Bizet:Symphony No.12015/10/04 14:54

 事情があって、ビゼーの交響曲1番(C dur) を聴いている。事情というのは、そのうち説明するだろう。

 フランス人作曲家,ジョルジュ・ビゼー(1838-18785) と言えば、なんといってもオペラ「カルメン」だ。そして、「カルメン」以外は、せいぜい「アルルの女」くらいしか知られていない。もう一つ、「美しきパースの娘」のうちの一曲が日本語の歌曲になって有名なくらいだ。
 もっと長く生きていれば、ヴェルディやプッチーニのようなオペラの大家としてもっと有名になっていたかも知れない。しかし、「カルメン」のような作品を一つでも世に送り出したなら、作曲家として幸せな方だろう。
 もっとも、ビゼー自身は「カルメン」初演後すぐに亡くなっており、当初の不評しか知らなかった。後に「カルメン」を知らぬ人はいないほどの作品になるとは、夢にも思わなかっただろう。世に出した当初の批評など、気に留めるほどのことも無いのだという好例。

 さて、交響曲1番は、ながらくその存在が知られていなかった。どうやら、ビゼーがパリ音楽院に在学中,17歳の時に書かれた物で、勉強中の習作といったところだろうか。作曲者自身が世に出す気がなかったようだ。
 その楽譜が、作曲者の死後60年ほどして発見され、1935年の初演を迎えた。
 私が買ったのは、オトマール・スウィトナー(1922-2010)指揮,ドレスデン・シュターツカペレの演奏で、1972年の録音。別にどの版でも構わなかったのだが、アマゾンの検索でトップにあがり、在庫していたのでこれにしたというだけ。
 同時に小澤征爾のものも候補にあがったが、ジャケットの趣味が悪かったので、スウィトナーにしただけで、深い理由はない。



 17歳の少年が作ったとは思えない、堂々たる交響曲だ。さすがに憧れの作曲家達の影響からは逃れきっては居ないが、その好ましい影響力が清々しくあらわれている。
 全体的にロッシーニ風の軽やかで躍動的な、陽気な雰囲気。ロマン派的な叙情性は第二楽章に反映されている。特にこの第二楽章、オーボエのたっぷり取ったソロから展開してゆく心地よさが良い。
 第三楽章のスケルツォもなかなか素敵な曲で、何回か出てくる、コントラバスの低い刻みが格好良い。
 第四楽章はちょっとモダンなモーツァルトという感じだろうか。オペラ・ブッファの序曲のようなウキウキさせる力に満ちている。最後の和音をあと何音か鳴らしていたら、本当にモーツァルトっぽくなるが、そこはスパっと、ややせっかちに終わらせる初々しさも良い。

 「カルメン」しか知らなかったビゼーについて、こう言う曲もあったというのは嬉しい驚きだ。
 なんでも、ビゼーはピアノの名手であったらしく、多くはないが作品も残している。グレン・グールドが「半音階的演奏曲」を録音しているとのことなので、いつか聴いてみたい。