McGuinn & Bach2012/01/14 23:08

 私はロックが好きな割に、その好きな60年代黄金期伝説のロックスターの実物はそれほど多く目にしていない。特にジョージに関しては、好き具合に反して、彼が活発なライブ活動もしておらず、早く亡くなったこともあって、実物を見る機会に恵まれなかったのは返す返すも残念だ。
 そういう意味では、2007年に来日したロジャー・マッグインを見ることが出来たのは幸運だった。この時、彼はバンドを引き連れていたのではなく、単身、しかもアコースティック・ギターを持っていたのだが(そういう企画だったので)、それでも全身これロックンローラーという圧倒的な存在感と、演奏の上手さに感動したものだ。
 その時の様子によく似ている動画がある。どうやら、ラジオの収録風景らしい。



 ディランのカバーをするにあたり、ディランが絶賛していたというコメントを聞いて、「それ、ボブが言ったの?」と笑うロジャー。
 そして、"Mr. Tambourine Man" について、最初のカバーバージョンを披露。これはこれで格好良いと思うのだが、「当時バンドにいたデイヴィッド・クロスビーが、『それ、好きじゃない』って。」
 そして、ロジャーが耳にしたバッハの曲を参考にして、あの、"Mr. Tambourine Man" が誕生したという。バッハ云々の下りは、私が見に行った時も同じ話をしていた。

 ここで登場したバッハの曲というのは、教会カンタータ "Herz und Mund und Tat und Leben"(BWV147)「心と口と行いと生活で」の内、第6曲コラール(合唱) "Wohl mir, daß ich Jesum habe"「イエスこそわが喜び」のことだ。
 教会カンタータとは、主にプロテスタントの礼拝用に作られた器楽と声楽から成るカンタータ(ようするに合唱・独唱曲)のこと。プロテスタントなので、歌詞はラテン語にこだわらず、この曲の場合はドイツ語になっている。
 「イエスこそわが喜び」は、むしろ「主よ、人の望みの喜びよ」の名の方が有名だ。これは、英語のタイトル"Jesus, Joy of Man's Desiring" で広まったせいらしい。
ここでは、原語のドイツ語の演奏でどうぞ。



 古い形式のオーボエがとても印象的。
 このバッハ曲を聴けば、大抵の人が美しいと感じるし、素晴らしい曲だと認識するのだが、それがボブ・ディランとつながり、ザ・バーズによってロック史上最高の曲の一つになるのだから、"B"でつながった彼らの運命に感謝したい。…ロジャーがリッケンバッカーを使うきっかけを作ったバンドも、"B" だったな…