Positively 4th Street2023/10/18 19:35

 先月のファームエイドにおけるボブ・ディランとハートブレイカーズ(と言うことにしておく)との共演の興奮も冷めやらぬうちに、トム・ペティの誕生日が近づいてきた。
 1999年以来、毎月欠かさずメールマガジンを発行してくださっている、Heartbreaker's Japan Partyさんのメルマガ "Depot Street vol.298" には、ダーティ・ノブズのベーシスト,ランス・モリソンのインタビューが載っており、今回の共演のきっかけが分かった。

 モリソンによると、ファーム・エイドのほんの2,3週間前に、ボブ・ディランがマイクに電話をかけて、バンドを組むように頼んできたというのだ。
 電話?!電話をかけたの?!誰が?!ディラン様自ら?それともマネージャー?マイクの自宅に?携帯に?マイクのマネージメントに?何回コールで出たの?!
 やや頭のおかしいファンなので、細かいところが気になる。突然ディラン様から電話がかかってきてびっくり仰天するのか、慌てふためくのか。人はこういうとき、どんな反応をするのだろうか。いや待てよ。マイクのことだから、意外と日常的にディラン様とやりとりしてて、別に特別なことでもなかったとか?
 「バンドを組むよう頼む」って、本当にバンドを組むことだけを頼む人はいないわけで、当然「自分が歌うためのバンドを組んで欲しい」だよね…?
 マイクは(多分)慌てず騒がず、自分のバンド=ダーティ・ノブズが有るからと即応したのだが、そこにベンモントを加えるところ、やっぱりマイク最高。そうだよね、ディラン様だってそれを望んでいたはず。いや、もしかしたらベンモントも呼べるかと、ディラン様からリクエストがあった可能性だって否定できない。

 とにかく、なにもかも気になる…この物語に続きはあるのか?
 楽しい想像をしながら、今日もディラン&ハートブレイカーズを鑑賞する。約40年前と比較しながら見るのも良い。1986年、トム・ペティ36歳。腰を沈めて怪しい動きでディラン様の周りをうろつく、怪しい金髪小僧。



Help Me2023/10/09 19:30

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの公式動画として、 "Help Me" の演奏シーンが公開された。嬉しいサプライズ。2010年に発表されたアルバム "Mojo" のセッション時の映像だ。バンドの和やかな雰囲気も伝わり、胸が温かくなる。
 この時期のトムさん、容姿が抜群に良いのだ。髪型もかなり私の好み!ミドル丈で、前髪を流すのがトムさんは一番良いと思う。



 トムさんの丁寧な「拝みスタイル」のヴォーカルが好感度高し。というのは、この曲の主役はなんと言ってもハーモニカであり、スコット・サーストンである。彼の演奏を引き立てるためにすべてがあると言って過言ではない。一癖あるトムさんのヴォーカルだが、ここはひたすらに丹念に歌うことによって、ハーモニカの素晴らしさを損ねないよう、細心の注意を払っている。
 そういう意味では世紀の大ヴィルトゥオーソであるギターのマイクと、キーボードのベンモントも、最低限度の演奏で最大の効果をもたらしている。このふたりをこんな使い方が出来るなんて、なんて贅沢なことだろう!
 そういうわけで、"Help Me" はスコット・サーストンの名演奏を堪能する作品となった。イカしたロックバンドだけど、こんな小粋なこともできる、大人びた側面が鑑賞できて、充実感満点だ。

 動画を見ていてびっくりしたのが、2分21秒。トムさんとロンの背後の壁に、日本語で「ハートブレイカーズ」とあるポスターが貼ってある!これはびっくり。私は初めてその存在を知った。
 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの事ならなんでも分かる、Heartberkers Japan Party さんに確認してみると、1986年ボブ・ディラン with トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの武道館公演のポスターだそうだ。むむっ!!欲しい!!クラブハウスの様子が公開され始めた当初からあるそうだ。

 ちなみに、私は20年ほど前に、コンサート・フォー・ジョージのポスターを1万円で買い、いまも部屋の壁に飾っている。
 私は音楽そのもの ―― 楽器,楽譜,CDなどは物で持つ人だが、関連物 ――例えば、書籍、雑誌、グッズ、そういう類いの物はほとんど持っていない。そんな私でも、やっぱりディラン様とトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズがお揃いとなれば、このポスターは欲しい!もっとも、べらぼうな金額を出すほどではないけれど。

Crossroads Guitar Festival 20232023/10/04 20:40

 カリブ海の島にあるクロスローズ・センターはエリック・クラプトンが1998年に資金援助をして設立された薬物依存症更生施設である。
 1999年には資金集めのためのオークションがあり、ジョージも参加した。



 同年にはコンサートも行われ、そちらにはボブ・ディランも参加した。その後、数年おきに [Crossroads Guitar Festival] として豪華な参加メンバーを集めてコンサートが行われ、その収益はセンターの運営に役立てられている。
 これまでも何度か話題のコンサートがあったし、たしか数年前は映画にもなったような気がする。残念ながら1990年代以降のクラプトンにあまり興味が無い(ジョージの来日公演とCFGは例外)ので、あまりちゃんと見てこなかったのだが、今年のフェスティバルは、とりわけトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ・ファン「周辺」をざわつかせた。ジェイコブ・ディランのザ・ウォールフラワーズと、ロジャー・マッグインの共演があったからだ。どちらもトム・ペティとはとてもゆかりの深い二人。先日のディラン様とハートブレイカーズ共演も相まって、とにかく私の「周辺」はざわついている。

 まずは、ザ・ウォールフラワーズによる、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのカバー "The Waiting" ―― ジェイコブの世代のトム・ペティ・ファンとしてはど真ん中に決まる曲らしい。それにしてもジェイコブ、ますます父親に似た声になってどうするんだ。



 さらに、ロジャー・マッグインを迎えて、ザ・バーズの曲を披露。どうもどの動画を見てもマッグインのヴォーカルがうまく拾えていないというか…もともと声の大きい人ではないが…ちょっと残念。それだったらジェイコブがもっと出張って歌ってもいいのに。



 ジェイコブ、まだまだだな!トムさんなんてロジャー・マッグインにコーラスをつけながらウィンクして見せたんだぞ。
 "So You Want to Be a Rock 'n' Roll Star" も、もちろんトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ「周辺」の曲であって、背筋がぞわっとする。
父と息子、両方とも TP&HB 「周辺」で目立つ動きをする今日この頃。ダニー・ハリスンも新譜を出すし(聴く気は無いけど)、一体なにが起ろうとしているのだ…?!

Bob Dylan on Guitar with The Heartbreakers2023/09/30 19:42

 すでに周知のとおり、2023年9月23日、インディアナ州ナッシュヴィルで行われたファーム・エイドに、ボブ・ディランがサプライズで登場し、エレキギターを奏で、“Maggie's Farm,” “Positively 4th Street” そして “Ballad of a Thin Man”の3曲を披露した。それだけでも大サプライズなのだが、なんとバンドはザ・ハートブレイカーズだったのだから、もう驚天動地の出来事であった。

 無論、「ハートブレイカーズ」は正式にはハートブレイカーズではなかった。マイク・キャンベル&ザ・ダーティ・ノブズの現在のドラマーがハートブレイカーズのスティーヴ・フェローニであり、そこにキーボード・ゲストとしてベンモント・テンチが加わったのである。
 しかし、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのファンとしては、これはどう見てもハートブレイカーズであり、ボブ・ディランとの伝説のコラボの再現であった。

 演奏そのものの感想としては、ディラン様がもっとギターを練習しておいてくれていたら更に良かった。長年ライブではピアノを弾いていたせいか、ディラン様のギターが調子っぱずれで、ほとんど無調状態なのだ。でもまぁ、それはご愛敬だ。ヴォーカルは春に東京で見たとおりかなりイケている。
 何が重要かと言えば、ディラン様がロックに帰ってきたこと、ハートブレイカーズと共演したことだ。多くのロックスターが高齢になり、この世を去る人もある中、もうほとんど不可能と思われたディランとハートブレイカーズの共演。奇跡的だと言って大袈裟ではないだろう。
 トム・ペティの死後、マイクはハートブレイカーズが別の誰かをヴォーカルに迎えて活動することは、想像できていないと言っていた。実際彼はフリートウッド・マックに加わったり、ザ・ダーティ・ノブズで自ら歌いまくったりして、相棒亡き後の音楽活動を様々に試してきた。
 しかし、ここにきてなんとボブ・ディランをヴォーカルに迎えて、彼の曲を演奏したのだ。



 トム・ペティの死後、彼へのトリビュート・パフォーマンスは数知れず、ちいさな規模の追悼コンサートも行われていただろう。しかし、「コンサート・フォー・ジョージ」のような大々的、かつハートブレイカーズも加わっての追悼コンサートは行われていない。今回のディランとハートブレイカーズの共演は、その呼び水なのではないかと、かなり期待している。
 さらに興味があるのが、今回そういう経緯でこの共演が実現したのかという点だ。誰かディランとハートブレイカーズ両方を取り持てる仲介者がいたのか?ディラン様が気まぐれにハートブレイカーズ(ベンモント、もしくはマイク?)に声をかけたのか。
 私はマイクが首謀者ではないかとも思っている。彼はもともと無口で大人しく、控えめなキャラクターだが、その実いちど仲間になった人とのつながりをしっかり保持して、思わぬ所でその人脈を生かすという特技がある。そもそも、オリジナル・ハートブレイカーズ結成 ―― つまり、トムさん&マイクのコンビと、ベンモント及びその協力者をつなげたのは、実はマイクだったのかも知れないと。これはごく個人的な見解である。

 トム・ペティが突然この世を去り、世界はパンデミックに襲われ、そして今年、ストーンズが再始動し、ディランがエレキギターを弾きながらハートブレイカーズと共演する。もうひと波来そうだ。

Mike Campbell's "Handle with Care"2023/09/02 22:42

 引き続き、全国で絶賛上映中 CFG こと 「コンサート・フォー・ジョージ」。
 私は何十回も DVD で完全版コンサートを見ていたので、このたび改めて映画を見て驚いた点がいくつかあった。そのひとつが、あの名場面 "Handle with Care" がトムさんのインタビューで中断することだ。
 トム・ペティのことをよく知らない人のために言っておくが(そう方がこのブログを読むとは余り思わないが…)、この時のトムさんは、全米ツアー中にロンドンに飛び、大急ぎで CFG に加わり、また大急ぎでアメリカに戻るという、強行スケジュールだった。さらにこの2001年から2002年ごろに彼は体重をかなり落としており、要するにお肌の艶が人生で最悪の時なのだ。あのインタビュー映像は、いつもはもっと女優然としているトムさんにしては、かなりお疲れモードのビジュアルである。
 ともあれ、ウィルベリーズ・エピソードを語るトムさんのインタビューは、映画に入れたい。でも尺の問題で致し方なく "Handle with Care" に重ねることになったらしい。
 ジョージの公式動画にこの演奏はフルでアップされているので、ぜひとも鑑賞してほしい。



 何もかも素晴らしすぎて、言うべきことはたくさんあるが、ここではハートブレイカーズのリード・ギタリスト,マイク・キャンベルに注目したい。
 長年、トムさんのパートナーだったマイクは、そのデビュー当時から寡黙で静かなキャラクターで、決して歌うことはなく、ギター・プレイに徹してきた。そして彼のヒーローだったジョージとの友人関係は、彼の人生に大きな影響を及ぼした。
 ジョージは独特のメロディックなスライドギターの名手で、その音色を聴くとすぐに「ジョージだ!」と気付くのだが、マイクはそのジョージ・スライドを再現できるギタリストとしては筆頭に来る人だろう。
 そのことを証明したのが、この CFG でのスライドギターだった。これほどジョージへの尊敬を愛情を込め、丹念に演奏されたギター・ソロはない。CFG には名だたる名ギタリストが大勢出演しているが、やはりマイクの "Handle with Care" は出色であった。

 後年、マイクは所有するギターの話をした動画で、グリーン・ストラトキャスターとともに、ウィルベリーズのセッションに参加した話、ジョージの名演、それを再現する思いをかたっている。



 その後、"Handle with Care" はトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのライブ・ナンバーの定番となった。マイクはギターソロを弾き終えると、いつも天を仰ぎ、想いをジョージに捧げていた。
 ちなみに、若い頃からずっとカーリー・ヘアだったマイクが、突如ドレッドになったのは、CFG の後からで、自らのバンドで歌い始めたのも、この時期だった。ハートブレイカーズファンは、「歌うの?マイクが?」と驚いたものだ。
 ジョージの死というのは、マイクにとって人生における一つのポイントだったらしく、実は2017年にトム・ペティという相棒を失った後の彼の人生を支える要素もまた、ジョージの死後から形成されていたように見える。

 素晴らしいミュージシャンたちの、それぞれの人生、それぞれのジョージとの友情、そういうたくさんの想いの詰まった CFG。是非とも映画館で、そしてDVDで完全版を鑑賞して欲しい。

Wah Wah2023/08/26 20:57

 CFG こと、「コンサート・フォー・ジョージ」は全国で絶賛(に、違いない)上映中。音楽好きのみならず、ドキュメンタリーや、友情がテーマの映画が好きな人にもお勧めだ。一度と言わす、二度、三度と見て欲しいし、DVD, Blu-rayを入手して完全版コンサートを是非とも鑑賞して欲しい。



 大画面で堪能できる映画版はそれはそれで素敵なのが、一つ解せないのが "Wah Wah" をカットしたところである。ジョージの曲としては最後を飾り、何十人もステージにうちそろって大音響をぶちかます "Wah Wah" からの、"See You in My Dreams" という流れこそ、最高なのに。
 私だったら、"Beawere of Darkness" をカットして "Wah Wah" を入れるなぁ。ポールが登場してどっと盛り上がり、"Something", "While My Guitar Gently Weeps" というビートルズ・ナンバーからの、"My Sweet Lord" 、さらに "Wah Wah" というジョージソロ曲でどんどん存在感を失うポールも見物だし、ジョージの才能開花の様を堪能できる流れでもあるのだ。

 "Wah Wah”は言うまでも無く、ジョージがビートルズ末期にスタジオで(主にポールが)ああだ、こうだとうるさいのに耐えられず、スタジオワークを放棄して帰宅し、「むしゃくしゃしてやった」系の名作である。ポールを弁護するなら、ジョンが妙な連れをくっつけているのにも腹が立っただろう。
 ネガティブな感情は、名曲誕生のチャンスである。音楽には往々にしてそういうことがある。



 「コンサート・フォー・バングラデシュ」での演奏も格好良く、録音セッションに参加していたクラプトンは、この曲のパワーを熟知していた。最後にこの曲で大花火をぶち上げて、静かに幕を引く。クラプトンは素晴らしい演出家としての一面も魅せてくれた。ついでに言うと、トムさんも赤いテレキャスター(?)を抱えてステージに居るが、ちゃんとアンプから音が出ているかは不明。ともあれ満面の笑顔でクラプトンやダニーと大爆笑しながら楽しんでいる様子は、かなり長時間カメラに捕らえられているのでこれまた見物である。
 さあ、迷ってはいけない!いますぐDVDを購入!日本版じゃなくても大丈夫、日本語字幕がついている!私を信じるのだ!

 CFG における "Wah Wah" があまりにも名演だったので、この曲のカバーがその後続出した。2007年のオーシャン・カラー・シーンはその代表だろう。



 CFGの完全版は、"Wah Wah" 一曲でも買う価値がある。間違いない。

If you wached Concert for George theater movie2023/08/19 21:09

 さて、もう映画館で CFG こと、「コンサート・フォー・ジョージ」は見たかな?まだまだ全国で上映中なので、見に行こう!



 そして映画館で映画を見たら、即 DVD, Blu-ray を購入して欲しい。完全版である Complete concert は映画の何倍も凄いし感動も大きい。絶対お薦めである。

 私は当たり前のようにジョージのファンだが、中にはジョージには詳しくないけれど、ビートルズのファンだったり、出演者のファンの人もいるだろう。そんな皆さんは、完全版コンサートを鑑賞したら、いよいよジョージのソロ楽曲を聴いてみて欲しい。ビートルズ時代には想像もしなかったような、膨大で豊かで多彩なソロワークの数々を楽しめる。
 名作アルバムを買うのも良いが、まずはベスト盤の [Let It Roll / The Best of George Harrison] が良いのではないだろうか。ソロ初期から、亡くなるまでの楽曲が網羅されているし、ボーナストラック的にビートルズ時代楽曲のライブ盤も楽しめる。



 ベスト盤から気になった曲の収録曲のアルバムを聴き始めるのもお薦めだし、もうひとつ是非ともチェックして欲しいのは、ザ・トラヴェリング・ウィルベリーズのアルバム2枚のボックスセットである。ジョージ、ディラン様、トムさん、ジェフ・リン、ロイ・オービソンという最強の5人が揃ってノリと友情で作りあげた素晴らしき世界を堪能できる。CFG に通じるジョージの愛情溢れる人生をある意味象徴しているのだ。



 ジョージのベスト盤と、ウィルベリーズを聴いてからもう一度 CFG の完全版を見ると、号泣具合がまた違う。
 さらに踏み込むなら、[Concert for Bangla Desh] の映像と、[Live in Japan] のアルバムを聴くのがお薦め。さらなる CFG の完成度を思い知ることになるだろう。



The Best of Everything2023/08/15 19:50

 ロビー・ロバートソンと言えば、忘れてはいけないのはトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの "The Best of Everything" をプロデュースしたことだ。
 この曲はもっと前のアルバムのために書いておきながら、結局収録しないでいたもので、偶然テープがロビーの手に渡ったことをきっかけに、ロビーがプロデュースし、かなり分厚いホーンセクションをはじめとした音を足し、なおかつリチャード・マニュエルのコーラスまで加わった。
 その経緯について、「カントム」こと、The Conversations with Tom Petty で、トムさん自身が語っている。翻訳は私なので、あしからず。

Q:"Rebels"には、ホーンが上手くフィーチャーされていますが、抑えた音量になっています。同じく [Southern Accents] 収録の "The Best of Everything" とは対照的ですね。あちらのホーンは、とても明るく、目立つように、ミックスされています。
 それに、亡くなったリチャード・マニュエルもハーモニーで参加しています。

TP:彼はぼくのお気に入りシンガーの一人だ。でも、(リチャード・マニュエルが)録音したときには、一緒にいなかったんだよ。ロビー(・ロバートソン)がやったから。

Q:もともと、"The Best of Everything" は[Hard Promises] のために録音しとうとしていたのですか?

TP:うん。でも、長さ的に余裕がなくてね。いつも入れたい曲をカットする必要に迫られる。
 ([Hard Promises]に)入れなくて良かったよ。ロビー・ロバートソンが手を加えた後の方が出来が良いからね。彼が手を加えてくれたことによって、とても良くなったと思うんだ。
 ぼくが書いた中では、一番良い曲の一つだと思う。本当に良い曲だし、彼はそこを評価してくれた。今でも、この曲に関しては誇りに思っている。

 ぼくらがこの曲を作ったとき、ロビーは "The King of Comedy" っていう映画の音楽監督をしていた。それでぼくに何か良い曲はないかと訊いてきたので、ぼくは完璧に合うとても良い曲があると答えた。そうしたらロビーが言った。
「なるほど、この曲を借りて、金管とか加えても構わない?」
 ぼくは答えた。「もちろん。やってみてよ。」
 ぼくはずっとザ・バンドのホーン・アレンジが好きだったからね。それでロビーはこの曲を持って行き、少し編集を加えた。もともと、無くても構わない余計なひとヴァースがあったのだけど、これが凄いことになった。とても嬉しかったよ。

Q:(ロビーは)あなたが何かをまた追加で録音することなく、全てのミックスをやったのですか?

TP:そうなんだ。ぼくがスタジオに入ってくるのも嫌がってね。ぼくはこの曲を彼にくれてやって、仕上げるということを理解した上で、渡したんだからね。
 ある時偶然、ぼくはロビーが仕事をしている同じ建物で、仕事をしたことがあった。ぼくは彼のところへ行って、覗いてみようとした。ところがロビーはドアを締め切って言うんだ。
「だめ、だめ、だめ、入っちゃだめ。こっちが終わるまで近寄るな。お前さんが気に入らなかったら、また変えてやるから。」
 結局、ぼくは一音も変えなかった。出来上がりを聴いたとき、ぼくは「まじかよ、すげぇな」と思った(笑)。安心してくれると良いね。

 実のところ、ロビーは曲そのものに少し手を加えていた。彼がどこを削除したのかは覚えていないけど、とにかくもっと単純明快にしたんだ。歌詞には手をつけてないと思うけど、とにかく曲を少し短くした。
 さらにロビーはホーンのアレンジを加え、リチャード・マニュエルのハーモニーをぼくのボーカルに重ねた。

Q:あなたの声と重なったこのサウンドは好きですか?

TP:そりゃ、夢が叶ったんだから。ぼくはシンガーとして、(リチャード・マニュエルを)すごく尊敬しているんだ。(リチャードが録音した)その場に居なかったとしても、ぼくは満足さ。居たらぼくがドジるだろうし(笑)。
 ロビーは本当に良くやってくれた。彼には大きな借りができた。

 思っていたよりも多くこの曲について語っていた。ロビーがトムさんを締め出すところの口調は、それなりに考えて訳したつもりだ。ロビーはジョージと同い年だったから、トムさんにとっては完全に先輩格。そしてトムさんは有名な年上キラーである。この曲以外にもロビーとの共同作業もあったら面白かっただろう。

 実のところ私はある時期まで、このロビーによって分厚く作り込まれた "The Best of Everything" をそれほど評価していなかった。ハートブレイカーズにこのサウンドは、大袈裟すぎると思ったのだ。
 しかし、2006年に TP&HB のドキュメンタリー映画 [Runnin' down a dream] でこの曲が使われた場面が印象的で、評価が変わった。とても味わい深く美しい曲で、感動的なホーンやコーラスが加えられた名プロデュースに聞こえてきたのだ。
 トムさんが亡くなってから6年後に、ロビーが亡くなった。ロビーの才能を評価するのに、ふさわしい一曲としてこの曲も記憶しておきたい。

Complete CFG2023/08/04 19:32

 CFGこと、「コンサート・フォー・ジョージ」の映画館での上映はぜひとも見てほしい。さらにDVD, ブルーレイを購入して — 新品でも、中古でも、輸入盤でも良い(字幕には日本語がある)。Complete Concert こと、完全版を鑑賞してほしい。

 まず、コンサート全体の流れの妙が堪能できるからだ。
 荘厳な儀式、クラプトンの不器用ながらも心のこもった挨拶、そしてラヴィ・シャンカールの感動的なスピーチに続いて、重厚なインド音楽パートが始まる。ジョージが愛した深い哲学世界と多彩な音楽 — 精緻なリズムのとカラフルな音色の世界が堪能できるし、”The Inner Light” のライブ版という、稀なパフォーマンスも楽しめる。
 その重々しいインドパートからインターミッションをはさんで、やおらモンティ・パイソンのぶっ飛んだスケッチを配するこのセンス!”Sit on my Face” に続いて、木こりの歌で、どっと場が温まり、いよいよバンドパートが始まる。
 そしてバンドパートが最高潮に盛り上がっての、あのエンディングである。この盛り上がりからの感動的な終わり方という、なかなかできる演出ではない。私がいつも号泣してしまうのは、この完全版の完璧な流れのせいなのだ。

 劇場版ではカットされてしまった曲も絶対に見逃せない。
 エンディングロールでつかわれたものの、”Old brown shoe” と “Give me love” の映像も素晴らしく見ごたえがある。さらに、ジョー・ブラウンの “That's the way it goes” はアルバム [Gone Troppo] からの選曲で、ワーナー時代のジョージをよく表現できている。
 もっと見逃せないのは、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズによる “I need you” — このコンサートで演奏されたジョージの曲の中でも、もっとも作曲年代が古く、初々しいジョージの隠れた名曲を、心に染みる名演で再現してくれたトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ。トムさんの切ない表情も見逃せない。”Handle with Care” も、中断なく完全な形でぜひとも聞いてほしい。その再現性の高さに舌を巻くし、観客が総立ちになるのも当然に思われる。

 バンド・パートの最後の “Wah-Wah“は、なぜ映画でカットされたのか理解できないほど、素晴らしい演奏だ。何十人ものメンバーがステージにうち揃い、大迫力の祝祭的なパワフル・パフォーマンスはまさに圧巻。実のところ、CFG で一番の名演奏だと思うし、この曲の再評価はこのコンサートでの演奏によるところが大きい。圧倒的な “Wah-Wah” があったからこその、ラスト・ナンバー,”See you in my dreams” の本当の感動が伝わるのだ。

 そのようなわけで、全ての人に完全版 Complete Concert 見てほしいCFGである。全編感動と笑顔と幸福のフル・コンサート。きっとこれ以上のものはないだろう。

映画館に行こう!CFGを見よう!2023/07/30 19:22

 昨日、日比谷シャンテシネマでの 「コンサート・フォー・ジョージ」の上映を見にいき、その回の特典である、ピーター・バラカンさんのトークショーもいっしょに楽しんだ。

 CFG は、もっぱらディスクでコンプリート版ばかり見てはいちいち号泣していたので、劇場版は2003年の特別上映の時以来、初めて見たかもしれない。
 全然コンプリート版と異なる曲順に目を白黒させていた。トム・ペティ&ザ・ハーロブレイカーズなど、満を持して登場すると思い込んでいたので、ずいぶん早く出てきたなぁとびっくりしてしまった。
 モンティ・パイソンの存在が、どんなものだったのか、ジョージとそとの音楽にどう関係するか、説明するテリー・ギリアムが親切。でもパイソンの場合は歌詞の字幕をつけなかったのは不親切だった。
 入念なリハーサルの様子も豊富に挿入され、ジョージのために集った仲間たちの和やかで愛情豊かな雰囲気が伝わってきた。特にクラプトンのインタビューはたくさん採用されていた。結局のところ、彼にとってこのコンサートは、自分のためであり、自分のジョージへの愛情、ジョージを失った悲しみの消化のために必要だったと、率直に吐露していたところが印象的であり、感動的だった。ジョージが与えた音楽とその愛情の世界は、家族、友人、関係者、直接の知り合い、ただのファン、一人一人にとってクラプトンと同じような思いをもたらした。それをCFGという形で表現してくれたクラプトンに感謝だ。

 バラカンさんは大の CFG ファンであり、ラジオなどでもの大絶賛、ぜひとも見てほしいと言っている。
 今回の大スクリーンでの鑑賞で良かったのは、あの大人数 ― そう、何十人というすさまじい人数が揃ったステージの、それぞれの顔がしっかり確認できたこと。
 中でも、ゲイリー・ブルッカーもクラプトンやジェフ・リンとほぼ出ずっぱりで大活躍であり、マーク・マンやアルバート・リーの職人技が印象的だったとの事。そう、彼らの派手ではないが基礎のしっかしりた演奏に、CFGの価値は裏打ちされている。
 それから、ジョー・ブラウンと、ジュールズ・ホランドという、UK では誰でも知っている人の説明も親切で良かった。
 さらに、今は亡き人々 — ビリー・プレストンと、トム・ペティの存在は大きかったとも言っていた。ビリー・プレストンの声とオルガンは絶品で、聞いていると幸せな気持ちになる。そう、それは私も同じで、特に「コンサート・フォー・バングラデュ」でのビリー・プレストンは本当に見る方を幸せにしてくれたものだ。

 少し前に、パティ・ボイドが来日していたので、バラカンさんは彼女とも話していており、昨日の映画館でもやはりジョージ、パティ,そしてクラプトンという三人の複雑な関係にも触れた。結局のところ、ミュージシャンなんていい加減なもので、女癖の悪い連中うだったという、なかなか粋なコメントで、私は嬉しくなった。そう、ジョージって、男にもモテるけど、女性にもモテまくったからね。
 それでバラカンさんは、「Something を歌っているとき、エリックは何を考えていたのかなぁ、パティのことかなぁ」と仰っていましたが…

  ジ ョ ー ジ の 事 を 考 え て い た に 決 ま っ て る で し ょ !

 映画でも何度か涙腺にきたが、意外とコンプリート版ほどの号泣ではなかった。やはり、あの構成、”Wah-Wah” で最高潮に盛り上がった末の “See you in my dream” なのだなぁと思う。
 さぁ、映画館でCFGを見よう!そしてディスクを入手してコンプリート版を見よう!(海外輸入盤でも日本語字幕があるのでご安心を)。