The 50th anniversary of Sweetheart of the Rodeo2018/08/04 21:02

 ロジャー・マッグインとクリス・ヒルマンが、ザ・バーズのアルバム [Sweetheart of the Rodeo] の発売50周年のツアーを先月開始。そして9月,10月にさらに三回ライブを行う。

 まず、[Sweetheart of the Rodeo] の確認。
 1968年8月30日発売、ザ・バーズの6枚目のアルバム。一時期バンドに在籍したグラム・パーソンズの影響もあり、カントリー色が強い ― と、言うよりは「カントリー・ロック」そのもの。
 ちなみに、「俺たち『ロデオの恋人』、何枚持ってる?!」という台詞でも有名(?)往年の名盤が、手を替え品を替え、何度もリイシューされて、ファンは何枚も買わされるという話。
 ちなみに、私はカントリーが好きではないので、『ロデオの恋人』は一枚しか持っていない…

 7月24日,25日のセットリストをチェックすると、痛感させられた。これ、見に行った方が良かったかも知れない。9月、10月もあるので、行ける方はぜひ。



 アンコールは四曲 ―

So You Want to Be a Rock 'n' Roll Star
American Girl
Runnin' Down A Dream
Turn! Turn! Turn!


 これは、会場にいたら言葉を失っただろう。マッグインとヒルマンが、亡きトム・ペティに捧げる締めくくり。
 トム・ペティがいなかったら、ザ・バーズはきっと現在あるような評価を受けていなかっただろう。この金髪の美しい「青年」が、60年代の伝説はビートルズとボブ・ディランだけではないことを、世界に知らしめたのだ。
 マッグインもヒルマンも、この「バーズ崇拝者」と音楽を作り、友情を育んだ。こんな後輩,弟.フォロワーを持って、二人は幸せだっただろう。そして、そのトムが突然、先に世を去ってしまうなどとは、想像だにしなかっただろう。
 だからこそ、二人のライブの締めくくりは、トム・ペティの功績と想い出に捧げる曲目になっているに違いない。

 たまらないのは、7月24日 LA 公演の "American Girl" に、マイク・キャンベルが参加していることだ。
 このトム・ペティという「音楽」の片割れ ― 半身とも言うべきマイクの存在は、人が負うべき宿命を象徴しているかのようだ。人生の殆どを共に過ごし、パートナーであり、親友である、愛するトム・ペティを失っても、この世にいるマイクは、こうして生きなければならない。生きて、音楽を奏で続けている。
 最初は遠慮気味だったマイクが、エンディングでマッグインの「さぁ、弾いて!」という視線に促されて、TP&HBのオリジナルと同じようにギターソロを奏でる。
 泣いてしまった。
 
Oh yeah, all right
Take it easy baby
Make it last all night ―

A New Theory: Break-up of The Beatles2018/08/08 20:56

 とある小学生に、「ビートルズはどうして解散したの?」と尋ねられて、「説明するには三日かかるけどいい?」と聞き返したら、断られた。

 しかし、ビートルズのミュージック・ビデオをじっくり見ていて、私は三日もかからない、より簡潔な「ビートルズ解散の理由」を知るに至った。

 ポールって、他の三人に比べて、極端に暑がりなんじゃない?



 あれだけ仲良しなバンド、かなり長時間一緒にいるわけだし、狭い空間にも閉じ込められる。その中にあって、ポールだけ「暑い、暑い」と言って、暖房を切り、窓を開けまくっていたら、そりゃ他のメンバーがぶち切れて、解散もするというものだ。
 ポールが下着でいるとしか思えないこのビデオも、有力な材料。ジョージなんて、ハイネックのセーターなのに!ポールは!下着!



 そしてとどめ。1969年1月30日、ロンドンのビルの屋上。ジョン,ジョージ,リンゴは人から借りてでも懸命に防寒につとめているのに、ポールだけ明らかに薄着。
 間違いない。こんな暑がりな男とは、もうこれ以上一緒にやっていられない!寒がりの私には、その気持ちは良く分かる。
 バンドを長続きさせたい人は、そのあたりにも気を遣うべきだろう。

Summer VAC Movies2018/08/15 20:00

 夏休みは、いつも涼しいところに行く。
 涼しいところでどう過ごすか。出来るだけ無為に過ごしたい。今年は昼寝と、映画鑑賞で過ごした。

 まずは、「カムバック!Cuban Fury」(2014年UK)。コメディアンのニック・フロストが主演と言うことで、見たかった映画。



 ニック・フロスト目的だったが、クリス・オダウドが出ているとは知らなかった。彼のク ズっぷりが最高だった。こういう憎めないダメ人間をやらせると非常に上手い。
 イケてるアメリカの女性と、ダサいUK女子の対照も典型的で面白かった。UKの人というのは、自分たちのダサいところを自覚しつつ、それを愛しているのが良い。
 音楽はもちろん最初から最後まで、サルサ。徹底的にサルサ。凄く良いのだが、ただ私とは好みが合わないなぁ。

 次は「ONCE ダブリンの街角で Once」(2004年アイルランド)。アイルランドの音楽物だが、トラディショナルではないのでどうかな…と思っている内に見逃していた作品。



 これは、完全に音楽の勝ち。サウンド・トラック購入、即決。
 バスキングしながら、デビューを目指す男は、ちょっと元カノを引きずりすぎているのがどうかと思うが、良い音楽はそういう所から出来ると言えば、そうかも知れない。好みを言えば、ほかのバンドメンバーも加えて、もう少し人間関係があり、この男女を見守る視点も欲しかったかな。
 それにしてもこの男(グレン・ハンサード)は、容姿がセバスチャン・ベッテルに似すぎている!

 三つ目は、「フラワーショウ! Dare to Be Wild」(2015年アメリカ)



 予告編を見て、思っていたのとは違う映画だった。予告編の作り方の問題だろう。
 評価は…どうだろう。イマイチ。砂漠の緑化という重要なテーマも持ち合わせつつ、フラワー・ショウで金メダルと獲るという目標の同居は、ちょっと難しかった。イケメンはイケメンだが、行動に一貫性がなくて、あまり好感が持てない。
 アイルランドの自然と思想を映画の要素に取り入れてはいるが、音楽的には特になし。いや、あるのかも知れないが、ロックもトラディショナルも無いので、聴き所が無かったというべきか。

 四つ目は、「最強のふたり Intouchables」(2011年フランス)。



 これといった目的なしに、なんとなく見て、ふむふむ。なるほどね、という映画。マゼラッティは格好良い。ふむふむ。

 もう一つ、「ミニオンズ Minions」(2015年アメリカ)も見たのだが、これは1968年を舞台としており、音楽が良すぎる!そのような訳で、記事は別にする。

Minions (2015)2018/08/19 20:39

 「ミニオンズ Minions」(2015年アメリカ)という映画を最初に見たのは、どこか海外へ行ったときに、飛行機内で時間つぶしだったと思う。
 まったく予備知識もなく、何も考えずに見始めたら、実は60年代カルチャーとロックの映画だったので、びっくりした。

 まずは1968年にミニオンたちがニューヨークに上陸した時の音楽。これがもっとも鮮烈で素晴らしかった。ザ・ローリング・ストーンズの "19th Nervous Breakdown"。1966年の曲で、ミックとキースが作っている。
 ミックだけなんだかダサいポロシャツ。キースは可愛い時期だった。



 お次はスペンサー・デイヴィス・グループの "I'm a Man"。[Rush] という映画でもそうだったのだが、SDGの二大名曲は、カーチェイスとの相性が良いようだ。
 こちらは映画本編からの動画がある。



 舞台はロンドンに移り、ロイヤル・クラウン強奪大作戦。
 この動画の最後に出てくるニュース・キャスターは、おそらく、モンティ・パイソンのジョン・クリーズのつもりだろう。
 やっぱりザ・キンクスは最高!"You Really Got Me" のオリジナル・ギターソロは、どんんなカバーも敵わない。



 ミニオンが国王になってしまい、宮殿で好き放題するシーンは、ザ・フーの "My Generation"。



 他にもドノヴァン、ザ・ドアーズ、ザ・モンキーズ、ザ・タートルズなどなど、60年代ロック好きにはたまらない展開だった。
 エンディングは堂々、ザ・ビートルズなのだが、これは実際に映画を見て迎えた方が爽快なエンディングだろう。
本当にビートルズ  ― 要するにポールというのは、天才だったと思い知らされる。

Hang with The Heartbreakers at The Clubhouse2018/08/23 19:58

 トム・ペティも支援してきたチャリティ,"The Midnight Mission" の活動の一環として、チャリティ・イベント会社 Omaze と協力して、ハートブレイカーズのクラブハウスでの [An American Tresure] リスニング・パーティに、寄付をした人の中から一人、(+友達)招待されるのだという。
 どうやら、マイクとベンモントにも会える…のかな?この二人の間に「あなたが入れるかも!?」という画像もTP&HBの twitter にあったので。

 マイクとベンモントが紹介動画に登場。



 元気なマイクとベンモントが並び、楽しく話して、ギターも弾いてくれて、なんか笑ってる。
 本来、喜ぶべきべきなのだが…そこはかとなく悲しい。
 以前だったら、この手の告知はもちろんトムがしてくれたわけで、マイクとベンモントが前に出てくる事なんてなかった。トムさんの不在をこうやって実感として、とらえるようになってきている。
 マイクも、ベンモントも、それぞれ生きて、まだまだ続く人生を送っている。親友,同士の死を乗り越え、悲しみを抱きつつも、人生は続く。きっとクラブハウスに招待された幸運な人は、この二人や、その他のスタッフに迎えられ、ハートブレイカーズの様々な想い出に囲まれて、幸せだろう。
 そんな幸せもまた、トム・ペティの残した偉大な遺産なのだ。

 ともあれ。ポチっと寄付してきた。
 私は宝くじとか、抽選とか、そういうものは当たらないものだと思っているので、LAには行かないだろうが、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの何事かに参加したいというささやかな思いだ。

 ハートブレイカーズのクラブハウスは、いったいLAの何処にあるのか、ミステリアスな存在なのだが、その雰囲気は動画で見る限り最高。
 ハートブレカーたちが大好きだったものが、ところ狭しと並び、大好きな自分のバンドが楽しく過ごすのだから、きっとロックンロール・ヘヴンとはこういう所を言うのだろう。

Circle of friends2018/08/27 20:33

 ジャーニーというのは偉大なバンドだが、私の守備範囲ではないし、「史上もっともダサいミュージック・ビデオ」のバンドだという認識程度しかなかった。
 (「史上もっともダサい」は言葉のアヤで、恐ろしくダサいビデオは私の好きなアーチストでも、山ほどあるので安心して欲しい)
 ところが、ジョージが関連するニュースで、スティーヴ・ペリーが登場し、しかもそのキーマンが、我等がハートブレイカー、スティーヴ・フェローニだったから二度びっくりした。

スティーヴ・ペリー、曲の使用許可を求め、ジョージ・ハリスン未亡人と緊張の対面

 この記事を書いた(もしくは翻訳した)人は、スティーヴ・フェローニが誰だか分からなかったのかも知れないし、発音にも自信がなかったのかも知れない。とにかく、あのトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの名ドラマー、スティーヴ・フェローニがオリヴィア・ハリスンとの連絡をつけてくれたのだという。
 フェローニは当然オリヴィアと親しいだろうな…1991年のジョージ来日もフェローニがドラマーだったわけだし。

 さて、フェローニとペリーが友達だったというのも、へぇ!という感じ。
 これは私が物を知らないだけで、ググれば共演動画が山ほど出てくる。しかも、ベンモント・テンチまで一緒に居る!



 60年代とか、ハートブレイカーズなどのロックミュージシャン達の良い所の一つは、同業者でライバルであっても、仲の良い友達だというところ。特に60年代ロック黄金期の綺羅星の如きアーチスト達の仲の良さは「俺たちは新しい時代を共に生きて、共に新しい音楽を、文化を創っている!」という同士感覚のためだろう。
 80年代などは音楽産業の変容、ロックの難しい時期などもあってその感覚に鈍りがあると勝手に思っていたが、そうでもないらしい。ロックンロールの友情はいつでも生きているようだ。

You and Me (Clubhouse Version)2018/08/31 22:11

 さて、周知のとおり、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのボックスセット,[An American Tresure] から、第二弾,"You and Me (Clubhouse Version)" が発表された。
 先だって募集されていた、ファンからの写真,動画をコラボレートしたPVが素晴らしい。



 最初にトムの話す声がして、ギターが取り出され、ソファのそばにそっと置かれる。彼はそこに居るのだ。
 その向こうで、ベンモントがピアノに向かう ― 

 この曲について、「ピアノはトム・ペティが弾いており、彼のタッチに合わせてベンモントがピアノを弾いている」という情報に接したのだが、私にはこれがちょっとした混乱なのだ。
 あのピアノの音、全てトム・ペティが弾いている?そしてベンモントはピアノを弾く振り(いわゆる手パク)をしているの?だとしたら、トムさんのピアノは大したもので、全く専任のキーボード奏者としても通用する!ソロの作り方なんてベンモント以外の何者でもない。40年以上一緒にいると、やっぱり伝染るのか。
 いや、それともピアノの一部はトムさんのもので、ベンモントが被せて録音しているのか。あまりにも上手すぎて、私にはその線も捨てきれない。それほど、このピアノは素晴らしいと思う。

 ビデオに登場する写真や動画の数々が、トム・ペティへの愛情と愛惜に満ちていて、胸が一杯になる。
 特に「分かるなぁ…」と共感したのが、ライブをノリノリで見ながら、涙を拭く女性の動画。そうだ、あの感じ。最高の音楽に浸って、幸せなのに、なぜか涙が出るのだ。
 感動で涙が出るのかも知れないが、同時にこの幸せは、いつか ― コンサートのことだから、もうすぐ終わるということを、知ってしまっているからかも知れない。

 アメリカでのライブを予約して、その日が来るのが待ち遠しいようで、憂鬱だった。特に出発の前日はひどく。ああ、始まるということは、終わりが始まるとうことなのだ。そう思うと、切なくて仕方が無かった。
 "You and Me (Clubhouse Version)" のトムさんの歌声は、そんな記憶を笑い話にしてくれそうな、でもやっぱりどこか悲しくて。人生はそういうものなのだと、むしろ爽快な気持ちまでも、呼び起こすのだ。