It’s shocking, crushing news2017/10/03 08:08

 やや混乱していますが。ディランのコメントがアップされたりして、重くのしかかります。本当にディランのコメントなのでしょうか。 Rolling Stone

 「公式な」発表はまだで、とにかく混乱しています。情報が錯綜し、取り消されたりしていています。
 最新の知らせが、良いほうであることを、祈っています。

 私は混乱の中で、本当に、本当に、言葉を失っています。

It's the Same Sad Echo2017/10/03 13:33

I love you.
I miss you.
Again , I love you. RIP.

Untitled2017/10/06 22:35

 いつか、こんな日が来るとは分かっていた。
 でも、こんなに早く来るとは、思わなかったんだ。

 このブログを始めて9年余り。まさか、トム・ペティの死を報じ、記事を書くことになるとは思いもしなかった。一体、何をどう書けば良いのかも分からない。いかに音楽が素晴らしいか、語りたくても、どこから手を付けて良いのやら。
 火曜日の朝に衝撃的な知らせが入り、確認に追われ、昼過ぎに彼の死を知る。一瞬、胸がつぶれそうになる。トム・ペティが、死ぬなんて。
 仲間と連絡を取り、数人と会う。間違いない、トム・ペティは死んだんだ。

 ずっと彼の音楽を聴いているが、不思議と涙も出てこない。ただ良い音楽を聴いているという快感だけで、トム・ペティの死という悲劇に、感情の発露がついていかない。
 直接の知り合いでもない、ただ遠くから見つめているファンに過ぎないからだろう。実感がわかないのだ。三日経ってもわかない。山のような記事や追悼コメントを読んでも、まだわかない。
 ヘッドフォンをつけて、プレイをオンにすれば、トムさんの音楽が聞くことが出来る。あの格好良い姿も、いつものとおりディスプレイや紙で見ることが出来る。

 トム・ペティを思う涙は、いつあふれ出るのだろうか。

 たぶん、残されたハートブレイカーズ ― とりわけ、マイク・キャンベルの姿を見るとか、コメントを読むとかした時だと思う。トムのいない世界に、生きているマイク ― ああ、トムさん、何てことをしたんだ。こんなに突然、いなくなってしまうなんて!
 20歳ごろから45年、トム・ペティのロックンロール・ミュージシャンとしてのキャリアにおいて、マイク・キャンベルは、ほんの僅かな例外を除いて、ほぼ片時も離れなかった。
 つい先週まで、いつものように一緒に仕事をして、最高の音楽を奏でていた。しめくくりの挨拶をするトムさんを守るように、いつもマイクは彼の後ろからステージを降りてゆく。前を歩いているはずの、前でギターを持って、最高の歌を聴かせるはずの、輝くばかりの作曲家,詩人,ロックンローラー,バンドメイト ― そして親友との、永遠の別れを迎えてしまった。

 幸運なことに、私には録音も映像もある。トムさんはずっと生き続け、歌い続けてくれる。
 たしかに、新曲が聴けない、もうライブを見に行くことは出来ない。寂しい。それは残念で悲しいことだけど、これまで40年以上、彼はありとあらゆることをしてくれた。あらん限りの力で、最高の音楽を大量に残してくれた。
 彼が静かに、安らぐ時が来てしまったのだ。あれだけの事をした人を、引き留めることも、唐突な別れに怒ることもできない。
 とにかく、トム・ペティはもういない。「いない」という、悲しみを実感させるもの,きっと私を号泣させるもの ― 残されたハートブレイカーズ ― 彼らの悲しみと心の傷が、少しでも癒えることを願っている。私は彼らのファンだから。

 たくさんの追悼コメントの中で、今のところ一番胸に迫ったのは、ダニー・ハリスンのものだ。

Thank you dear Tommy for always being there for me. You got me through some of the hardest moments of my life. See you on the other side. I love you, bless.
 ありがとう、大好きなトミー。いつもそばにいてくれて。あなたがいたから、どんなにつらいときも、ぼくは乗り越えることが出来た。また別の世界で会いましょう。愛してる、神のご加護を。

 音楽というトムさんの職業や、業績ではなく、個人的な関係としてのメッセージ。ジョージも "Tommy" と呼んでいた。
 でも、このダニーの言葉は、私たちファンにもあてはまる。
 ありがとう、そばにいてくれて。そしてこれからも、そばにいてくれるトムさん。あなたがいたから、今までも、これからも、乗り越えてゆける。そう、あなたの死さえも。

 ふとジョージが手をさしのべると、トムさんがその手を取った。
 ジョージはふわりと抱き上げ、トムさんのお母さんの元へ、連れて行ったに違いない。

Bidin' My Time2017/10/10 22:17

  何事にも時があり 天の下の出来事にはすべて定められた時がある。(コヘレトの言葉 3:1)

 トム・ペティが亡くなって1週間。彼のほか、何か聴く気が起きなかったのだが、クリス・ヒルマンの新譜 [Bidin' My Time] が届いた。Produced by Tom Petty ―
 何事にも時があり、いま、このアルバムを聴く時がきたのだろう。アメリカでの発売は先月のことだったが、私のもとに届いたのがトムさんの死後だったことも、何かの巡り合わせだ。



 トムさんを失った悲しみの時に、このアルバムはそっと寄り添ってくれる。心が沸き立つわけでもないし、何か新しい興奮が起きるわけでもない。よく知っている人と、気持ちを共有するようなサウンド。
 ある意味、クリス・ヒルマンには気の毒だった。彼の立派なソロ・アルバムにもかかわらず、トム・ペティによる、ザ・バーズ・トリビュート作品にしか聞こえない。今は、そういう時期なのだろう。

 ザ・バーズの曲の中では、ジーン・クラークの "She Don't Care About Time" が一番良かった。もともと、あのぎこちないようなギター・ソロが好きだった。さすがにこちらは、こなれて端正だが、この曲の持っている、ちょっとひねくれたようで、本当は素直なロックンロールが格好良い。
 そして前にも記事にしたが、"Here She Comes Again" の破壊力すごい。ロジャー・マッグインと、トム・ペティがエレクトリック・ギターを弾いている上に、ベンモント・テンチとスティーヴ・フェローニである。最高のロックにならない方がどうかしている。押しつけてでも人に聞かせたい。

 トム・ペティの "Wildflowers" は原曲の良さを再確認させる録音だった。ちょっと言葉が見当たらない。
 "Given All Can See" のハーモニカが、トムさんの呼吸かと思うと、ひどく切なかった。

 今は、感性や、考える力が鈍っている時。そういう時に聞くのも良いし、数年してまた改めて聞いてみたいアルバムでもある。

 スリーブの写真には、「ジョージっぽいグレッチ」を弾くトム・ペティの姿がある。そして、クリス・ヒルマンの言葉が添えられていた。

 トム、あなたはインスピレーションの源であり、本当の友達だ。
 あなたの優しさと、寛容さにどれほど救われたか。あなたの助けと、導きがなければ、決してこのアルバムを作りあげることは出来なかった。ありがとう。

 良き言葉は蜜のしたたり その甘さは魂を癒やす(箴言 16:22)


(注:アルバムのジャケット裏に印字されているのは、"Good words are a honeycomb, And their sweetness is a healing of the soul. Preverbs 16:22"
 私が持っている聖書では、おそらく第22節ではなく、第24節にあたり、英語では "Gracious words are a honeycomb, sweet to the soul and healing to the bones" のようだ。)

There are places I remember2017/10/14 20:00

There are places I remember
All my life though some have changed
想い出の場所がある 人生の中で変わってしまったものもあるけれど
( In My Life: The Beatles )


 母校の音大には、邦楽演奏用の和室があった。畳に座り込み、仲間や先生ともども、お茶を飲んだり、お菓子を食べたりしてくつろいでいた。
 私は好きになったばかりの、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのことを、しゃべり倒していた。すると、同級生の一人が言った。

 「俺、テレビでトム・ペティのビデオ見て、ぜってーこいつ、人形か何かだと思ったわ。すっげーでっかい帽子かぶってる、あやつり人形みたいでさ。」

 学生時代、人からトムさんの話を聞いた、ほぼ唯一の機会だった。

 今はドイツに住んでいる彼に、そんなことを想い出したとメールしたら、返事がきた。無論、トム・ペティのニュースは知っている。

「もちろん、NIぶちの事を思い出していました。月並みな言葉だけど、音楽の中では生き続けるのだね。間違いなく後世に残るものを作ったと思うし。」

 ありがとう、Mくん。その通りだよ。



 2006年、私はちょっとレイザーライトが好きだった。コメディ,The Mighty Boosh がきっかけて知ったバンドだが、クールな若いUKバンドだった。
 単独来日公演が渋谷クアトロであり、私はひとりノコノコ出かけていった。ライブの開始を待つ間、何か音楽がかかっているのはいつものことだ。
 やがて、客席のライトが落ちて、真っ暗になった。さぁ、ライブが始まる。そのとき、真っ暗な会場に、大音響で聞き慣れたイントロが流れた。

American Girl .... !!

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのオリジナル録音が流れたのだ。私は声を出さずに絶叫していた。
 最初から最後まで、暗闇で、大音響で、フルで流れた "American Girl" 。これが何を意味するのか、クアトロに集った観衆のうち、どれだけの人に分かったのだろうか。
 レイザーライトが憧れ、目指しているにはほかでもない、TP&HBであり、"American Girl" なのだ。その後のライブのことは、あまり良く覚えていない。"American Girl" が強烈すぎた。

 レイザーライトはその後どうなったのか知らなかったので確認してみると、当時のメンバーはリーダーのジョニー・ボレルしか残っておらず、彼のバンドとして続いていた。
 今年9月10日に行われたデイヴ・スチュワートのライブに、ジョニー・ボレルがゲスト出演し、"Don't Come Around Here No More" を演奏した。TP&HB自身のパフォーマンスに似て、イカしている。
 そして一番のツッコミどころは、スチュワートのギターだろう。デューセンバーグのマイク・キャンベル・モデルだ。



 トム・ペティのことをどう記事にすれば良いのか、今はまだ分かっていない。何となく、想い出を重ねて、私にとってのトム・ペティへの思いが形になっている。

At First Sight2017/10/19 20:25

 あの日の朝、最初にトムさんのことを知らせてくれた友人が、私のために「偲ぶ会ランチ」を開いてくれた。友人はロックに興味はないが、私のよき理解者である。

 一通り、トムさんの活躍と、あの日前後のことをしゃべると、友人は言った。

 「ミュージシャンとしては幸せな人だね。バリバリの現役でツアーもしてて。翌週に自宅で眠ったまま、奥さんに発見されて、家族と長年のバンド仲間に看取られるなんて、そんなラッキーな人、ほかにいる?」

 確かにそうだ。あれほど幸せなロックンロールスター人生はないかもしれない。

 その幸運なロックンロール・スターに出会ったときのことは、良く覚えている。

 12歳でビートルズにはまった私は、数年後 ― 音大時代に突然、ジョージが一番格好良いことに気づいた。そしてジョージのソロ活動について調べ、トラヴェリング・ウィルベリーズなるバンドと、”Handle with Care” という名作ビデオがあることを知った。
 そのビデオを見るために、私は毎日 [Classic MTV] という番組を録画し始めた。80年代ごろまでのミュージックビデオばかりを流す30分番組だ。登校中に録画し、帰宅すると確認するということを繰り返しているうちに、ウィルベリーズとやらを捕まえるにちがいないという狙いだ。

 その日も録画を一通り見たが、ウィルベリーズに関しては収穫なしだった。ただ、ひとつ印象的なビデオがあった。
 ロックのライブ映像で、金髪,長髪のフロントマンが目立っていた。恐ろしくダサい服を着ている。でも格好良かった。金髪はタイプではなかったが、瞳の輝きが良かった。演奏している曲も素晴らしい。
 一目見て気づいたことが、いくつかある。
 フロントマンと、ギタリストがリッケンバッカーを使っていたこと。これはビートルズ・ファンには強烈な印象を残す。
 そして、フロントマンはソロ・アーチストではなく、これは数人のロックバンドであることも分かった。ギタリストとはとても仲が良さそうだし、ほかのメンバーも和やかな雰囲気だ。素敵なロックバンド、そういう感じだった。そして、トランペッターと、女性コーラスはバンド外の人だということも、なんとなく分かっていた。

 予備知識の全くなかった私は、一体彼らの何に魅了されたのだろうか。
 曲の良さ、アレンジの良さ、演奏の上手さ。クールで、媚びない、気の強そうな、でもちょっと多感で、意地っ張りで、可憐な。
 そういう印象だったのかも知れない。

 そのビデオのことはしばし忘れていたが、数日後だったのか、数週間後だったのか、とにかく私はウィルベリーズを捕らえることに成功した。
 とうとう見つけた、"Handle with Care" ― ものすごく興奮して、その魅力に完全にノックアウトされた。そして、ジョージが一番 ― ビートルズのみならず、全てのなかで一番格好良いということを確信した。それと当時に、ウィルベリーズの一人である金髪の青年が、「あの金髪の青年」と同一人物であることも、認識したのだった。

 そういう、トムさんとの出会いだった。彼のことを、本気で二十代だと思っていた。

The Good Old Days May Not Return2017/10/23 20:26

 ボブ・ディランが、トム・ペティの誕生日の翌日,10月21日にトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの "Learning to Fly" をカバーした。



 ディ、ディ、ディ、ディ、ディラン様が!ディラーン様が!!! LLLL Learning to ffflyyyy!凄い!凄すぎる!凄すぎて、現場にいたら卒倒する自信がある!もちろん、聞き終わってから!!
 やだもう、ディラン様ったら、かわいい。アマノジャクに見えて、急に素直になって、キュンとさせる。もう、大好き。
 ロックなカバーで最高。やっぱりディラン様、ロックなんだよ…シナトラ大会はそろそろやめて、ロックなディラン様で行こうよ!

 そもそも、"Learning to Fly" が大好きなのだ。オリジナルのエレクトリック・ロック・バンド仕様が。Heartbreaker's Japan Partyさんの第30回記念オフ会の時、ガチで好きな3曲を選ぶという企画があり、"American Girl", "Echo" そして "Learning to Fly" を選んだほどだ。
 "Free Fallin'" と迷ったのだが、歌詞の良さで "Learning to Fly" がまさった。

Well good old days, may not return
And the rocks might melt and the sea may burn ....
Learning to fly, but I ain'd got wings...


 私はどうしても悲しい曲、歌詞が好きになる。この切なさ、悲しみ。でも強がってロックンロール。抱きしめたくなるような愛しさ。胸が一杯になる。

 アコースティック・バージョンで、観客と一緒に歌うスタイルがすっかり定着してしまったが、私はオリジナル・バージョンのライブがいい。[Take the Highway] の時も演奏しているはずだが、ビデオには収録されなかった。是非とも公式で出して欲しい。

Echo2017/10/27 22:20

 "Echo" のことを書こうと思って、久しぶりにCDケースをあけて見ると、チケットが挟まっていた。

 1999年8月27日金曜日 ショアライン・アンフィシアター。トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ。
 初めて見たTP&HBのライブだ。私はとても若かった。ステージ上にいたハートブレイカーズのうち、二人がもうこの世にはいない。あの夜、"Free Fallin" の "I wanna write her name in the sky"のところで、観衆は一斉に夜空を指さした。



 "Echo" がTP&HBのベスト3に入るくらい好きだという人を、私は自分以外には知らない。ファン・コミュニティでも好きだと言った人の記憶はないし、作ったトムさんや、マイクも「あまり聞かない」と言っているアルバムのタイトル曲だ。
 なぜこの曲が好きなのか。短く言えば、「ジョージの "Isn't it a pity" に似ているから」かも知れない。
 ある程度のキャリアのあるロック・ミュージシャンには、こういう曲がひとつくらいはあるのだろう。ややスロー・テンポでシンプルなコード進行、静かに始まり、だんだんサウンドに厚みが加わり、最後は目一杯のボリュームになって、張り裂けんばかりに膨らんでゆく。
 ロックンロールとしては異色に見えて、じつはよく聞くような曲だ。

 私がたまらなくこの "Echo" という曲に惹かれるのは、ひどく悲しいからだろう。そしてその悲しみのエコーはいつもそばにあり、耳にまとわりつく。

 It's the same sad echo
 It's the same sad as the same echo around here


 人生は、悲しみの積み重ねだ。
 私がそう知った頃に、この曲を聞いた。確実に若かった時代だが ― 重い悲しみはただ積みかさなり、決して消えることはなく、ただ人はその悲しみに慣れるのだと知った頃。
 この曲の良さを、おおいに人と語り合うことは、きっとないだろう。TP&HBは辛い時期にあり、トム・ペティも健康とは言えなかった。間もなく起こる悲劇の予兆でもある。
 一種の「メメント・モリ memento mori」それが私にとっての "Echo" なのだ。

 決して負けない、どんな困難にも立ち向かう、きっと上手く行く ― トム・ペティの曲の多くは、そんな前向きな歌詞で私たちを勇気づけ、素敵なラブソングでときめかせてくれる。その一方で、時にはこの "Echo" のような、ただただ、悲しい、人としての弱味さえも語る。
 常に誇り高く、雄々しくはいられない。時として悲しみに沈むこともある。それさえも、トム・ペティは愛おしげに、美しく、淡々と、でも情感豊かに歌い上げる。バンドのサウンドは、仲間が目一杯手を広げて、その声を全力で慈しむように響くのだ。
 マイクのギターが、もうひとつの声となって、悲しいエコーをいつまでも奏でている。いつまでも、いつまでも。いつも、悲しいエコー。

 Put down your things and rest while

 偉大なるトム・ペティ。あなたはもう何もかも置き去って、休んでいいんだ。私はあなたの "Echo" をライブで聞くことはできなかった。それが悲しいけれど、その悲しみは、生きていることの、一つの証なのだ。