Bus to Tampa Bay2018/10/15 22:14

 めでたく、[An American Tresure] の4枚組通常版が届き、我が手元には大小計12枚の [An Amrican Tresure] がある。
 10月13日付けのビルボード・アルバムチャートに、初登場4位。その売り上げにも、だいぶ貢献していると思う。



 初めて耳にする未発表曲の中で、キャリア終盤 ― 2011年の "Bus to Tampa Bay" も名曲だ。
 たとえば、1978年とかにこういう曲があっても、まったく不思議ではないし、[Highway Companion] に収録されている曲のような感じもする。実際には、[Hypnotic Eye] セッションだというのがから、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの一貫性、ぶれなさを思い知らされる。

 この曲のギター・ソロを聴いたとき、これは間違いなくジョージ・ハリスンだと思った。彼本人が弾いているに違いない。
 2011年?ジョージが亡くなって10年後?じゃぁ、ジョージの録音を使ったんだ。ジョージの曲をハートブレイカーズがカバーしたのかも知れないし、ジョージの残した音の断片に合わせて、曲を作ったのかも知れない。
 目を皿のようにしてクレジットを見たが、どこにもジョージの名前はない。どう見ても、ひっくり返したり、透かして見てもない。ギターを弾いているのは、トムさんとマイク、スコット・サーストンだけ。
 つまり、マイクによるソロが、ジョージのスライドにしか聞こえないと言うことだ。

 旋律の作り方、音の滑らかさ、厚み、しっとりとした質感、控えめな抑揚と長さ ― どこをどうとってもジョージ。
 以前からマイクはジョージっぽく弾かせたら世界一だと思っていたが ― 実際、ジョージもマイクに「ぼくっぽいのをやることにしたの?」と言っている ― まさにジョージと見分けが付かないような域に入ってきて、憑依ギタリストではないかと思う。
 ルビー・ホースというバンドが、"Punch Drunk" という曲を作っているときに、「この曲にはジョージ・ハリスンのギターが必要だ!」といってジョージにテープを送りつけ、実際ジョージが音を入れて送り返してくれたというエピソードがある。
 マイクはマイク・キャンベルとしても引っ張りだこのギタリストだが(なんだかマックにさらわれたようだが・・・)、世界中の「ジョージのスライドが欲しい!でも不可能!」という悩みを抱える人々には、ここに大きな救いがあるのだ。

Mike Campbell’s Life After Heartbreak2018/10/06 21:53

 珍しく、マイク・キャンベルが日本語のニュースに載っている。彼が加入した、フリートウッド・マック関連の記事だ。
 曰く、トム・ペティが亡くなって、もう大舞台に立つことはないだろうと思っていたマイクは、今年の誕生日にマックへの加入を打診され、それが現実となった。しかも、ライブでトム・ペティの名曲 "Free Fallin'" を演奏することになる。マイクは躊躇したが、スティーヴィー・ニックスが説得したのだと言う。

スティーヴィー・ニックス、トム・ペティの曲をプレイするようマイク・キャンベルを説得

 この記事、面白そうなので原文の Rolling Stone も見てみた。

Mike Campbell’s Life After Heartbreak

 色々な意味で、胸に迫る内容だった。一部を訳してみる。

 マイク・キャンベルは、彼のバンドリーダーであり、50年来の親友であるトム・ペティが病院に緊急搬送されたという、知らせのあった早朝のことを語っても、泣くことはなかった。あの恐ろしい出来事の一週間前に行われ、ソールド・アウトになったハリウッド・ボウル公演の事を思い出しても泣かないし、さらにトム・ペティが死を迎えようとする病院で目にしたことを語った時も、泣きはしなかった。
 キャンベルは言う。「彼は髪をきちんとしてもらっていた。医療器機が取り付けられ、まったく動かなかったけれど、でもまるで天使のようだった。」
 しかし、ハリウッド・ボウル公演の後の事を思う時 ― つまり、キャンベルがペティと最後に話したときのことを思うと、その様子が変わった。ジョン・レノン風の紫色のサングラスの後ろで、キャンベルの両目に涙が浮かんだ。
 「ぼくらは互いに、愛してるって言葉を交わした。」


 インタビュアーは、マイクにあの日のこと、死を迎えようとするトムさんの事を訊いたのだ。私だったら、とても訊けない。知りたいようで、マイクの胸にしまっておいてあげたくもある。
 その一方で、トムさんとマイクが、最後に ― きっと何気なく ― 「愛してる」って言ったことを知ることが出来ると言うことは、私たちファンたちにとっても救いだ。

 初めてトムと出会い、即バンドメイトになった有名なエピソードや、マイクが引退したらハワイのカウアイ島に住もうと思っているなどと言った話題のあとに、彼はこう言う。

 「友情以上のものだった。ほぼ運命的であり、ぼくらを巡り合わせたのは、神の意志だったのかも知れない。もしトムがぼくをバンドに誘わなければ、ぼくらの人生はまったく違っていた。」

 鎮痛薬の過剰摂取というトムの死因を念頭に、痛みを抱えたまま彼がツアーを続けた事についての、難しい話題にもなっている。
 確かにトムはツアーをキャンセルして、治療に専念すれば、去年のあの日、突然世を去ったりしなかったかも知れない。でも、マイクは後悔はしていないようだ。

 「ぼくはトムに確認するために、『大丈夫か?』と尋ねた。すると、あいつは決して『死にそう、無理!』とは言わなかった。悪くて『ちょっと気になるけど、ショウは大丈夫だ』という言う程度だった。表情には喜びが溢れていたし、ぼくはもう心配するのはやめることにした。」(中略)
 「トムがこうと心に決めたら、誰も何も言えない。『病院にいった方がいい』なんて言われても、『F*** y**, ツアーは絶対にやる』と言うに違いに。誰にも止めさせることなんて、出来なかった。」


 この話題になると、マイクも辛そうな表情になる。でも、インタビュアーに対して、こう言い切った。

 「いまさら後悔して、どうなる?トムは自分が望んだとおりにしたってことだよ。そしてぼくらは彼をバックアップしたんだ。彼のためにその場にいたんだ。彼は彼自身の人生を生きていた。きみを責めるわけじゃないけど。トムはあの最後のツアーを愛していたんだ。(中略)
 トムだって人間だ。起こってしまったことは、仕方がない。大事なのは、音楽だ。」


 大事なのは音楽だ。
 生きた人間としてのトム・ペティはもういないけれど、音楽は残り、聴くたびに新たな感動を呼び起こす。これから新たなファンも増えるだろう。
 マイクは、トムとの長い、長い ― あまりにも長くて、永遠かとも思えた青春が終わり、新たな環境に身を置いている。
 最後には、こうある。

 キャンベルは最近、ザ・フォーラムでの ELO のコンサートに行ったときのことを思い出していた。そこでは、開演前の音楽として、[Full Moon Fever] の曲が流れていた。
 「あの大きな場所であれらの曲を聞くと、呆然とする思いだった。」キャンベルは言う。その瞳にはまた涙が浮かんだようだった
 「あの曲をぼくらは一緒に作った。ぼくらは共に夢を生きていたんだ。」


 ありがとう、マイク。つらい思いを抱えながらも、インタビューに答えてくれて。こうして話してくれること、そして何よりもトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの音をさらに送り出してくれることで、ファンはとても救われている。

2nd October / Gainseville2018/10/02 22:50

 私はどうも、日付というものに疎いらしい。普通の人からすれば大事な日を、すっかり忘れて過ごしていたりする。一年で、絶対に忘れず、前もって準備して臨む日は、エイプリル・フールくらいだ。
 とにかく、私は今日がそういう日の一つであることを忘れていた。10月2日は、トム・ペティが亡くなった日だ。数時間前に、ネットを見ていて、初めて気づいたのだ。[An American Tresure] の興奮のせいだろうか。自分の迂闊さにびっくりする。

 もっとも、一年前のあの日 ― かなりリアルタイムで情報を追っていたのでよく覚えているのだが、― それは、10月3日の朝だった。今でもなんとなく、日本時間で彼の命日を認識しているような気がする。
 きっと時が経てば、ジョージと同じように、トムさんの命日は10月2日なのだと思うようになるだろう。

 [An American Tresure] からの未発表曲,"Gainesville" のミュージック・ビデオが公開された。
 古い映像から、トムさんの娘さんたちが少し大きくなった頃、そして21世紀、様々な時代の様子がうまく連ねられている。



 解説によると、マイクはこの曲のことを完全に忘れていたのだと言う。色々辛い時期だったので、どこかに紛れたのだと。
 こんな名曲のことを忘れるなんて凄まじいなと思う一方、そういう人生の中でも暗い時期のことを、なんとなく時間の中で紛らせて、忘れるというのも、良く分かる。そうでなければ、人生は辛すぎるのかも知れない。

 この曲に登場する「サンディ」という人物は、ベンモントの中学校時代からの友達だそうだ。お坊ちゃまなベンモントは、日本で言う高校からニューイングランドの全寮制学校に入るので、まず地元の友達というと、中学校の頃までの仲間なのだろう。
 このサンディがマッドクラッチのローディのようなことをしていて、ベンモントが学校の休みで帰省したときに、マッドクラッチを紹介してくれたという。
 たしか、ベンモントはそのとき、まだバーに行けるような年齢ではなかったが、とにかくトム・ペティが曲を自作していたことを知って、仰天したと、言っていた。

 このビデオ、本当に良く出来ている。全体を覆うのはノスタルジーなのに、すっかりベテラン大物ロックバンドになった21世紀の映像や、ゲインズヴィル出身ではないひと(UK人まで!)も、その映像がごく自然に思えるのだ。

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの良さは何かということは、色々あるのだが、そのうちの一つが、その普遍性だろう。

 ごく初期の頃から、その終焉まで、このバンド,トム・ペティの音楽には普遍性があり、常に共通言語で表現されていた。
 「いったいどうしちゃったの?」という時期がない。長く活動しているアーチストを幾つか思い出すと、大抵は数年,もしくはもっと多く、「どうしちゃったの期」があるものだが、TP&HBにはそれがないのだ。
 いつでもそこに居てくれるロックンロール、帰る場所となる音楽を、常に生み出していた。その「永遠性」が、彼らの故郷であれ、アメリカ西海岸であれ、どこか極東の国であれ、その音楽の存在を、どこででも場面、場面に相応しいものにしてくれるのだ。
 そしてどこの、誰であれ、ロックンロールを愛してさえいれば、いつでもTP&HBの音楽が共感をもって響いているのだ。そいう心強さ、信頼感が彼らの音楽には溢れている。

An American Treasure がやってきた ヤァ!ヤァ!ヤァ!2018/09/28 20:58

 リミテッド・デラックス・ボックスの [An American Treasure] が到着!
 速い!
 ご苦労であった、ups !さすがフェラーリのスポンサーなだけあるな。

 開封、開封!
 おおぅ~立ち上る、新品豪華ボックスセットの香り~!



 そして、限定版なので、番号が振ってある。
 私のは、No. 5357  ― 私は数字では5が好きなので嬉しい。奇数!
 マグネット仕様で、紙も高品質、トムさんのこれまでのボックスにはなかったクォリティ!やはり気合いが違う。



 早速聴く!邪道だが、曲そのものが未発表の曲から聴く!
 "Lost in Your Eyes" で号泣!オリジナル・マッドクラッチ!何て良い曲を録音していたのだ!しかもこれまで未発表だったなんて、罰当たりなんだか、神々しいのだだか。何が何だか分からない…

 さぁ、どんどん楽しもう。
 "Don't be afraid to live what you believe." ― それを実行するのだ。

 ところで…
 なぜ私の手元には、まったく同じリミテッド・デラックス・ボックスが二つあるのか…?
 謎だ …… いや、単にオーダーミスしただけだ…
 通常版も発送済みだし、日本版も買うつもりなのだが。どうしよう。

Gainesville2018/09/24 20:14

 トム・ペティのボックスセット、[An American Treasure] から新曲、第三弾、いよいよ注目の楽曲 "Gainesville" が発表された。
 さぁ、さっそく聴くぜ!ハートブレイカーズの故郷,ゲインズヴィルへ!UKにリヴァプールあり、アメリカにゲインズヴィルあり!



 これが公式アルバムではボツになるっていうのだから、TP&HBは恐いな~…次のアルバムで入れるつもりがあったかも知れないが…それにしても!
 この曲、最初に聞いたときはそのリフの不思議さにちょっと戸惑う。ザ・キンクス(という、いうよりは The Kingsmen か…)の "Loui Loui" と同じリフかと思ったら、一音多い。この変わったリフは、マイクが作ったのではないだろうか。

 ハードに始まったと思ったら、すぐフォーク・ロック風味。きゃあ、あらやだ、好み!
 舞い上がるように爽やかで、広やかな高揚感。夢のなかのロックンロールという感触。

 さて、この曲の正体は?
 どの時期の作品なのだろう。[Highway Companion] の時期にも思える。
 そして特徴的なのが、ピアノ。これ、誰が弾いているのだろう?派手にソロを弾く前はベンモントっぽいのだが ― ソロのドカドカした感じは、いつものベンモントらしくない。
 もしやトムさん自身とか … 笑っているし。いや、ジェフ・リンだったりして?でもそうなら事前に知らされても良さそうだ。
 現時点での予測としては、ピアニストはベンモントであり、ちょっとはっちゃけた彼の演奏に、トムさんがウケている…と見た。さて、真実はいかに?

 YouTubeには、フロリダ・ゲイターズ(フロリダ大学の運動部)の "Brilliant. We miss you, Tom." というコメントがついていた。マスコットの名前はアルバート。
 トムさんが亡くなって、ゲイターズのホームゲームで、"I Won't Back Down" が大合唱される動画はたくさんあがっている。
 この動画の良さは、スクリーンにトムさんの姿が見えること。ふるさとゲインズヴィルも、世界もトムさんボックスを待っている!

Lyrics for Life2018/09/20 20:41

 フロリダ州はゲインズヴィルを拠点に活動する人気ロックバンド、シスター・ヘイゼルが、小児がんへの支援を目的としたチャリティ,Lyrics for Life を主催している。
 そのパーティ・イベントとコンサートが、9月14日に、もちろんゲインズヴィルで開かれた。これによって30万ドルの寄付金が集まったという。

 この Lyrics for Life コンサート、実はトム・ペティをトリビュートしたスペシャル・セットも用意されており、ポスターにも明記されているのだ。



 実際のセットリストが見つからないのだが、どうやら "Free Fallin'", "I Won't Back Down" などが演奏された模様。
 しかも、スタン・リンチも登場したらしい!相変わらずスタンはシスター・ヘイゼルと仲が良い。どうやら元気にしているようで嬉しい。

 すごく音が悪いのだが、"American Girl" の動画があがっている。



 これ、なかなか面白い。後ろのスクリーンに、本家本元トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの映像が使われている。みんな、大好きだよね、TP&HB。

You and Me (Clubhouse Version)2018/08/31 22:11

 さて、周知のとおり、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのボックスセット,[An American Tresure] から、第二弾,"You and Me (Clubhouse Version)" が発表された。
 先だって募集されていた、ファンからの写真,動画をコラボレートしたPVが素晴らしい。



 最初にトムの話す声がして、ギターが取り出され、ソファのそばにそっと置かれる。彼はそこに居るのだ。
 その向こうで、ベンモントがピアノに向かう ― 

 この曲について、「ピアノはトム・ペティが弾いており、彼のタッチに合わせてベンモントがピアノを弾いている」という情報に接したのだが、私にはこれがちょっとした混乱なのだ。
 あのピアノの音、全てトム・ペティが弾いている?そしてベンモントはピアノを弾く振り(いわゆる手パク)をしているの?だとしたら、トムさんのピアノは大したもので、全く専任のキーボード奏者としても通用する!ソロの作り方なんてベンモント以外の何者でもない。40年以上一緒にいると、やっぱり伝染るのか。
 いや、それともピアノの一部はトムさんのもので、ベンモントが被せて録音しているのか。あまりにも上手すぎて、私にはその線も捨てきれない。それほど、このピアノは素晴らしいと思う。

 ビデオに登場する写真や動画の数々が、トム・ペティへの愛情と愛惜に満ちていて、胸が一杯になる。
 特に「分かるなぁ…」と共感したのが、ライブをノリノリで見ながら、涙を拭く女性の動画。そうだ、あの感じ。最高の音楽に浸って、幸せなのに、なぜか涙が出るのだ。
 感動で涙が出るのかも知れないが、同時にこの幸せは、いつか ― コンサートのことだから、もうすぐ終わるということを、知ってしまっているからかも知れない。

 アメリカでのライブを予約して、その日が来るのが待ち遠しいようで、憂鬱だった。特に出発の前日はひどく。ああ、始まるということは、終わりが始まるとうことなのだ。そう思うと、切なくて仕方が無かった。
 "You and Me (Clubhouse Version)" のトムさんの歌声は、そんな記憶を笑い話にしてくれそうな、でもやっぱりどこか悲しくて。人生はそういうものなのだと、むしろ爽快な気持ちまでも、呼び起こすのだ。

Circle of friends2018/08/27 20:33

 ジャーニーというのは偉大なバンドだが、私の守備範囲ではないし、「史上もっともダサいミュージック・ビデオ」のバンドだという認識程度しかなかった。
 (「史上もっともダサい」は言葉のアヤで、恐ろしくダサいビデオは私の好きなアーチストでも、山ほどあるので安心して欲しい)
 ところが、ジョージが関連するニュースで、スティーヴ・ペリーが登場し、しかもそのキーマンが、我等がハートブレイカー、スティーヴ・フェローニだったから二度びっくりした。

スティーヴ・ペリー、曲の使用許可を求め、ジョージ・ハリスン未亡人と緊張の対面

 この記事を書いた(もしくは翻訳した)人は、スティーヴ・フェローニが誰だか分からなかったのかも知れないし、発音にも自信がなかったのかも知れない。とにかく、あのトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの名ドラマー、スティーヴ・フェローニがオリヴィア・ハリスンとの連絡をつけてくれたのだという。
 フェローニは当然オリヴィアと親しいだろうな…1991年のジョージ来日もフェローニがドラマーだったわけだし。

 さて、フェローニとペリーが友達だったというのも、へぇ!という感じ。
 これは私が物を知らないだけで、ググれば共演動画が山ほど出てくる。しかも、ベンモント・テンチまで一緒に居る!



 60年代とか、ハートブレイカーズなどのロックミュージシャン達の良い所の一つは、同業者でライバルであっても、仲の良い友達だというところ。特に60年代ロック黄金期の綺羅星の如きアーチスト達の仲の良さは「俺たちは新しい時代を共に生きて、共に新しい音楽を、文化を創っている!」という同士感覚のためだろう。
 80年代などは音楽産業の変容、ロックの難しい時期などもあってその感覚に鈍りがあると勝手に思っていたが、そうでもないらしい。ロックンロールの友情はいつでも生きているようだ。

Hang with The Heartbreakers at The Clubhouse2018/08/23 19:58

 トム・ペティも支援してきたチャリティ,"The Midnight Mission" の活動の一環として、チャリティ・イベント会社 Omaze と協力して、ハートブレイカーズのクラブハウスでの [An American Tresure] リスニング・パーティに、寄付をした人の中から一人、(+友達)招待されるのだという。
 どうやら、マイクとベンモントにも会える…のかな?この二人の間に「あなたが入れるかも!?」という画像もTP&HBの twitter にあったので。

 マイクとベンモントが紹介動画に登場。



 元気なマイクとベンモントが並び、楽しく話して、ギターも弾いてくれて、なんか笑ってる。
 本来、喜ぶべきべきなのだが…そこはかとなく悲しい。
 以前だったら、この手の告知はもちろんトムがしてくれたわけで、マイクとベンモントが前に出てくる事なんてなかった。トムさんの不在をこうやって実感として、とらえるようになってきている。
 マイクも、ベンモントも、それぞれ生きて、まだまだ続く人生を送っている。親友,同士の死を乗り越え、悲しみを抱きつつも、人生は続く。きっとクラブハウスに招待された幸運な人は、この二人や、その他のスタッフに迎えられ、ハートブレイカーズの様々な想い出に囲まれて、幸せだろう。
 そんな幸せもまた、トム・ペティの残した偉大な遺産なのだ。

 ともあれ。ポチっと寄付してきた。
 私は宝くじとか、抽選とか、そういうものは当たらないものだと思っているので、LAには行かないだろうが、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの何事かに参加したいというささやかな思いだ。

 ハートブレイカーズのクラブハウスは、いったいLAの何処にあるのか、ミステリアスな存在なのだが、その雰囲気は動画で見る限り最高。
 ハートブレカーたちが大好きだったものが、ところ狭しと並び、大好きな自分のバンドが楽しく過ごすのだから、きっとロックンロール・ヘヴンとはこういう所を言うのだろう。

The 50th anniversary of Sweetheart of the Rodeo2018/08/04 21:02

 ロジャー・マッグインとクリス・ヒルマンが、ザ・バーズのアルバム [Sweetheart of the Rodeo] の発売50周年のツアーを先月開始。そして9月,10月にさらに三回ライブを行う。

 まず、[Sweetheart of the Rodeo] の確認。
 1968年8月30日発売、ザ・バーズの6枚目のアルバム。一時期バンドに在籍したグラム・パーソンズの影響もあり、カントリー色が強い ― と、言うよりは「カントリー・ロック」そのもの。
 ちなみに、「俺たち『ロデオの恋人』、何枚持ってる?!」という台詞でも有名(?)往年の名盤が、手を替え品を替え、何度もリイシューされて、ファンは何枚も買わされるという話。
 ちなみに、私はカントリーが好きではないので、『ロデオの恋人』は一枚しか持っていない…

 7月24日,25日のセットリストをチェックすると、痛感させられた。これ、見に行った方が良かったかも知れない。9月、10月もあるので、行ける方はぜひ。



 アンコールは四曲 ―

So You Want to Be a Rock 'n' Roll Star
American Girl
Runnin' Down A Dream
Turn! Turn! Turn!


 これは、会場にいたら言葉を失っただろう。マッグインとヒルマンが、亡きトム・ペティに捧げる締めくくり。
 トム・ペティがいなかったら、ザ・バーズはきっと現在あるような評価を受けていなかっただろう。この金髪の美しい「青年」が、60年代の伝説はビートルズとボブ・ディランだけではないことを、世界に知らしめたのだ。
 マッグインもヒルマンも、この「バーズ崇拝者」と音楽を作り、友情を育んだ。こんな後輩,弟.フォロワーを持って、二人は幸せだっただろう。そして、そのトムが突然、先に世を去ってしまうなどとは、想像だにしなかっただろう。
 だからこそ、二人のライブの締めくくりは、トム・ペティの功績と想い出に捧げる曲目になっているに違いない。

 たまらないのは、7月24日 LA 公演の "American Girl" に、マイク・キャンベルが参加していることだ。
 このトム・ペティという「音楽」の片割れ ― 半身とも言うべきマイクの存在は、人が負うべき宿命を象徴しているかのようだ。人生の殆どを共に過ごし、パートナーであり、親友である、愛するトム・ペティを失っても、この世にいるマイクは、こうして生きなければならない。生きて、音楽を奏で続けている。
 最初は遠慮気味だったマイクが、エンディングでマッグインの「さぁ、弾いて!」という視線に促されて、TP&HBのオリジナルと同じようにギターソロを奏でる。
 泣いてしまった。
 
Oh yeah, all right
Take it easy baby
Make it last all night ―