Boys on the Side2010/04/09 23:44

 ウィルベリーズ・ファンであれば、"You Got It" という曲は「準ウィルベリー楽曲」と言えるだろう。
 ロイ・オービソン最後のアルバム、[Mystery Girl] に収録されているこの名曲は、ジェフ・リン,ロイ・オービソン,トム・ペティの共作。この三人がそろって楽しく曲作りをする風景は、心温まるものがある。

 無論、ロイのオリジナルは最高なのだが、そのカバーである、ボニー・レイット版の "You Got It" も捨てがたい。歌声もサウンドも良い。ミュージック・ビデオで、一瞬(いや、一瞬が二回)映るベンモント・テンチを探すのも楽しみだ。
 そもそもレイット・バージョンの "You Got It" は、映画 [Boys on the Side] のサントラとして録音された。したがって、このビデオにも映画のシーンや、主演の女優三人が登場する。



 私は急に、この『ボーイズ・オン・ザ・サイド』という映画が見たくなった。ミュージックビデオの断片を見る限りは、「パイレーツ・オブ・カリビアンIII」のような、収拾のつかない脚本ではなかろう(どうも後遺症が…)。
 主題は、女の友情であるところは、予想がついていた。そして映画紹介には、「ロード・ムービー」とある。

 さて。実際に鑑賞してみると。
 確かに、主題は「女の友情」。さらに、もう一つの感情がプラスα。そして、ロード・ムービーであるのは途中までで、結局は「生と死」という、ありがちだが究極の主題だった。要するに、泣ける映画。
 かと言って、「一番好きな映画」になるほどではないし、誰にでもお勧めしたくなるような物でもない。しかし、見て良かったという結論には達することができる。世間一般的に、映画が供給するのは夢や希望であるのと同時に、人生はつらく、思い通りには行かず、悲しみと縁が切れず、妥協と自己嫌悪がつきまとう ― そういう面でもある。別に後者の方が好きというわけではないが、この『ボーイズ・オン・ザ・サイド』という映画は、そういう面を見据えた作品だった。
 かと言って、『デッドマン・ウォーキング』のように、「良い映画だけど二度と見たくない」などと思わせるほどの暗い映画ではなく、そこはやはりウーピー・ゴールドバーグを使った時点で「勝って」いる。

 ネタばれはどうかと思うのであまり詳しくは書かないが、音楽的には非常にお勧め。やはり、"You Got It" が良い。映画では、ウーピー版が聴ける。そして泣ける。歌詞の良さが際立つようなところで歌われる。
 この映画で、 "You Got It" は女の友情の主題歌だった。そういえば、オリジナルも男の友情の産物だ。それを思うと、この曲のめぐりあわせは、当然の帰結という気がしてくる。