スターボー / ハートブレイク太陽族 ― 2026/09/09 19:59

 音大の仲間は、いまでもとても親しい友人たちだ。
 どの仲間もべらぼうに音楽好きだが、どんな音楽が好きかは千差万別だった。そして互いがどんな音楽が好きなのかは、良く理解している。
 そんな音大仲間のひとりが、「ぜったい、ぶちの好みだ」と言って紹介してくれたのがスターボー。レインボーならぬ、スター(星)ボーだそうだ。
 いきなり曲を聴くと歌唱が始まって2秒で停止すること間違いないので、先にコンセプトをWikipediaから引用しておく。

太陽系第10惑星「スターボー」から脱出し、地球に「A・I(愛)」を伝えるためにやってきた性別不明の3人組アイドル。衣装に関しては若き三銃士をイメージした宇宙的なコスチュームが採用され、髪型もこの当時の若年の男性の時流を意識した刈上げのテクノカット、更に態度も無表情・無口と、徹底して性別不明で非人間的なイメージを演出。ただし、ラジオ出演した際には「悪い地球人にさらわれた母親を探しに男装して来た」という発言(設定)も明かされている。

 設定だけでもやっちまった加減がハンパないが、時は1982年。昔はいろんな事があったものだし、今だっておかしなコンセプトはいくらでもあるだろう。
 これを踏まえて聴く、テクノ歌謡こと、「ハートブレイク太陽族」。作詞、松本隆。作曲、細野晴臣。



 これは酷い。とんでもなく酷いが、かなり笑える。ツッコミどころ満載。設定に無理があるので、歌詞にも無理がある。曲も細野晴臣のわりにはぼんやりした楽曲でいまいち。一番笑ってしまったのは、サビ「なっちまう!なっちまう!」の後にひと節、「熱いぜ太陽の季節」…と付け加える意味が全然わからない。

 ついでにライブ映像でダンスも鑑賞。



 衣装は三銃士をイメージって、大デュマに謝れ。私は三銃士のファンだ。
 40年以上経った今となっては笑うしかないが、松本隆と細野晴臣御大たちにとっては、いわゆる黒歴史。「忘れたい」とか「悪夢」とか、大人たちが作り込んでおいてそれはどうなんだ。三人の女性たちの立場にもなってほしい。

 当たり前だが、まったく売れず、この宇宙から来た設定は早々に放棄され、同じグループ名のまま、普通の女性アイドルのヘアスタイルでもう一枚売ったらしい。そちらはべつに面白くもなんともない。

 音大の仲間曰く、「マリア四郎以来のヒット」だそうだ。歌の巧さから言えばマリア四郎に失礼だが。ともあれ、カラオケで歌うと盛り上がるだろう。

Real Love 2025 ― 2026/09/16 20:01

 すっかり素通りしていたのだが、去年2025年に、ビートルズの長編ドキュメンタリー作品、[The Beatles Anthology] が修復、リマスターされてディズニープラスから配信されている・・・らしい。
 どうしてビートルズはディズニーと組むのだろうか?とても気に食わないので全く見ていない。アンソロジーは発表当時や、DVD化された時に刷り込むように見たので、まぁいいやという感じ。

 ところが、YouTubeに “Real Love” の2025年バージョンが公開されていたので、これは聞かなきゃ、見なきゃ。アンソロジーで初公開されたものは玉石混交なのだが、”Real Love” は好きな方の楽曲。よく出来たロック・バラードだと思う。
 さて、2025年最先端技術を駆使した “Real Love” やいかに?



 画像が鮮やかになったことはもちろんだが、音声 ー 特にジョンの声が変わったと思う。もともとのカセットテープの音はとても貧弱な音だったはずで、発表された当時も「幽霊のような声」と評されたものだ。それが今回、高度な技術を駆使してもっとジョンがちゃんと歌っているようにブラッシュアップした ー らしい。
 しかし、どうにも「ジョンってこういう声だっけ?」という違和感が拭えない。オリジナルが耳に馴染んでいるので、別人のように感じるのだろうか。
 それにしてもジョージのスライド・ギターは冴え渡っている。ほかのどんなサウンドより、ジョージのスライド・ギターが頭抜けて素晴らしく聞こえるのだ。

 これを期に “Real Love” のカバーをしている動画などを探してみた。まずは私好みのバンド編成で。カバーしているのはたいていビートルズのカバー・バンド。最初の方は、良いかな?と思うのがだ、スライド・ギターの出番になると、あまりの落差に最後まで聞く気力を失う。やっぱりジョージの凄腕ギターに耳が慣れると、マイク・キャンベル級の名手でないと太刀打ちできない。

 バンドではなく、アコースティックな演奏でのカバーや、デュオなどもあったが、こうなると当たり前だが、トム・オデールほど素晴らしい演奏には行き着かない。これはさすがだ。私はトム・オデールの苦しそうに一生懸命歌う感じが大好きなのだが、まさにその真骨頂というところだろう。
 はて、私は苦しそうに歌う長金髪が好きなのか…?

Americana Honors & Awards / Lifetime Achievement Award ― 2026/09/21 19:51

 9月16日、ナッシュヴィルで行われた [Americana Honors & Awards] の授賞式で、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズが “Lifetime Achievement Award” を受賞した。
 この手の受賞はよくある話だが、今回大きな話題となったのが、2017年のトムの死後、初めてハートブレイカーズのメンバーが勢揃いした、つまり再結成したことだった。しかもオリジナル・メンバーの一人である、スタン・リンチも加えての、現在出来うる限り完全なリユニオンだった。

 この模様はライブ・ストリーミングで配信された。ハートブレイカーズの登場は冒頭である。



 TP&HBのファンは多いに盛り上がった。  … が!!私個人的にはいま一歩…!という奇妙な感触が残った。しばらくその姿を見なかったスコット・サーストンの元気な様子も見られたし、スタンとスティーヴ両ドラマーの熱い抱擁も見られた!それなのにこの奇妙な感触は何だろう…?
 理由の一つは、まずトムの代役であるクリス・ステープルトンだろう。彼自身はカントリー・ミュージックの大物でけっして遜色ない人選なのだが、どうも私の好みではないのだ。どうせなら生前のトムさんともっと密接に関わっていた人、例えばジェイコブ・ディランとかのほうが、私の気分はアガったと思う。
 そしてもう一つが、会場に漂う「ド」カントリーな雰囲気だ。私はピュアすぎるドカントリーが苦手。あのスタイルのダサさや、音楽の能天気さ、マッチョなスタイルに、イラっときてしまう。会場の客席にはぞっとするようなヌーディースーツの人々が何人もいる。これがどうも私には合わなかった。

 せっかくのハートブレイカーズ再結成なのに、私だけがこうもカントリー臭にやられて感動しきれなかったのは、場所の問題もある。ナッシュヴィルは音楽産業の聖地だが、要するにカントリーの聖地なのだ。トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズも無論カントリー・ロックを演奏するバンドでもあるが、それ以上に私にとってはロックンロールで、フォーク・ロックで、ブルース・ロックで、唯一無二のハートブレイカーズ。カントリーの能天気さとはちょっと違うバンドとして捉えている。うーん、惜しい。
 クリス・ステープルトンは悪くないけど、マイクが全部歌ってくれて構わないのに、と思う、マイク・ファンの私だった。

 パフォーマンスの後、トムさんの代わりに娘のエイドリアがスピーチ。長すぎてやや何言ってるのか分からない。ベンモントのスピーチは、杖をつく姿が痛々しすぎる。確か、膝が悪いんだと思う。例の鎮痛剤なんかにやられないよう、養生してほしい。
 結局、マイクのスピーチが一番要領を得ていて面白かった。いつからこういう人になったんだ…?!「ライフ・タイム・アウォード?俺はまだ死んでないよ」「今日はロンの誕生日なのでみなさん、さぁどうぞ…!」とか。
 もうトムさんは居ないので、昔話の拡張版もマイクの役割である。(トムさんが居た頃は「初めて会ったマイクのギターは1ドルだった」とか酷いこと言っていた)。ハートブレイカーズ結成のきっかけとなるベンモントのセッションを、マイクといっしょに見に来たトムさん。バンドを見るなり、「これは俺のもんだ」とのこと。

 ともあれ、ハートブレイカーズが健在で本当に良かった。トムさんと同じように、一人ひとりが掛け替えのない大事なメンバーだ。それぞれの場所で頑張ってほしい。