八仙 / Start Me Up / Painkiller2017/01/02 11:54

 いつものとおり、ダラダラしているだけの正月である。
 去年末の第九のテレビ放映は、合唱が母校ではなかったのが祟って、まだ見ていない。ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートは、ちらっと見たが、楽友協会の黄金の大ホールを見ただけで、満足している。曲目が面白くないのが、ニューイヤー・コンサート。いつものことだ。

 元日の朝、テレビで雅楽(舞楽)が放映された。去年は詩吟だったので、がっかりしたのだが、今年はしっかり宮内庁楽部の演奏が放映された。
 曲目は、「八仙」という、ちょっと馴染みのなかったもの。四人の舞人が、鮮やかな冠をかぶり、鶴を模した面をかける。鶴と言うよりは、カラス天狗なのだが。要するに、酉年なので鳥を題材にした舞楽にしたらしい。装束は、鯉の柄に、網を掛けたような、これまた独特な物。
 曲としては、たいして面白くもない。笙が入らないので、音の厚みとしてもやや寂しい。迦陵頻のほうが華やかで可愛くて良かったのではないだろうか。童子舞なので、ハードルが高いのだろうか。

 新年にあたってHPを更新したのは、ザ・ローリング・ストーンズ。"Start Me Up" の動画があがっただけだが、すかっとする。2013年のハイドパーク。夕暮れ前の光溢れるステージに、輝くストーンズ。なんだかありがたい。



 最後に、ちょっとした話題。
 ベンモント・テンチが年末にアップしたインスタグラムのコメントによると、3,4年前に膝を痛めて、今も手術あとが痛いとのこと。スマートで健康そうなベンモントにそんなことがあったとは、知らなかった。
 「今回の痛み止めはイブプロフェン。オーピエイツほどは効かない」と言っている。
 Opiates はあへん系の鎮痛剤なので、市販薬にもなっているイブプロフェンよりは、もちろん強い。
 今年は大規模なツアーがある。痛みは辛いだろうから、大事にしつつ、乗り切って欲しい。

Some Other Guy2017/01/07 22:06

 ランダムにiPodでアルバムを聴いていたら、ビートルズの [Live at the BBC] になった。
 このライブ・アルバムは思い出深い。発売された時はまだ学生で、CDを自由に買うことは出来なかった。ビートルズのアルバムも、まだ全て揃えきってないころだった。このアルバムは、就職してから購入したと思う。
 ビートルズの「新曲」が聴けるのも嬉しかったし、カバーデザインや、リーフレットの写真も格好良い。



 曲目として一番印象的だったのは、"Some other guy"。ビートルズのドキュメンタリー作品では必ず登場する、キャバーン・クラブでの演奏曲目が、この "Some other guy" だった。BBCライブの綺麗な演奏にまず、感動した。
 そして改めて、キャバーンでの演奏を見てみると、ライブハウスの熱量が溢れていて良い。どうやら、テレビ局もカメラが入った関係でこの時は2回演奏したようだ。たぶん、動くビートルズ演奏の映像としては、いまだに最も古いものではないだろうか。



 "Some other guy" はもともと、リッチー・バレットによる R&B の曲だった。女性コーラスが賑やかで、オルガンとブラスがゴージャスだ。



 "Please Mister Postman" もそうだが、ビートルズがカバーした途端に、唯一無二のロックンロールに仕上がり、疾走感、軽快感、幸福感が増すから不思議だ。

 ビートルズの "Some other guy" は当時リリースされなかったが、ブライアン・エプスタインと契約していたマージービートバンド,ザ・ビッグ・スリーがリリースした。それが、こちら。



 ビートルズを知ってから聞いてしまうと、やはり少し気の毒。ぼんやりした印象で、パワーに欠ける。容姿も、やはりビートルズにはるかに及ばない。

Wah-Wah2017/01/11 20:52

 ジョージの公式ツイッターによると、1969年1月10日は、ジョージが「バンドから抜け出して家に帰り、"Wah-Wah" を作った」日だそうだ。
 ツイッターにはそうとしか書いていないが、どうしてバンドから抜け出したかというと、もちろんポールにムカついたからである。
 そんなわけで、まずはスタジオ・レコーディングの "Wah-Wah"。収録アルバムは、もちろん名作 [All Things Must Pass]。



 ジョージの曲のなかで一番好きな曲はと聴かれたら、一応 "Isn't it a pitty" と答えることにしているが、実のところ "Wah-Wah" も捨てがたい。これらの曲が同じアルバムに収録されているところが、ジョージの凄まじさなのだ。
 クールだけど熱くて、煌びやか。こんな名作が生み出されるのだから、ポールに感謝しても良いかも知れない。
 ジョージにとっても自信作だったのではないだろうか。[Concert for Bangladesh] ではバンド・パートのオープニングを飾っている。あれだけの人数がステージ上に揃っていれば、やりがいのある曲だ。

 ライブといえば、"Wah-Wah" の一番の名演は [Concert for George] だろう。



 目一杯の人数をステージ上に揃え、ありったけの音を響かせまくる。この曲の演奏はこうでなくてはいけない。このコンサートはジョージの追悼コンサートだが、とてもそうとは思えないほどの、ハッピーな祝祭感。音楽監督を務めたエリック・クラプトンと、ジェフ・リンに拍手喝采である。
 そして動画で見るたびに笑うのだが、トムさんの位置取りが最高。ダニーとクラプトン、どちらを捉えてもしっかり映り込むニコニコ・トムさん。金髪も目立つし、大口開けて笑っているし。大好き。

 "Wah-Wah" にはカバーも多いが、私の印象に残っているのは、オーシャン・カラー・シーンによるカバーだ。2004年のレコーディングだというから、[Concert for George] の演奏を見て、録音する気になったのではないかと、推察している。
 オリジナルの良さをよく理解して、カラフルに、ハッピーに、華やかな音作りをしているところが、とても好感触だ。

Honda Racing / Queen2017/01/15 22:16

 2015年にF1復帰したホンダ・レーシングを追ったドキュメンタリーが、お正月に再放送された。最初の放映の時に見損ねていたので、良い機会だった。
 見て驚いたのが、レース様子の動く映像がほとんど無いこと。フジテレビの権利があるからだろう。それにしても、レースの映像無しにF1を追うというのは無理がある。ホンダの技術者たちの奮闘や、パワー・ユニットの話は面白かったが、F1ファンとしては消化不良な番組だった。

 番組中に、クイーンの曲が使われていた。いずれもUKにあるマクラーレンの拠点が登場したところ。英国つながりというものだろうか。
 先に聴いた方は、クイーンであることしか分からない、知らない曲だった。確認してみると、"Hammer To Fall" とのこと。私はクイーン前期のアルバムしか持っていないので、1984年のこの曲を知らなかったわけだ。



 クイーンのことはあまり知らないが、ジョン・ディーコンの姿は好きだ。

 もう一曲は、すぐに分かった。"Seven Seas of Rhye"



 この映像を見ると、クイーンがいかに日本で愛され、日本での人気が起爆剤になったのかが良く分かる。
 そして、ブライアン・メイが時々、マイク・キャンベルに見えるというのは、ハートブレイカーズ・ファンとしてのお約束。

Mudcrutch Live 20162017/01/19 22:16

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのファンクラブ,Highway Companions Club の豪華プレゼント第二弾が届いた。2016年,マッドクラッチ・ツアーから、トムさんの選曲による16曲をおさめたライブ・アルバムのダウンロードだ。
 16曲なんて、なんて豪華な!マッドクラッチの2枚のアルバムからはもちろん、名曲のカバーもある。さっそくダウンロードしてリピートしている。



 こんな、引き裂かれそうなアルバムはない。まさに、心が引き裂かれそうになるアルバムだ。

 音楽を聴いていて、こんな感想を持つことは、ほとんど経験がなかった。
 心が引き裂かれるというのは、「良い」という感想と、「悪い」という感想がせめぎ合って、どうしようもないということである。

 良いというは、素晴らしい曲を、素晴らしく演奏し、私を感動させる、そういう力が音楽に宿っていると言うこと。
 「悪い」というのは ― ここは言葉を選ぶのが難しい。もの凄く無遠慮に、鋭く、直裁に言えば、演奏が下手だということ。もう少し言葉を選べば、演奏の評価に対する価値感,センスが合わない。

 ここでいちど、マッドクラッチというバンドが何者であるかを、振り返っておこう。
 元々は、1970年代初頭に、トム・ペティと友達のトム・レドンが組んだバンド。このトムトム・コンビはかなり仲が良かったらしい。レドンは、イーグルスのバーニー・レドン(リードンとも表記する)の弟。
 そのマッドクラッチに、ドラマーのランドル・マーシュとギターのマイク・キャンベルが加わった。後にレドンが脱退し、ベンモント・テンチが加入する。
 他にも数人のメンバーが在籍したことがあるマッドクラッチだが、LAに出てレコード会社と契約,録音も行ったものの、上手くきっかけがつかめず、解散。マッドクラッチ・メンバーのうち、トム・ペティとマイク・キャンベル,ベンモント・テンチが、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズを結成して、大成功したというわけ。
 2006年にデビュー30周年企画でハートブレイカーズのドキュメンタリー映画が制作された際、トム・レドンとランドル・マーシュがインタビューに登場。これがきっかけとなり、トム,マイク,ベンモント,レドン,マーシュの5人で「第二期マッドクラッチ」が再結成され、2枚のアルバムを発表し、ツアーを行うに至る。

 さて、以上を踏まえて。
 ライブで演奏される曲はどれも最高。トム・ペティのヴォーカルも、いつものとおり素敵。マーシュも1曲でリード・ヴォーカルを務めるが、これもなかなか上手いし、自作の曲もかなり良い。レドンとマイク,ベンモントのヴォーカルは素人の域を出ず、まぁ、ご愛敬というところか。バーの常連のおじさんがステージにあがった感じ。コーラスは、サポート・メンバーのハーブ・ピーターソンもいるので、けっこう上手く行っている。
 バンド演奏のほうも、だいたいOKなのだ。トムさんのベースに問題はないと思うし、マイクとベンモントは、当然素晴らしい。レドンのギターに難も無いし、ピーターソンのサポートも相まって、うまくまとまっている。

 しかし。しかしなのだ。
 ランドル・マーシュのドラムだけが、どうしても受け入れがたい。
 普通に刻んでいるうちは良い。しかし、やたらとフィルイン(「おかず」とも言う)が入り、それがどれも気に入らない。バタバタして、収まりが悪く、締まりがない。悪目立ちが過ぎて、イライラする。"The wrong thing to do" などはあまりのメチャクチャぶりに、発狂しそうになった。
 感性ではなく、理性で判断すれば、マーシュもそれなりのドラマーであるはずなので、これは、たぶん音楽的価値感の違いでしかないのだろう。彼のドラミングが気に入らないと言うことは、スタジオ録音アルバムの時から、ずっと思っていたのだ。
 とにかく、スタン・リンチやスティーヴ・フェローニの時は、心地よく聴いていたのに、このバンドのドラムとはどうしても合わない。

 "Scare Easy" や、"Hope" など、マッドクラッチのオリジナル曲はどれも素晴らしいし、"Lover of the Bayou" や "Knockin' on heaven's door" のカバーなど、涙が出るほど感動的。なのに、どうしても駄目なドラムのフィルインがついて回る。
 まさに心は引き裂かれ、どうしようもない気持ちになる。胸が一杯になりながら、身もだえするほど、気持ちが悪い。

 普通のバンドなら、「ドラマーをかえろ!」ということになるのだろうが、マッドクラッチは結成の経緯からして、それはあり得ない。これはそういうバンドなのだと諦めて、良さのほうに耳と心を傾ければ、何度も聞けるアルバムなのだ。実際、何度も聴いている。
 ヘッドホンから聴いているから、ストレスなのであって、ライブ会場で興奮しながら聴いていれば、きっと幸せなままなのではないだろうか。とにかく、ヴィルトゥオーソとそうでない人のバンドは、存在しているだけでも大した物で、それがなかなか興味深い存在でもある。

日本の伝統芸能展2017/01/24 21:48

 国立劇場開場50周年記念,日本の伝統芸能展を見に行った。日本橋の三井記念美術館にて。
 実のところ、演劇や音楽はそのものを観賞するか、参加するかで、展覧会で見るものではなないと思っている。そう言いつつ、見に行くのを先送りにしていたのだが、見ないというのも癪なので、ぎりぎりになって見に行った。



 私が好きな邦楽は、雅楽と能楽。雅楽の演奏会にはよく行くし、ニセの新作能をでっちあげたこともある。

2015年4月1日 新作能「エルヴィス」

 そのような訳で、期待していたのは雅楽と能楽の展示。
 まずは、雅楽の舞楽面が数点。琵琶,篳篥,笙などの道具が数点。以上。
 能楽は大鼓,小鼓の胴、能管、能面数点。以上。

 物足りない。
 雅楽なら、もっと豪華絢爛な装束とか、火焔太鼓とか。もっとあるだろうに。
 能面については、旧金剛宗家から受け継いだ能面が54面、しかも重要文化財に指定されているのだがら、全部ずらりと並べれば良いのに。孫次郎の小面「オモカゲ」一つさえあれば良いとでも思ったのだろうか。
 金剛流は戦前に坂戸金剛宗家が断絶し、受け継いできた面をまとめて三井に譲渡したのだが、これは純然たる譲渡だったのか、売却だったのか、ちょっと気になっている。もっと気になるのは、せっかくの能面が美術館に収まっているということだ。面は舞台で用いられるからこそ生きる。ぜひ積極的に使って欲しい。

 屏風の展示室には、「舞楽図」が数点あった。「舞楽図」とくれば期待するのは、俵屋宗達なのだが、もちろんそんなビッグネームは無い。私が見た時は狩野探信でもなく、輪王寺蔵の作品だった。
 描かれている舞楽の数が多くて面白いのだが、どうせなら俵屋宗達が見たい。

 屏風以降の展示は浮世絵などになってしまう。私は近世邦楽に興味が無い。

 結局、やはり音楽,芸能はその演じるものを聴く、見るものであって、展覧会で見るものではないということを、確認するに至った。

Leave Virginia Alone2017/01/28 22:16

 ロッド・スチュワート1996年の曲に、"Leave Virginia Alone" があり、これはトム・ペティが作ったもの。
 話を聞くところによると、トムさん自身のアルバム [Wildflowers] 用だった楽曲を、録音までしていたが、結局ロッド譲ったのだという。
 アルバムの看板曲にはならないが、素朴で、素敵な曲だ。



 [Wildflowers] と言えば、確か "You Wreck Me" もミック・ジャガーのレコーディングに検討されたという話も聞いている。この時期、トムさんやマイクの曲が各方面に求められていたのだろうか。
 もともとトムさんが書いたとなると、当然トムさんのバージョンも聴いてみたいものだ。

 そういえば、[Wildflowers – All The Rest] の情報は、その後聴かれないのだが、どうなっているのだろうか。"Leave Virginia Alone" も収録されていることを期待しているのだが。
 期待を持ちつつ、[Wildflowers – All The Rest] に収録されている(はず)の、"Somerware Under Heaven"。これがカットされたというのだから、恐ろしい。