面白そうなものばかり。これからも積極的に演奏してほしいものだ。

 まったく関係ないが…雅楽の演奏会から帰宅すると、英国からBBCの [SHERLOCK Season 2] のDVDが届いていた。無理して1話だけ見たのだが(90分)ひどく疲れた。ただ座ってみているだけの演奏会も、それなりに疲れるものだ。

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