Listen to Her Heart 今昔2024/08/11 20:03

 一向にマイク・キャンベル&ザ・ダーティ・ノブズの新譜 [Vagabonds, Virgins & Misfits] のディスクが届かない。たしか昨日には届くようなことを Amazon がいっていたような気がするが…。私はどうしてもディスクが欲しい!

 仕方がないので、MP3 ダウンロードで買った音源を聴いたり、マイクの最近のライブ・セットリストを見たりする。
 セットリストは、日によってけっこう違ったりする。7月16日トロントでのライブでは、18曲中8曲がTP&HB、もしくはトムさんのソロ曲という選曲だった。これだけトムさんを感じられるライブなら、ハートブレイカーズのファンとしても満足といったところだろう。

 何度でも言うが、いったい誰がこういう展開を想像しただろうか。
 つまり、シャイで控えめで無口で大人しいギタリストのマイクが、相棒のトムさん亡き後、フロントに出てきて歌いまくり、オリジナルもハートブレイカーズの曲も網羅する。しかもツアーまで展開しているのだ。
 マイクのオリジナルイメージからの最初の変化は、2002年頃だったと思う。私はジョージが亡くなった後が変わるタイミングと見た。髪をドレッドにしてギター・ソロの時にちょっとステージの前に出るようになった。
 そして運命の2017年、トムさんが亡くなり、ダーティ・ノブズのアルバムを発表し、バンドのフロントマンとして活躍。とことん音楽を愛している人で、レコーディングもライブも大好き過ぎるのだろう。

 最近のマイクが歌っている "Listen to Her Heart" と1977年のTP&HB を見比べると、隔世の感があるような、いや実のところ大して変わっていないような。47年の月日を超え、名曲と名ロックバンドの息吹は生き続けているようだ。



Green Book2024/08/04 20:25

 夏の休みの時期、すこし映画を見ることもある。  「グリーンブック Green Book」は2018年の映画で、いろいろな賞を獲得しているし、ピアニスト関係、友情の物語という事で、もっと早く見ていてもよさそうな作品だったが、なんとなく今まで機会を逃していた。

 一流かつ高名な黒人ピアニスト、ドン・シャーリーは、映画ではクラシックのピアニストとなっているが、実際にはジャズを取り入れた自作を演奏する人であり、純粋な意味でのクラシック・ピアニストとはいえなそうだ。バッハを思わせる対位法を駆使し、ジャズ的な味わいで、個性豊かな演奏が映画でも再現されて、とても印象深かった。
 物語としては、1962年当時の黒人差別、「黒人らしさ」「白人らしさ」という価値の決めつけ、セクシュアリティも相まって、孤独との闘いに考えさせられた。それゆえの困難、苦しみがあっても、友情を得ることもできるという、希望の映画であった。その救いの点がこの映画の言いたいところだろう。

 黒人のクラシック・ピアニストと言えば、真っ先に思い出すのはアンドレ・ワッツ。去年亡くなった。 ワッツはシャーリーより約20歳若かった。母親はハンガリー人という点も、シャーリーとは異なる。
 ともあれ、ワッツはそのすさまじいヴィルトゥオーソぶりで、世界を圧倒した。動画サイトなどを見るとひどく下手な 「ラ・カンパネッラ」溢れていて辟易するが、私がこの曲の演奏を人に勧めるとしたら、断然アンドレ・ワッツだ。



 映画の中で、シャーリーが大衆的な(黒人が入れる)レストランの舞台で、ピアノの腕を披露するシーンで、ショパンのエチュード「木枯らし」を弾いた。この曲は私でも弾くぐらいなので、「最難曲」というわけではないが、短くて派手で技術を見せつけるにはうってつけの選曲だ。
 小林愛実さんの演奏を聞いたら、映画での演奏が吹っ飛んでしまうくらい素晴らしかった。けた違い。

Summertime Blues2024/07/30 20:15

 先週から、標高の高い避暑地に来ている。子供のころから毎年来ているのだが、ここ数年の暑さは大変なもので、昨日はとうとう最高気温33度を記録してしまった。避暑地なのでそもそもクーラーがない。仕方なく扇風機をぶん回して(川合ちゃんがエンジンを酷使することを表現するのに使う言葉)、なんとかしのぐ。仕事もしているので、本当に大変だった。
 一転、今日はぐっと気温がさがり、いつもの避暑地に戻る。時間によっては、長袖の上着が必要になったりするのである。

 この時期になるといつも、"Summertime Blues" の動画を検索する。たしか去年か一昨年は、エディ・コクランのオリジナルと、キース・リチャーズを見たのではないだろうか。
 今年は1969年ザ・フーのライブを鑑賞。
 ザ・フーは好きだが、主にロジャー・ダルトリーのルックスというか。スタイルがタイプではない。フリンジというより、梱包用ビニールテープみたい?



 最後にギターをガチャガチャ鳴らしたり、ぶったたいたりするのは余計だと思うが、曲そのものの演奏は最高に格好良い。4人で ― しかもヴォーカルは楽器を持たずにこれだけの演奏をするのだから、ザ・フーこそ最高のライブ・バンドの名にふさわしいと思う。
 特にジョン・エントウィッスルとキース・ムーンのリズムが最高に格好良い。この二者は何物にも代えがたい個性を持っていて、ザ・フーをほかのどのバンドとも異なるものにしている。

 ごく断片的ではあるが、1967年ジミ・ヘンドリクスの音源もある。これはザ・フーとは逆にギター・ブレイクを訊いてみたかった。

Mitsuko Uchida: 2024–2025 Carnegie Hall Perspectives Artist2024/07/18 21:45

 ニューヨーク・カーネギー・ホールの動画に、内田光子が登場していた。いわば看板ピアニストとでも言うべきか。内田さん自身は英国籍のロンドン在住だが、カーネギー・ホールやニューヨーク・スタイン・ウェイの看板でもある。



 内田さんが喋っているのはあまり聴いたことがなかったが、なかなか独特な英語を話す。英語のうまいどの日本人とも違う感じ。UK が長いということもあるが、たぶん音楽的に話すからだろう。
 さすがこれほどの最高のピアニストともなると、若い頃から好きな作曲家が違う。
 シューベルト!渋いというか、難しいというか … 歌曲はともかく、ピアノ・ソナタなんて、学生が自由曲には普通選ばない。私など、縁がなさすぎて…学生の時に1曲?社会人になってから1曲?それくらいしか弾いていない。
 2019年の来日リサイタルはシューベルトのソナタだけ3曲という凄い内容で、もうサントリーホールの再後列で絶句してしまった。その緻密さ、繊細かつ雄大で自信に溢れ、知的で気高い、超絶演奏だった。しかもシューベルトだけで世界ツアーをしていたのだから、そんな凄まじいピアニストがほかにいるだろうか?

 内田光子の語る音楽の世界は「好奇心」と「発見」の連続。それらが彼女に新しい音を紡ぎ出させているのだろう。
 もう一度生で聴きたいピアニストの一人だ。

 断片的だが、モーツァルトのピアノ協奏曲20番。内田光子の弾き振り。
 うわぁお!これも見たい!

Tom Petty: Somewhere You Feel Free - The Making of Wildflowers in Amazon Prime Video2024/07/13 21:07

 友達に教えてもらったのだが、[Tom Petty: Somewhere You Feel Free - The Making of Wildflowers] の日本語字幕付きががアマゾン・プライム・ビデオで見られる。
 最初、英語の字幕ばかり追ってみてしまったので、日本語字幕は嬉しい。早速鑑賞した。
 鑑賞する人には、是非とも良い音環境を整えて欲しい。パソコンやタブレットのスピーカーなど、もってのほか。Bruethooth 接続のモバイル・スピーカーや、イヤホンもちょっと信用できない。できれば有線スピーカーか、イヤホン、ヘッドホンが良いと思う。
 こちらはYouTubeの動画。同じ内容だが、字幕は英語のみ。



 日本語字幕を見て、最初に英語字幕で見たときと理解がそれほどかけ離れていないので安心した。
 より印象強く思ったのは、2枚組アルバムがふさわしいこのセッションが、結局営業的課題で1枚にカットされたのは、関係者にとって残念だったということ。そして完全版が2020年に即完売したため、2枚組でも成功したことを証明した ―― と締めくくられているが、そこはどうだろう。まず [Wildflowers] が1枚で大ヒットし、その後の新譜、ライブ活動を経て、そして完全版という流れなので、「証明」というのはちょっと違うかな。

 それから毎回驚くのだが、マイクの話す声はあまりにもトムさんとそっくり過ぎる。トムさんが喋っているのかと思ったら実はマイクだったというシーンが何度かあって、ちょっとゾクっとする。
 誰か、マイク・キャンベルのドキュメンタリー映画を作らないだろうか。ハートブレイカーズとして、トムさんの相棒として、セッション・マンとして、ソングライターとして、そしてとうとうバンド・ヴォーカル・フロントマンになるという、中々充実したミュージシャン人生を送っていると思う。

 さて、Heartbreakers Japan Partyさんのメール・マガジンが報じるところに寄ると、TP&HBとの仕事を多く行ってきた、マーティン・アトキンスが、この映画で自分の撮影した映像が無断で使われ、使用料も払われていないとして、ワーナー・ブラザーズを訴えたとのこと。
 そんなことってあり得る…?21世紀も四半世紀を迎えようとする、しかもアメリカでそんな基本的なアーチスト(映像作家を含む)の権利が無視されることなんて…?何かの行き違いか、手違いか、はたまた悪辣弁護士が暗躍しているのか…
 奇妙な世界である。

Petty Counrty2024/07/08 21:46

 実は当初、[Petty Country] を買うつもりはなかったのだ。
 トム・ペティのトリビュート・アルバムとなれば買って当然のはずだが、それがカントリー・ミュージシャンによるものだというところが問題だった。私はカントリーが苦手なのだ。
 ロックのルーツを探って色々な音楽を聞いていた時期、ブルースやゴスペルはとても好きだし、苦手なジャズでさえ、そのルーツの一つであるラグタイムなんかは聴くのも弾くのも好きだったりする。しかし、カントリーだけはその能天気過ぎる雰囲気がだめだった。自分でピアノを弾く場合もそうだが、音楽には――たとえ明るい音楽でも ―― 鬱情が必要だと思っているのだ。
 軽すぎ、明るすぎ、ダサいファッションに貼り付けたような笑顔、カントリーのそういう雰囲気じが苦手なため、更に上流へ遡り、アイリッシュ・ミュージックに落ち着いたという経緯がある。

 まぁ、そういう訳でカントリー界の大物が揃って参加するという触れ込みの、その名も [Petty Country] ―― うーん、どうなんだと思うのは当然だった。
 ただ結局買う気になったのは、マイク・キャンベルとベンモント・テンチが参加していることと、スティーヴ・アールも参加していることだった。スティーヴ・アールは、私の中でカントリーカテゴリーには存在しておらず、私が聴く音楽の人だからだ。

 アルバム全体的には、冒険的なアレンジがほとんどなかったのが面白かった。純粋にトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのファンで、オリジナルの良さを再現しようとする姿勢がそうさせたのだろう。このことは、私にとっては嬉しかった。聴いてて気持ちの良い素敵なアルバムだ。
 世の中には、「ビートルズをクラシック風に」みたいなシロモノがあるが、心底退屈だと思う。

 特に良かったものを2曲。
 まず Dierks Bentley (読み方がわからないくらい、まったく知らない)による、"American Girl"。フィドル、マンドリン、バンジョーなどの、カントリー要素こそ取り入れているが、トム・ペティ・モデルのリッケンバッカーにレスポールのサウンド。ほとんどオリジナルに忠実で、トムさんへの愛情が非常に良く伝わってくる。



 お次は、マーゴ・プライス ――こちらも全く知らない ―― による、"Ways To Be Wicked" これまた原曲に忠実な騒々しさで好印象。なんといっても、マイク・キャンベルが参加…参加どころか、バックコーラス(!)を務め、ギターを弾きまくる。ああ、活き活きしているなぁ。

One Hit (To The Body)2024/07/02 20:41

 F1 オーストリア GP, フェルスタッペンとノリス君のバッドエンド。ああ、とうとうやってしまったなという感じ。
 ずっと1位、2位をこの二人が占めていたし、レースの展開としても終盤にノリスが追いつくようになっていた。フェルスタッペンのアドヴァンテージがみるみるうちになくなり、とうとう接触、双方パンクという結末におわった。
 私はこれを待っていたような気がする。とにかくフェルスタッペンが好きではないのだ(別に致命的に嫌いなのではなく、なんとなく好きじゃ無いポイントが多いだけ)。そこへ、お気に入りのノリス君が追いついたのだ。
 チャンピオン交代劇のファースト・コンタクトというべきだろう。双方真剣であり、譲れない勝負だった。どちらが思慮不足だったとは思わない。
 「友情の危機!」などと言われているようだが、それほどの友情でもあるまい。基本、仕事の仲間であり、同士であり、ライバルなのだ。セブとキミのような友情を想定してはいけない。

 男の友情の危機 ―― と言う音楽となると、だいたいは女性がらみになり、ほぼ間違いなく友情は破綻する。まぁ、本当の友達だったら、彼女を好きになっても自制できるのが人間の理性というものだろう。野生動物じゃあるまいし。(ジョージとクラプトンだけは人類の例外…じゃなくて、ジョージが特異なのだ)。
 ロックバンドというものは、往々にして友達同士で組む場合がある。しかし、その音楽的能力の差や、価値観の違いで仲違いをしてしまうことも多い。バンドがたくさん組まれると同時に、たくさん解散するのは当然の流れだ。

 1985年、ローリング・ストーンズは解散の危機にあった。ミックとキースがかなり険悪な関係になったためである。主な理由はミックが秘密裏にソロ契約を結んでいたことらしいが、ストーンズ第一のキースにはそれが許せなかっただろう。
 40年経ったいまなら、ソロ契約なんてそれほど深刻に考える必要もなかったことがわかるが、当時は本当に厳しかったようだ。でも、ミックもキースもストーンズを解散させることはさすがに考えなかったらしい。そこでロニーの力も借りてなんとか曲を「共作」し、アルバム [Dirty Work]を完成させた。
 "One Hit (To The Body)" のミュージック・ビデオは、その頃の二人の険悪な関係をよく表しているとも言われているが、それにしてもうまく撮れている。
 二人の仲はアルバム発表後もさらに悪化したとされているが、1989年までには関係修復している。誰かが言っていたが、ミックとキースは「なんとなく仲直りしてしまう」そうだ。


Vagabonds, Virgins & Misfits2024/06/26 20:48

 案の定、品切れになっていたマイク・キャンベル&ザ・ダーティ・ノブズの新譜 [Vagabonds, Virgins & Misfits] の CD を待ちきれず、MP3で買ってしまった。もちろんCDも買うので二重に購入しているのだが、構うものか。

 期待を遙かに上回る名盤であることは、オープニング曲から分かる。
 "The Greatest" の壮大でワクワクするようなビートルズ・サウンドに、のっけから大泣きしてしまった。なんてことだ、こんな素晴らしい曲を後に残して、トムさんは天国へ行ってしまったのか。



 先日も記事にしたが、やはり "Angel of Mercy" はキラー・チューンだ。サビのポップなノリはちょっと気恥ずかしくなるほどだが、聴く人それぞれの青春を映し出しているようで、笑顔にしかならない。



 さらに、ヘヴィなサウンドと、うねるようなスライドギターから、開く感じのサビの気持ちよい "Dare To Dream" ―― この冒頭三曲の素晴らしさはなかなか類を見ない。



 その後テンポは様々だがヘヴィな曲が続く、そしてキラキラしたサウンドが魅力的な "Innocent Man" 、マンドリンの響きが素敵だ。


 最後に、いろいろな比喩を含んでいるであろう、別れのカントリー・ロック・ナンバー "My Old Friends" これは間違いなく、ベンモント・テンチが参加しているだろう。



 こんな素晴らしいアルバムを出されると、ライブも見たくなってしまう。でもアメリカ以外では無いだろうし、会場も広くないだろう。私が気軽に(?)行けるような、良い感じのマンハッタンでライブしてくれないだろうか。

Sail Away2024/06/21 19:55

 マイク・キャンベル&ザ・ダーティ・ノブズの新譜 [Vagabonds, Virgins & Misfits] の到着を待ってウキウキしていたのだが、いつまで経っても届かない。しまいにはアマゾンから、在庫切れのため8月10日到着予定などとひどいことを言われて、発狂している。
 いっそUSのアマゾンで買うか。MP3で二重に購入しても良いのだが、やはりあのCDを挿入して、ちゃんとしたオーディオから聴くとう手順を経たいのだ。
 我慢がいつまで続くやら。

 携帯音楽プレイヤーには、もう処分してしまった CD の楽曲もいくらか残っている。そいう曲の中で、ハリー・ニルソンの "Sail Away" に強い感銘を受けた。
 CDを確認してみると、どうやら彼のアルバムは全て処分してしまったようだ。大袈裟なオーケストレーションは好きではないが、ハリー・ニルソンの絶唱は賞賛に値する。



 オリジナルはランディ・ニューマンの作詞作曲。
 美しい音楽とはうらはらに、歌詞はかなりきつい。人類の愚行をその当事者になりきって歌い上げ、強烈に皮肉っている。なかなか思い切った試みで、ランディ・ニューマンの肝の太さ、詩人としての覚悟が分かる。
 ロック史でもっとも優れた楽曲の一つであるディランの "Like a Rolling Stone" も、けっして愛や夢、希望そういう明るく楽しいテーマではない。いわば人生の苦難を「当事者になってみてどうだ」という痛烈な皮肉をあれだけの名曲に乗せて歌い、叫んだのだから、改めてその凄さを思い知らされる。

Angel Of Mercy2024/06/11 20:25

 マイク・キャンベル&ザ・ダーティ・ノブズの新譜 [Vagabonds, Virgins & Misfits] の発売が迫り、収録曲から "Angel or Mercy" のビデオが発表された。
 これがとてつもなく良い!ロックンロール最高!



 軽快で疾走感たっぷり、さわやかで若々しい、まるでハートブレイカーズの青春時代そのもののような雰囲気で泣きそうになる。
 良いところを挙げれば切りが無いが、まずギターサウンドの良さが堪能できる。何か特別な奏法とか、超絶技巧などではないが、リズムギターの迷いのないドライブ感が美しいという次元にまで高められている。スライドも交えたソロは、決して派手ではなく、歌のために最大限かつ最小限のサウンドで心を満たしてくれる。いっそ、使用した全てのギターを一つ一つ報告して欲しいくらいだ。
 マイクのヴォーカルも堂に入った物で、ブレイクに入る前の "Oh" のバックコーラスなど、トム・ペティの声をサンプリングしたのではないかと思うほどそっくり。
 リズムセクションもキリっとしていて、しかもポップで明るい。サビの歌詞 "Angrel of mercy" の後に入るドラムとタンバリンの合いの手なんて、ポップ過ぎて一緒に飛び跳ねるしかない。

 びっくりするのが、こんな名曲を、トムさんがさばききれずに放置していたと言うことだ。トムさん自身がまた有用なソングライターなため、まぁ、マイクのこの曲は誰かに提供してもいいか…というノリか、トムさん自身がそのうち自分で歌うつもりだったのか。
 トムさんを失ったマイクは今、自分自身でやるしかない。そう、やるとなったらやるしかないのだ。人生は悲しみと喪失の連続。それでも生きている人は生きるしかない。そんな誰もが心にかかえる痛みに対する、素晴らしい応援歌 ―― それが "Angel of Mercy" なのだろう。