正倉院復元楽器2023/05/29 19:47

 昨日、伶楽舎の雅楽コンサート「芝祐靖作品演奏会 その4」を鑑賞してきた。
 しばらく改修工事中だった四谷区民ホールに戻ってきて、さぁどう新しくなったのかと思ったら、目に見えるところは大して変わっていなかった。シートは変わっていたようだが…トイレに温水洗浄器がついていないなんて、日本の音楽ホールなのに、みすぼらしいじゃないか!…と、思う。

 今回は安心、安全の芝先生作品集。なんと言っても、復元曲である「曹娘褌脱(そうろうこだつ)」と、「長沙女引(ちょうさじょいん)」が素晴らしかった。

 芝先生のオリジナル作曲作品も三つあり、三味線,十七弦(箏,琴。つまり近世,江戸時代風の箏)と、雅楽器とのコラボレーションもあったし、正倉院の所蔵楽器を復元した、いわゆる「正倉院復元楽器」の演奏も加わり、器楽好きとしては見所の多い演奏会でもあった。
 はっきり言ってしまうと、三味線や十七弦のような近世楽器は、かなのり強敵―― というか、雅楽器はやや不利である。そもそも騒々しい篳篥や龍笛はともかく、雅楽の楽琵琶や、楽箏の音は、三味線や十七弦と比べてると恐ろしく音響が貧弱なのだ。ついでに、実は笙も一管一管は蚊の鳴くような音なので、こちらも負けている。
 狭い宮中やごく一部の寺社でほそぼそと伝えられた雅楽は、いかにも可憐でそこが好きなのだが、やはり近世,庶民文化の花開いた江戸時代のパワーは桁が違う。そのことを思い知る演奏会だった。

 正倉院復元楽器のうちの一つ、箜篌(くご)は小型のハープのような楽器である。弦は23三弦なのだが、これがまた音が小さい!そもそもフレームが華奢なので ―― と言うか、二本の木材が直角に繋いであるだけなので、フレームとも言えない ―― 響かないのである。
 演奏者にきいてみると、まずチューニングで発狂しそうになるそうだ。一応、一弦一弦にペグがついているのでチューニングはできるのだが、最後の一弦をチューニングすると、脆弱なフレーム故に全体が歪む。そうしたらまたバランスの取り直しである。そりゃぁ、発狂もするだろう。
 正倉院復元楽器が、なぜ一般に流布せず、正倉院にだけ残ったのか。要は音が小さい、扱いにくい、あってもなくても良い ―― そういった事情だったのだろう。

 ともあれ、珍しい楽器とその演奏を鑑賞できるのはとても楽しい。伶楽舎にはこれからも頑張って欲しい。

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