I, Tonya / The Chain2018/07/01 21:43

 映画「アイ・トーニャ I, Tonya」を見た。
 1994年、アメリカのフィギュアスケート選手ナンシー・ケリガン襲撃事件が起こり、犯人は、ライバルのスケーター,トーニャ・ハーディングの関係者であり、彼女に嫌疑がかかるという一大スキャンダルを本にしている。ドキュメンタリー風味を加えた、ちょっとひねりのある映画だ。



 フィギュアスケート映画としては、なかなか良く出来ている。「俺たちフィギュアスケーター」より、競技シーンの迫真性がある。CGなどがうまく機能しているのだろう。ただ、音楽は競技をほぼ無視していているので、そういうフィギュアの要素は見られない。
 登場する人々は、いちいち頭が悪く、行動が行き当たりばったりで、結果は支離滅裂。当時、ハーディングが襲撃事件に関係していることを知った人々は、それなりの首尾一貫した「陰謀」を期待して、ハーディングを責め立てたのだろうが、どうやらハーディングも、その関係者の、そのまた関係者も、どれも「なんでこうなった」的な結果だったのではないだろうか。
 人間は、賢くあろうと、努力しなければならない。さもなければ、簡単に信じられないほどの愚行に走る。

 どのスポーツにしろ、レベルが上がれば、ただ体力や技術だけで勝負が決まるというほど単純ではなくなる。「強ければ良い、強いことが評価されるべきだ」というごく全うに思える主張は、せいぜいアマチュアの中レベルまでにしか通じない。そう、たとえ体力勝負のスポーツでも、人は、努力して賢くあらねばならない。
 アメリカがいまだに抱えている社会問題とともに、結局は個人の愚行はどこまでも肥大するということを思い知らされた映画だった

 音楽はおおむね70年代から90年代くらいのアメリカンポップの数々で、楽しかった。ただ、映画の内容が内容なので、自分が好きなアーチストが出てくるのは嫌だな…と途中から思い始めた。幸い、私の贔屓は登場しなかった。
 一つ、印象的だったのは、フリートウッド・マックの "The Chain"。



 イントロの低いギターサウンドが印象的で、映画館のオーディオがよく機能していた。ケリガン襲撃事件前後の混沌とした、不安感をうまく表現していた。

4th July2018/07/04 23:02

 7月4日は、アメリカの独立記念日。1776年7月4日に「アメリカ独立宣言」が採択されたことにより、この日を独立記念日として祝う。

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの代表曲,”American Girl” は、独立宣言からちょうど200周年にあたる、1976年7月4日にレコーディングが行われた ― ということになっている。トムさん自身が、そう発言もしている。
 マイクに言わせると、「これぞ、俺たちのサウンドだ、これだ!」という閃きを得た曲だったともいう。きっとその通りだろう。

 一番好きなTP&HBの曲は何かというと、それは間違いなく “American Girl”。唯一無二、絶対的に “American Girl”。この曲のどこが良いのかをつぶさに挙げるとしたら、何日かかるか分からない。サウンド一つ一つが、歌詞が、リフも、Aメロも、ブリッジもサビも、ギターソロも、ピアノブレイクも、何もかも最高のロックンロールだ。



 昨日からスタジオ録音を何十回か聞いているのだが、今回、心に残ったのは、その躍動感だ。メロディやハーモニーの美しさが作り出すセンチメンタリズムもさることながら、この曲全体を力強く、軽やかに、しなやかに前進させる躍動感もまた、”American Girl” なのだ。
 冒頭のリフ三音を聞いただけで、ギタリストの右手の筋肉が躍動する様が浮かぶ。もうこの瞬間にハートブレイカーズは躍動感とそれが発する熱でいっぱいになり、まさに勢いよく飛び出してゆく。
 甘くて切ない歌詞とメロディなのに、底抜けに明るくて前向きな躍動感。相反する二つの性格が、この曲には同時に存在している。
 その刹那的で、奇跡的な実りこそが、彼らの代表曲となった。トム・ペティが最後にファンに向かって歌った曲が “American Girl” だったのも、運命だろう。

 "American" とつく曲をもう一つ。トム・ペティ晩年の作品ということになるのだろうか。"American Dream Plan B"。



 地を這うような、ちょっと近寄りがたいリフとAメロ。歌詞にも頑なな表情がある。そこに突然明るくひらける、サビの対照が良い。
 "I got a dream I’m gonna fight til I get it right" ―

J・S・バッハ2018/07/08 21:28

 珍しく、音楽に関する本を読んだ。しかもクラシック。
 「J・S・バッハ」(1990年講談社現代新書) ― クラシックに関する本が読みたいという欲求があったというより、著者である礒山雅 ― 先生 ― が亡くなったのがきっかけだ。
 礒山先生は、母校の我が学科の顔のような先生だった。大学の退官パーティはつい数年前のことで、2月に亡くなられたときは、本当にびっくりした。

 本書は、バッハの入門書としては最適だろう ― と、言ってバッハに「入門」するのに本が必要かという根本的な疑問もある。音楽は演奏して、聴いて楽しむもの。本からの知識は、べつになくても良い。ただ、あったらあったで、それなりに楽しい。

 バッハとその一族、彼の職歴、家族、生活、性格など、大バッハが生身の人間だったことを実感させる内容はとても楽しい。音楽家を知る上で、その「親しみやすさ」は、重要なファクターになる。
 一方で、「聖俗を越える視点」となると、ちょっとピンと来ないし、「数と象徴」に至っては、恐縮しつつ読み飛ばさせてもらった。こういうところは、音楽は演奏するもの、聴くもの、そして感じるものだという気持ちを強くさせられる。

 一番印象的だったのは、冒頭の「バッハに親しもう」だろうか。
 礒山先生曰く、音大生たちのなかに、「バッハが苦手だ」という人がある程度いるのだという。
 実のところ、私のピアノの先生からも同じようなことを言われた。ピアノ科の人たちに、バッハに対する苦手という感覚や、難しいと敬遠する感情があるのだという。
 私にとってがこれは驚きなのだ。私にとって、なぜかピアノを弾く上で、バッハは味方だ。弾くのが好きだし、弾きやすい。ちゃんと弾けばそれなりに聞こえるし、それなりの評価がもらえる。
 かと言って、私がバッハの「ファン」かというとそれほどでもなく、クラヴィーア曲にしか興味がない。彼の宗教曲に興味がないというのは、どうにも仕方がない。

 ともあれ、礒山先生は、難解でとっつきにくいバッハだが、魅力に溢れた作曲家であることを力説する。
 その方法の一つに、「ジャズとの親和性」をあげていた。簡単に言えば、ジャズとの親和性があるバッハは、現代人にも受け容れやすいのだ ― この論法、どうだろうか。クラシック畑の人に多い、一種の「ジャズに対したときの劣等感」と無縁ではないような気がする。ジャズが高みにあって、ジャズが認める音楽,イコール素晴らしい音楽という図式を取りがち。
 私はジャズに興味がないし、特に良いと思ったことも無い。その最大の特徴である即興性(完全な即興性なのだろうか?決められた和声の中で即興は、本当に即興だろうか?)にも、魅力を感じないし、ダラダラ続く音楽もご免被る。そりゃぁ、「ジャズが好き、ジャズに造詣が深い」と言えれば、格好良いのだろうが、実際そうじゃないので仕方がない。

 バッハの演奏はどうあるべきか ― これはもう、「これです」と断言するのは不可能だろう。
 礒山先生は、概してバッハの時代の楽器、バッハの時代の解釈に即した演奏を評価している。作曲家が意図したものを再現することがクラシック音楽の価値であるとしたら、たしかにそうだろう。しかし ―
 「現代のピアノでバッハを弾いたって、意味がない。バッハの時代にはピアノなんてなかったのだから」という人がいるが、そういう人は鍵盤でポリフォニーが弾けないか、弾けても苦手で下手に違いない。バッハのあれほど膨大な、ポリフォニーの名曲群を、楽器が違うという理由で弾かないでいるだなんて、そんな馬鹿馬鹿しいことはない。ポリフォニーを弾くなら、どんな楽器でも良い、バッハを弾かないでどうする!

 その一方で、グールド(カナダのピアニスト)に見られるような、前衛性もまた、礒山先生の高評価の対象だ。
 私はグールドの演奏が好きだが、前衛かどうかは知らない。魅力的に聞こえればそれで良い。

 「バッハを知る20曲」と題して、先生お勧めの楽曲と録音を挙げているのは、入門者にとってありがたい道しるべだろう。もっとも、特定の楽器を弾いている人は、その楽器の曲を中心に聴いた方が良いと思うが。「平均律」がなくて「ゴールドベルグ」が入るのは、グールドの存在一つに掛かっており、ちょっと物足りなくもある。

 本書は20版を重ねている。新書という読みやすいフォーマットと、分量、読みやすい内容で、愛読されているのだろう。これからもしばらく、そうに違いない。

Three Weeks Back to Back2018/07/11 22:27

 F1は普通、隔週でレースが行われるが、二週連続でレースを行うことを、「バック・トゥ・バック Back to Back」と言う。「続けざまに」という意味だ。
 今年は史上初、三週連続レースが行われた。フランス,オーストリア,そしてブリティッシュ。ドライバーも、チームクルーも本当に疲れただろう。あまりのハードさに、来年からはもうやらないらしい。

 やる方もきつかったが、見る方もきつかった。今シーズンは、セバスチャン・ベッテルとルイス・ハミルトンが良く競っているので、毎回ハラハラ、ドキドキ、一喜一憂の繰り返しで、発狂しそうだ。
 ベッテルのファンとしては、彼がランキングでトップを走るのは嬉しいが、メルセデス,ハミルトンがこのままでいるはずがない。ともあれ、良い競り合いを続けて欲しい。シーズン後半、去年のような悪夢はご免だ。

 今年のベッテル,ハミルトンのつばぜり合いとは別に、たびたび話題になっているのは、来年のフェラーリのドライバーである。
 キミ・ライコネンは今年39歳になる。来年はそのライコネンを替えて、誰か他のドライバーがベッテルのパートナーになるのではないかという、噂が立っているのだ。
 一時期は、ダニエル・リカルドの名前が囁かれていた。しかし最近では、彼はレッドブルに残留するのではないかと言われている。

 そして、俄然その名が取り沙汰されてきたのが、モナコ出身の新人シャルル・ルクレールである。フェラーリ・アカデミー出身で、現在フェラーリ・エンジンを積んだザウバー・アルファロメオ。フェラーリとのコネクションは十分だ。
 そして、戦闘力の劣るザウバーで、予選 Q3 まで残ることもあり、しかもポイントも少しずつ取っている。
 もう日本のお馴染み解説陣も、ぞっこん、大絶賛!川井さんに至っては、「フェラーリ来年、もうこの子で良くありません?!」と言い出す始末。

 世界のベッテル・ライコネンのファンたち ― 特に女子ファンの反応や如何に?
 面白いことに、「キミに残って欲しいけど、ルクレールなら…まぁ…いいかな…」という反応が結構見られる。要は、若くて可愛いからだろう。セバスチャンより10歳年下だ。
 まぁ、確かに。そうかも知れない…

 しかし、私は断然「キミ・ライコネン残留派」である。まず彼のファンだ。キミがいるだけでレースが面白くなる。それにシーズン半ばで、ランキング3位。この三連戦でポディウムに立ち続けたのも彼だけ。チームメイトとの信頼関係、チームプレイの必要性なども含めて、キミを替える必要が無いように思える。
 そしてやっぱり、親友のキミに、セブのそばにいて欲しい。いつでも好きにイチャイチャしていただきたい。

 ひたすら、キミ・セブの楽しいドライブを堪能する、シェルの動画二つ。こういう企画、他のチームのドライバーではあるのだろうか。それとも、この仲の良いフェラーリ・ドライバーならではなのだろうか。





 キミは質問に対して、あまりまともに答えない。一方、チョコレート好き、シュニッツェル好き、ザッハトルテ好き。プレゼントは手紙が良い ― セブは可愛い。「ラブレターだな」とからかうキミ。
 「レースをやめたら、どうする?」という質問について、これといった答えのないキミ。するとセブが言う。
 「やめなきゃ良いんだよ。そうすればどうするか考えないで済む。」
 セブの本音が出たようだ。

Keep A Little Soul2018/07/14 22:13

 2018年9月28日、トム・ペティの6枚組ボックス・セット "An American Treasure" が発売される。



 ハートブレイカーズ名義ではないのは、ソロ活動時の作品も入っているからだろうか。それとも、便宜的に、"TOM PETTY BOX SET AN AMERICAN TREASURE" と表現していて、実際はハートブレイカーズの名も冠されるのか ―
 ともあれ、とうとう来たな ― という感じだ。

 まずはシングル, "Keep A Little Soul" が発表された。



 1982年、"Long After Dark" の頃。
 ああ、こういうのを待っていた!
 躍動するギターリフ、若きトム・ペティの青臭くて、パワフルなロックンロール。ビートルズ風のリフレインとコーラス!
 この時期、ジミー・アイヴィーンと意見が合わなくて、アルバムに入れられなかったけど良い曲があったということは、トム・ペティ自身がコメントしており、"Keep Me Alive" が有名だ。
 それにも劣らぬ、素晴らしい曲。なぜ、これまで公表されなかったのか不思議なくらいだ。この時期のトムさんの作詞では、 "keep" という言葉がカギだったのだろうか。

 ビデオを見ていて思うのは、こういう時代のトム・ペティが、もっと見たい。もっと知られて欲しいと思う。
 どうしても、ベテラン・ロックンローラー、音楽界の大物感がつきまとうが、しかしその根本は、60年代ロック黄金期に憧れた少年だ。その若い躍動感が、40年以上、彼をロックローラーたらしめた。

 "An American Treasure" のトラックリストを見ていて、楽しみなのは、まず未発表の「新曲」。そして、名曲のライブバージョン。
 中でも、[Echo] のセッション時の、"Gainsville" が楽しみだ。若い頃の曲が良い!…と言いつつ、これは矛盾しているが、この暗い時期のハートブレイカーズが好きだし。タイトルが魅力的。さぁ、暗い曲なのか、"Free Girl Now" 風のはち切れんばかりのロックンロールなのか?
 今からワクワクが抑えられない。

 もちろん、"Super Deluxe Limited Edition" が欲しいのだが、さてどうやって手に入る…?!

Box box, box box.2018/07/19 20:27

 F1レース中の無線交信で、よく "Box box, box box." という言葉を聞く。「ピットインせよ」という意味である。ガレージ前の停車位置が四角く囲われているのを、「ボックス」と呼ぶことに由来する。
 「ボックス」して、タイヤの交換、破損箇所の修理交換、ウイングの調整 ― 昔は、燃料充塡なども行われていた。当然、タイヤ交換ミスやら、エンジンストール、不安全な発車などなど、様々な事件が起きる。レースの面白さの一つだ。

 違う。F1の話じゃない。
 ボックスセットの話だ。

 いよいよ、9月28日にトム・ペティの6枚組ボックスセット "An American Tresure" が発売されるわけだが ― 微妙にタイトルがダサいような気がする ― 私は特に「箱」が好きかというと、そうでもない。
 音楽の記録媒体(私の場合CD)こそ大事なものの、その要は中身の音楽そのものであって、外見はそれほどこだわりがない。本も同じで、書いてある内容には興味があっても、装幀などにはほとんど興味がない。
 だが、好きなアーチストのボックスセットとなると、やはり手に入れずにはいられない。

 もっとも思い入れが強く、好きなボックスは、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの [Playback] 。生まれて初めて購入したボックスだ。まだ学生だったため、当然高価なシロモノ。確か、ロッド・スチュワートのライブと天秤にかけて、このボックスを買ったのだ。しかも、残りが少ない頃で、CDショップを3軒ほど回った。
 何せTP&HBのアルバムをまだ全然持っていなかった頃なので、本当に貴重で、まさに聴き倒した。彼らの写真も私にとってはこれまた貴重。悪文ではあるが、やはりバンドヒストリーもありがたかった。
 このボックスは、いまだに取り出しやすい所に置いてある。

 ジョージの [Dark Horse] と[Apple] のボックス,二組も、気に入っている。特に前者、ワーナー時代のジョージも大好きなので、発売当時、本当に嬉しかった。

 しかし、一方で「何もこんな箱にしなくても」という物もある。
 まず、ビートルズ。リマスターの時に、通常ボックスを買ったまでは良かったが、初期アルバムがステレオになっているのが気持ち悪くて、結局 MONO ボックスまで買う羽目になったことは、いまだに恨んでいる。通常ボックスのハコは早々に捨てたはずだ。
 ビートルズと言えば、映画 [Help!] のボックスも酷かった。私はビートルズ映画の中では [Help!] が一番好きなので期待していたのだが、なんだかでっかいばっかりで期待はずれのシロモノだった。「撮影はしたけど、結局本編で使われなかったシーンに出演していたどこかの俳優のインタビュー」なんて、燃えるゴミに出してやる。

 ディラン様も要注意だ。ブートレグ・シリーズの昨今の巨大化はいかがなものか。[Vol 10: Another Self Portrait] ですでに疑問で、[Vol 11: The Basement Tapes complete] に至っては、良いのはジャケットだけ。感想を聞いてきたディラン仲間に「買わない方がいい」と言ったほど。
 [Cutting Edge] では、通常版(?)の2枚組しか買っていない。これで正解だと思う。

 それにしても、今回のトム・ペティは特別だ。彼が亡くなって最初のイシュー。出す側の気合いもあるだろう。
 トラック・リストを見ていて疑問だったのが、"Somewhere under Heaven" が入っていないこと。
 つまり、彼の生前から言われていた、[Wildflowers] の再発とそれに伴う未発表音源のイシューは、まったく別の ― おそらく、「ボックス」が今後、出ると言うことだろうか。
 ボックスを置く場所なんて、もうそれほどないのだが。

 ともあれ、今回の "An American Tresure" に関しては、当然のこととして、"Super Deluxe Limited Edition" を買うことにしている。
 ボックスもどんどん膨らめば、名前も膨らむ。凄いな、F1のタイヤみたいだ。タイヤはソフト、スーパーソフト、ウルトラソフト、そしてハイパーソフトまである。次は、「スーパーデラックスリミテッドソフト」だろうか…?

R.I.P. Denis Ten2018/07/23 20:52

 カザフスタンのフィギュアスケーター、デニス・テンが殺害されたというニュースは、衝撃的だった。私は朝のニュースで知ったのだが、大声で「ええッ?!」と叫んでしまった。
 好きなスポーツの選手が、現役中に亡くなるというのはなかなか無いが、不幸にして私がF1を見始めて間もない頃に、セナが事故で亡くなっている。衝撃的であり、二度と起こってほしくはなかったが、一方で、元々危険なスポーツでもある。
 しかし、フィギュアスケーターが、しかも殺害されるだなんて。そんな悲劇、私は経験したことがない。
 それを思うと、ジョン・レノンが殺害されたときの衝撃たるや、想像を絶する。

 デニス・テンはバンクーバー・オリンピックの後から、トップクラスにのしあがって来た。最初はグランプリ・シリーズでお馴染み…という存在だったが、2014年ソチ・オリンピックでのフリーの大逆転劇で、銅メダルを獲ったのは凄かった。
 何せ、ソチのフリーと来たら金,銀メダリスト双方がグダグダで、私もフィギュア師匠(2018年2月18日の記事に登場)も、「もう一回やり直せ!」と異口同音に叫んでいたのだ。ダークホースではあったが、テンの銅メダルは立派なものだった。

 翌2014-2015年シーズンが、テンのもっとも良い時期だったろう。
 グランプリ・シリーズではジャンプが決まらず、なかなか上にあがってこなかったのだが、フリー・プログラムの良さはかなり早い内から分かっていた。選曲、衣装、振り付け、それを表現するテンの、優雅さ、力強さ、しなやかさ ― 雰囲気全てが合っていた。
 それが結実したのが、2015年の四大陸選手権だった。四大陸選手権というのは、存在意義がやや曖昧な大会だが、その分力が抜けて、意外に良い演技が飛び出して来ることがあるので、面白い。



 ほぼ、完璧。本田さんも絶賛。
 ふとしたつなぎの、視線、仕草、空気感までも完璧に支配されている。この表現スポーツで、ここまで出来た演技というのは、そうそう見られる物ではない。それほど素晴らしかった。氷上に倒れ込んだテン自身にも、きっとそれが分かっていたに違いない。
 結果はダントツの金メダル。当然。

 私はこの時のデニス・テンが忘れられない。あの、完璧なプログラム。あの達成感。テンが登場するたびに、あれの再現を祈っていた。
 残念ながら、昨シーズンはコンディション不良で振るわなかったが、男子選手なので、まだまだ行けたはずだ。無論、ジャンプの質も量も変わってきている中、彼が世界選手権で金メダルを取れるかというと話は別。しかし、見るのが楽しみな選手だった。そういう存在が、残酷にも殺害されるだなんて。そんな事があってたまるか ―
 R.I.P, Denis. I miss you.

Tom Petty Fan Video Submission2018/07/27 22:55

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの公式ホームページの告知によると、トム・ペティと、彼とファンたちの40年にわたる深い関係に敬意を表して、スペシャル・ミュージック・ビデオを作るという。
 ついては、ファンたちに、トム,バンドとのお気に入りの瞬間をシェアしてほしいとのこと。

 はて、これはどのような物を想定しているのだろう?
 告知によると、

 トムと一緒に撮った写真、ショーでのお気に入りのビデオ、もしくは、バンドへの愛情を表して撮影されたり、大事にされたりしたいかなるもの ―

 公演中のビデオも入っているというところが面白い。21世紀となっては、すっかり「公演中の撮影」は公認されているというわけだ。
 しかし、たぶん欲しいのは、より「希少なもの」ではないだろうか。まだ駆け出しの頃のTP&HBと一緒に撮った写真とか、珍しい場所での写真 ― たとえば、日本とか ― 。

 私が撮影したものは、もちろん21世紀 ― それもごく最近のものばかりだ。

 まずお気に入りは、歌っている最中に、2回クシャミをするトムさん。



 8年前。これは席が最高だった。視界が良く、ステージにも近く、トムさんの瞳の青さまで見えた。

 こちらは、2012年ロンドン,ロイヤル・アルバート・ホールの二日目。この二日間も席が良くて、素晴らしかった。
 客席の男女から "I love you, Tom!" の声が飛びまくる。野太い声に、マイクが、「そこ、いいねー!」と指さし、トムさんが "I love you too, baby. Nice to hear that from the girl!" と返し、会場バカ受け。さらに男子からラブコールが飛ぶ。トムさん、自分でウケている。



 たったの6年前。ああ、トム・ペティは生きていた。最高の格好良いロックンローラーは、まさに活き活きとして輝いていた。
 一緒に撮った写真なんてもちろん無いし、希少なものもない。ただ、公式にしろ、そうでないにしろ、彼が生きてロックしていた姿の一つ一つが、ファンにとっての "cherished" ― 大事な物に違いない。

Tom Petty's SG and Top Hat2018/07/31 21:12

 トム・ペティのギターと、帽子がオークションにかけられる。
 1965年ギブスンSGと、トラヴェリング・ウィルベリーズでお馴染みのトップ・ハット!
 さぁ、今すぐに入札!21時現在187,500ドル!

Tom Petty Stage Played 1965 Gibson SG Cherry Electric Guitar and Hat Worn on Stage and in Traveling Wilburys Music Videos.

 私は「シルク・ハット」よりは、「トップ・ハット」という言いかたの方が好きだ。
 両方いいなぁ…これはイイ!SGは、ディラン様とのツアー中にも使っていたし、サイン入り。ウィルベリーズ・ハットは、トムさんの衣装の中でも出色のアイテムではないだろうか。
 とりあえず、"Handle with Care" を見ておけば幸せ。



 ううむ、トップ・ハットとセットで、レザー・ジャケットも欲しい!あとピアスも欲しい。
 ウィルベリーズの衣装は、私物なのだろうか?特にコーディネート無しで、こういう取り合わせになったのだろうか?
 ウィルベリーズは何もかもが素敵だが、衣装まで素敵。さて、ギターとトップ・ハットは何処へ行くやら。