新作能「エルヴィス」2015/04/01 00:00

 新作能「エルヴィス」が、来月、東京の国立能楽堂で披露される。

 まず、後見が舞台正面前方に、ギターを一つ、横たえる。
 そして、ワキと二人のワキツレが登場。
 「これは旅のロックバンドにてトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズにて候。トム・ペティとは我がことなり。我等いまだメンフィスのグレイス・ランドを見ず候ほどに、この度、ツアーの合間に立ち寄りて候。」

 ワキ,ワキツレの道行(みちゆき)を謡った後、一行はグレイス・ランドに到着する。
 「急ぎ候ほどに、はやグレイス・ランドに着きて候。心静かに見物申そうずるに候。」

 一行はグレイス・ランドの展示品を見て、プレスリーの偉業に思いを馳せる。やがて一行はギターの前にやってくる。
 「これなるギターを見候らえへば 昔を今に思い候。いかさま名の高きプレスリーの ギターに相違無く思し召せば。げに有り難き物に候。」
 一同、ギターに見入る。

 そこへ、老人(前シテ)が橋がかりに登場する。
「のうのうあれなる御若者。そのギターのいわれを人にお尋ね候らへば、何と教え参らせて候ぞ。」
 前シテの老人は尉面に、尉髪(白髪のかつら)。小道具に箒を持っている。

 ワキがシテに何者かと尋ねると、
「これはグレイス・ランドに住まいする清掃係にて候。幼き頃よりプレスリーを愛で候ほどに、この所にて、辺りを掃き清め申すものなり。」
 シテの上歌(あげうた)。
 「所はメンフィスの 所はメンフィスの ピンクのキャデラックも年ふりて 昔のエルヴィス面白や 妙なる歌声響かせし 四海を隔てし異国にも 若き男女の夢うつつ 不思議やなその声の 耳をすませば げにも有り難き 音楽なり」

 ワキがギターの来歴を尋ねると、老人は事細かに説明する。あまりの詳しさに、ワキは不審に思う。
「げにや詳しきほどを見るからに。常人(ただびと)ならぬよそおいの。その名を名乗り給へや。」
 すると老人が答える。
「今は何をかつつむべき。これはメンフィス グレイスランドのエルヴィスの霊と現じたり。」

「不思議やさては名所(などころ)の ギターの奇特(きどく)を顕して いかに時代は過ぐるとも ロックの尊き(たっとき)事なれば 何時までもロックの代に。ここにて夜まで待ちもうさんと 告げて通用口へ出でにけり」
 老人はワキ,ワキツレを残して鏡の間に入る(中入り)

 ワキとワキツレがグレイスランド内にとどまっていると、警備員(アイ狂言)に見とがめられる。ワキは、不思議な老人が、自分はエルヴィスの霊だから、夜までここで待つように言ったと、説明する。
 すると警備員はグレイスランドでのエルヴィスの生活を語る。そして夜も更けた頃、ワキ,ワキツレを残して退場する。

 ワキ,ワキツレの待謡(まちうたい)
「メンフィスや この芝草に腰掛けて 月もろともに弁当の 飲み食いするほどに夜も更けて やがてギターの音近々と はやエルヴィス・プレスリーのいでにけり」

 後シテ,エルヴィスの霊登場。リーゼントに皮ジャン,革パン。面は中将。
「我見ても久しくなりぬステージの 歓声拍手の鳴り止まぬ いざロックンロールいたそうよ」
 エルヴィスの霊は最盛期のヒット曲メドレーを舞とともに披露する。舞は「腰振」というこの能だけの特別な舞で、「開き」という動作をする際に腰を振るのが特徴。

 キリ「さて感激の監獄ロック 響くギターには退屈を払い おさむる手にはファンを抱き ハートブレイク・ホテルはラジオを撫で ハウンド・ドッグは命を延ぶ メンフィスの歓声拍手を楽しむ 歓声拍手を楽しむ」

 二場,約60分。太鼓入り。「ジャンプスーツ」の小書き(特別演出)あり。

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