Tom Petty & the Heartbreakers 50th Anniversary2026/01/05 19:49

 紙の年賀状は出さなくなって久しいが、年始の挨拶メールやメッセージ用に、毎年絵柄は準備している。
 多くの場合、ロックのデビューや発表からちょうど何年になるとか、干支にちなんだロックの曲、バンドなどが題材になる。
 ウマ、ウマ…なんだかピンとこないうちにとっくに年を越してしまった。あまりにも何も思いつかないので、ギリギリまで2018年にスパで優勝したフェラーリのセブにしよとしたほどだ。

 しかし、結局はトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズが1976年にデビューして50年になることに気づき、そちらを採用した。

 50年となると、感慨深い。トムさんも生きていればマイクと同じ76歳になっただろう。大規模なツア―はともかく、単発的なコンサートはいまもでやっていただろうし、もちろん新譜も発表していたに違いない。

 デビュー作 [Tom Petty & The Heartbreakers] はアメリカではそれほど話題にはならなかったが、その後のUKツアーを経てUKから人気に火がついた。
 私は、一番すきな TP&HBのアルバムを選べと言われれば、色々悩んだ末にこのファースト・アルバムにするだろう。なにせ、”American Girl” が入っているのだ。彼らのキャリアの中でも一番の名曲だと信じているし、毎回のライブを締めくくるにもふさわしい曲だった。
 そうか、”American Girl” も50周年なのか!こんな瑞々しく、鮮やかで、説得力のある曲が50年前という考えると、ロックの持つ普遍性を思わずにいられない。

Mike Cambplell and The Dirty Knobs in LA2026/01/12 19:33

 Heartbreaker’s Japan Party さんのメールマガジンによると、マイク・キャンベル&ザ・ダーティ・ノブズは去年のクリスマスに LA のユナイテッド・シアターでライブを行い、[Christmas All Over Again” をプレイしたとのこと。フロントマン亡きあと、物語の続きがあるバンド、それがトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズである。



 何が素晴らしいといって、スティーヴ・フェローニのドラムスである。前のドラマーさんも悪くはなかったが、桁違いの巧さである。特にこの曲は冒頭のドラムが特徴的なだけに、図抜けていることが分かる。
 マイクは相変わらずのトムさん憑依っぷり。マイクの自伝を読むと、初めて歌ってみようと試みたときから、自分の歌い方も歌声も、トムさんにそっくりであることを自覚していたとのこと。今となってはインタビューに答える喋り方、声もトムさんにそっくりなので、本当に特異なコンビだったと感心する。

 同日のライブでは、”Jammin’ Me” も演奏している。これの面白いところは、マイクがアコースティック・ギターに終始しているところだ。



 マイクのアコギのほかは、ベースと、キーボード、ドラムス。それだけで、これほどしっかりしたロックンロールをかっ飛ばすのだから、彼らの腕の良さが際立つ。
 それと同時に、ディランとの共作でもあるこの曲が、いかに根っからのロックンロールで、ほかにどうにもならない名曲だということだ。スクリーンにディランとのツアーのときの写真が映し出されるが、当時の若きロックンローラーたちの息遣いが再現されていて、とても素晴らしいと思う。
 ディランとマイクが奇跡の共演を果たしたのは、一昨年だったか。今年辺り、また何か一緒にやってほしい。YouTubeのウィルベリーズ映像がいったん下げられたりしているので、ウィルベリーズ関係でなにかあるのかもしれない。期待している。

Rafal Blechacz2026/01/27 19:45

 昨日、ミューザ川崎シンフォニーホールに、ラファウ・ブレハッチのピアノ・リサイタルを聞きに行った。
 普段、コンサートというと紀尾井やサントリーが行動範囲なので、ミューザは久し振り。こけら落とし公演以来ではないだろうか。

 実は、ブレハッチというと、せいぜい2005年ショパン・コンクール優勝者のポーランド人で、ご多分に漏れず道に迷うとバッハを弾くという以外、特に知識も興味もなかった。
 ただ、ある日職場の近くの道を歩いていると、このリサイタルのパンフレットが非常にきれいな状態で落ちており、それをじっと見てしまったので足を運んだというわけだ。

 端的に言って、すんばらしい演奏だった。ものすごく良かったと思う。
 プロのピアニストでさえ、ピアノはぶっ叩いてなんぼという向きがあるのだが、この長身痩躯の青年 ―でもなくなったか。20歳で優勝してから20年経っている ― は、実に力の抜けた、静かで、柔らかな指使いでベートーヴェンの厳格さも、シューベルトの繊細さも幅広く表現しきっていた。
 「月光」は挨拶代わりというところだろうか。シューベルトの即興曲がまた良かった。特に 3番 の美しさがぐっとくる。シューベルトは敬遠している私だが、次に練習する曲候補の第一位に躍り出た。
 ブレハッチの演奏で紹介したいところだが、動画がなかったので、ここはホロヴィッツ御大にご登場いただこう。



 ここまでが前半。後半はショパンづくしである。舟歌、バラード3番、マズルカ3曲、そしてスケルツォの3番である。
 可笑しかったのが、聴衆の反応が前半とはまるで違っていたことである。ショパンを弾くと俄然、大盛り上がりで拍手も大音量だ。20年前とはいえ、ショパン・コンクール優勝者だから、ショパンの受けが良いのは当然なのだろう。そもそも、ピアノのリサイタルに来るような人は最初からピアノ好きであり、すなわちショパン好きなのだ。
 自分も弾いたことがあるバラードとスケルツォも良かったが、一番印象に残ったのは舟歌だ。これは私が憧れている曲でもある。一度先生にやりたいと言ったら、先生自身も師匠に習っていないからという、分かるような分からないような理由で断られたことがある。ブレハッチの素晴らしい演奏 ― とにかく優雅 ― を聴いた今、再度トライする価値はあるかもしれない。



 万雷の拍手を受けて、アンコール。さすがに他の作曲家だろうと思ったら、なんとショパンのワルツ7番だったので、ちょっとびっくりした。ちなみに、7番は私が生まれて初めて弾いたショパンである。そういう思い入れもあって、とても良い経験となった。



 最近は、ポリーニ、ブレンデルと相次いで巨匠が亡くなったピアノ界。これからブレハッチの全盛期を迎えるのだろうか。とても楽しみだ。