Grand Valse (Chopin’s Valse, No.5)2025/03/07 22:51

 年末に予定されているピアノの発表会では、バッハを弾くことにしている。人前で弾くときは、バッハと決めているのだ。
 夏頃からバッハの準備を始めるので、その前にショパンでも弾こうと思い、ワルツの5番、Op. 42 の練習を始めた。

 ワルツの5番は、通称 “Grand Valse” , 「大円舞曲」でと呼ばれ、華やかで壮大な曲想をもつ。そのため、演奏会やコンクールでも頻繁に登場する人気曲だ。ショパンのワルツのうち、最高傑作と言われることも多い。
 作曲年代は1830年というから、ショパンが20歳のときの作品というころで、彼がいかに早熟の天才だったかがよく分かる。

 早速だれかの演奏を参考にしようと思っったのだが、手元にワルツ集のアルバムがないので、動画で聞く。ここはやはり、前回のショパン・コンクールでの、小林愛実さんにご登場願おう。



 端正で軽やか、優雅で力強い。これはまさにお手本というべき演奏だ。右手のパッセージが印象的な第二テーマが、出てくるたびに表情が違うのだが、速さの自在さが開放的。特にコーダでの力強さと説得力が良い。
 到底手の届かない演奏だが、まずこれを目指したいと思う。

 実は、同じく前回のショパン・コンクールで、最終的に優勝したブルース・リウの演奏のうち、一番印象的だったのは、このワルツ5番だった。
 久しぶりに聞いてみた。



 小林さんの演奏が端正なのに対して、ブルースの演奏はものすごく…良くいえば個性的、はっきりいうとかなりクセのある演奏で、人によっては酷評される。ショパンのワルツをそのように弾くべきではないということを、ことごとくやらかしているのだ。
 ウィンナ・ワルツのような拍子の揺れや、極端にシンコペーションを強調した表現。身体的にも、足をバタバタさせて、ピアノと踊っているようだ。品がないとか、冒涜的とか言われることもあるだろうだ。
 ところが、この演奏、鬼神のように上手い。難癖をつけるには、上手すぎるのだ。私は好き嫌いはともかく、この演奏で非常に心が突き動かされたし、彼の冒険心に感服した。なにせまだ最終ステージではないのだ。ここで敗退するわけにはいかないが、自分の演奏をやりきる勇気も感じ取ることができる。
 だからこそ、私はブルースはこのワルツで勝ったな、という印象を持ったのだ。

 ワルツの5番をYouTubeで探すと、のきなみ若手の演奏があがってくる。もしくは素人。大御所の演奏は少なくて、ショパンにおけるワルツの立ち位置というものが見えてくる。
 最後に、ルービンシュタインの演奏を聞いてみた。



 若者たちにくらべて、テンポは断然ゆるく、しかもかなりタッチが硬い。言うなれば、やや優雅さにかけるだろうっか。愛想もなにもないというか。機嫌でも悪いのだろうかという印象さえ与える。
 三人を聴き比べて、まったく異なる表現方法に感動するとともに、まぁ、私の演奏にはあまり関係がないけれどね…とも思ったりする。

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