Ravi Shankar & George Harrison / Collaborations2010/12/04 23:33

 ラヴィ・シャンカール&ジョージ・ハリスンの、ボックスセット, [Collaborations] は、アメリカのアマゾンから購入していたので、もうずいぶんかえに手元に届いていた。カードの請求書が届いたのだが、思っていたよりレートが良かったらしく、予想よりずっと安くなっていた。こういうときはさすがに円高に感謝している。



 学生時代、民族(俗)音楽学の先生が、インド音楽を専門としていた。当人もシタールを少しかじっていたようだ。当然講義にもインド音楽が多く出てきた。それから、日本の楽器学の最高権威とも言うべき教授の講義でもインド音楽が話題になったのだが、両者に共通していたのは、「インド音楽にまともに取り組もうとしたら大変な事になる」ということだった。
 聞いた感じがとても素敵なので飛び込んでみたくもなるのだが、その音楽の複雑さときたら、とんでもないらしい。そういえば、インド人は数学に強いと言う。そういう数学的な理論で複雑かつ厳密、重厚で濃密で長大、要するに巨大な音楽に立ち向かう事になるというのだ。
 民族(俗)音楽の講義では、当然ラヴィ・シャンカールが登場した。音楽そのものとしての話題ももちろんだが、20世紀という時代にあるインド音楽の、ある一面の偉大な体現者としてでもある。ジョージも話題に上ったのは、言うまでもない。

 民族(俗)系の音楽に興味が皆無でもなかったし、何といってもジョージのファンなので、ラヴィ・シャンカールのアルバムは、いつも欲しいと思っていた。しかし、私にはインド音楽に正面から立ち向かう度胸もないし、何を買うのが適当なのかも分からない。とにかくジョージが何らかの意味でかかわっているアルバムが欲しいとおもいつつ、月日を過ごしていたところに、このボックス・セットが発売になったので、渡りに船だった。

 素敵なデザインのボックスに、丁寧な作りのブックがついている。私のシリアル・ナンバーはNo.1504。収録は以下の通り。

Chants of India
 ジョージのプロデュース。その名の通り、チャント(合唱曲)ばかりのアルバム。[Concert For George] でも流れた、"Sarve Shaam" も収録されている。インストゥルメンタル的にはちょっと物足りないかもしれない。

Music Festival from India
  これもジョージのプロデュースで、ライブDVDもついている(日本のDVDプレイヤー再生可能)。録音の一部は、ヘンリー・オン・テムズの、ジョージのハウス・スタジオで行われている。これが一番お勧めのアルバム。インストゥルメンタル的にも楽しめるし、聴きやすい。(4, 2, 2)とか、(3,2,2) など、拍子が表記されているところが面白い。

Shankar Family & Friends
 これまたジョージのプロデュース。聞いたとたんに、ジョージが作ったと分かるポップ・ソング "I Am Missing You" がぶっ飛んでいる。この曲は明らかに、歌手の選定ミスだろう。ジョージに歌わせた方が絶対に良いと思うのだが。この曲のポップエッセンスが、アルバム全体にも及んでおり、ちょっと戸惑わなくもないか。

 私のように、とりあえず「何か欲しい」としか思っていない人にとっては、手頃でちょうど良い。ただし、飽くまでもインド音楽のボックスなので、ジョージやビートルズが好きだからという理由だけで購入するのはお勧めしない。

 ブックの印刷は実にお金のかかった感じ。写真がとにかく美しい。改めて言うのもなんだが、ジョージは美形だ。
 ジョージやシャンカールのコメントも入っている。
 印象的だったのは、ジョージが子供のころからラジオでインド音楽を耳にしていたということ。それから、シャンカールが初めてジョージに会った時の印象。ビートルズの四人全員と会ったのだが、ジョージの印象が特別だったと言うのだ。ジョージの大勢の親友たちは、たいてい同じようなことを言う。ジョージは最初に一目見たときから、特別だそうだ。

 私は、20世紀の音楽をその代表者で説明しようとするなら、ビートルズ,ジョン・ケージ,ラヴィ・シャカールだと思っている。この三者のうちの二人が、強い尊敬と愛情の相互関係で結ばれていたという事実は、音楽という芸術にとって、この上ない喜びと言うべきだろう。ジョージの周囲には、いつもそういう友情が成す奇跡が、普通に起こっている。彼の生前も、そして死後も。