Echo in the Canyon (in a Theater)2022/06/14 19:50

 バクー。フェラーリに期待した私が、やっぱり馬鹿でした。
 セバスチャン、6位おめでとう!

 先月から日本でも公開となった映画 [Echo in the Canyon] を劇場で見てきた。既にブルーレイで見ていたのだが、やはり日本語の字幕がつくと理解の度合いが違うので、とても助かる。
 映画そのものは、とても良い。お薦め。1960年代ロックンロール・ミュージックが好きな人、それに影響を受けた人(トム・ペティとか)が好きな人にも、楽しめる内容だ。
 そして誰よりも、ジェイコブ・ディランのファンのための映画である。



 かといって、「これは大傑作!音楽ファンとして必見!」と太鼓判を押せるほどでは…ないような気がする。どこか中途半端なのだ。
 例えば、ビートルズやストーンズ、ボブ・ディランなら何十時間というドキュメンタリーを作ることが出来るし、実際いくつも作られている。トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズだって、それなりのキャリアの長さと音楽の一貫性があるので、数時間のドキュメンタリーができるわけだ。
 しかしザ・バーズのドキュメンタリーはどうだろう。2、3時間の長さのあるドキュメンタリーはあるだろうか?バッファロー・スプリングフィールドは?CSN は?ビーチ・ボーイズは?ブライアン・ウィソンの生涯をドキュメンタリーにするのは可能だが、BB ではどうだろう。
 あの1960年代末期に、ローレル・キャニオンに集まったミュージシャンたちが、影響を与え合いながら、素晴らしいものを作りあげたという、核になるコンセプトがあるのだが、各ミュージシャンの音楽への視線が浅く、よく言えば初心者向け、もしくは事情が分かっている人向け。悪く言うと、なんかうすっぺらい。
   その弱点を、ジェイコブ・ディランという絶妙な立ち位置にいるミュージシャンを軸にしてインタビューとセッション、コンサートを行って補完するのだが、これまたやや中途半端。映画でのライブシーンでは、かなり盛り上がったように思えたのだが、サウンドトラックは「ライブ・アルバム」という体裁ではないので、なんだかだらけていえて、映画で感じた熱量が無く、がっかりするのだ。[Concert for George] や [George Fest] といったような完成度も見えないので、消化不良と言うしかない。

 いっそのことバーズと、CS&N、BSF だけに話を徹底的に絞った方がよかったのか。トリビュート・ライブをもっと掘り下げて、ジェイコブと仲間たちが、いかに「伝説」へ挑戦したかを追求しても良さそうだ。
 私個人としては、トムさんの最後のインタビュー動画であり、それだけでも感謝しなくてはいけないのだろうが、ここはやっぱり、リッケン「バッカー」を持ったトムさんが、ジェイコブと並んでバーズの曲を歌ってくれなきゃ。やってくれてたら、鼻血を出して感動ただろう。やっぱり惜しい。

 映画の本編とは関係ないが、鑑賞した映画館は良くなかった。画面は小さいし、音も貧弱。これだったらイヤホンつけてパソコンで鑑賞した方が良かった。
 ブルーレイは持っているので、もう一度見直してみるのが良いかも知れない。