フィルムがとらえたビートルズの真実 ― 2021/12/18 21:20
あるカルチャースクールで、ピーター・バラカンさんによる講演、「フィルムがとらえたビートルズの真実」が開かれた。講演はインターネットでも受講できる。当初、1週間はアーカイブ視聴出来る予定だった。そこで当日は伶楽舎の演奏会に行き、講演はアーカイブ視聴するつもりだったのだが、なんと予定が変わって当日ライブでしか視聴できないことになったてしまった。
私は選択を迫られ、結局バラカンさんとビートルズを選び、伶楽舎はまた今度の機会にということになった。さすがの雅楽も、世界のビートルズにはかなわなかった。
映画 "Eight Days a Week" の、日本公演シーンがプリントされた黒いTシャツで登場した、ピーター・バラカンさん。ラジオで聞くままの穏やかで優しい語り口だ。
要するに、映画 [Get Back] を見たバラカンさんの印象を語る会だった。
以下、バラカンさんのトークをかいつまんでみる。
まずライブバンドだったビートルズが、信頼するマネージャーを失い、方向性を失ってめちゃくちゃになりつつあったが、ライブバンドの原点に戻るために、トゥイッケナム・スタジオでのセッションから開始する。
バラカンさん曰く、ジョージがどこかしらけた顔をしている。彼の曲をまともに取り上げてもらえず、面白くないジョージが一時的に抜けたとき、ジョンが「クラプトンを入れろ」と言ったのは、ジョークだと思う。ジョンはジョージが本気で辞めるとは思っていなかったのではないだろうか。
ある人が言うには、ジョージは髭を多く生やしていると精神の調子が悪く、剃っていると調子がいいらしい(誰が言ったのだろう?本さんかな?)
もともとのアイディアである、テレビスペシャルのディレクター,マイケル・リンジー・ホッグが「うざい」。現実不能なライブ案を出しては、現場を混乱させる。
ジョージが戻ってきて、アップル・ビルに移った頃になると、なぜかジョンが髪を洗ってきれいになっている。トゥイッケナムでは汚い髪をしていた!
ジョンがジョージに "Something" の歌詞を「カリフラワーとかにしとけ」とアドバイスするのが面白い。
スタジオでの主食であるトースト(ジャム付き)、紅茶、ワインなどなどを用意する、ハンマーと金床で演奏に加わる、歌詞を書き留め、手を入れるなどなど、マル・エバンスの働きには目を見張るものがある。
リンダ・イーストマンがポールに連れられて紹介されるのは、この "Get Back" セッションが最初だったらしい。
そして、ジョンにはり付いてじいっとしている、例の人物について。ちょっと気持ち悪く(いや、私にとっては相当気持ち悪い)、いったいなにをしているのか分からない。この人物はコンセプチュアル・アートのアーティストなので、そのパフォーマンスの一環、「何か変なことをして人の目を集める」ということだという説もあるが――ともかく、なんとも言えない。若い頃のバラカンさんは彼女を「悪」として捉えていたが、その後ジョンのソロ活動を追った資料を通じて、彼女の重要性を知ることになる。(そりゃそうだろうけど、重要であるかどうかと、好悪は別だよね)
"Get Back" という曲が出来ていく過程は、まるで魔法である。
機材としては、「マジック・アレックス」(ほぼ詐欺師)によるガラクタは使い物にならず、ちょっと古いタイプの機材を使っている。
バラカンさんは、ビリー・プレストンがスタジオに現れたのは、本当に偶然だとしている。ルルの番組に出るために UK に来たついでだった ―― (私は、UK に来たのは偶然にしても、ジョージがそれを知らないはずもなく、ジョージが意図的に参加させたと信じている。ジョージもそう言ってなかった?)
ビリー・プレストンの登場によってガラっと雰囲気がかわり、素晴らしく楽しく音楽ができるようになる、この大展開、盛り上がりが面白い。
この辺りで、ちょっと講演の時間が押してきたので、コメントが映画の流れとは前後するようになってくる。
そもそも、 [Let It Be] は当時の UK ではどのような受け取られ方をしたか。実のところ、[White Album] の頃から、ビートルズの人間関係はうまくいっておらず、解散は既定路線だったようなもので、[Let It Be] に関しては白けた感じで受け取られた。むしろ、同時代で言えばストーンズの [Beggers Banquet]" や、[Let It Bleed] の方が、断然良かった。
Roof Top が終わると、すっかり盛り下がってしまい、録音は放置されて、[Abbey Road] セッションへと流れる。もうこれで終わりだと、全員が分かっていた。
そもそも、ビートルズの四人というのは、特別すぎた。デビューしたときから知っているが、その勢いは異常だった。テレビに映ると、若者たちは彼らにのめり込み、格別、特別だった。
だからこそ、ことビートルズとなると、今も昔もメディアは過剰反応する。そういうメディアを、冷静に捉え、時には疑う必要もある。
とにかく、ビートルズの四人は仲が良く、仲が良すぎて他に友達がいないくらいだった。(そう、だからジョージがビートルズ以外に友人関係を広げていくと、必然的にビートルズから遠ざかるのだ)
お気に入りの曲は、"Yes It Is", コーラス、メロディ、ジョージのペダルサウンドなど、とても素晴らしい。ビートルズはB面の曲も良い曲が多い。
ビートルズの前半の録音は、断然 MONO で聴くべき(完全同意!)。無理にステレオにするとおかしな事になるので、MONO BOX がお薦め(買いましたよ…)
ビートルズのソロ活動については、ジョンが好きなので、ポールやジョージはベスト盤で十分。
[Get Back] セッションで結局採用されなかった曲に関しては、まだ完成していなかったし、ジョージのようにソロアルバムに入れるなどすることが、正解だった。
最後に、バラカンさんによると、今後 [Get Back] がソフト化されることはないだろうとのこと。アメリカのディズニーは配信で稼ぐつもりなのだろう。だから、ずっと [Get Back] を見たいのなら、ディズニーに毎月1000円を払う以外に、今のところ道はない。ただ、日本の市場だけは特別かも知れない。
バラカンさんもまだ語り足りない、あっという間の1時間半だった。
またこういうバラカンさんのお話を聞く機会があったら、いいなと思う。
私は選択を迫られ、結局バラカンさんとビートルズを選び、伶楽舎はまた今度の機会にということになった。さすがの雅楽も、世界のビートルズにはかなわなかった。
映画 "Eight Days a Week" の、日本公演シーンがプリントされた黒いTシャツで登場した、ピーター・バラカンさん。ラジオで聞くままの穏やかで優しい語り口だ。
要するに、映画 [Get Back] を見たバラカンさんの印象を語る会だった。
以下、バラカンさんのトークをかいつまんでみる。
まずライブバンドだったビートルズが、信頼するマネージャーを失い、方向性を失ってめちゃくちゃになりつつあったが、ライブバンドの原点に戻るために、トゥイッケナム・スタジオでのセッションから開始する。
バラカンさん曰く、ジョージがどこかしらけた顔をしている。彼の曲をまともに取り上げてもらえず、面白くないジョージが一時的に抜けたとき、ジョンが「クラプトンを入れろ」と言ったのは、ジョークだと思う。ジョンはジョージが本気で辞めるとは思っていなかったのではないだろうか。
ある人が言うには、ジョージは髭を多く生やしていると精神の調子が悪く、剃っていると調子がいいらしい(誰が言ったのだろう?本さんかな?)
もともとのアイディアである、テレビスペシャルのディレクター,マイケル・リンジー・ホッグが「うざい」。現実不能なライブ案を出しては、現場を混乱させる。
ジョージが戻ってきて、アップル・ビルに移った頃になると、なぜかジョンが髪を洗ってきれいになっている。トゥイッケナムでは汚い髪をしていた!
ジョンがジョージに "Something" の歌詞を「カリフラワーとかにしとけ」とアドバイスするのが面白い。
スタジオでの主食であるトースト(ジャム付き)、紅茶、ワインなどなどを用意する、ハンマーと金床で演奏に加わる、歌詞を書き留め、手を入れるなどなど、マル・エバンスの働きには目を見張るものがある。
リンダ・イーストマンがポールに連れられて紹介されるのは、この "Get Back" セッションが最初だったらしい。
そして、ジョンにはり付いてじいっとしている、例の人物について。ちょっと気持ち悪く(いや、私にとっては相当気持ち悪い)、いったいなにをしているのか分からない。この人物はコンセプチュアル・アートのアーティストなので、そのパフォーマンスの一環、「何か変なことをして人の目を集める」ということだという説もあるが――ともかく、なんとも言えない。若い頃のバラカンさんは彼女を「悪」として捉えていたが、その後ジョンのソロ活動を追った資料を通じて、彼女の重要性を知ることになる。(そりゃそうだろうけど、重要であるかどうかと、好悪は別だよね)
"Get Back" という曲が出来ていく過程は、まるで魔法である。
機材としては、「マジック・アレックス」(ほぼ詐欺師)によるガラクタは使い物にならず、ちょっと古いタイプの機材を使っている。
バラカンさんは、ビリー・プレストンがスタジオに現れたのは、本当に偶然だとしている。ルルの番組に出るために UK に来たついでだった ―― (私は、UK に来たのは偶然にしても、ジョージがそれを知らないはずもなく、ジョージが意図的に参加させたと信じている。ジョージもそう言ってなかった?)
ビリー・プレストンの登場によってガラっと雰囲気がかわり、素晴らしく楽しく音楽ができるようになる、この大展開、盛り上がりが面白い。
この辺りで、ちょっと講演の時間が押してきたので、コメントが映画の流れとは前後するようになってくる。
そもそも、 [Let It Be] は当時の UK ではどのような受け取られ方をしたか。実のところ、[White Album] の頃から、ビートルズの人間関係はうまくいっておらず、解散は既定路線だったようなもので、[Let It Be] に関しては白けた感じで受け取られた。むしろ、同時代で言えばストーンズの [Beggers Banquet]" や、[Let It Bleed] の方が、断然良かった。
Roof Top が終わると、すっかり盛り下がってしまい、録音は放置されて、[Abbey Road] セッションへと流れる。もうこれで終わりだと、全員が分かっていた。
そもそも、ビートルズの四人というのは、特別すぎた。デビューしたときから知っているが、その勢いは異常だった。テレビに映ると、若者たちは彼らにのめり込み、格別、特別だった。
だからこそ、ことビートルズとなると、今も昔もメディアは過剰反応する。そういうメディアを、冷静に捉え、時には疑う必要もある。
とにかく、ビートルズの四人は仲が良く、仲が良すぎて他に友達がいないくらいだった。(そう、だからジョージがビートルズ以外に友人関係を広げていくと、必然的にビートルズから遠ざかるのだ)
お気に入りの曲は、"Yes It Is", コーラス、メロディ、ジョージのペダルサウンドなど、とても素晴らしい。ビートルズはB面の曲も良い曲が多い。
ビートルズの前半の録音は、断然 MONO で聴くべき(完全同意!)。無理にステレオにするとおかしな事になるので、MONO BOX がお薦め(買いましたよ…)
ビートルズのソロ活動については、ジョンが好きなので、ポールやジョージはベスト盤で十分。
[Get Back] セッションで結局採用されなかった曲に関しては、まだ完成していなかったし、ジョージのようにソロアルバムに入れるなどすることが、正解だった。
最後に、バラカンさんによると、今後 [Get Back] がソフト化されることはないだろうとのこと。アメリカのディズニーは配信で稼ぐつもりなのだろう。だから、ずっと [Get Back] を見たいのなら、ディズニーに毎月1000円を払う以外に、今のところ道はない。ただ、日本の市場だけは特別かも知れない。
バラカンさんもまだ語り足りない、あっという間の1時間半だった。
またこういうバラカンさんのお話を聞く機会があったら、いいなと思う。
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