Movie: Into the Great Wide Open (Directed by Brent Carradine)2017/04/01 00:00

 ブレント・キャラダイン監督の映画 [Into The Great Wide Open] の公開が決まった。

 これは、キャラダイン監督が1970年代にマッドクラッチがフロリダからLAまで車で向かった時のエピソードをもとに、ロック・スターを夢見る青年たちの珍道中を、コメディ・タッチで描いたロード・ムービーだ。
 キャラダイン監督によると、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのドキュメンタリー [Runnin' Down a Dream] に登場した、マッドクラッチのゲインズヴィルからLAまでの苦労多き旅の様子を見て、インスパイアされたという。
 お馬鹿コメディとのことだが、ポスターは一見、真面目なロード・ムービー風。そのギャップがなんとも言えない。



映画 [Into the Great Wide Open] あらすじ
 1970年代、フロリダの田舎から、スターになることを夢見て、ロックバンド,ダーティレンチの五人組は、LAへ旅立つことを決心する。しかし旅費が足りず、ありとあらゆる物を売り飛ばし、家族の車を強奪するはめに。
 出発するや、初めて見るサボテンや、雪に大はしゃぎしつつ、道中様々な事件を起こしながら西に向かう。しかし、オクラホマでのトイレ爆破事件をきっかけに、警察に追われることになる。
 音楽あり、カーチェイスあり、乱闘あり。涙と笑いと友情の珍道中は、果たして夢のLAまでたどりつくのか?!

登場人物
トミー:ダーティレンチのボーカル兼ベーシストで良きリーダー。度胸も決断力もあり、年寄りにも可愛がられるが、車酔いをするため、車中では役に立たない。

ミック:ダーティレンチのギタリスト。無口で大人しいが、いったん乱闘になると一番強い。LAには文通相手の彼女がいる。爆弾の解体が得意。

ランディ:ダーティレンチのドラマー。行く先々で女の子たちのハートをわしづかみにするが、それがトラブルの元となる。

ベン:ダーティレンチのキーボーディスト。バンドで唯一、金持ちのお坊ちゃまだが、大学からトミーによって拉致され、無理矢理LAへ向かわされる。

ジミー:ダーティレンチのローディー。彼女に振られて自暴自棄になっているときに、宇宙人のお告げを聞いて勝手にローディーとなり、LAへ同行する。

モンティ:ミックの飼い犬。ミック以外の人にまったくなつかない。特にトミーとは仲が悪く、ミックをめぐって争ってばかりいる。

デル:怪しい自称音楽プロデューサー。言動が支離滅裂だが、ダーティレンチで一攫千金を狙っている。

バートン:ダーティレンチを追い回す警官。偶然ラジオで聴いたダーティレンチの熱烈なファンになるが、バンド名を聞き逃したため、正体が分かっていない。

 音楽担当はもちろん、TP&HBおよび、マッドクラッチ。
 アメリカでの公開は夏。日本では秋公開予定で、邦題は「爆走!俺たちロックンロールな珍道中」。もう少しマシな邦題は思いつかなかったのだろうか。

Un Sospiro2017/04/06 20:26

 去年、ピアノでスカルラッティを弾いた後、リストの「三つの演奏会用練習曲 第3曲」を弾いていた。
 タイトルをこう書くとピンと来ないかも知れない。「ため息」という通称で良く知られている曲だ。
 「ため息」はショパンの「別れの曲」のように、日本でだけ通じる通称なのかと思ったら、どうやら "Un Sospiro" でも広く知られているようだ。ウィキペディアによると、リスト自身がつけたわけではなく、フランスの出版社がつけたらしい。特にこの「ため息」は素晴らしいネーミングだ。

 どういう訳だか、この曲が収録されているCDを持っていない。ルービンシュタインのリスト集に入っていると思い込んでいたのだが。
 YouTubeでいくらかの演奏を聴いてみたが、いずれも「ため息」というには、やや威勢の良い、賑やかな演奏が多い。冒頭に関しては、もっと密やかで、静かな演奏が好きだ。
 ここでは、チリ出身、20世紀の伝説,クラウディオ・アラウの演奏。



 ちなみに、この動画に使われているリストの肖像画は、ハンガリー,ブダペストにあるリスト記念博物館所蔵のもの。悲鳴をあげる女性に追い回される音楽家のルーツのような人なので、この肖像画もそういう雰囲気を意識しているに違いない。

 アラウの演奏は、コーダのところが、私が弾いた版とは異なる。
 
 「ため息」には、古い古い想い出がある。
 まだ私が 4, 5 歳の頃のこと。生まれて初めて、ピアノの発表会というものに出た。椅子から両足をぶらぶらさせている初心者なので、当然発表会の冒頭に弾いたと思う。
 その発表会のトリが、この「ため息」だった。あれを弾いたのは、現役音楽大学生だったのだと思う。音大生というものは、こういうものなのだ、これがピアノだという印象を強くしたと同時に、「ため息」というタイトルが記憶に焼き付いている。
 あれから数十年、私が「ため息」を弾いている。あの音大生だった人は、いま、どこでどうしているのだろうか。知る術もないが、ただ名曲「ため息」の美しいメロディだけが、今もかわらず流れている。

12-String Guitar2017/04/13 22:43

 チャック・ベリーが亡くなったり、J.ガイルズが亡くなったり。
 そうかと思ったら、15年以上前に亡くなったジョージが、未だにリンゴ・ラブラブ爆弾を投下したり。


Olivia Harrison Discovers George Harrison Song Written For Ringo Starr

 ジョージもジョージだが、絶妙に投下してくる当事者である、オリヴィアもなかなかのものだ。さすがは最強の嫁。次はどんなラブコールが飛び出すのか、ドキドキしているおじさん方も多いのでではないだろうか。
とにかく。この世は色々なことがある。

 そんな中で、いつもお世話になっているトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの日本のファン組織,Heartbreaker's Japan Partyに教えてもらった、「12弦ギターを使ったロック史上・最高の曲」というランキングが気になった。

The Top 30 12-String Guitar Songs of All Time

 まてまてまてまて、ちょおっと待て!
 納得がいかないぞ。この雑誌と趣味が合わないのだろうが、とにかく納得がいかない。1位の曲はたしかに偉大だが、12弦と限定して強調するべき脈絡の曲だろうか?(もっとも、このバンドが好きではないという事情もあるのだが…)

 バーズとビートルズの曲でトップ5を固めるべきだ!そもそも "If I Needed Someone" がランクインしていない時点で、論外だ!

 そしてこれ。リッケン馬鹿はかくあるべし!



 どうやら、私の頭では12弦ギターというと、リッケバッカーのエレクトリック・ギターしかないらしい。やはりアイドルの存在は大きい。
 どうでも良い事だが、ウクレレにも8弦というシロモノがあるそうだ。冗談半分で買ってやろうかとも思うが、先生に全力で止められそうだ。

ロックファン、京都へゆく2017/04/23 15:58

 木曜日から、二泊三日で京都へ行き、昨日帰ってきた。

 京都は中学校の修学旅行以来である。私は歴史好きな割に、現地に足を運ぶと言うことをしない。音楽が徹底的に実践主義である(自分で演奏する、聴きに出かける)一方、歴史は本で読んで、頭の中だけで思いを馳せるのが一番楽しいようだ。
 そもそも旅行にも観光にもさほど興味がない私が、なぜ観光地中の観光地に出かけたのか。

 きっかけはトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズである。
 本当は、6月にニューヨークでの彼らのライブが見たかった。しかし、仕事のプロジェクトの予定があり、泣く泣く諦めた。もちろん、チケットはあっという間にソールド・アウト。しかも、今になってそのプロジェクトが頓挫しそうだという。
 余りの悔しさに、発狂しそうになった私は、突然「そうだ、京都に行こう」と思い立ったというわけ。たぶん、ロックの神のお告げだ。

 京都で思ったことが幾つかある。とりわけ、「観光」という産業について。
 ある地域について「主な産業は観光」といわれると、ちょっとピンときていなかった。「観光」は、本当に「主な産業」になり得るのだろうか?
 ところが、自分が純然たる観光客になってみると、これがなかなか、凄まじい消費力であり、一大産業であることが良く分かった。
 国内外から押し寄せる膨大な観光客は、まるで狂ったかのように消費をする。普段の冷静さを保っていれば、決して払わないようなものに、平気でお金を払う。非日常への憧れのパワーを思い知った。

 それにしても、レンタル着物で京の街を歩き、写真を撮りまくる人の多いこと!
 これはある種のコスプレで(事実、和装でありながら観光客ではない人は、容易に見分けがつく)、キーワードは「SNS映え」。SNSにアップした写真がさらに観光客を呼ぶのだ。
 今や、どの観光地もPR手法としてのSNSを、重要視しなければならない。

 さて、私は京都で何をしたのか。
 外国人観光客に頼まれて写真を撮ること数知れず、中学生に降りるべきバス停を教え(堀川今出川に一体何の用があるのかと思ったら、晴明神社だそうだ。陰陽師、恐るべし)、岐阜から来たマダム・グループにJR八条口を案内する。好物である豆腐と湯葉と生麩、老舗のお弁当、にしん蕎麦を食べまくり、1日2万歩以上も歩いても体重が増える。
 そして寺社仏閣巡り。司馬遼太郎のようにタクシーを駆使して、普通は入れないような所まで行くことは出来ないので、オーソドックスに有名寺社仏閣をめぐることになる。

 東寺、伏見稲荷大社、東西・本願寺、下鴨神社、慈照寺(銀閣)、南禅寺、八坂神社、高台寺、六波羅蜜寺、三十三間堂、智積院、豊国神社、二条城、北野天満宮。

 清水寺と鹿苑寺(金閣)に行っていない以外は、かなりコテコテのコースではないだろうか。  個人的なベスト3は以下の通り。

1位 智積院
 これはダントツに良かった。午前中に行ったということもあるが、とにかく空いていて静か。修学旅行生がいない。長谷川等伯の本物が見られる。レプリカも上手く展示してある。境内や庭が綺麗。修行僧のみなさんと挨拶できる。

2位 三十三間堂
 当初、人の多さを予想して敬遠していたのだが、やはり仏像の数の多さには魅力がある。朝の8時から公開しているので、朝イチに出かけた。これが正解。13世紀の物である本堂にひしめく千手観音と風神・雷神、二十八部衆は圧巻。

3位 東寺
 弘法市を翌日に控え、車が多くて地元のおっちゃん、おばちゃんが賑やかだが、意外と観光客は少ない。午前中で、他の観光地から離れているからだろうか。ここも仏像が量で迫ってくるので、見応えがある。

 ほかには、南禅寺も比較的人が少なくて良かった。六波羅密寺の建物は新しいが、持っている彫像はやはり見逃せない。

 さて、このブログは音楽雑記である。何か京都で音楽的な収穫はあったのかというと。これが全くなかった!雅楽も能楽もあるはずの古都だが…そもそも、TP&HBを見に行けないことへの、腹いせのような衝動旅行だったので、何も調べていなかった。
 伏見稲荷大社で神楽を奉納している人がいたのだが、背後の拝殿でグワングワン鳴りまくる鈴の音で、何も聞こえない。結果、収穫なし。
 次回があるとしたら、せめて金剛流の能くらいは調べて見ることにしよう。

The Doobie Brothers in Budokan2017/04/29 15:10

 2017年4月26日、日本武道館における、ザ・ドゥービー・ブラザーズのライブに行った。

 私にとってのドゥービーは、「限定的に」好きだというアーチストだ。
 まずミュージック・ビデオやライブ映像、写真などを全く見たことがないので、彼らの容姿を知らない。メンバーの名前も、人数も把握していない。
 アルバムは1971年のデビューアルバムから順番に聞き始め、その音楽はとても私の好みに合い、大好きなアーチストになった。そして1976年の [Takin' It to the Streets] まで聞いたところで、ちょっと違うと思い、それ以降のアルバムは全く聞いていない。
 その話をすると、「分かり易いやつだ」と苦笑される。ウクレレの先生(ギタリスト)曰く、「『オシャレ』が好きじゃないんですね」とのこと。
 ライブを見るのは、今回が初めてだ。

 当日のセットリストを見ると分かるが、17曲中の15曲が、私が持っているアルバムからの選曲で、そう言う意味では「私の好きなドゥービー・ブラザーズ」を楽しめた。

Jesus Is Just Alright
Rockin' Down the Highway
Take Me in Your Arms (Rock Me a Little While)
Another Park, Another Sunday
Clear as the Driven Snow
Spirit
World Gone Crazy
Eyes of Silver
Dark Eyed Cajun Woman
Sweet Maxine
Takin' It to the Streets
The Doctor
Black Water
Long Train Runnin'
China Grove
Without You
Listen to the Music

 武道館のステージはとてもシンプルで、マイクスタンドが横一列に4本並んでいる。私の席は西だったので横の上方から見下ろす形になった。ロックにおけるスタイルとして、この横並びを横から見るのが大好きだ。ワン・マイクも萌えるが、横並びも萌える。

 ステージに登場したメンバーを見てまず驚いたのが、彼らの若々しさだった。私はドゥービーの音楽は好きだが、知識がまったくない。彼らはTP&HBよりもだいぶ先輩だと思っていたので、その若々しさが意外だったのだ。
 確認してみると、トム・ジョンストンとパトリック・シモンズはトム・ペティやマイク・キャンベルより2歳年上。ほぼ同年代で、デビュー年がハートブレイカーズより5年早いとのこと。それにしても若々しい。
 声の素晴らしさも予想を遙かに超えていた。去年だったか、デイヴィッド・クロスビーの声の良さには度肝を抜かれたが、ドゥービーの声も最高だった。サポートメンバーも含めて、コーラスワークも、バンドのイメージを裏切らない素晴らしさだ。

 知っている名曲の数々に大満足だった理由の最大のものは、趣向を凝らさなかったことだ。
 ロックの名曲を「スローバラード・バージョン」とか、「アコースティック・バージョン」にするような工夫とか、趣向が、あまり好きではない。特にドゥービーはアルバムの音でしか知らないバンドなので、オリジナルの雰囲気をそのまま、ステージから大きな音で発してくれたのが嬉しい。
 そういう意味でいうと、ザ・ローリング・ストーンズも、あまり「なんとかバージョン」などをやらず、「ロックンロールはロックンロール」であり、録音した作品への自信がみなぎっている。そういう姿勢が大好きだ。
(例外はボブ・ディランで、彼は録音の前も後も、常に変化し続けるスタイルだ。私がディランが好きな理由な一つでもある。)

 認識を新たにしたのが、知らぬ人はいないほどの名曲 "Listen to the Music"。
 この曲、実はほかのドゥービーのメジャー曲にくらべて、ややスローで穏やかな曲だった。いつもアルバムの冒頭として聴いていて気づかなかったのだが、アップテンポな名曲をいくつも聴いた後、最後に聴くことによって、そのことに気づかされたのだ。

 最初から最後まで、イカしたロックンロールで突き通した、爽やかで潔い、最高に格好良いコンサートだった。たったの1時間半。でも大満足で、また見たい。