ピアノの修理2024/12/15 20:38

 ピアノの修理が必要になった。
 基本的に、ピアノというのは年に一度調律師さんに調律してもらえば、せいぜい鍵盤を拭くか、ほこりを払う程度のメンテナンスしか必要ない。音大やピアノの先生のところなら、調律が年に二回になったり、弦が切れたら取り替える程度のことだ。
 今回、私のピアノに生じた不具合は、鍵盤トップの象牙板が剥がれるという現象だった。

 そもそも、象牙というものは野生動物保護のために採取は禁止、1990年のワシントン条約で国際取引も禁止なので、新しくは入手できない。我が家のピアノは象牙が使えなくなる前、1985年製の K.Kawai KG-D5で、ピアノの鍵盤としては最後の象牙鍵盤に近いだろう。無論、新品で我が屋に来たのではない。ピアノは天下の回り物。私が高校生の時にやってきた。
 剥がれてみて分かったのが、KG-D5の象牙は2ピース(手前と奥)の継ぎ手ではなく、一枚ものであること。良い作りだ。



 とにかく大事なピアノの一大事である。すぐに調律師さんに連絡すると、実はベテランの調律師さんも象牙鍵盤のメンテナンスについては、確認を要するという。浜松(実際には磐田らしい)の工場に問い合わせるとのこと。とりあえず、割れないように養生テープで固定する。

 調律師さんは二日後にやってきて、まず前蓋を外し、鍵盤が載っている台ごと、前に引き出す。そしてハンマー部分を外し、鍵盤を固定しているネジを全てはずすと、やっと鍵盤が弾き出せるようになる。
 初めて知ったのが、第88鍵の右サイドにはでかでかと「象牙」と書いてある。







 調律師さんは、象牙が剥がれた鍵盤だけを持ち帰り、工房で象牙をはりつける。かつて象牙の接着には膠が用いられていたが、いまは工場から送られてきた、合成接着剤を用いるそうだ。
 抜き取ってから三日後、象牙がくっついた状態の鍵盤が戻ってきた。
 象牙の鍵盤は、剥がれでもしない限り、念のために貼り付け直すということはないとのこと。そのため、これから先、剥がれては直し、剥がれては直しが繰り返されるだろう。

 きょう、ウクレレの先生(ギタリスト)に会ったので、ギターの修理に使う接着剤を訊いてみたところ、「高級品には膠を使う」とのことだった。なんでも、化学合成接着剤は、伸び縮みしないので楽器が全体に固くなるのだという。部分的な修理にもちいると、その部分だけが固くなると言う現象が起きるそうだ。
 ピアニストが自分でピアノをメンテナンスするというのはあまり多くないが、ギタリストはどうだろうか。むしろ、作り始めるのではないかと思い、先生にギター作りに挑んだことがあるかと訊いたら、実はあるとのこと。しかし、あまりにも部品が多いことと、繊細な作業が多すぎるので、ギターを弾く時間がなくなってしまい、結局やめたそうだ。なんだか分かる気がする。

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