GH:LITMW (5回目)- ディケンズのこと2011/12/12 22:23

 ジョージの映画「ジョージ・ハリスン:リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド」を観賞、5回目。これで有楽町は3回目となった。前回まで見られた、エンドクレジットで音声が切れる現象が解消していた。
 同じ映画をこの短期間に、スクリーンで5回観賞となると、さすがにちょっとおかしいのではないかと思い始めたが、やはり気のせいだ。超美男子のジョージが、巨大スクリーンに大写しになり、ジョージの名曲の数々を観賞し放題なのだから、何度でも見たくなる。当然だ。
 いくつかの映画館では、まだ上映しているし、年明けの上映もあるようだ。DVDも良いが、是非とも大きな画面と音で楽しんで欲しい。

 さて、最初に映画を見たときから気になっていたことがある。ディケンズのことだ。

 ジョージとポールは同じ中学校の出身だというのは有名な話。よく「リヴァプール・インスティチュート」と呼ばれるが、正式にはLiverpool Institute High School For Boys ― 基本的に、小学校を卒業した、11歳から18歳の少年達のための学校だ。ジョージが中退したことは知っているが、ポールはどうなのだろうか。私の認識では彼もハンブルグ行きを機に中退したと思っているのだが。
 ともあれ、ポールによれば、この学校は古い伝統があり、まさに「ディケンズの世界のような場所だった」と言うのだ。

 チャールズ・ディケンズ(1812-1870)。ヴィクトリア時代に活躍した、英国の国民的作家である。
 私は別に特に彼に興味があるわけではない。ただ、子供の頃、「デイヴィッド・コパフィールド」を読んで、それが印象的だった。色々、期待を裏切られたからだ。デイヴィッドが可愛いだけで超役立たずな女と結婚したときには、心底憤慨したし(そりゃ、アグネスの方が良いに決まってるでしょ!第一、アグネスだって十分綺麗なんだぞ!)…もっと憤慨したのが、デイヴィッドの友人ジェイムズ・スティアフォースの扱いだった。良きお兄さん親友キャラだと思ったのに!…それはともかく。
 「オリヴァー・ツイスト」や、「クリスマス・キャロル」、「二都物語」などが有名なディケンズの作品には、貧困に喘ぐ労働者階級の子供達や、虐待が常態化している学校が登場する。ポールが言いたいのは、そういう色々大変で古風な学校という意味のようだ。

 さらにポールが言うには、リヴァプール・インスティテュートで、「実際にディケンズが教えたこともある」とのこと。ここでポールが英語でどう言っているのかは改めて確認する必要があるが、ともあれ日本語字幕はそうなっていた。
 私はここで、はてと思った。ディケンズは教師をしていたことがあるのだろうか?ディケンズは苦労続きだった少年時代を経て、法律事務所の事務員、速記者、そしてジャーナリスト、人気作家となるのだが、その間教師をしていたことはない。
 調べてみると、正確には、ディケンズはリヴァプール・インスティチュートで教えていたのではなく、講演をしたことがあるのだ。
 1838年発表の「オリヴァー・ツイスト」以来、人気作家となったディケンズは、自分の経験や、時流のせいもあって、貧民に対する慈善事業や、職業学校創設への取り組みに熱心だった。チャタムや、バーミンガム、レディングなどの職業学校創設への貢献とともに、リヴァプール・メカニックス・インスティテューションの運営資金集めの講演にも協力している。このリヴァプール・メカニックス・インスティテューションこそが、ジョージとポールの母校であるリヴァプール・インスティチュートのことだ。
 ディケンズが実際にこのリヴァプール・メカニックス・インスティテューションにおいて講演をしたのは、1844年2月のこと。彼はこう述べている…が、ディケンズの言葉を翻訳するのは勇気が要るので、原語のままにしておく。

"Every man who has felt the advantages of, or has received improvement in, this place, carries its benefits into the society in which he moves, and puts them out at compound interest, and what the blessed sum may be at last, no man can tell"

 ディケンズは職業学校において技術と知識を身につけた少年達が、社会に貢献し、自立することを奨励している。彼の健全な夢は、その後たくさんの実を結んだことだろう。
 その一方で、彼が寄与した学校をサボってばかりで、しかも中退してしまうような不良少年が、その世紀の文化を一変させてしまうような凄いことをしでかそうとは、さすがのディケンズも想像できなかったに違いない。

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