Hard Rain2014/08/14 07:00

 先日の、[Hypnotic Eye] リスニング・パーティー(二次会)で、ディラン好きな参加者さんと色々話した。このハートブレイカーズ・ファン・コミュニティの良いところは、ハートブレイカーズ以外の好きな音楽についても(音楽でくても)気軽に、楽しく話せる仲間が集うところだ。

 話題の中に、何度か [Hard Rain] が出てきた。曲名ではなく、1976年のライブアルバムの方。
 先月の発売来、[Hypnotic Eye] しか聞いて居らず、そろそろ何か別のものを聞こうと思うのだが、何を聞けば良いのかと考えていたところで、これは良いきっかけだとばかりに、[Hard Rain] を聞いている。



 ディランのライブ・アルバムの中でも、とりわけ好きなのが、この[Hard Rain]。
 今は2002年に発売されたブートレグシリーズ Vol.5:Rolling Thunder Revue があるので、ちょっと微妙な立場に立たされているアルバムだが、私にとっては、Vol.5 では補えない良さが詰まっている。
 もちろん収録曲目が違うというのもあるが、[Hard Rain] の短さ、コンパクトさ、熱を押し込めた感じが、Vol.5 の方にはない。ライブ・アルバムという体裁において、曲目が多ければ良い、ライブを完全収録すれば良いというわけではないと、この [Hard Rain] は実感させられる。

 録音媒体として売るとき、録音媒体としての作品とするとき、大事なのは完全な網羅性なのか?曲数の多さなのか?私にはそうは思えない。ライブというものは、やはりライブ会場その場にいることにまず価値がある。ライブ・アルバムはライブの再現も一つの目的ではあるが、それとはまた別の作品としての出来の良さ、形もある程度追求しても良いのではないだろうか。
 クラシックの世界では、「伝説の演奏会」の「完全収録」と称して、指揮者が入場する足音、観客のくしゃみ、咳ばらいなどなど、そういうものも有り難く収録していることを謳っているものもあるが、これは私の理解を超えている。
 おそらく、私のこの意見は少数派だろう。私が多少なりとも演奏する機会のある人間であり、常にその演奏に対して失望しているということも影響しているかも知れない。

 ともあれ、[Hard Rain] は最初から最後まで大好き。
 あのバタバタした、それでいて勢いがあって、ぶっきらぼうで、情熱的なアレンジが、どの曲にもよく合っている。原曲の雰囲気から遠く離れてはいても、このライブバージョンの方が好きだという曲も多い。
 冒頭の "Maggie's Farm" からもう完全にやられたという感じだし、"One Too Many Morning" はこのハードなバージョンが一番好きだったりする。"Stuck Inside Of Mobile With The Memphis Blues Again" の格好良さは言うに及ばないだろう。あのドラムの威勢の良さ、テンションの高さ、ロックの生き生きとした疾走感 ― 大好きな、ロックのディラン。

 これからディランを聞こうという方は、ブートレグシリーズのVol.5 も良いが、ぜひとも [Hard Rain] も欠かさずに観賞して欲しいものだ。