Queen's Piper2022/09/21 21:39

 UK史、UK文化に興味のある者として、エリザベス女王の国葬は必見であった。がっつりテレビにかじりつき、NHKが中継を終えても、CNNで引き続き追っかけ、結局ウィンザー,セント・ジョージ・チャペルでの礼拝までつきあった。
 ウェストミンスター・アビーも見所だし、紋章官たちや、ビーフィーター達が居並んでいるのも壮観。紋章官といえば、紋章院(College of Arms)の総裁は代々のノーフォーク公爵だが、現公爵の長男(アランデル伯爵。これまた中世以来の由緒あり)ヘンリー・フィッツアラン=ハワードは、2000年代にカー・レーサーをしていて、ライコネンのチームで走ったりもしていた。彼も葬儀の席のどこかに居ただろう。
 女王の棺はウェリントン・アーチで車に乗り換えたのだが、ケンジントン・ロードを西にたどったので、ロイヤル・アルバート・ホールの前(厳密には裏)を通ったときも、おお!と思った。私はここでハートブレイカーズとディラン、計5回コンサートを見ていて、とても思い出深い。

 音楽的にも何か興味深いことがあるのではないかと期待していたが、こちらの方はそれほどサプライズもなかった。お祝い事の時は何でもありだが、さすがに葬儀となると、そうは行かないか。ヘンデルの曲くらいは聴きたかったかも知れない。
 しかし葬儀全体を通しても、もっとも印象深かったのは、"Queen's Piper" という、「女王のためのハイランド・バグパイプ奏者」の演奏だった。物の記事を読むと、女王のお目覚めのために窓の外で演奏する人が居たらしい。本当に日常的にそうしていたのかどうかはともかく、「スコットランド」のパイパーが、UK国王の棺が地下に降ろされようとするときに、別れの一曲を奏で、そして去って行ったのはかなり良かった。



 ところで、「70年ぶりの英国王の国葬」というが、果たしてそうなのだろうか。2015年にレスターでリチャード三世の葬儀が執り行われたではないか!現グロースター公爵(エリザベス女王の従弟)も出席したし、ベネディクト・カンバーバッチも来てくれた(そこか!)。リカーディアンの端くれとしては、一応強調しておかないと。
 厳密に言うと、これは funeral ではなく burial だったので、「埋葬式」とでも言うべきだろう。



 そんなこんなで、色々と動画を見ていたら、プラチナム・ジュビリーの時のオープニング映像,「女王陛下とくまのパディントンのお茶会」を改めて見て、気付いたことがある。
 女王とパディントン、そしてもう一人の登場人物である給仕。この給仕、サイモン・ファーナビーではないか!
 思えば、あの可愛くなくて、やや不気味 ――「そうじゃない感」満載 ―― でもUKカルチャー好きとしては、けっこう楽しめる映画「パディントン」の監督は、ポール・キングだ。「ザ・マイティ・ブーシュ」に、「バニー&ザ・ブル」の監督でもある。そうなると、この辺りのコメディ作品でお馴染みのファーナビーは自然なキャスティングだったわけだ。それこそ、リチャード三世の発掘ドキュメンタリーの案内役も、彼だった。
 ブーシュ・ファンとしては、ジュリアン・バラットだったらもっと面白かったな!

Her Majesty2022/09/09 21:33

 広く報道されているように、英国のエリザベス女王が亡くなった。イングランドではエリザベス二世。スコットランドではエリザベス一世。ランカスター公爵、およびマン島領主。そのほかにも色々。英国史に興味のある者として、多少の思うことがある。
 96歳。つい先日まで新首相を任命していた。まさに、自らが誓ったように、一生涯を女王としての責務に投じた。

 在位70年 … 途方もない長さである。ビートルズも、ストーンズも、どの UKロックも、モンティ・パイソンも、映画も、ドラマも、コメディも、みんな英国に女王陛下が君臨していることを基本背景としていた。
 女王陛下のネタ、好きだったなぁ。モンティ・パイソンズ・フライングサーカスのシーズン2エピソード13が、ロイヤル・エピソードと言われ、「女王陛下がご覧になる」…ことになっていた。ローワン・アトキンソンも、映画で殺し屋と間違えて襲いかかっていた。「ミニオンズ」でキンクスに乗って大爆走する女王陛下も良かった。
 ヴィクトリア女王が在位した時代、そのヴィクトリア朝文化が思い浮かぶように(ディケンズとか、シャーロック・ホームズとか、ボートの三人男とか)、きっとエリザベス二世の時代は「ロックの時代」として後世に記憶されるのだろう。

 動画はまず、"God save the Queen" ―― 2009年プロムスのザ・ラスト・ナイトから。



 そして、どうしても外せないのはビートルズの、 "Her Majesty" だろう。ビートルズのというか、ポールのなのだが、とにかく超名作アルバム [Abby Road] の最後にそっと添えられた短いラブ・ソングは、とても愛らしくて、お茶目で良かった。

The HU / Yuve Yuve Yu2022/08/11 20:04

 音大時代は、仲間の間で色々なもの(音楽、楽器、曲, etc.)が流行ったが、ホーミーもけっこう流行った。たしか楽器学の講義で、モンゴルの喉歌、ホーミーが紹介されて、一生懸命真似しようとしたのだ。楽器学の先生曰く、下手にやると具合が悪くなるらしい。
 ホーミーのみならず、民族音楽全般も人気だった。モンゴル、ホーミーとくれば、日本人の間では「馬頭琴」という名前で有名なモリンホールである。―― と来れば、モンゴルのロックバンド、ザ・フー (The Hu)である。「匈奴ロック」というネーミングは安直だが、これはけっこう格好良い。



 かなり突き抜けた感じが良い。バンドイメージ的にやや中二病でなくもないが、音楽としては骨格がしっかりしていて、スカっとする。
 モンホールはかなりアレンジを施しているが、「草原のチェロ」の異名を取る以上の力強さ。
 さらにホーミーを用いた独特の歌唱法が、印象的だ。こうなると本当に血と地のなせる技で、なかなか真似が出来るものではない。

 この "Yuve Yuve Yu"が2018年後半に公開され、世界中に認知されるに至っただのだが、その後の世界が COVID-19 の時代になってしまったのが惜しい。落ち着いたら、さらに面白いものをひっさげて日本のフェスなどにも顔を出したら受けるのではないだろうか。

オタマトーン2022/07/21 20:08

 オタマトーンが欲しい。
 オタマトーン自体は、2009年からあるが、最近この動画を見てしまい、俄にめちゃめちゃ欲しくなっている。



 "Got Talent" はある程度の演出も入っているだろうから、上手く盛り上げているのだが、とにかくこのギタリストのお兄さんの演奏が凄すぎる。あの可愛くて間抜けなオタマトーンの見た目と、上手すぎる演奏、素晴らしすぎる歌声(?)しかも、超名曲 "Nessun dorma" なので、何度見ても感動してしまう。
 演出上、おじさん審査員は渋い顔をしなければならないのだが、あきらかに頭を抱えて笑うのをこらえている。その後の展開はお約束通りで、無用に感動してしまう。とにかくこのお兄さんと、オタマトーンは圧巻だ。さすがプロは違う。

 オタマトーンは、あの明和電機の開発した楽器,玩具である。明和電機としては、間抜けな味わいとオンチな楽器という馬鹿馬鹿しさを狙ったのだろうが、その上を越える人が居るのだから、びっくりである。
 そもそもあのネック(?)の短さで、あの音域の広さである。音程調整がかなり微妙だろう。F1 で言うと、オーバーステアリング状態で、オンチになることを前提としているような気がする。

 明和電機の土佐社長はさすがに上手 … なのだが、途中でオタマトーン演奏を放棄(?)するのが最高。



 欲しいな~欲しいな、オタマトーン…器楽好きとしてはたまらない…だが、ギタリストのお兄さんのように上手に弾けるはずがない。それは分かっているのだが、"Nessun dorma" を熱唱するオタマトーンをまた見てしまう、そして欲しくなる…!

I Forgot More Than You'll Ever Know2022/06/30 20:54

 仕事中に少しラジオも聴くが、ちょっと気になる曲があると、咄嗟にメモを取ることがある。しかし咄嗟すぎてどういう脈絡でメモを取ったのか、後で分からなくなることも多い。
 "I Forgot More Than You'll Ever Know" もその一つ。知っている曲だが、なにか訳があってメモったのだろう。

 カントリーの有名曲で、最初にヒットさせたのは、1953年、スキータ・デイヴィスのデュオだった。



 デイヴィスはともかく、バンドメンバーのキメッキメの衣装が凄い。正直言 って趣味が合わない。

 無論、私が最も印象深く認識している "I Forgot More Than You'll Ever Know" は、ボブ・ディランとトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズによるパフォーマンスである。ディランは [Sefl Portrait] でも歌っているが、なんと言ってもこのトムさんとのデュエットが最高だ。



 ディランの [Self Portrait] は美声バージョンのディランなので、このライブでの歌い方が本家(?)と言うべきだろう。なんと言っても、ディラン様とトムさんという、ダミ声対決の真っ向勝負が最高である。双方一歩も引かず、鼻を突き合わせるように歌い切る。なかなかできることではない。大抵はどちらかが調和を取ろうとするのだが、この二人は意地になって突き進む。
 特にトムさんの明らかに高すぎるキー。一応、出る音域なのだろうが、ある程度の長さのあるフレーズには用いず、ハーモニーとして必要ならハウイに任せるべき所だ。
 しかし、相手はボブ・ディランである。トムさん自ら高音を張り続け、最後まで付き合うのがすがすがしいほどに格好良い。

 やはりファンとしては、ボブ・ディラン with トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのツアーは、決定版としての映像再販と、アルバムを出して欲しい。それこそ、どんな巨大な箱でも買ってしまうに違いない。

譜面台2022/06/26 20:06

 生まれて初めて、譜面台を買った。
 ピアノはともかく、10歳からのフルートに始まり、ホルン、龍笛、バロック・リコーダー、小鼓(能楽)、ティン・ホイッスル、ウクレレと様々な楽器を習っていながらにして、譜面台を所有していなかった方が不思議だった。
 これまで、適当な椅子を引っ張り出して、譜面をおいていたのだが、最近 Work from Home のために椅子を新しくしたのだ。コクヨのワーキング・チェア ing Life。お高い買い物だったが、長時間座るので、妥協はしない方がいい。さらにインテリア的にキャスターが無い方を選んだので、気楽に引っ張り出して譜面を置くには不便になった。
 そこで、遅ればせながら譜面台を購入したというわけ。

 譜面台を出しっぱなしにしておく人は、かなり頑丈で立派なものを購入するのだろうが、私は使うたびに取り出して、使い終わったらしまいたい。そうなると、当然折りたたみ式になるわけだ。
 この折りたたみ譜面台というのが、クセモノ。小学生のころから、いろいろな折りたたみ譜面台をあつかってきたが、だいたいどこかネジが緩んでいて、不安定だったり、台がひっくり返ったりする。音高、音大時代も、ダメダメな譜面台をだましだまし使ったものだ。

 今回購入したのは、安心と信頼の日本製、しかもヤマハ MS-250ALS アルミで軽く、黒いマットな仕上がり。正しい扱い方の動画で、白衣のお兄さんが真面目くさって譜面台を出したりしまったりしてるのが、なんだか面白い。



 ネジが緩くなりにくい構造で、安心感もある。折りたたんで袋に収納。コンパクトに!



 我ながらなぜ、これまで購入していなかったのか不思議だ。
 道具を揃えて、楽器練習にも熱が入る ―― はず。

5分で弾ける!?2022/06/22 19:08

 YouTube でチャンネル登録しているものに、有隣堂しか知らない世界 がある。毎週火曜日と金曜日の16時頃に更新される(「カッキーン!イチロー!」と覚える)のを、とても楽しみにしている。
 有隣堂は某地域の書店チェーンで、私もお世話になっている。下手なテレビよりも面白い、高クォリティの公式 YouTube チャンネルを運営しているという訳だ。ちなみに、私がこのチャンネルを知ったきっかけは、「キムワイプ」をググったことだ。(キムワイプは化学系の友達とのジョークに良く出てくる)

 何はともあれ、2022年6月7日の動画を見てほしい。



 うわ、ブッコロー・モデルが出たら、アクリルのサンレレちょっと欲しいかも!
 しかし、この動画を見せられたウクレレの先生(ギタリスト)曰く…

「ええ~だめっすよ~コリングス・オーナーがこんなん、だめっすよ~え~なんすかこれ、ぜ~ったい音痴な楽器っすよ~防水とか言って、ネック木製じゃないっすか~」

 …とまぁ、けちょんけちょんだが、けっこう楽しんでいた。ブッコローの影響で、先生のところにもサンレレを抱えた人が来るかも知れない。

 そしてまたある人は、「ミンミンの方がよくない?」と言う。ミンミン?
 「みんなの民族楽器」ことミンミンは、2005年生まれと言うからサンレレとおなじくらいの歴史だろう。楽器の大きさの割に響きが豊かで、三弦のフレット付き。



 そもそも、演奏が容易なギター型の新しい楽器としては、一五一会が知られている。こちらも調べてみると、できたのは2003年だそうだ。つまり、サンレレやミンミンと、ほぼ同時期ということになる。



 ブッコローが、「指がつって F を抑えられず、窓からギターをぶん投げたと」言っていたように、多くの人がギターに挑戦しはては、夢砕かれてきたのだろう。そんな人たちのために、より容易に弾ける、お手軽な撥弦楽器が色々考案されているらしい。世界に目を向ければ、もっとたくさんあるだろう。
 先生曰く、「弓を使うのでなければ、この手の楽器は大抵弾ける」とのこと。そういえば、トムさんもマイク先生のことを「フィドル以外の弦楽器は何でも弾ける」と言っていた。
 確かに、ピアノが弾ける身としては、あの手の鍵盤楽器はそれなりに練習すればなんとかなるだろう。
 結局は、どんな楽器にしろモノにするには「それなり」の練習,努力が必要というわけだ。どうせ楽器を習うなら、「簡単」や「5分」がウリの安っぽい楽器よりも、まともな楽器を一日も早く習い始めることをお薦めする。退職したらなどと言っている場合ではない。ブッコローの人は若くもないが、かなり器用な方である。
 私は結局、根がクラシックなんだと思う。

The Webb Sisters2022/06/02 21:05

 モナコ。フェラーリに期待した私が馬鹿でした。

 フルポン村上が、永世名人に昇格!おめでとう!

 なんとなく動画を眺めていたら、2019年に開催された、トム・ペティのトリビュート・コンサートで、ハッティー・ウェッブが自分のオリジナル曲を演奏する動画が目に付いた。ちなみに、舞台上に見えるところでは、ロン・ブレアがいる。
 ハッティー・ウェッブとは、もちろん2017年にトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズが最後のツアーを行ったときに共演した、バックコーラス・デュオ,ウェッブ・シスターズの妹の方である。



 これはとても興味深い。なんと、ハープ ―― アイリッシュ・ハープくらいの大きさだろうか ―― を立ったまま肩から懸けて、体の前で弾きながら歌うというスタイルなのだ。
 ハープを弾く人(ハーパー、もしくはハーピスト)が、こういうスタイルでいるのは、初めて見た。大抵のハーパーは座って演奏するもので、大きなハープだと床に置き、中くらいなら支柱を立てて少し高さを出し、小さければ膝に置いて弾くのが普通だろう。
 ギターのように担いで弾き、なおかつ歌うというスタイルは、とても珍しいのではないだろうか。並大抵の技術ではない。
 ハッティはハープのほかに、ブズーキも弾くとのこと。姉のチャーリーは、ギター,クラリネット,ピアノを弾く。器用な姉妹デュオで、歌も上手いのでジョン・ピアースの紹介でナッシュヴィルに進出し、レナード・コーエンのツアーに同行することも多かった。
 そして2017年のハートブレイカーズとのツアーである。UK はケントからやってきた、ザ・ウェッブ・シスターズ、恐るべし。

Talisk's Mohsen Amini - GEAR MASTERS2022/02/11 19:46

 去年からすっかり魅了されてしまった、スコットランドのモダン・フォーク・グループ,タリスク。今日、新譜 [Dawn] が発売されるらしいのだが、どうすればダウンロードではなく、物理的な盤が手に入るのだろうかと思案している。たぶん、少し待てば日本の Amazon でも手に入るだろう…

 実はタリスク、メンバーが替わっていた。これまでのフィドルはヘイリー・キーナンで、 "Aurora" というシングルの時も彼女が弾いていたが、去年のうちにグレアム・アームストロングに交代した。ヘイリーの背筋の伸びた佇まいが好きだったのだが…
 ともあれ、新メンバーとともに、代表曲 "Echo" をテレビのライブで演奏している。それはもう、ものすごい速さで!ヒヤヒヤするような速さだが全く破綻しない、凄まじい演奏だ。一人ならともかく、三人の合奏でこのスピード。神業である。




 ところで、Digital Tour Bus というミュージシャンの機材を紹介しているらしい YouTube チャンネルに、タリスクのフロントマンにして、コンサティーナの天才,モーセン・アミニが登場している。
 まずはその愛器,ドイツ製のコンサティーナを紹介。ボタン・アコーディオンはその演奏方法が複雑だとはきいていたが、本当にその通りで、一つのボタンでも押すと引くとで音程が違う。これを完全に覚えて操るようになるには、相当の鍛錬が必要で、できれば子供のうちにたたき込むのが良さそうだ。



 話についていけなくなるのは、足下に広がる数々のエフェクター、機材たちである。エコーをかけるくらいしか私の想像力の範囲にないが、実際はオクターブ低い音を増幅させたり、あらかじめ和音を仕込んでおいて足で演奏したり。こうなると、ピアノの蓋をあけて、椅子に座って弾くだけが全ての私には、とてもついていけなくなる。
 ともあれ、そういうついて行けないテクノロジーの上に、確実な技術と音楽性が乗って熱いライブ演奏になるのだろう。タリスクがまた来日公演をしてくれれば、かならず駆けつける。その日を待つばかりだ。

Unchained Melody2021/12/26 23:12

 全日本フィギュアスケート選手権が終わり、とりあえず私にとっての今年のスポーツイベントには、区切りがついた。
 女子は大好きな坂本花織が、完璧な演技で魅せてくれて大満足だ。オリンピックの表彰台はロシア勢で占められることが予想されるので、坂本がどこまで食い込めるかが注目。全日本選手権で燃え尽きずに、オリンピックにまたピークを持ってきて欲しい。

 音楽面の話だが、羽生のショート・プログラムは去年の "Let me entertain you" が凄く良かったので、謎のピアノ・バージョン「序奏とロンド・カプリチオーソ」(サン=サーンス)になったのが残念。四年前のショパンの「バラード1番」と味付けが被ってしまうのだ。
 一方、金メダル大本命のネイサン・チェンは、ショート・プログラム、フリー・プログラム、ともに二シーズン前の「ラ・ボエーム」と「ロケットマン」にする、とのニュースが入ってきた。これは正解だと思う。ショートの「ネメシス」で、四年前に取り逃した金を「取り戻す」という思いつきは、なんだか好きではなかったのだ。頑張れネイサン。応援してる。

 今回の全日本で印象的だったのは、三宅星南のショート・プログラムだった。演技が全体的に素晴らしかったし、私は生まれて初めて "Unchained Melody" が良い曲だと感じた。
 こういう甘ったるいムード歌謡みたいな音楽は好きではないのだが、三宅君の演技の熱量が素晴らしく、この曲の盛り上がりを効果的に伝えてくれていた。
 音楽ファンでありながら、フィギュアスケートのファンで良かったと思う瞬間の一つが、音楽の良さを別の切り口で感じることが出来る、こういう体験ができることだ。