Mike Campbell’s Life After Heartbreak2018/10/06 21:53

 珍しく、マイク・キャンベルが日本語のニュースに載っている。彼が加入した、フリートウッド・マック関連の記事だ。
 曰く、トム・ペティが亡くなって、もう大舞台に立つことはないだろうと思っていたマイクは、今年の誕生日にマックへの加入を打診され、それが現実となった。しかも、ライブでトム・ペティの名曲 "Free Fallin'" を演奏することになる。マイクは躊躇したが、スティーヴィー・ニックスが説得したのだと言う。

スティーヴィー・ニックス、トム・ペティの曲をプレイするようマイク・キャンベルを説得

 この記事、面白そうなので原文の Rolling Stone も見てみた。

Mike Campbell’s Life After Heartbreak

 色々な意味で、胸に迫る内容だった。一部を訳してみる。

 マイク・キャンベルは、彼のバンドリーダーであり、50年来の親友であるトム・ペティが病院に緊急搬送されたという、知らせのあった早朝のことを語っても、泣くことはなかった。あの恐ろしい出来事の一週間前に行われ、ソールド・アウトになったハリウッド・ボウル公演の事を思い出しても泣かないし、さらにトム・ペティが死を迎えようとする病院で目にしたことを語った時も、泣きはしなかった。
 キャンベルは言う。「彼は髪をきちんとしてもらっていた。医療器機が取り付けられ、まったく動かなかったけれど、でもまるで天使のようだった。」
 しかし、ハリウッド・ボウル公演の後の事を思う時 ― つまり、キャンベルがペティと最後に話したときのことを思うと、その様子が変わった。ジョン・レノン風の紫色のサングラスの後ろで、キャンベルの両目に涙が浮かんだ。
 「ぼくらは互いに、愛してるって言葉を交わした。」


 インタビュアーは、マイクにあの日のこと、死を迎えようとするトムさんの事を訊いたのだ。私だったら、とても訊けない。知りたいようで、マイクの胸にしまっておいてあげたくもある。
 その一方で、トムさんとマイクが、最後に ― きっと何気なく ― 「愛してる」って言ったことを知ることが出来ると言うことは、私たちファンたちにとっても救いだ。

 初めてトムと出会い、即バンドメイトになった有名なエピソードや、マイクが引退したらハワイのカウアイ島に住もうと思っているなどと言った話題のあとに、彼はこう言う。

 「友情以上のものだった。ほぼ運命的であり、ぼくらを巡り合わせたのは、神の意志だったのかも知れない。もしトムがぼくをバンドに誘わなければ、ぼくらの人生はまったく違っていた。」

 鎮痛薬の過剰摂取というトムの死因を念頭に、痛みを抱えたまま彼がツアーを続けた事についての、難しい話題にもなっている。
 確かにトムはツアーをキャンセルして、治療に専念すれば、去年のあの日、突然世を去ったりしなかったかも知れない。でも、マイクは後悔はしていないようだ。

 「ぼくはトムに確認するために、『大丈夫か?』と尋ねた。すると、あいつは決して『死にそう、無理!』とは言わなかった。悪くて『ちょっと気になるけど、ショウは大丈夫だ』という言う程度だった。表情には喜びが溢れていたし、ぼくはもう心配するのはやめることにした。」(中略)
 「トムがこうと心に決めたら、誰も何も言えない。『病院にいった方がいい』なんて言われても、『F*** y**, ツアーは絶対にやる』と言うに違いに。誰にも止めさせることなんて、出来なかった。」


 この話題になると、マイクも辛そうな表情になる。でも、インタビュアーに対して、こう言い切った。

 「いまさら後悔して、どうなる?トムは自分が望んだとおりにしたってことだよ。そしてぼくらは彼をバックアップしたんだ。彼のためにその場にいたんだ。彼は彼自身の人生を生きていた。きみを責めるわけじゃないけど。トムはあの最後のツアーを愛していたんだ。(中略)
 トムだって人間だ。起こってしまったことは、仕方がない。大事なのは、音楽だ。」


 大事なのは音楽だ。
 生きた人間としてのトム・ペティはもういないけれど、音楽は残り、聴くたびに新たな感動を呼び起こす。これから新たなファンも増えるだろう。
 マイクは、トムとの長い、長い ― あまりにも長くて、永遠かとも思えた青春が終わり、新たな環境に身を置いている。
 最後には、こうある。

 キャンベルは最近、ザ・フォーラムでの ELO のコンサートに行ったときのことを思い出していた。そこでは、開演前の音楽として、[Full Moon Fever] の曲が流れていた。
 「あの大きな場所であれらの曲を聞くと、呆然とする思いだった。」キャンベルは言う。その瞳にはまた涙が浮かんだようだった
 「あの曲をぼくらは一緒に作った。ぼくらは共に夢を生きていたんだ。」


 ありがとう、マイク。つらい思いを抱えながらも、インタビューに答えてくれて。こうして話してくれること、そして何よりもトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの音をさらに送り出してくれることで、ファンはとても救われている。