LADY Chieftains - Celtic Heart2018/04/15 14:23

 4月13日、めぐろパーシモンホール小ホールでの、レディ・チーフタンズのコンサートに行った。
 収容人数200人のホールが、七割ほど埋まっていただろうか。



 レディ・チーフタンズは、アイルランドの大物バンドザ・チーフタンズ結成50周年来日記念として結成された、日本人女性によるトリビュートバンドだ。最初は軽い余興的な、カバー・バンドのようなものだったが、本家チーフタンズとの舞台上での共演や、各地パブ、野外フェスなどでの演奏を経て、すっかり立派なアイリッシュ・バンドになっている。
 こうなると「レディ・チーフタンズ」という名前がそぐわなくなっている観もあるが、ともあれ、このバンドのホールでの演奏会が開かれたというわけだ。

 実のところ、私はお酒の席、薄暗いところ、人で混雑しているところ、音楽を聞きたいのに人の話し声が聞こえるところ、そして野外が苦手なため、なかなかレディ・チーフタンズの演奏を聴く機会がなかった。そういう点で言うと、今回のようなホール公演はとても嬉しい。
 演奏は、五人のレディ・チーフタンズに、ゲストの男性ギタリスト、そしてアイリッシュダンサーが三人ゲストが参加した。

 曲目は、多くは良く知られているアイルランドのトラディショナルな楽曲を様々にとりまぜ、絶妙なセットにして聞かせてくれた。ボシー・バンドを理想としている私としては、このトラディショナルの曲を上手く組み合わせて演奏してくれるのはありがたかった。
 演奏は、総じて上手い。特にフィドル,フルート,ハープの三人は熟練しており、自信と独創性を持ってこのバンドを支えている。ホールという場所と、PAの力を借りて音楽の隅々までしっかりと聞かせている。
 アイリッシュ・ミュージックの演奏というと、美しくゆったりとしたエアーに終始されるのは退屈で困るのだが、今回はダンスの曲も多く、聴き応えがあった。
 上手い演奏とは言え、まだまだ伸びしろもあると思う。たとえばボシー・バンドの音が、地面からわき上がるのような落ち着きと底力に満ちているのに対し、彼女たちはまだ演奏が上半身の辺りで漂っている。ちょっとしたテンポの乱れや、フワフワした感じが、これからどう落ち着き、貫禄を身に着け、それでいて軽妙なダンスを圧倒的に放出してゆくのか、楽しみが残っている。

 曲目は総じてトラディショナルで、合間合間にアイリッシュダンサーのパフォーマンスがあって、楽しかった。ただ、後半の冒頭でリバーダンスの音を使ったのは、やや興ざめだった。ダンサーの見所作りのためだとは思うが、あの音を、レディ・チーフタンズだけで演奏しても良かっただろう。
 それから、これは非常に個人的な見解だが ― アンコールで「故郷(ふるさと)」を演奏したのは、居心地が悪かった。私はこの曲が苦手なのだ。曲そのものは良いと思うのだが、あの曲を演奏する場面で、なんとなく「郷愁を誘うよね、感動的だよね」という共通認識を強いられるような感じが、好きではないのだ。ここは "Amazing Grace" か、"Danny Boy" あたりが良かったと思う。

 レディ・チーフタンズという演奏も考えもしっかりとしたバンドは、もっと知られて良いと思うし、CDを出しても良い。真っ先に買うだろう。演奏会もどんどんやって欲しい。三人程度のグループは良くあるが、五人揃っているという強みもある。
 これからの更なる活躍を楽しみにしている。