David Crosby: Remember My Name ― 2026/03/06 20:29
2019年のドキュメンタリー映画、[David Crosby: Remember My Name] を見た。制作の一人は、おなじみのキャメロン・クロウである。
ソロアルバムの制作や、ツアーに勤しむ78歳くらいのクロスビー。愛する家族と過ごす素敵な家で、上機嫌にインタビューに答えている。
曰く、冴えない太った少年だったクロスビーは、ギターを手に入れて歌い始めると俄然その存在が輝き始める。映画全体を通じてもっとも印象的だったのは、クロスビーの力強く、つややかで、唯一無二の、その歌声である。
彼は1941年生まれ、時代が時代である。またたく間にバーズという伝説のバンドの一員となり、その才能を発揮した ー と思ったらクビになった。その間、数枚のアルバムは発売しているのだが、人生の長さからすればあっという間かもしれない。ある日、バーズのメンバー2人がポルシェでクロスビーの家に乗り付けて、クビを宣告するところなどは、アニメーションを使っている。
面白かったのは、クロスビーがバーズをクビになった後、船を買って海に出るという彼の独自の生き方だ。60年代ロックンローラーのなかでそういうタイプはあまりいない。
やがてグレアム・ナッシュと運命の出会いをするのだが、彼のことを「どこの誰かも知らなかった」とのこと。そこにスティーヴン・スティルスも加わって、CS&N の結成である。若い頃のスティルスという人は、モンキーズ候補になっただけあって、歯並びと頭髪に問題がある以外はなかなかの美男子だ。
レコーディングの合間、バルコニーでなにやら言い合うクロスビーとナッシュ。言い合いなのだが、その2人の声がまた良い声なのが面白かった。ナッシュの声が高い…!
クロスビーと女性たちとの関係も語られている。特にジョニ・ミッチェルに関しては興味深かった。それにしても、早々にバーズをクビになるし、CS&Nもナッシュの人格で保たれていることは誰でも知っていそうだが、そこにジョニ・ミッチェルとは劇薬混ぜるな危険という感じだ。
ある時の恋人が若くして事故で亡くなったとき、深く悲しむクロスビーを、仲間たちが献身的に支えたという話が泣かせる。音楽的才能が豊かでありながら、人間性に多少問題のあるクロスビー。でも、友人たちにとっては放っておけない存在だったのだろう。
ウッドストックに限らず、60年代末から70年代のライブシーンが素晴らしかった。CS&N (もしくは CSN&Y)というと、美しいハーモニーが特徴だが、ライブでの熱さ、パワフルさも決して引けを取るものではなかったようだ。CS&Nのアルバムは何枚か持っているが、ライブ・アルバムは持っていない。何か良いものがあったら買ってみようと思う。
60年代から蓄積していった薬物の問題は、クロスビーの命こそ奪わなかったものの(不思議なことに)、人生を破滅させようとしていた。とうとう1985年に逮捕、収監された。刑務所で完全に薬物と縁が切れたかどうかは知れないが(あまり信じていない)、クロスビーは社会復帰し、また仲間と音楽活動を始める。
普通なら、90年代を経て21世紀も、歳を取りながら円熟した演奏を聴かせ続ける ― と思ったら、その後に波乱があるのがクロスビーのある意味すごいところである。
私も見た2015年の来日公演後、北欧でのCS&Nのツアーで、長年クロスビーを許し、守ってきたナッシュが耐えきれなくなり、完全な決裂となったのだ。しかもステージ上で。原因はたぶん自分にあるのだろうというクロスビー。
以降、彼はかつての仲間から完全に孤立してしまっているという。ナッシュも、ロジャー・マッグインも、スティルスも、ヤングも。彼らの連絡先も知らないし、また一緒になにかやる見込みはまったくないという。
自分でも分かっているようだが、やはりクロスビーはかなり強烈な個性の持ち主で、人と上手くやっていくのが得意ではないのだ。映画の随所に表れるのだが、彼は怒りの処理が苦手だ。悪感情を持つと、決めつけが激しく、場をわきまえずに強い表現で(そして汚い言葉で)罵倒してしまう。「正直に生きる」といえば聞こえが良いが、人間は思いやりなしには一緒にいることは出来ない。
若いミュージシャンと音楽活動を続けるクロスビーの姿で、映画は終わる。持病が多く、いつ死んでもおかしくないと言っていたが、実際に彼が亡くなるのは4年後のことだった。友人たちと決裂したままというその死が、ちょっと寂しい。でも愛する家族はいたのだから、彼なりに幸せだったことだろう。
蛇足ではあるが、仲間の連絡先を一つも知らないクロスビーを思うと、ある日突然、ボブ・ディランから電話がかかってきて、「バンドを頼む」といわれるマイク・キャンベルってすごいなと、改めて感心した。
ソロアルバムの制作や、ツアーに勤しむ78歳くらいのクロスビー。愛する家族と過ごす素敵な家で、上機嫌にインタビューに答えている。
曰く、冴えない太った少年だったクロスビーは、ギターを手に入れて歌い始めると俄然その存在が輝き始める。映画全体を通じてもっとも印象的だったのは、クロスビーの力強く、つややかで、唯一無二の、その歌声である。
彼は1941年生まれ、時代が時代である。またたく間にバーズという伝説のバンドの一員となり、その才能を発揮した ー と思ったらクビになった。その間、数枚のアルバムは発売しているのだが、人生の長さからすればあっという間かもしれない。ある日、バーズのメンバー2人がポルシェでクロスビーの家に乗り付けて、クビを宣告するところなどは、アニメーションを使っている。
面白かったのは、クロスビーがバーズをクビになった後、船を買って海に出るという彼の独自の生き方だ。60年代ロックンローラーのなかでそういうタイプはあまりいない。
やがてグレアム・ナッシュと運命の出会いをするのだが、彼のことを「どこの誰かも知らなかった」とのこと。そこにスティーヴン・スティルスも加わって、CS&N の結成である。若い頃のスティルスという人は、モンキーズ候補になっただけあって、歯並びと頭髪に問題がある以外はなかなかの美男子だ。
レコーディングの合間、バルコニーでなにやら言い合うクロスビーとナッシュ。言い合いなのだが、その2人の声がまた良い声なのが面白かった。ナッシュの声が高い…!
クロスビーと女性たちとの関係も語られている。特にジョニ・ミッチェルに関しては興味深かった。それにしても、早々にバーズをクビになるし、CS&Nもナッシュの人格で保たれていることは誰でも知っていそうだが、そこにジョニ・ミッチェルとは劇薬混ぜるな危険という感じだ。
ある時の恋人が若くして事故で亡くなったとき、深く悲しむクロスビーを、仲間たちが献身的に支えたという話が泣かせる。音楽的才能が豊かでありながら、人間性に多少問題のあるクロスビー。でも、友人たちにとっては放っておけない存在だったのだろう。
ウッドストックに限らず、60年代末から70年代のライブシーンが素晴らしかった。CS&N (もしくは CSN&Y)というと、美しいハーモニーが特徴だが、ライブでの熱さ、パワフルさも決して引けを取るものではなかったようだ。CS&Nのアルバムは何枚か持っているが、ライブ・アルバムは持っていない。何か良いものがあったら買ってみようと思う。
60年代から蓄積していった薬物の問題は、クロスビーの命こそ奪わなかったものの(不思議なことに)、人生を破滅させようとしていた。とうとう1985年に逮捕、収監された。刑務所で完全に薬物と縁が切れたかどうかは知れないが(あまり信じていない)、クロスビーは社会復帰し、また仲間と音楽活動を始める。
普通なら、90年代を経て21世紀も、歳を取りながら円熟した演奏を聴かせ続ける ― と思ったら、その後に波乱があるのがクロスビーのある意味すごいところである。
私も見た2015年の来日公演後、北欧でのCS&Nのツアーで、長年クロスビーを許し、守ってきたナッシュが耐えきれなくなり、完全な決裂となったのだ。しかもステージ上で。原因はたぶん自分にあるのだろうというクロスビー。
以降、彼はかつての仲間から完全に孤立してしまっているという。ナッシュも、ロジャー・マッグインも、スティルスも、ヤングも。彼らの連絡先も知らないし、また一緒になにかやる見込みはまったくないという。
自分でも分かっているようだが、やはりクロスビーはかなり強烈な個性の持ち主で、人と上手くやっていくのが得意ではないのだ。映画の随所に表れるのだが、彼は怒りの処理が苦手だ。悪感情を持つと、決めつけが激しく、場をわきまえずに強い表現で(そして汚い言葉で)罵倒してしまう。「正直に生きる」といえば聞こえが良いが、人間は思いやりなしには一緒にいることは出来ない。
若いミュージシャンと音楽活動を続けるクロスビーの姿で、映画は終わる。持病が多く、いつ死んでもおかしくないと言っていたが、実際に彼が亡くなるのは4年後のことだった。友人たちと決裂したままというその死が、ちょっと寂しい。でも愛する家族はいたのだから、彼なりに幸せだったことだろう。
蛇足ではあるが、仲間の連絡先を一つも知らないクロスビーを思うと、ある日突然、ボブ・ディランから電話がかかってきて、「バンドを頼む」といわれるマイク・キャンベルってすごいなと、改めて感心した。
The Queen’s Gambit ― 2026/03/14 19:35
お察しの通り、野球を見るために NETFLIX の契約をせざるを得なくなっている。F1 に関しては有料チャンネルで見ることにすっかり慣れてしまったが、野球となるとちょっとびっくりする。もっとも人気のあるスポーツでこの試みはどうだろうか。
ただ野球をみるだけでは悔しいので、1ヶ月のうちに見たいものは見ておくことにする。
そのうちの一つが、アメリカの NETFLIX オリジナルドラマ、「クイーンズ・ギャンビット」だ。1960年代を舞台に、孤児でありながらもチェスに天才的な力を発揮しするベス・ハーモンを主人公とする小説が原作だ。
1960年代が舞台なので、当時はやった曲も登場した。キンクスが一曲あった以外は、それほど私の好み寄りではなかったが。
高校で孤立していたベスが、チェスで名を挙げたために女の子グループのパーティに招待されたシーンで、テレビから流れるやや安っぽいポップスに、女の子たちが夢中になるのに対して、ベスが興ざめして立ち去るシーンが印象的だった。
The Voguesが1965年にヒットさせた、”You’re the One” がその時の曲だ。
もともとは、UKのポップ歌手ペトュラ・クラークの曲だそうだ。ペトュラ・クラークというと、モンティ・パイソンのスケッチによく出てくる、押しも押されぬ大スターだが、ポップスの域を出ず、ロックというわけではない。それでも当時UKの勢いはポップスの世界でもすごかったことがよく分かる。
動画を探したら、60年代名物、脈絡なく背後でお姉さんたちがやたらと踊っていたので、嬉しくなってしまった。
ドラマはというと、評判通り面白かった。ベスがその天才性を発揮するチェスのイメージ ― 架空のチェス盤にでコマが動く様子などはうまく表現できている。
俳優としては、ベス役女優さんがとても素敵で良かった。着ている服もどれも素晴らしい。ジンジャーもよく似合っている。ベスと全米チャンピオンを競うベニーの役者さんは、「ラブ・アクチュアリー」のドラム少年だった。
難を言えば、60年代で「精神安定剤」という緑の薬に加えて大酒飲みときたら、もっとどぎついドラッグも身近だったのではないかという疑問点だろうか。ベスを手助けするハリーはもっと素敵な容姿でも良いと思うが…まぁ、最初の印象が悪い人なので、わざとなのか。
東西冷戦とチェスと言えば、ボビー・フィッシャーが現実の世界では有名なので、このドラマは彼が存在しない世界という設定なのかと思った。しかし、予告されているシーズン2によると、どうやらボビー・フィッシャーが登場するらしい。フィッシャーは60年代、一時的に活動せず、世に出ていなかったので、シーズン1はそのフィッシャー不在時代を描いたということにしたようだ。
シーズン2で伝説の天才ボビー・フィッシャーと、ベスがどんな関わりになるのか、面白そうだ。ついでにどうしてベニーが全米チャンピオンなのに貧乏ぐらしをしているかの謎も解明してほしい。(ギャンブルがどうのこうのと言っていた気はするが…)
そうすると、私は野球が終わっても NETFLIX を契約するのか?未定だ。
ただ野球をみるだけでは悔しいので、1ヶ月のうちに見たいものは見ておくことにする。
そのうちの一つが、アメリカの NETFLIX オリジナルドラマ、「クイーンズ・ギャンビット」だ。1960年代を舞台に、孤児でありながらもチェスに天才的な力を発揮しするベス・ハーモンを主人公とする小説が原作だ。
1960年代が舞台なので、当時はやった曲も登場した。キンクスが一曲あった以外は、それほど私の好み寄りではなかったが。
高校で孤立していたベスが、チェスで名を挙げたために女の子グループのパーティに招待されたシーンで、テレビから流れるやや安っぽいポップスに、女の子たちが夢中になるのに対して、ベスが興ざめして立ち去るシーンが印象的だった。
The Voguesが1965年にヒットさせた、”You’re the One” がその時の曲だ。
もともとは、UKのポップ歌手ペトュラ・クラークの曲だそうだ。ペトュラ・クラークというと、モンティ・パイソンのスケッチによく出てくる、押しも押されぬ大スターだが、ポップスの域を出ず、ロックというわけではない。それでも当時UKの勢いはポップスの世界でもすごかったことがよく分かる。
動画を探したら、60年代名物、脈絡なく背後でお姉さんたちがやたらと踊っていたので、嬉しくなってしまった。
ドラマはというと、評判通り面白かった。ベスがその天才性を発揮するチェスのイメージ ― 架空のチェス盤にでコマが動く様子などはうまく表現できている。
俳優としては、ベス役女優さんがとても素敵で良かった。着ている服もどれも素晴らしい。ジンジャーもよく似合っている。ベスと全米チャンピオンを競うベニーの役者さんは、「ラブ・アクチュアリー」のドラム少年だった。
難を言えば、60年代で「精神安定剤」という緑の薬に加えて大酒飲みときたら、もっとどぎついドラッグも身近だったのではないかという疑問点だろうか。ベスを手助けするハリーはもっと素敵な容姿でも良いと思うが…まぁ、最初の印象が悪い人なので、わざとなのか。
東西冷戦とチェスと言えば、ボビー・フィッシャーが現実の世界では有名なので、このドラマは彼が存在しない世界という設定なのかと思った。しかし、予告されているシーズン2によると、どうやらボビー・フィッシャーが登場するらしい。フィッシャーは60年代、一時的に活動せず、世に出ていなかったので、シーズン1はそのフィッシャー不在時代を描いたということにしたようだ。
シーズン2で伝説の天才ボビー・フィッシャーと、ベスがどんな関わりになるのか、面白そうだ。ついでにどうしてベニーが全米チャンピオンなのに貧乏ぐらしをしているかの謎も解明してほしい。(ギャンブルがどうのこうのと言っていた気はするが…)
そうすると、私は野球が終わっても NETFLIX を契約するのか?未定だ。
Keith Richards: Under the Influence ― 2026/03/21 19:22
Netflix の契約期間に、気になる作品を見ておこうと思っている。先週はとても話題になった日本の大規模不動産詐欺のドラマを視聴。期待値が高かっただけに、ちょっとイマイチだった。やっぱり詐欺師物の最高傑作は [The Sting] だなぁと再認識する。
音楽関係でなにか面白いものはないかと検索したら、2015年の作品、キース・リチャーズのドキュメンタリーがあった。題して “Keith Richards: Under the Influence” 当時ソロ・アルバムを作っていたキースに取材して、キースが影響を受けたものなどを中心に紹介する作品だ。
まず面白かったのは、オープニングがモーツァルトの「魔笛序曲」だったこと。キースの母親が音楽好きで、ポップスのみならず、クラシックも身近に聴いていたそうだ。
祖父のがこれまた音楽好きで、キースにギターを仕込んでくれたのはの有名な話。絵本にもなっている。そして大音量で鳴り響くブルース。キースが影響を受けたものとして、やはり一番多くの時間を割いているのはブルースだ。
マディ・ウォータースとチャック・ベリーのレコードを抱えた幼馴染のミックに数年ぶりに会ったキースが、すぐさま意気投合してバンドを作るという、有名なエピソード。このレコードそのものが非常に重要なのであって、もしこの時ミックが別のものを持っていたら、歴史は変わっていただろう。
キース曰く、アメリカのフォーク、ブルース、カントリーなどには、ケルト音楽の要素を感じるのだという。カントリーは当たり前だが、フォークやブルースというのは意外だった。
キースといえども、影響をうけた音楽はブルース一辺倒ではない。カントリーも好きで、グラム・パーソンズがその導き手になったくれたとのこと。そこで登場するのが、あのヌーディー・スーツだ。私がカントリーはダサいと思っている要素の一つで、あれを見ると背筋が痒くなる。キースもやや呆れ気味だったが、カントリー・ミュージシャンはワルが多く(それこそキースなんて可愛いもの)、かなりの変人が多いということを教えてくれた。
一つエピソードで面白かったのは、マディ・ウォーターズと、キース、ミック、ロニーが共演した時、さすがのキースも緊張してロニーと「何着る?何着る?」とうろたえたとのこと。二人で相談しての、白シャツにベストとなったそうだ。ミックはその場にいなかったらしく、ひどく浮いた格好をしている…ミックだからなぁと今までは納得していたが、やっぱり浮いている。
出演もしているが、当時キースのアルバムの共同プロデューサーを努めていた、スティーヴ・ジョーダンがとても印象的だった。さすがドラマー三大スティーヴの一人。すばらしいドラミング技術で、こういうドラマーになりたいと思わせる人だ。
キースは終始ゴキゲンで、ずっと笑っている。そしてずっとタバコを吸っている。この作品は11年前だが、今のキースも喫煙しているのだろうか。今でも生きていることが不思議なほど薬物とアルコールに耽溺した人物だが、ある人は「悪運が強い」のだと評していた。
悪運もそうだが、このゴキゲンなロックンローラーを見ると、人に愛されやすい人物で、その愛され加減が彼をこの世にとどめているのではないかとも思う。
そう、彼はロックンローラーであり、ロッカーではない。キース曰く、「ロック」というのはちゃんちゃらおかしいポップスで(口ずさんでいた曲もなんとなくアレだなぁと分かる)、自分がやるのは、あくまでも「ロックンロール」だと。それはトム・ペティも名言していたので、私の好みもそのあたりに範囲があるのだと確信するに至った。
音楽関係でなにか面白いものはないかと検索したら、2015年の作品、キース・リチャーズのドキュメンタリーがあった。題して “Keith Richards: Under the Influence” 当時ソロ・アルバムを作っていたキースに取材して、キースが影響を受けたものなどを中心に紹介する作品だ。
まず面白かったのは、オープニングがモーツァルトの「魔笛序曲」だったこと。キースの母親が音楽好きで、ポップスのみならず、クラシックも身近に聴いていたそうだ。
祖父のがこれまた音楽好きで、キースにギターを仕込んでくれたのはの有名な話。絵本にもなっている。そして大音量で鳴り響くブルース。キースが影響を受けたものとして、やはり一番多くの時間を割いているのはブルースだ。
マディ・ウォータースとチャック・ベリーのレコードを抱えた幼馴染のミックに数年ぶりに会ったキースが、すぐさま意気投合してバンドを作るという、有名なエピソード。このレコードそのものが非常に重要なのであって、もしこの時ミックが別のものを持っていたら、歴史は変わっていただろう。
キース曰く、アメリカのフォーク、ブルース、カントリーなどには、ケルト音楽の要素を感じるのだという。カントリーは当たり前だが、フォークやブルースというのは意外だった。
キースといえども、影響をうけた音楽はブルース一辺倒ではない。カントリーも好きで、グラム・パーソンズがその導き手になったくれたとのこと。そこで登場するのが、あのヌーディー・スーツだ。私がカントリーはダサいと思っている要素の一つで、あれを見ると背筋が痒くなる。キースもやや呆れ気味だったが、カントリー・ミュージシャンはワルが多く(それこそキースなんて可愛いもの)、かなりの変人が多いということを教えてくれた。
一つエピソードで面白かったのは、マディ・ウォーターズと、キース、ミック、ロニーが共演した時、さすがのキースも緊張してロニーと「何着る?何着る?」とうろたえたとのこと。二人で相談しての、白シャツにベストとなったそうだ。ミックはその場にいなかったらしく、ひどく浮いた格好をしている…ミックだからなぁと今までは納得していたが、やっぱり浮いている。
出演もしているが、当時キースのアルバムの共同プロデューサーを努めていた、スティーヴ・ジョーダンがとても印象的だった。さすがドラマー三大スティーヴの一人。すばらしいドラミング技術で、こういうドラマーになりたいと思わせる人だ。
キースは終始ゴキゲンで、ずっと笑っている。そしてずっとタバコを吸っている。この作品は11年前だが、今のキースも喫煙しているのだろうか。今でも生きていることが不思議なほど薬物とアルコールに耽溺した人物だが、ある人は「悪運が強い」のだと評していた。
悪運もそうだが、このゴキゲンなロックンローラーを見ると、人に愛されやすい人物で、その愛され加減が彼をこの世にとどめているのではないかとも思う。
そう、彼はロックンローラーであり、ロッカーではない。キース曰く、「ロック」というのはちゃんちゃらおかしいポップスで(口ずさんでいた曲もなんとなくアレだなぁと分かる)、自分がやるのは、あくまでも「ロックンロール」だと。それはトム・ペティも名言していたので、私の好みもそのあたりに範囲があるのだと確信するに至った。
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