EXTERNAL COMBUSTION2022/03/06 14:14

 マイク・キャンベル&ザ・ダーティ・ノブズの新譜,[EXTERNAL COMBUSTION] が届いた。
 まず、前作よりジャケットが格好良い。マイクがクールにフィーチャーされており、横には合成と思われるの最近愛用の白いギター。背後には燃えるリッケンバッカーが描かれているが、何かの暗示だろうか?



 最初は既に発表されていた "Wicked Mind" 格好良いロックンロール。
 次に古風なブギー "Brigitte Bardot" が来たのは意外性があって良かった。
 3曲目の "Cheap Talk" はゲスト女性ヴォーカルを迎えての、ちょっと不穏な曲調。マイクにしては珍しい感じだ。
 4曲目の "External Combustion" は、TP&HB の [MOJO] にあるような、ずしんとくるリフを展開して、ちょっとビートルズ風で格好良い。
 5曲目の "Dirty Job" もまた、マイクお得意のリフからの成立だろう。緊迫感のあるサビが辛口に響く。ゲスト・ヴォーカルとして参加しているのは、イアン・ハンター…ってモット・ザ・フープルのイアン・ハンター?!マイクより10歳以上年上だからびっくりしたが、写真を見るとちゃんと居るので、本物だ。こいうところにもつながりがあるとは意外だった。
 6曲目はガラッとかわって、穏やかな "State of Mind" 。女性カントリーシンガーのマーゴ・プライスを迎えて、味わい深く、しみ通るように盛り上がっていく様子が感動的だ。ブラスの使い方なんかが、ちょっとザ・バンドっぽくて郷愁を呼ぶ。
 7曲目は "Lightning Boogie" ―― 端からゴキゲンなブギーである。なんと言っても、ベンモント・テンチの参加が嬉しい。こういうときこそのベンモント登場で、マイクも楽しそうだ。しかもベンモントの存在感もたっぷりで、ピアノとギターの絡み合いも抜群に格好良い。
 8曲目の "Rat City" は格好良いギターのリフを中心に、ミドル・テンポに、ちょっとヘヴィメタルっぽく決めている。そこに早弾きではなく、あくまでもゆったりとギターを響かせるところがさすがである。これもTP&HBのアルバム [MOJO] を彷彿とさせる。そしてアウトロはビートルズ風。
 9曲目 "In This Lifetime" は、ちょっと変わったエキゾチックな音階を使っている。こういうのは、ギターをそういう風にオープンチューニングにしているのかなぁと、そちらの興味が湧く。歌詞もなんとなく暗示的で、"I'll never understand her in this life" というところが、輪廻とかそういうこと、ジョージの世界のサウンドも感じられて、素敵だった。
 10曲目 "It Is Written" は軽い手触りだが、ロードムービーにぴったりくる感じ。根拠は曖昧だが、この曲に出てくる "you" が、なんとなくトム・ペティのことのように思われた。
 そして最後の11曲目、"Elecyric Gypsy" ―― これも既に発表されている。これぞいかにも、TP&HB で、知らない人が聞いたらオマージュか何かかと思うだろう。ギターがゆっくり浮遊するようで、ガツンとした低音と漂う虚無感が、人生の達観をしているようで、どこか開放感がある。

 前作からそうだが、驚くのはマイクの作詞家としての成長である。20年前は「頭に穴が空きました!」とか言っていたのに。まさに必要は発明の母。
 自ら歌う必要の無かった頃というのは、詞も必然的に湧いてこなかったのだろう。それがカバーなり、なんなり自分で歌い始めると、口をついて歌詞が出てくるようになるのだろうか。

 マイク・キャンベルのミュージシャンとしての人生は、示唆に富んでいる。学校に残るか、せいぜい兵役にでもつくのかと思っていたギター好きの少年が、ひょんなことから金髪男のバンドに加わり、何十年も活動して大成功を収め、その相棒を亡くして、静かに立ち去るのかと思ったら、これである。
 人生は長い。芸術も長い。彼の生き様は、何かを犠牲にして打ちひしがれて何もしない、もしくは勇をふるって戦い続ける、どちらでもない、ごく自然体で穏やかで、それでいて楽しい生き方を教えてくれる。

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