ラトルズがやってくる ヤァ!ヤァ!ヤァ!2014/06/03 21:38

 伝説のロック・バンド、ザ・ラトルズがいよいよ来日公演を行う。
 今年はストーンズ、ディランときて、最後に超大物ラトルズのお出ましだ。さすがに全員というわけにはいかないが、ナスティとバリーが来てくれる。明日4日が初日、私は5日に見に行く。

 ラトルズを迎えるべく、彼らのアルバムを繰り返し聞いている。
 いずれも珠玉の名曲。一緒に口ずさみたくなる親しみやすさが最大の武器だろうか。まずは、ナスティのヴォーカルで、"I Must Be in Love"。



 この曲は、1999年のエリック・アイドルのコンサートに、ゲストとして登場した(?)サー・ダーク・マクイックリーも歌っている。ダーク、「サー」だったんだ…



 ちなみに、このエリックのコンサートはCDにもなっている。バンドのキーボードは、エリックの相棒ジョン・デュプレ。サックスはなんと、トム・スコットである。なんて豪華な…

 私はラトルズの中ではダークが一番好きなので、今回の来日に参加していないのは残念。ソロで来てくれたら、絶対駆けつける。腸捻転にだけはならないでほしい。
 私が一番好きなダークの動画は、"Get Up and Go"



 マッシュルームは似合わないが、長髪と髭がとても似合っている。スリムで足が長く、スーツもびしっと決まっている。
 このダークの格好良さの影響で、ビートルズというバンドのポール・マッカートニーで一番格好良いのは、ルーフトップの "Get Back" だと思っている。

 世界を変えた、伝説の「プレファブ・フォー」奇跡の来日!楽しみで楽しみで、夜も眠れない。

The Rutles in Tokyo 20142014/06/06 21:52

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの新譜から、早速1曲聴けるようになっているのだが、何はともあれ先にラトルズの記事を書かなければならない。ハートブレイカーズはまた次回!

 さて、雨の6月5日,新宿BLAZE。集結したラトルマニアたち。前座のあとに登場した、ナスティとバリー、そしてサポートメンバー。ザ・ラトルズの登場だ。



 チケット販売当日に並んでくれたKさんのおかげで、最前列に陣取ることが出来た。
 いよいよ登場した伝説のラトルズ。リーダーのナスティ(ニール・イネスとも言う)は、白いゆったりした上下に、サンダルのリラックスモード。バリーは音符が赤く刺繍されたシャツが格好良い。

 最初から最後まで、お馴染みのラトルズナンバーの目白押しで、「聴きたかったのに聴けなかった曲」というものが皆無。それはそうだろう。ラトルズは全部で36曲ほどしかないのだから。
 "We've Arrived!" から始まって、"It's Looking Good", "Hold My Hand", "I Must Be in Love" などのイカしたロックンロールでいきなり会場は大盛り上がりの大合唱。
 そして、"Major Happy's Up and Coming Once Upon a Good Time Band" から続く3曲のメドレーを再現する。バンドメンバーは5人だけなのだが、キーボードの大活躍で大満足のボリューム感。
 時々、「スポンサーにもサービスしなきゃね!」というネタで、"Fiasco" を挟んでくる。この曲はラトルズではなく、ボンゾのものだ。



 驚いたのは、バリーの歌が上手なこと。オリジナルの録音よりもずっと上手になっているではないか。どうやらライブを続けて鍛えられたらしい。トークも好調。
 "With a Girl Like You" や、"Doubleback Alley" などのハートウォーミングな優しい演奏もじっくり聴かせてくれる。
 そして、やはりラトルズならではの、"Piggy in the Middle" や、"Shangri-La", "Cheese and Onions" のような壮大な演奏もじっくり味わえる。

 もの凄いと思ったのは、会場に集まったラトルズファンたちのノリの良い事。ほぼ最初から最後までノリノリで歌いまくっていた。この一体感は、去年のポールよりもっと凄い。
 みんな口々に「ナスティ!」や、「バリー!」と呼びかけては、伝説のロックバンド,ラトルズを堪能し、小ネタや、ジョークに大笑いしていた。

 いよいよアンコールとなったとき(面倒なのでいちいちバックステージには引っ込まない)、おもむろにニール・イネスが言った。
 「ラトルズというのは妙なもので…ようするに存在しないわけですよ。」
 でも、そのラトルズを生みだし、こんな素敵なライブで盛り上がることができたのは、ジョージ・ハリスンのおかげでもある。そこで、ジョージに捧げるべく、"All Things Must Pass" を演奏。ニールはウクレレだ。
 もう、ここで私は大号泣。気がつくと他にも泣いている人多数。すすり泣きが聞こえ、かすかに一緒に歌っている…。大袈裟なところのない、丁寧で、穏やかで、温かな名演奏だった。こればかりは、CFGのよりも良かった。

 ひとしきり感動すると、最後は "Let's Be Natural" と、"Back in '64" でしみじみとお別れをし、ラトルズのライブは終了した。
 はっきり言えば、去年の11月の東京でのポール、ロンドンでのディラン、今年の東京でのストーンズ,ディラン、それらのどれよりも、ラトルズのライブは楽しさも、満足感が上だった。

 ビートルズのファンで、ラトルズのファンではないというのは、損だと思う。
 亡くなったメンバーもあり、「ビートルズのライブ」というものは不可能だし、ポールやリンゴも彼らのソロ・ライブはやっても「ビートルズのライブ」はできない。
 その点、ラトルズはニール・イネスが居れば最初から最後まで、ラトルズの曲目白押しの、ラトルズファンのためのコンサートができる。これがどれほど幸せなことか!
 ビートルズのカバーバンドには到底及ばない「ビートルズ度」が、ラトルズにはある。限りなくビートルズに近く、ビートルズらしさを凝縮しつつも、別の曲を素晴らしく演奏してみせるラトルズ。今からでも遅くない、ビートルズが好きなら、聞いてみると良い。あのオシャレなジョークに波長さえ合えば、ラトルズのお得な楽しみが加わるだろう。

 ぜひ、もう一度来て下さい、ラトルズ!絶対見に行きます!いっそのこと、ハートブレイカーズの前座をやっても良いのだよ!いや、60年代の伝説のバンドだから、ハートブレイカーズが前座になるのか。

American Dream Plan B2014/06/09 20:17

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの新譜[Hypnotic Eye] から、"American Dream Plan B" が公開された。
 曲を聴くまえから、このタイトルが凄い。脳天気で楽観的な「アメリカンドリーム」ではない、それでも夢はある。人がそれを夢と言うかどうかはとにかく、「夢見るような」ではなくとも、とにかく夢はある ―



 ヘヴィなイントロから、重々しいAメロの始まり。ちょっと "Here comes my girl" のようでもあり、最近のストーンズにありそうな感じもする。ここだけ聞くと、まえにトムさんがインタビューで言っていた「デビュー当時のようなロックンロールな感じ」とは合わないような気がするのだが…

 サビで急に開ける!
 ここでガツンとやられた。突然、降り注ぐメジャーコード。金色に輝く、熱いほどキラキラしたサビのサウンドが炸裂するのだ。

I got a dream I’m gonna fight til I get it...
俺には夢がある 夢をつかむまでは戦い続ける...

 2回目のサビから、ギター・ソロに入る前のブリッジのような部分はもう、やられたとしか言いようがない。あんなアコースティックの音の光の粒をまき散らされたら、震え上がるほどゾクゾクせずにはいられない。
 そしていつものように、短いけど、全てを語るようなマイクの(マイクだよね?)ギターソロ!ああ、ここに理想のロックバンドが実在している!
 さらにサビを繰り返すのだが、アコースティックサウンドがさらに引き立ち、ジョージ・ハリスンのような控えめでごく短いくせに、ひどくセクシーで切ないギターが歌っている。
 マイク・キャンベルは間違いなくギターのヴィルトゥオーソだが、何よりも歌が好きなのだという。大好きな歌のために、すべてを捧げる最高のギタリスト。贅沢すぎる音楽。

 最後に思わずニヤリとしてしまうのは、びっくりするほど潔いエンディング。こんなに素っ気なく終わる曲もそうそう思いつかない。これはアルバム全体を考えてのことだろうか。
 ライブで演奏するときは、ぜひともエンディングを適度に伸ばして、格好良いソロをもう少しだけ聞かせて欲しい。

 トムさんのコメントから、期待大なアルバムだとは思っていたが、どうやら期待以上のものが出るのではないかという予感がしてきた。

 アルバム・ジャケットには賛否両論あるようだが、TP&HBはソロワークも含めて、ダサいジャケットがほかにいくらでもあるので、これは良い方ではないだろうか。ちなみに、私にとって最悪のジャケットは [Highway Companion] 。
 今回の [Hypnotic Eye] は、第一印象が「目がチカチカする。」
 そうか。だから "Hypnotic (催眠術にかかった)瞳" なのか。

Hypnotic Eye から先行3曲2014/06/12 22:01

 Ticketmaster から、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの新譜 [Hypnotic Eye]の3曲をダウンロードできますという案内が来た。
 8月からスタートするツアーのチケットを買った人の特典だそうだ。

 いやぁ!そんなぁ!悪いなぁ…
 いや待て。iTunesでも、この3曲が先行発売されているというではないか!
 おおう!Ticketmaster のご厚意は嬉しいが、恐れ多くもTP&HBの新曲を無料でダウンロードなんて、もったいないことでございます!私ごときは、もちろんお金を払って買わせていただきますとも、ええ!

 謎の情熱発動で、なぜかiTunes (US) でお買い物!
 ふはははははは!TP&HB新譜に備えて、50ドルのギフトカードを購入して置いた甲斐があったぜ!いつでもどんと来い!



 "American Dream Plan B", "Red River", "U Get Me High" の3曲。今日の移動、約3時間はこの3曲をエンドレスで聴いていた。それでもまったく飽きず、まだまだ聞きたい。
 "American Dream Plan B" は先だって公開された曲。ダウンロードで格段に音が良くなり、曲の出来の良さがさらに際立っている。やや重いAメロから、サビが突然開ける色調の変化が、さらに鮮やかに迫ってくる。

 "Red River" はイントロこそ [MOJO]っぽいが、トムさんのヴォーカルが入ると、ちょっと毛色が違うのが分かる。サビでの、コーラス(トムさんのダブルトラック?)が効いている。
 この曲、歌詞が気になった。"She shakes a snake above her hair" と聞こえる。「彼女は、頭の上でヘビを振る」…?歌詞を早速あげてくれているサイトを見ても、やはりそう歌っているらしい。
 この "shake a snake" というのは、なにか特定の意味のある表現なのだろうか?それとも、 "S" から始まる単語のリズムに意味があるのか?
 この曲に出てくる「彼女」は、ロザリオや、ウサギの足(幸運のお守り)、黒猫の骨などを持つ不思議な女性なのだが…
  "shake a snake" ときて、真っ先に思い出したのは、トムさんのパパ。[Conversatins with Tom Petty](カントム)に登場した人の中で、一番笑いを取った人。マッチョでワイルド。ワニを捕まえてパンチを食らわせ、ガラガラヘビをとっ捕まえて振り回した上、首に巻いてみせる、トムさんのパパ。どん引きの少年トム・ペティ。
 [MOJO] では、トムさんのお祖父さんの呼び名 "Pulp wood" が登場したので、この連想はあながち間違っていないかも知れない…?

 "U Get Me High" のサビは、どこか [About Time] のスティーヴ・ウィンウッドのような雰囲気。ベンモントのオルガンの音が印象的だ。"High" を伸びやかに歌うところも好きだ。

 アルバムの発売が楽しみでしょうがない。早く7月29日にならないだろうか。テレビ出演などもあるだろう。最新トムさんのファッション・チェックもせねば。

 そういえば、チケットマスターの無料ダウンロードも、一応しておいた。せっかくのご厚意ですから…。そんなわけで、私のPCにはそこかしこに、新曲3曲が保存されている。
 しまった。アメリカのiTunesで買うべきではなかったかも知れない。アメリカの方は売れて当然なのだから、日本のiTunesの売り上げに貢献するべきではないか?!むむッ…これから、買いに行く…のか?!

Inside Llewyn Davis2014/06/15 20:21

 コーエン兄弟監督の映画「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」[Inside Llewyn Davis] を見た。
 1961年ニューヨークはグリニッジ・ヴィレッジ。フォーク・シンガー,ルーウィン・デイヴィスの1週間を追う映画だ。

 かつては相棒マイクとレコードを出したこともあるフォーク・シンガーのルーウィンは、今ではソロ。レコードは出したが、ろくすっぽ印税も入らず、もちろん鳴かず飛ばず。仲間のよしみでガスライト・カフェで歌い、同様の仲間や理解者たちの家に泊めてもらい、寝るところをなんとか確保する毎日。
 ある日、ひょんな事からネコを連れて歩くはめとなり、あれこれあった仲間の女性フォーク・シンガーには罵倒され、お金が必要になる。レコーディングセッションで得た払いを手に、短い旅に出て、奇妙な体験をしつつ、失望を抱えてニューヨークに帰る。
 そしてまた、ガスライトで歌う夜。いつもと同じようで、どこか違う夜…




 元になったのは、デイヴ・ヴァン・ロンクの自伝だそうだ。「インサイド」というアルバムタイトルや、レコードジャケットの構図も同じだ。
 しかし、私にとってはやはり「ボブ・ディラン自伝」の世界。冬のグリニッジ・ヴィレッジの風景、地下鉄、流れるフォークソングの数々。ニューヨークに行きたくなる。ボブ・ディラン・ファンなら必見の映画だ。
 化け物のようなジャズマンも印象的。何が何だか分からないキャラクターだが、とにかく演奏シーンはなく、単純なコード進行を馬鹿にしている。一方で、所々にクランシー・ブラザーズや、PPMを彷彿とさせるシーンやほのめかしがあるし、当然「あの人」もその内の一つ。
 それから、ネコの名前が秀逸。そういえば、同じコーエン兄弟監督の映画「オー!ブラザー」も、本作品のネコの名前が鍵になっていた。

 音楽は全編に流れるフォークソングの数々が素晴らしい。これはサウンドトラックが欲しい。主演のオスカー・アイザックを含め、ほとんどの楽曲を、演者が自ら演奏しているそうだ。
 劇中に流れるボブ・ディランの曲は、"Farewell"。[Witmark Demo]とは別バージョンだそうだ。この曲は、アイルランド民謡 "Farewell to Liverpool" と同じ曲であり、私のお気に入りでもある。



 アイルランドと言えば、ルーウィンが歌う "The Death of Queen Jane" も印象に残った。
 この曲自体は、イングランドのもの。「王妃ジェーン」とは、ヘンリー八世の3人目の王妃だったジェーン・シーモアで、彼女は王子を産んだ直後に亡くなっている。この曲はその王妃ジェーンの死と、王ヘンリーの嘆きを歌っている。
 ちなみに、ジェーンの忘れ形見である王子は後にエドワード六世として即位した。マーク・トウェインの童話「王子とこじき」のモデルにもなった人物だが、15歳で夭折し、直後に「九日女王ジェーン・グレイ」の事件が起きている。
 "The Death of Queen Jane" は、アイリッシュ・モダン・トラッドの雄,ボシー・バンドが録音している。



 ボシーの演奏は訛りなのか、言語の問題なのか、かなり歌詞が聴き取りにくく、一部違うところもあるようだ。
 こちらは、ルーウィンこと、オスカー・アイザックの演奏。

CHANEL Pygmalion Special Concert2014/06/18 20:45

 シャネル・ピグマリオン・デイズ・スペシャル・コンサート「21世紀における『クラシック音楽』の行方」に行った。  場所は、銀座シャネルの4階、シャネル・ネクサス・ホール。

 そもそも!シャネルってどこにあるんですか?!…という次元。
 間違えて店舗に入ろうものなら、速攻で出口に案内されるのではないだろうか。

 シャネルは、10年前から若手音楽家の援助としてシャネル・ネクサスホールでのコンサートを開いており(いわゆる企業メセナの一環)、ピグマリオン・デイズというのがそのコンサートのこと。
 今回は、コロンビア大学中世日本音楽研究所とのコラボレーションで、雅楽楽器の演奏家が加わる。彼らが私の知り合いだったという縁で、このコンサートを見に来たというわけだ。
 おしゃれなシャネルビルのホールへおしゃれなスタッフさんに案内され、スタインウェイのピアノやら、シャネルのマークつきの椅子やらがあるホールへ。渡されるプログラムの紙にもお金がかかっている。おおお・・・さすがはシャネル・・・



 演目はすべて一柳慧(いちやなぎとし)の作品で、作曲者自身の解説つき。

 正直言って、私は雅楽楽器を使った現代音楽というものをそあまり買っていない。それでも、ある程度は楽しめた。
 1曲目「龍笛とチェロのための音楽」は、今回のコンサートのために書き下ろしたとのことだが、やや、やっつけ仕事的に聞こえる。
 ピアノと笙(いや、尺八のほうだったかな?)の曲では、ピアニストがピアノ線を引っかき始めた。まぁ・・・そういうのが最先端だった時代もある。今となっては、ピアノ線を棒で叩き始めたらもうアウト!・・・というのが私の感想。
 結局、一番良かったのは、最後のヴァイオリンと笙による、「月の変容」。曲想もしっかりしているし、音色的にも、ヴァイオリンの柔らかい表現が、笙とよく合っていた。

 この手の音楽を聴くと、雅楽の古典作品を聴きたくなる。

 コンサートの終わりには、日本語が非常に上手な、シャネルの社長(たぶん、フランス人)が挨拶。そして、「お飲み物のご用意があります」…なぬッ?!そんな演奏会は初めてだ!
 ロゼのスパークリングワインを、イケメンが細長いワイングラスに注いでいる!アルコールが駄目なひとのためには、ペリエがやはり細長いワイングラスに!しかし私は炭酸が飲めない!
 めずらしいおセレブな雰囲気を味わった、ちょっと面白い演奏会だった。

Benmont Tench talks about his first ever solo album2014/06/21 20:16

 Keyboard誌にベンモント・テンチのインタビューが載り、ネット上で読めるようになっている。このインタビューは、ハートブレイカーズの新譜ではなく、ベンモント自身のソロアルバム [You should be so lucky] についてのもの。
 私は「機材」には興味は無いが、「楽器」には興味があるので、そういう意味でも面白い内容だった。

Benmont Tench talks about his first ever solo album



 なんでも、このインタビューを行った場所は、ニューヨークのスタインウェイ・ホールとのこと。
 このニューヨークのスタインウェイには、私も行ったことがある。ホールにこそ入らなかったが、ピアノのショールームはまさにピアノ・ワンダーランドで、一番高そうなピアノで平均律を弾いてきた。



 このインタビュー、時おり日本語が登場する。インタビュアーによると、[You should be so lucky] の "Today I Took Your Picture Down" では、"Zen-like" なピアノコードが鳴っているそうだ。禅がなんたるか、私には皆目わからないが。
 "Blonde Girl, Blue Dress" は、Haiku 俳句っぽいそうだ。ベンモントは、ハイクとは褒めすぎだが、トム・ペティの「最小限の言葉でこそ、最高にエモーショナルなインパクトが生まれる」とう言葉を参考にしているとのこと。

 "Wobbles" では、プロフェサー・ロングヘアの影響が聞き取れるという。ニュー・オーリンズの音楽の影響について、ベンモントはこう答えている。

 ぼくはあそこ(ニュー・オーリンズ)の大学に2年間いた。(中略)ニュー・オーリンズに行くなり、すぐにプロフェッサー・ロングヘアやザ・メーターズに衝撃を受けたよ。それ以来、ずっとニュー・オーリンズの音楽を聞いている。

 ピアノの種類に関する質問については、こう答えている。

 このアルバムには、幾つかの異なったサウンドのピアノを使用している。ギター・プレイヤーはスタジオに来ると、「この曲では1957年のレスポールを使って、次のでは、2000年のストラトキャスターを使おう」とか言うだろ。ピアニストは、そのスタジオにあるピアノを良い楽器だろうが、悪い楽器だろうが、使わなければならない。それに、アルバム全体で、たった一つのピアノのサウンドに限定されてしまう。
 それでグリン(プロデューサー)とぼくはこう考えたんだ。「家からアップライトを持ってこよう。使いやすいから。」木目調のヤマハU7。実はかなり調子が悪くなってしまって、セッションの後、オーバーホールしなくちゃならなかった。参ったよ。
 (グランドピアノは)サンセットサウンドのスタジオ3にあった、スタインウェイB。
 (アップライトとグランドは)たぶん、違いがある。タッチも違うし、音色的にも違う。ぼくはヤマハU7の、ハンマーと弦の間にフェルトを挟んで、音を小さくするミュート機能が、大のお気に入りなんだ。とても静かに演奏できるからね。グランドピアノの時も、ほとんどの場合ソフトペダルを使っている。


 このコメントは非常に興味深い。
 まず、ヤマハのU7だが、このシリーズは1964年から1974年まで生産されたアップライトピアノ。この頃は、まだ象牙の鍵盤があっただろう。この60年代から70年代にかけて、ヤマハやカワイが大量生産した一般家庭向けのアップライトピアノというのは、名器が多い。それこそ今でも、平成生まれの新しいものより、ずっと良い音がするのだ。
 アップライトピアノの場合、真ん中のペダルの有無はモデルによって違うが、ベンモントのU7はある方の仕様だ。真ん中のミュートペダルは、彼も言っているとおり弦とハンマーの間にフェルトを挟んで、音を押さえる仕掛けになっており、しかもロックすることができる。ちなみに、左ペダルのミュート機能は、ハンマーと弦の距離を短くして、強く叩けないようにする仕掛け。
 グランドの左ペダルはソフトペダルと言い、鍵盤ごと僅かに横にスライドして、ハンマーのシンで弦を叩けなくすることによって、音を小さくするようになっている。
 ベンモントが、このミュート,ソフトペダルの機能が好きだというのには驚いてしまった。私を含め、ほとんどのクラシック・ピアニストはこのミュート,ソフトペダルが好きではないと思う。最近、音大仲間にも聞いたのだが、やはり音を小さくするのは指の技術であり、ペダルには極力頼らないようにしているという。
 ペダルで音を小さくすると、音がこもる、音が抜けない、鍵盤を叩いたときの違和感がするなどで、イライラするのだ。一方で、ベンモントのようにバンドのために演奏をするピアニストに言わせると、良い機能だそうだ。なるほど。
 グランドピアについては、スタインウェイのBと言っている。これはサロン,スタジオ、小規模なリサイタルホール向けのモデルだ。
 グランドとアップライトでは音もタッチも違うと言うが、これは同感。アップライトは僅かだが、鍵盤の反応が遅いため、早く弾くと少し違和感を覚える。まぁ、僅かな差なので、大した事ではないのだが。

 家からスタジオに持っていったら、調子が悪くなってしまったというのには、笑った。ピアノは基本的に、移動させることを前提としていない楽器なので、そういう事もあるだろう。いちいち調律も必要だし、外に出すと天候によってはハンマーやダンパーがダメになる。ピアニストの宿命として、その場にあるピアノで自分なりに最高の演奏をするしかない。
 プロのピアニストによっては、自分の楽器を世界中にもっていくそうだが、もの凄い経費だろう。ハートブレイカーズはどうなのだろうか。いちいち、ベンモントご自慢のスタインウェイを持っていくのだろうか。そのたびに調律というのも、面倒だと思うのだが。

 インタビューの中で、40年間の活動について尋ねられ、こう答えているのが印象的だった。

 ぼくは、自分のお気に入りのバンドに所属している。誰も、ビートルズや、ローリング・ストーンズのメンバーには、なりたくてもなれないだろう。でも正直言って、ぼくはなりたいとも思わないんだ。ぼくは、ぼくとって「正しい」バンドにいるのだから。このことが、ぼくにインスパイアーをもたらしている。どうしようもないくらい、ぼくはハートブレイカーズなのさ!

 最後に、ロック・キーボーディストを目指す人へのアドバイスを残しているが、これぞまさにロック界にその人あり、凄腕キーボーディスト、最高のハートブレイカー,ベンモント・テンチ。素晴らしいコメントをしている。こんなベンモントだからこそ、トムさんも、マイクも、そして私たちファンも、ベンモントが大好きなのだ。

 アドバイスをするとしたら、よく聞くことだね。ぼくの感性や、ぼくがどんな音楽からここまでたどり着いたかを知りたければ、ブッカー・T・ジョーンズや、ニッキー・ホプキンズ、ジェリー・リー・ルイス、プロフェッサー・ロングヘア、アレン・トゥーサンなどを良く聞くといい。
 それから、リンゴ・スターや、チャーリー・ワッツのようなドラマーもいいね。彼らは決して「ドラム・パート」をプレイしない。彼らはシンガーの歌をよく聞いて、その「歌」を演奏しているんだ。これが良い教訓だね。

Bob Dylan manuscript "Like a Rolling Stone"2014/06/24 21:56

6月25日 付記
 落札額、約200万ドル。約2億円なり。わぁお。

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 6月24日10時から、ニューヨークのサザビーズで、ロック関連アイテムのオークションが開かれる。その目玉が、ボブ・ディラン直筆の、"Like a Rolling Stone"歌詞メモだ。

Bob Dylan manuscript expected to rake in $2 million at rock 'n' roll auction

 サザビーズのページにも載っており、100万ドルから、200万ドルが見込まれているとのこと。



 同時に出品される "A Hard Rain" が40万から60万ドルだから、やはり "Like a Rolling Stone" は特別なのだろう。
 "Once upon a time you dressed so fine..." という出だしの言葉も見えるし、いろいろと絵も描き込まれている。

 この便せん、ヘッダーを見ると、ワシントンのロジャー・スミス・ホテルとある。当のロジャー・スミス・ホテルのページを見ると、こちらにもこの手書き歌詞メモがでかでかとアップされていた。
 ロック史に燦然と輝く超大作の歌詞が描かれているのだから、ホテルにとって誇らしいことこの上ないだろう。

Making Rock ‘n’ Roll History: Roger Smith’s role in Bob Dylan’s “Like a Rolling Stone”

 私にとっても、やはり "Like a Rolling Stone" は特別だ。間違いなくディランで一番好きであり、ロック史最高の一曲だ。
 さすがにこの手のアイテムを自分で欲しいとまでは思わないが、それをほしがる人の気持ちも分かる。

 こちらは、ストーンズがリオデジャネイロでディランと共演したときの "Like a Rolling Stone"。豪華すぎて、ステージの床が抜けそう。
 お互いが様子を窺っているのが可愛い。ミックが引っぱった方が上手く行く。最後のヴァースにきて、やっとディランもストーンズのノリの合わせられるようになった…けど、やっぱりデュエットは上手く行かないのが素敵。

Tom Petty & The Heartbreakers Live 20132014/06/27 21:34

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのファン・クラブであるHighway Companion Club。その会員特典として、去年のライブの音をもらった。
 一つの会場での一つのライブではなく、ザ・フォンダ,ビーコン・シアター,ボナルーから数曲ずつ、あつめている。
 ソングリストは以下の通り。



So you want to be a rock 'n' roll star
(I'm not your) Steppin' stone
Love is a long road
Two gunslingers
When a kid goes bad
Willin'
The best of everything
Tweeter and the Monkey man
Baby, please don't go
Rebels
A woman in love (it's not me)

 大きく分けて、「お気に入りのカバー曲」,「あまりライブでやったことのない曲」,「以前はライブでお馴染みで、アレンジの違う曲」という感じだろうか。

 まず印象的なのは、冒頭の "So you want to be a rock 'n' roll star" 。これは、私がTP&HBを好きになるきっかけになった曲。それだけに、この21世紀TP&HBバージョンは感慨もひとしおだ。
 バンドワーク的には、よりバーズに近いのだろうか。で、あれば曲の終わり方は少し変えた方が良かったかも知れない。ともあれ、素晴らしい演奏で感激。
 特に、コーラスワークがだいぶ分厚くなったのが良かった。スタンとハウイという最高のシンガーを失って以来、スコットが独り気を吐いていたが、この演奏では、左側からベンモントとロンらしき声がしっかり厚みを加えている。もちろん、スコットほどの際だった働きではないが、確実に豊かなコーラスワークを形勢している。
 そういえば、ベンモントは自分のヴォーカルでソロ・アルバムを出したのだから、このくらいの貢献はしてくれないとね!
 コーラス・ワークの素晴らしさは、続く"(I'm not your) Steppin' stone" でも発揮されている。そもそも、この曲格好良い!

 "Two gunslingers" のライブバージョンは初めて聴いた。物語のある曲を、切々と歌い上げるトムさんの声がたまらない。
 そして、ベンモントのピアノ・ソロも美しい。押さえた演奏ながら、繊細さがある。弱音ペダルを踏んでいるようには聞こえないが…。やがて、控えめながらソロに加わるマイクとの優しくで甘い絡みがまたいい。

 カバー曲はどれも素晴らしいが、リトル・フィートの "Willin'" は、イントロからもう泣きそうなくらい。トムさんのヴォーカルが少し重めなので、ずしっとした演奏だが、曲そのものの美しさが引き立つ感じで良い。"Knockin' on the heaven's door" でこういう格好良くて感動的な演奏をよく聴く。
 マイクのギターソロが、やり過ぎないエリック・クラプトンみたいでこれまた格好良い。

 "Rebels" のマイルドなバージョンも良いけど、やや無理があるか。"Hey, hey hey" のコールが、この演奏には合っていないのだろう。曲の終わり方も昔のライブの時と同じで、こういうところも、もう少し工夫しても良いかも知れない。

 ウィルベリーズ・ファンとしては、やはり白眉は "Tweeter and the Monkey man"。ディランも負けずにライブで披露してもらいところだ。
 長いソロ・パートの後に、最後のヴァースをだんだんとヴォリュームアップして盛り上げていく様が決まっている。ウィルベリーズのオリジナルより、重めのスティーヴのドラミングが、この曲とよく合っている。

 さて、今年のツアーではどんな演奏を聴かせてくれるだろうか。ウィルベリーズの曲は?!このライブ・アルバムのようなラインナップも良いし、かといって "American Girl" や "Free Fallin'" がないのは寂しいような気もする。
 あと1ヶ月に迫った新譜とともに、ツアーも楽しみだ。

Amazing Grace / Paddington2014/06/30 21:42

 2013年10月30日の記事で紹介した、安井マリさんのアルバム [My Favorite Melodies] から、"Amazing Grace" が、YouTubeに登場した。
 これはぜひ聞いて欲しい。実に素直で、すがすがしい、素晴らしい演奏だ。この曲の演奏には、いくらか大袈裟な味付けがされがちだが、特にティン・ホイッスルの真っ直ぐな音色が、曲そのものの良さを最大限に引き出している。



 "Amazing Grace" つながりの話だが ― ニコール・キッドマンと、キース・アーバン夫妻が、オーストラリアの病院を訪れた際、一緒に "Amazing Grace" を歌ったそうだ。

Listen to Keith Urban and Nicole Kidman Sing ‘Amazing Grace’

 既にYouTubeにいくつか動画があがっている。二人のデュエットというよりは、病院にいた大勢と一緒に合唱している。2番の歌詞になるとみんな分からないのか、どうやらキッドマンがおもに歌っているようだ。アーバンのコードが怪しいのはご愛敬。

 さて。さらにニコール・キッドマンと言えば。
 今年公開される新しい映画 [Paddington] に、ニコール・キッドマンが出演するそうだ。役柄は「ミリセント」とあるが、これは何者だろうか。
 いや、キッドマンはこの際、どうでも良い。問題はこの映画。もちろん、絵本やぬいぐるみ、アニメーション、切り絵&ぬいぐるみアニメなどでお馴染み、かわいい「くまのパディントン」のお話なのだが、これがもの凄いことになっている。



 げげッ!こっ、これは…!
 こわい!こわすぎる!私たちが求めるパディントン・ベアは、これじゃない!
 あまりの事に、この画像が公開されるやいなや、数々のホラーパロディが作らる始末。それもそうだろう…
 そもそもこの映画、監督がポール・キングである時点で、何かがおかしい。ザ・マイティ・ブーシュの監督であるポールが、パディントンというのはちょっとピンとこなかったのだ。
 同時に予告編も公開されたのだが…。



 どうしよう。パディントン・ベアなのに、胸が悪くなるような…この…可愛さの微塵もないパディントン。子犬を連れても可愛くないパディントン。Made in Japan のキモカワ・キャラとは全くちがう気持ち悪さ。お金のかかるCGで、これは思い切ったなぁ…
 この映画、大丈夫だろうか。今のロンドンがいろいろ見られるのだろうけど。クリスマスに公開予定(ファミリー向け…)。日本では上映されるだろうか。