Astrid Kirchherr2020/05/20 21:27

 アストリッド・キルヒアが亡くなって、ニュースになるのだから、やはりビートルズは格の違う存在なのだと思う。

 彼女は22歳の時に、ハンブルグで活動していたビートルズと出会って交友を深め、彼らの写真を多く残した。
 まずここに、ビートルズの運の強さがあった。彼らの音楽だけではなく、ルックスにも魅力があることを、写真をやっていた彼女が理解し、作品として残したのだ。そういう資料の豊富さも、ビートルズは群を抜いている。

 アストリッドは1938年生まれなので、ジョンよりも二つ年上。若い彼らにとっては、それなりに意味のある年齢差だっただろう。アストリッドはおしゃれでイケてるお姉さんとして、彼らをプロデュースし、あの髪型や、ファッション、「見せ方」を作り上げていった。
 ジョージにとっては五歳も上となると、かなり大人に思えただろうし、実際アストリッドに憧れのような好意を抱いていたらしいと、アストリッド自身が認識していたようだ。

 最初にビートルズがハンブルグに来たときは、まだリーゼントのやぼったい少年たちの写真が残っているのだが、二回目に ―― つまり、スチュアート・サトクリフが亡くなった後 ―― 来たとき、スチュアートのアトリエで、撮影したジョンとジョージの写真が、一番好きだ。



 映画 [Living in the Material World] でもアストリッド自身が語っていたのだが、スチュのアトリエで、親友を失った悲しみを抱えるジョンと、それにそっと寄り添うジョージの姿は傑作だ。ジョージがほとんど守護天使のように見える。
 ジョージはまだ、ジョンとポールの後をくっついて回っている少年に過ぎなかったかも知れないが、アストリッドはどこかで、彼の深い精神世界のようなものを感じ取っていたのかも知れない。