Walk Away Renée2014/07/03 21:47

 前回の、ディラン様ラジオこと [Theme Time Radio Hour] のテーマは、"Walking"。
 1966年レフト・バンクの "Walk Away Renée" がとても印象的だった。
 私はこの曲を、先にフォー・トップスのカバーで知っており、寡聞にしてもともとレフト・バンクの曲だとは知らなかった。いかにもモータウンの作曲チームが作りそうな良く出来た曲だと思っていたのだ。

 まずは、ディランが流したレフト・バンクのオリジナルから。



 曲は完璧というほどの素晴らしい作品でありつつ、ヴォーカルはかなり弱いという対照性が面白い。しかもコーラスもかなり怪しい。
 しかし、この不完全性がロックンロールの良さでもある。遠い存在ではない、近所の少年達のような親近感と、素晴らしい音楽の取り合わせが、ロックが人々の心を掴む要素なのだと思う。ロックが、クラシックのような完璧な技術の音楽だったら、これほど魅力的ではなかっただろう。

 このレフト・バンクの "Walk Away Renée" は、ディラン曰く「天才少年」だったマイケル・ブラウンが主な作曲者。当時、なんと17歳だったというのだから驚きだ。彼はバンドメイトの恋人だったレネに恋をして、その感情がこの曲に昇華されたのだと言う。つまり、"Layla" のティーンエイジャー版か。

 ハープシコードや、フルートなど、普通ロックでは用いられない楽器を使っているので、「バロック・ロック」なるジャンル名まで出来たらしいが、「バロック音楽」の神髄はポリフォニー(多声音楽)だと思っている私には、あまりピンとこない。フルートのメロディの下で、ハープシコードは分散和音を弾いているだけではないか。その点で言えば、ビートルズの "In My Life" のほうがよほど出来が良い。
 「バロック」かどうかはとにかく、ロックに上手く他ジャンルの楽器を用いた好例といったところだろう。

 さて、私が先に聞いていたのが、このフォー・トップスのカバー。レフト・バンクが発表した翌年、アルバム [Reach Out] に収録されている。



 さすがにヴォーカルの素晴らしさは比べようがない。コーラスはもちろん完璧だし、リード・ヴォーカルの情熱的な表現も素晴らしい。
 オーケストレーションは、ハープシコードにフルートなどという可愛らしい編成で許されるはずもなく、ぶあついストリングスに、ソロはトランペット。ゴージャスで感動的。私はこのヴァージョンを先に聞いているだけあってこちらも大好きだ。

 一方、2006年にリンダ・ロンシュタットと、アン・アヴォイが彼女たちのアルバムに "Walk Away Renée" のカバーを収録したとのことで、聞いてみたのだが、これはイマイチ。
 優しく穏やかな演奏ではあるが、悲壮感や苦しみが抜けてしまい、端正すぎて面白くない。レフト・バンクのあのヨレヨレ加減からあまりに乖離すると、この曲の良さは失われるのかも知れない。

Mozart: Piano Sonata F-dur K. 533/4942014/07/06 20:02

 ピアノの発表会がある。
 今回は、モーツァルトのピアノソナタ。どうも最近、ピアノの発表会というとバッハかモーツァルトしか弾いていないような気がするが…。ショパンやシューマンが弾けないわけではないが、人前で弾くとなると、自分に向いているものを選ぶ。

 ケッヘルというモーツァルト楽曲の作品番号があり、今回弾くF-durのソナタは533と、494という二つの番号がついている。
 ケッヘル番号の振り方にもいくつかの版があるため、複数のケッヘル番号が振られる場合があるが、このF-durに関しては、事情が違うらしい。なんでも、第一・二楽章と、第三楽章は作曲時期が異なり、それぞれに533と、494と別のケッヘル番号が割り振られているために、複数表記になるそうだ。

 私が今回弾くのは、第一楽章のみ。全楽章弾くほどの体力がない…
 そもそも、この曲はモーツァルトのソナタの中でも難しい方だろう。私は第一楽章の譜読みをするだけでもいくらか時間がかかり、まともに弾けるようになるまでもそれなりに苦労した。モーツァルトには、技術的には比較的易しい曲もあれば、彼自身や弟子達のためのいくらか難し曲があり、この曲は後者と思われる。
 今回は発表会ということでなんとか暗譜したが、さてうまく行くかどうか。

 お手本としてまず聞いたのが、モーツァルトと言えばこの人。内田光子さんの演奏。



 猛烈な速さ。その一方、意外とテンポを揺らしているのが面白い。ほとんとペダルを踏まず、軽やかで、乾いた緩急。この粒の揃い方はさすが…というか、超人的。

 こちらは、全集も出しているダイニエル・バレンボエム。



 これまた猛烈な速さに、ベートーヴェンかと思うほどのダイナミックな威勢の良さ。内田さんに比べると、いくらかネットリとしたタッチだ。第一楽章フィナーレの華やかさはもの凄い。

 どちらも魅力的だが、どうせ真似はできない。この二人の中間あたりの雰囲気をイメージしつつ、最後の練習にいそしんでいる。

London - Japan2014/07/09 21:28

 本題に入る前に、きょうのギタリスト。
 先週末のF1ブリティッシュ・グランプリでのひとこま。



 スタートでおいてけぼりを食ったフェリペ・マッサ。やっと追いついたと思ったら、キミ・ライコネンのマシンが吹っ飛んできた!
 (キミの無線第一声は「フェリペは大丈夫か?」だったそうだ)
 マッサは大丈夫だったけど、マシンはだめ。赤旗で1時間の中断。再スタートを待つ間、レースが終わってしまったマッサはパドックで浮かない顔をしている。
 その隣で、やたらとスマホをいじっては、上機嫌そうにしきりとマッサやジャン・トッド(FIA 会長)に話しかけるエリック・クラプトン…なんか…空気が読めてないかも…?

 前回のディラン様ラジオこと、[Theme Time Radio Hour] のテーマは、"Around the World Part 1"。

 いろいろな国に関する曲が流れたが、ロックの本場のひとつであるロンドンに関する曲もあった。
 その一つが、有名なウォーレン・ジヴォンの "Werewolves Of London"



 ドラムとベースは、ミック・フリートウッドと、ジョン・マクヴィーの二人とは、知らなかった。

 続いて、ディランはポーグスの "Dark Streets Of London" を流したが、ロンドンのストリートとなれば、私はやはりこちらだな…



 番組の終盤、オランダから電話をかけてきたナタリーが、日本に関する曲をリクエストするが、そこでディランはバック・オーウェンズの "Made In Japan" を流した。
 残念ながら、ピーター・バラカンさんによる日本語での解説には取り上げられなかった。せっかくなのだから取り上げて欲しかったのだが…曲がちょっとイマイチだからかも知れない。日本を意識したメロディのつもりなのだろうが、ちょっと違う。
 曲が終わったあとディランは、能の囃子をバックに「様々なテクノロジーや、文化を誇る」と日本を紹介している。

 せっかくなので、ここで「日本」に関する曲をひとつ。
 ラルフェ・バンドの "Woman of Japan"。大好き名曲だ。もっとも、「顔のない老婆がぼくの名前を呼ぼうとする 彼女が言うには スペインの公認会計士に刺されたばかりだと」…というナンセンスな曲なので、別に日本が特に重要な要素でもなさそうだが。

Dead Parrot Sketch2014/07/12 19:47

 モンティ・パイソンの再結成ライブが7月1日からロンドンのO2アリーナで開幕した。前半5公演が終わり、来週から後半の5公演が行われる。相変わらずジョン・クリーズがピンクの衣装でアホウドリを売っているらしい。
 私も見たくて仕方がない。幸い、最終日の様子を、NHKが8月24日と31日にBSで放映してくれるそうだ。

 いまや「ミック・ジャガーの呪い」で話題沸騰のミックも、パイソンのライブ宣伝に一役買っている。チャーリーも一緒。



 よりよって、サッカーを見ているミックとチャーリー。ミックが応援しているだけあって、負けているらしい。そこへ、スタッフが明日のショーのセットリストの打ち合わせにやってくる。
 「そういや、パトリックはどこいったんだ?」とミックが尋ねると、O2アリーナでのモンティ・パイソンのライブを見に行ったという。すると、「シワシワ連中が束になって金儲けかよ」とけなすミック。「人のこと言えるか」という表情のチャーリー。
  さらに「70年代は面白かったけどなー」とけなすミック。
 とにかく、セットリストの相談。オープニングはどうする?と訊かれて…
 「みんなが知っている曲がいいな。"Let's Spend the Night Together" か、"Satisfaction" か…」
 「Dead Parrot sketch(死んだオウムのスケッチ)は?」
 「そうだな、Dead Parrot sketch...」

 ストーンズ、死んだオウムのスケッチをやってくれるそうです。

 では、ここでオリジナルの「死んだオウムのスケッチ」。お客はジョン・クリーズ。ペットショップの店員はマイケル・ペイリン。駅員はテリー・ジョーンズ。そして最後に登場する「下らんスケッチを取り締まる軍人」は、今は亡きグレアム・チャップマン。



 この店で買ったオウムが死んでいるとクレームしにきたお客。しかし店員は「寝てるだけ」と言い張る。散々死んでいるということを分からせようと、あの手この手。
 「これは、元オウムで、故オウムで、お亡くなりになり、くたばり、創造主の元に召された、こういうのを死んだオウムという!止まり木に止まっているように見せて、実際は釘で打ち付けてあった!」
 ここまでしないと、客のクレームにまともに対応しようとしないという、英国の横柄な店員をネタにしたというわけ。日本ではなかなか想像しにくいところだ。

 ストーンズでこれをやるなら…やはり客はミックだろう。ノラリクラリと言い逃れる店員は…ロニーかな。あの癒やし系の笑顔で「いや、寝てるだけ。きれいな青でしょ…あ、動いた」とかやられたら、心底腹が立つ。

 パイソンのライブもあと5回。同世代のストーンズと同じように、最後まで元気に頑張ってほしい。

Fault Lines2014/07/15 21:42

 日本時間の明日の朝、アメリカ・メジャー・リーグのオールスター・ゲームが開催されるが、その中継でトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの新譜 [Hypnotic Eye] の曲が使用されるという。
 放映は、FOX Sports など。

Tom Petty & The Heartbreakers Provide Musical Soundtrack for 2014 MLB ASG

 日本での放映はNHK BSなのだが、どうだろう。普段、メジャー・リーグの中継もよく見るが、あちらが被せる音楽は殆ど流れないと思うのだが。
 ともあれ、アメリカのファンたちが羨ましい。

 現地のFOX Sports は見られなくても、[Hypnotic Eye] の先行公開曲のダウンロードはできる!
 今回の曲は、"Fault Lines"。Highway Companion Club の特典。



 ちょっとびっくりするような曲であり、しかも格好良い。この曲、トムさんの曲なのだろうか?ハードなギターリフは、マイクが作り出したように聞こえる。
 これまでのどのTP&HBの曲とも違う、ものすごく独特な曲調。これはさらに聞き込まなければ。ここに来て、急にまったく知らないTP&HBの一面を見たような気がして、ドキっとする。

 そんなTP&HBの新しい写真が公開された。



 ななななな何ですか、この ラブラブ くつろぎ写真は!
 けしからーん!けしからんぞ、このもっさりオヤジーズめ!かわいいじゃないか!
 この時点でこのアリサマでは、先が思いやられるぞ。どんなラブリー大作戦でアピールしてくるのか…?!よぉし、どんと来い!いつでも大歓迎だ!

Tom Petty Still Won't Back Down2014/07/18 20:31

 トム・ペティが[Men's Journal] という雑誌の表紙をかざり、インタビューも載っているというので、早速読んでみた。
 「男性誌」なので、タイトルの上にナニヤラ書いてあるような気がするが、気のせいにする。

 Tom Petty Still Won't Back Down



 トムさんのビジュアル・チェーック!!
 うーん。そうね。まぁ、一応合格点だけど。[MOJO] の時の奇跡的なビジュアルと比べるとやや劣るかなぁ。もみあげからあごひげラインをあまり太くしてほしくないのですよ。ニール・ヤング化は避けたい。

 八つのコメントが載っており、なかなか面白い。

スポーツ・ファンになるのに遅すぎることはない
 ぼくはずっと、どんなスポーツにも興味がなかった。ところが、10年前に突然、プロ・バスケットボールが好きになった。(いまや熱狂的なレイカーズ・ファン)


 ここ数年、バスケット観戦をするトムさんの写真というものを見ることがある。
 家族と一緒の観戦だったりするのだが、あるときマイクと一緒に見ている写真も出てきた。その写真を見たとき、とても不思議な感じがした。トムさんとマイクが音楽以外の ― いわば、プライベートな場面で、一緒に居るのを、見慣れていないせいだろう。ギターさえ持っていれば、この二人が何をどうしていようと、どんなにとんでもないことをしていようと受け入れられるのだが、全く音楽の要素のない二人のショットはなんだか不思議だった。

許すことを学ぶ
 きっと、人が究極に行き着くところまで行くと、人生のいかなるものに対しても、許す気持ちを持てるようになるのだと思う。許す。そこにたどり着いたのだと思うんだ。もし、人を許せなくても、そんな自分自身を許せるようにね。


 むむ。これは深い。でもきっと、ロックンロールなトムさんは、とんんがった所も失わないのだろう。新譜からの数曲を聴いても、そういう鋭い雰囲気は失いっていない。

ウィルベリーズはもっとやれば良かった
 (ウィルベリーズで)もっとやらなかったのは、もったいなかった。ぼくはよく言ってたんだ。「バット・シグナルみたいにでっかい W の字を照射して、登場するんだ」って。


 「バット・シグナル」というのは、バット・マンに助けを求めるために、夜空にバット・マン・マークをサーチライトで描き出すサインのこと。それのウィルベリーズ版だそうだ。ジョージだったら面白がっただろうな。あの5人が颯爽と登場したら、いかなる悪もウィルベリーズファンになって、ハッピーな世界になるに違いない。

 最後にトムさんは、「年を取るのは悪いもんじゃない」と言っている。
 人は誰しも、死に向かって生き、老いていく。ほかに選択肢が無い以上、それは確かに悪いことのはずがない。きっと良い事なのだ。シニカルな考え方だけど、結局ポジティブで格好良いトムさん。

 来週は、LAの某所で「タウンホール・ミーティング」なるものがあり、トムさんがファンたちからの質問に答えるとのこと。そうだな…いかにして、良いバンドメイトと出会い、いかにして彼らと長くつきあうのか、トムさんなりの説明が聞きたい気がする。もっとも、答えのない問いかも知れないが。

Muscle Shoals2014/07/21 16:47

 映画 [MUSCLE SHOALS] (邦題「黄金のメロディ マッスル・ショールズ」)を見た。



 アラバマ州北部,“歌う川”テネシー川のほとりの田舎町マッスル・ショールズのスタジオで生まれた数々の音楽を追うドキュメンタリー。

 そのきっかけとなったリック・ホールがまず印象的だ。簡単に言えばマッスル・ショールズに FAME Studio を創立し、凄腕のセッションマンたちを組織し、数々の名録音を生み出した男だが、その人生 ― 家族をめぐる運命は過酷なものだった。
 スタジオでのホールは、妥協を許さないボスであり、絶大な信頼を寄せられ、人種を越えた笑顔と名作を生み出す元になった人だが、農場での作業をするとき、過酷な体験を語るとき、どこか人を受け入れない峻厳な孤独を感じさせる。

 まずホールの 「フェイム・スタジオ」が成功し、数々の名録音を生み出した後、そのスタジオ・ミュージシャンたちがここから独立し、「マッスル・ショールズ・サウンド・スタジオ」を創立する。つまり、このドキュメンタリー映画に登場するのは、二つのスタジオなのだ。
 ストーンズやトラフィックが録音するのはこの後者だし、ディランの [Saved] が録音されたのも、後者だ。
 この、扱われるスタジオは二つあるという点が、予告編や映画の紹介記事ではわかりにくいかも知れない。「マッスル・ショールズ」は「町」であるという点が重要だろう。この映画を見れば、「マッスル・ショールズ」というと、リヴァプールや、ニュー・オーリンズ,ナッシュヴィル,人によっては(←私)ゲインズヴィルのように、「音楽を生み出す町」として認識されるようになるだろう。

 ロック・ファンである私には、やはりデュエイン・オールマンのエピソードが面白かった。コメントするグレッグは、相変わらずの兄貴大好きっぷりを発揮している。ただし、セッションマンとしてしばらく過ごしたしたデュエインではあるが、オールマン・ブラザーズ・バンドに関して、マッスル・ショールズは「逃す」ことになった。
 レーナード・スキナードも、やや惜しい展開だった。"Free Bird" は間違いなく名曲だが、映画で使用されたライブでのイントロのピアノの弾き方はちょっといただけない。せっかくの名フレーズなのだから、もう少し丁寧に、美しく弾くことも出来るはずだ。

 「フェイム・スタジオ」から独立し、「マッスル・ショールズ・サウンド・スタジオ」を創立するセッション・マンたちは、「スワンパーズ」と呼ばれ、レーナード・スキナードの "Sweet Home Alabama" に "Muscle Shoals has got the Swampers(マッスル・ショールズにはスワンパーズがいる)" と歌われる。
 この「スワンパーズ」の名づけ親として、突然デニー・コーデルの名前が出てきたので、びっくりしてしまった。
 レオン・ラッセル1971年のアルバム [Leon Russell & The Shelter People] のプロデューサーはデニー・コーデルだったわけだが、一部の曲はマッスル・ショールズ・サウンド・スタジオで行われ、そのスタジオ・ミュージシャンが録音に加わっている。
 このアルバムの曲はほかにもロンドンやハリウッドでも行われており、それらのミュージシャンとの区別として、マッスル・ショールズのミュージシャンたちを、コーデルが「スワンパーズ」と名づけたということらしい。
 名づけ親が誰であるにしろ、"Sweet Home Alabama" こそ、この映画で一番の聴きどころだろう。一番感動的であり、聴きごたえがある。もっとも、この曲の録音はジョージア州であり、マッスル・ショールズではないのだが…



 私がもう一つ、非常に感動したのは、クラレンス・カーターの "Patches"。こちらはフェイム・スタジオでの録音。リック・ホールの父親への想いとエピソード、映像も相まって、もっとも感動的なシーンだった。



 ストーンズの登場は、遠いところからオシャレな坊やたちが突然やってきた感じで、面白かった。そしてあっという間に去ってゆく。
 マッスル・ショールズのミュージシャンたちは、むしろトラフィックの手法に感銘を受けていた。とはいえ、トラフィックと一緒にツアーに出たことに関しては、やや複雑な感触もあるが。

 最後に、アリシア・キーズがディランの "Pressing On" を演奏したのが印象に残った。
 ディランのアルバム [Saved] の評判は一般に芳しくないが、私は大好きなアルバムだ。このアルバムも、マッスル・ショールズ・サウンド・スタジオで録音されている。

 映画館は満員。男性率の高さが半端なかった。音楽好きならぜひ見てほしい、おすすめ映画だ。

I Feel Fine2014/07/24 20:53

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの新譜 [Hypnotic Eye] の発売が来週の火曜日(アメリカ時間)に迫り、なんだかもう、いろいろ大変。
 インタビューの動画だの、雑誌の記事だのが続々と攻めてくるし、最初は1曲、続いて2曲、さらにもう1曲と先行発売するし、しまいには全曲がネット上で試聴できたりする。
 先行販売にはなっていない "All You Can Carry" という曲がもの凄く格好良くてしびれる。

 既にいっぱいいっぱいなのに、さらにジョージの [Apple Years Box] が発売されるという情報まで乱れ飛び、ああああああもうどうすれば良いんだ!!
 ピアノの発表会は終わっても、アイリッシュ・セッションが迫っているし。

 混乱のあまり、[Hyonotic Eye] の予約状況を自分で把握していない。アメリカ版と日本版を買うのは決めてあるし、iTunes でも買う気なのだが…昨日、Warner から「CDを発送しました」というメールが来た。
 あれ?
 そうか、ファンクラブ特典だ。慌ててアメリカ版の予約をキャンセルしたり。一方でJJ・ケールのトリビュート・アルバムを予約するのを忘れていたり。

 マイクが新譜の曲全てについてコメントしているインタビューが面白い。
 "Fault Lines" の印象的なリフとリズムは、レイ・チャールズの "What'd I Say" によく似ているとのこと。



 マイク曰く、「ビートルズの "I Feel Fine" はこの曲のリズムから来ているって、ジョージが言っていた。」
 おおぅ!出ました、放っておいても「ジョージ」と言うマイク。好き。大好き。

 Wikipedia を見ると、リフに関してジョンとジョージは、ボビー・パーカーの "Watch Your Step" に影響を受けていると言っているそうだ。



 こうなると、必然的にビートルズが聞きたくなる!ビートルズを聞いている場合ではないのだが!しかしビートルズまでもが攻めてくる!



 当てぶりする気の無いジョージが、それでも格好良いから好き。大好き。レイ・チャールズとも、ボビー・パーカーとも違うのは、やはり美しいコーラス・ワークだろう。

 ほんと、ビートルズなんて聞いている場合ではないのだが…

Waiting for Hypnotic Eye2014/07/27 21:01

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの新譜 [Hypnotic Eye] の発売が来週に迫り、落ち着かない。こういう時は心に隙が出来て、思わぬ事故に遭わぬように、気を引き締めなければ。



 USA TODAY のサイトでは、トムさんのインタビュー動画が公開されている。嬉しい、サングラス抜きのトムさん!

Tom Petty: 'My boy band was The Beatles'





 相変わらずのブルーグレーの瞳。ドキドキ。
 変なシャツではなく、白い素敵なシャツに、黒いジャケット、黒い帽子でキメていて、なかなか格好良い。髭も髪もちゃんと染めて合格点。

 低い声でややゆっくり喋るのも相変わらずで格好良い。"Hypnotic Eye" というタイトルには、昨今の「手のひら(のスマホ)や、PCを見つめる、催眠術にかかったような瞳」を現しているとのこと。
 イカしたギターリフがたくさんでてくるところも強調しており、私が気に入っている "All You Can Carry" も挙げているのが嬉しい。
 ライブでは、5曲か、6曲くらい、ライブごとに入れ替えたいとも言っているが、そこは無理しなくても良いですよ…。私はどうしても演奏する方の感覚として、曲は固定したい気分は良く分かるので。
 そして、発売から20年を迎える名作 [Wildflowers] のリマスターを発表することになるだろうとのこと。当初このアルバムは2枚組だったので、それに近い形式になるかも知れない。これは楽しみ。

 この動画のサイトには動画で話している以外のコメントも載っている。トムさんが12歳のとき、最初に組んだバンドはビートルズバンドだったとのこと。
 マイクは、バンドで一斉に演奏して録音する手法が好きだと言う。パートごとに録音して組み合わせる手法も盛んだけど、自分のバンドは最高のライブ・バンドなので、演奏中の「空気感」を掴むんだと言う。

 否が応でも期待が膨らむ新譜発表。いよいよだ。

Hypnotic Eye がやってきた ヤァ!ヤァ!ヤァ!2014/07/30 21:46

 iTunes (US) では昨日のうちに購入したトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの新譜 [Hypnotic Eye]。朝からずっと聞き通しだ。
 iTunesでダウンロードが完了してからメールボックスを見たら、Ticketmaster から、「ツアーのチケットを買ったあなたに、無料ダウンロードプレゼント!」…などというメールが来ている(しかも2通)。あ…え?
 何だろう、この既視感。絶対、前にもあった。そうだ。あったに違いない。前のアルバムでも同じような事をやらかしたような気がする。

 それはともかく、今日は日本版のディスクが届いた。
 ワーナーが発送したアメリカ版は一体いつ来るんだ?まさか船便なの?
 ちょっと待て。ワーナーが送ったのもCDか?あれ?Blu rayの予約ってしたっけ?!自分がどれだけこのアルバムを注文しているのだか、本気で分からない…



 とにかく、私は新譜を手に入れた!めでたい!

 今回は特にフォトセッションのようなものは行わなかったのだろうか。なんだか適当に作ったっぽいスリーブはクレジットと歌詞さえ分かれば良いことにする。
 意外だったのが、Written by でクレジットされているのは殆どがトムさん一人で、マイクとの連名は1曲だけということ。マイクも言っていたが、作曲こそトムさんだが、ギターリフはマイクという曲が多いことだろう。

 やはり一番のお気に入りは "All You Can Carry"。この疾走感!格好良すぎるマイクのギターリフには本当に痺れる。このギターリフに翼を得たトムさんの歌唱が、空高く舞い上がるよう。
 Aメロは最近の曲によくあるような、お馴染みの感じだが、やはりマイクのギターがこの曲を際立たせている。それから、サビの最後に "We gotta run" と落とすところも格好良い。
 マイクによれば、最初のうちはもっとスローだったのを、テンポを上げてみて上手くいったという。テンポアップは大正解!
 これは絶対ライブで聞きたい!お願い!

 1曲前の "Full Grown Boy" は、けだるい雰囲気がなんとなく良い。この曲を聴いたとき、すぐに雨の音楽だと思った。この曲の背後に、雨音が聞こえてならないのだ。たしか、実際に雨音がバックに入っている曲がスティーヴ・ミラーであったような気がするが、今は失念している。
 マイクは、「演奏過剰」にならないように気をつけているという。なるほど、こういう引き算の音楽の上手さも素晴らしい。

 ハートブレイカーズ風のブルース・ロック,"Burnt Out Town" も格好良い。ハーモニカに専念しているスコット・サーストン。これも是非ともライブで聞きたい。トムさんよりも前に立って良いと思う。
 この曲だけ、録音が2011年8月と、他の曲よりずっと前に作られている。ほかの曲ともちょっと雰囲気が違うだろうか。ともあれ、曲の締め方も格好良い。

 [Hypnotic Eye] は、これまさにロックンロール・アルバムであり、ハートブレイカーズのデビュー当時を彷彿とさせるという評判だ。
 私は「デビュー当時を彷彿とさせる」という評に関しては、同感ではない。トムさんやマイクたち自身が「俺たち、初期の頃っぽい!」と言っているようだが、私には前作[MOJO] のハートブレイカーズが、ロックンロール方向に進んだように聞こえる。デビュー当時のロックとは、また別のロックの名作。
 若き昔に帰るのではなく、[MOJO] の時に立っていた場所から、さらにロックの方向へ前進したということ。ロックは過去だけのものではなく、現在でもあり、未来でもある。きっとそうだと思わせるのが、今年の新譜 [Hypnotic Eye]。ロックな今のハートブレイカーズ、そのライブが楽しみだ。