Waiting for Bob Dylan2013/09/03 21:23

 ディラン様のブートレグ・シリーズ10,[Another Self Portrait] がまだ届かない。そろそろ届いても良さそうなものだが…。
 待ち遠しすぎてきつい。

 かつては、誰かの新譜などが出ると、その少し前からそのアーチストの音楽を全く聴かないという、「ナントカ断ち」というものをしていた。断った分、晴れて新譜を聴いたときの感動が増すに違いないという、およそ科学的根拠に乏しい話だが、ジョージ愛のレコスケ君も、ジョージのダークホース・ボックスの時に「ジョージ断ち」をしていた。禁断症状が現れ、最後は倒れていたが。
 私もウィルベリーズがデラックス・ボックスの再版の時、3ヶ月前からジョージ,ディラン様,TP&HBの三者断ちをした。なぁに、この三者が聴けなくても、ストーンズも、ザ・バンドもあることだし、大丈夫さ…と思ったが、甘かった。
 辛い!死ぬほど辛い!ウィルベリーズのためとは言え、凄まじい苦痛である。しかし、私は耐えた!ウィルベリーズのためなら、これしきの苦難はなんでもないはずだ!
 が、しかし私は最後に力尽きた。ウィルベリーズ・ボックスのリリース前に高熱(40℃)を発し、救急車で運ばれ、1週間の入院を余儀なくされた。リリース日は病院で迎え、退院して最初にしたことは、自宅に届いていたボックスを開くことだった。

 それ以来、「断ち」はしていない。ディラン様もちゃんと聴いているし、ディラン様ラジオも欠かさない。それでも、[Another Self Portrait] 関連の動画は我慢している。どうやらジョージ関連があるらしいのだが…我慢、我慢。倒れない程度に我慢。

 仕方がないので、ディラン様近影を拝む。先月、カリフォルニア州アーバインでのライブ映像。"Love Sick"。



 どうして大根なんて持っているのだろう。ああ、サンマの季節だからか。
 …と思ったら、マイクだった。

 すっかりあの低音でブツブツ歌いが定着しているディラン様。
 時々、左手を腰のあたりに添えて格好つけるディラン様。帽子はやめたのかな?顔がよく見えるから、帽子はない方が良い。

 ちなみに、ロンドンのナショナル・ポートレイト・ギャラリーでは、ディランの人物画の特別展示が9月から始まった。来年の1月まで続くとのこと。ロンドンにお越しの際はぜひ。
 11月のライブのとき、ディラン自らが来ないかな…

Bob Dylan: Face Value, at National Portrait Gallery

The mail from R. McGuinn2013/09/06 22:34

 ディラン様の新譜が届かない!とっくにShipされているのに!
 一昨日注文した、「キンチョウリキッド水性60日用」の方が先に届いた!これはきっと、何かの陰謀だ!陰謀に違いない!助けて、ヨナタン!

 「助けて、ヨナタン!」とは、旧約聖書に出てくる、ダヴィデとヨナタンの話が元となっており、私がよく使うフレーズ。確か、サムエル記。上下は忘れた。英語で「デイヴィッドとジョナサン」と言えば、親友同士のたとえ。
 私は宗教的にはまったくの平均的な日本人ではあるが、聖書を持っている。これは音大在学中に、西洋音楽・文化を理解するのに、必要だったため。けっこう役に立つ。

 今週のディラン様ラジオこと、[Theme Time Radio Hour] のテーマは、ずばり [The Bible] 。テーマがテーマなだけに、色々と面白い選曲や、面白い話が聴けた。
 ブラインド・ウィリー・ジョンソンの "John The Revelator" が格好良かった。もっとも、この曲に関しては映画 [Blues Brothers 2000] の印象が強いが。

 ロック的には、今回一番のツボは、もちろん「フロリダからのメール」。毎回思うのだが、この番組に寄せられる「メール」や手紙は、スタッフやディランが作っているのだろうな。
 今回の「メール」は、フロリダ在住R.マッグインさんから。「やぁ、ボブ。ぼくには聖書にお気に入りの箇所があるのだけど、分かる?」それに対しディランは、あの「伝道の書(コヘレトの言葉)」の一節を朗読する…

To every thing there is a season, and a time to every purpose under the heaven
A time to be born, and a time to die; a time to plant, a time to reap that which is planted
A time to kill, and a time to heal; a time to break down, and a time to build up
A time to weep, and a time to laugh; a time to mourn, and a time to dance
A time to cast away stones, and a time to gather stones together
A time to embrace, and a time to refrain from embracing


 ディランは朗読しただけでとどめたけど、ピーター・バラカンさんは、ザ・バーズを流さずにはいられなかった。そりゃそうだ。



 R. マッグインというメールの送り主(ということになっている)は、ロジャー・マッグインに決まっている。ロジャーって、今はフロリダ住まいなの?もしや、今回のメールは本当にロジャーから送られてきたとか?
 この番組は、時々どこまで本気だか分からなくなることがある。

 "Turn! Turn! Turn!" を、トム・ペティとロジャー・マッグインが共演している動画がある。1990年、ロジャーのコンサートにトムさんが参加した時のようだ。先に "Mr. Tambourine Man"、そして後半が "Turn! Turn! Turn!"。



 ギターも歌声も美しく、さらにドラムが無遠慮にぶっ叩く感じがロックで良い。
 ロジャーと共演するときのトムさんは、彼とかなり見つめ合いながら歌うのだが…けっこう凄い。数秒で恥ずかしくなって目をそらしたりしない。好きなんだなぁ…本気で。

The Well-Tempered Clavier Book II2013/09/09 21:44

 ディラン様がーー!届かないーーー!!何てことだーーー!!
 ちょっと節約しようとしただけじゃないか!日本語解説なんか要らんわ~とか言ったのがいいけないのか?!いやいやいやいや、そんなことあるか。
 これはやはり陰謀だ!絶対に陰謀だ!おのれモリアーティ!犯罪界のナポレオンめ!お前なんか滝に突き落として、そのまま孤島送りにしてやる!

 最近、私が見るインターネット・ページのそこかしこに、「大人になってからでもピアノがすぐに弾けるようになる!」…という手の広告が載る。私のIPアドレスを見込んでのことなのか、ただの偶然、世の中空前のピアノブームなのか、よく分からない。
 ともあれ、私にその手の教材は不要である。異常に手が小さい超絶ヘタクソではあるが、一応クラシック・ピアノは「弾ける」ということになっている。

 そろそろ、バッハを1曲仕上げて終わらせるつもり。今は、平均律第2巻の1番。なぜこの曲かと言うと、第1巻の三声の曲を全て弾いてしまったから。
 「三声」というのは、簡単に言えば高声,中声,低声の三つの別々のメロディを同時に弾く曲のこと。だから二つのメロディの曲なら「二声」だし、四つのメロディの曲なら「四声」。手は2本しかないが、真ん中の高さのメロディは左右両手の端っこで弾く。
 この「多声音楽 ポリフォニー」はバッハの時代の主流であり、その後は衰退する。実のところ非常に特殊な音楽で、これを弾きこなすにはそれなりの訓練が必要。私は幸いにも子供のころからポリフォニーの訓練をされており、なおかつ珍しいことに音大生になっても得意なのは「バッハ」であり続けた。

 だが、得意とは言っても超絶ヘタクソ・ピアニストのことである。三声まではともかく、四声はしんどい。平均律第1巻の「四声」をこなすのが億劫になってしまい、第2巻の「三声」に手を出したというわけ。
 平均律は「プレリュード」と「フーガ」に分かれ、この「フーガ」が何声であるかがポイントとなる。とりあえず第2巻1番 C durが「三声」だったのでこれを選んだのだが、とんだフェイントをかけられた。珍しく、プレリュードもガッチリとしたポリフォニーで、なんと「四声」だったのだ。
 プレリュードは「指ならし」とか、「雰囲気作り」という感じのいわゆる『前奏曲』で、まともに多声になっていることは少ないはずだが…。もっとも、そこはプレリュードなので、軽い多声にとどまっている。

 この演奏は、ハンガリーのピアニスト,イェネ・ヤンドー。ほかにもYouTubeになくはないが…グレン・グールド…だったりする。お、おぅ…



 私は moll (短調 マイナー)の曲の方が好きだが、これはこれでゴージャスで良い感じの曲。演奏会にもあっているかも知れない。

 なぜ、突然バッハの話になったのかと言うと。IOCの次期会長候補が、トーマス・バッハ氏だと聞いたから。ただそれだけ。ちなみに、「BACH バッハ」という姓は、日本風に言うと「小川さん」というほどの意味というのは、有名は話。

Nicky, John and George2013/09/12 21:04

 ディラン様のブートレグシリーズ10 [Another Self Portrait] が…!なんと…!いよいよ~?!?!届きませんでしたーーー!!

 あの…小声でお尋ねしますが…  船なの…?

 よぉし、これは私にディラン様を渡すまいとする世界的な陰謀だな。よぉく分かった!ふふふふ、身の程知らずめ!こっちは陰謀コンサルタントとしてヘンリー7世を雇ってやる。覚悟しやがれぃ!

 ニッキー・ホプキンズの伝記本は、70年代末まで読み終えたところ。これから終盤に入る。ニッキーは1994年に50歳で亡くなっている。

 前半、ロンドンを拠点にしてザ・フーやキンクス、ストーンズ、ビートルズ、ジェフ・ベック・グループなどのセッションに参加しているニッキーは、私のイメージ通りだった。控えめで大人しく、笑顔が可愛くて天才的なピアニスト。
 しかし、60年代末からアメリカ西海岸での活動を始める辺りから様子がおかしくなる。「ドラッグとアルコール」が、それまでの「お茶とビスケット」のニッキーを駄目にしてしまう。それから、奥さんもかなり問題あり。私はドリーというニッキーの奥さんのことを、オリヴィア・ハリスン系統の人だと思っていたのだが、これは誤解らしい。なんだかもの凄い人で、悪いがニッキーにとっては災いだったというのが、多くの友人の感想だ。

 アメリカですっかりジャンキーに染まる前、解散して間もないビートルズの二人と、ニッキーはセッションの仕事をしている。
 一人はジョン。アルバム [Imagine] などでのニッキーの活躍は有名だ。そして、ジョンのセッションに登場する小野洋子が…ええと…有り体に言うと。

 最低。

 言いたくはないが、最低(笑)←笑うところ。どうやら、周りの人から見て小野洋子はニッキーが嫌いだった模様。理由なんて分かるわけがないが…どうにもジョンがニッキーのことをとても愛していたのがまずかったように読める。"like" ではなく、"love" が使われている。
 もともとクローン病の持病があり、アメリカ暮らしやストーンズとの付き合いで体の具合が良くないニッキー。重いスタジオのドアにてこずっていると、ジョンが飛んできて、「ぼくが開けてあげるよ」と助けてくれる。ジョン…!ジョン…!や、優しい!
 でも、ジョンの気遣いも小野洋子対策的には、逆効果だったろうな。ニッキーに対する態度以外でも、セッションミュージシャンたちの間には、小野洋子とジョンの関係や、彼女の音楽面での口出しに、疑問を持つ人は居たようだ。
 この本を読む限り、ジョージなんて、「ジョンの奥さん」に対して寛容な方だったのかも知れない。

 そんなジョンのセッションとは対照的に、ジョージのセッションは心おだやかなものだった。ジョージのセッションのエピソードはあまり書かれていないし、ジョージとの話もこれと言って無い。
 しかし、本書でジョージのことをニッキーの「メンター mentor 良き理解者,指導者」と表現している。後にニッキーのソロ・アルバムにも参加してくれるジョージ。
 ニッキーがもし、70年代にロンドンにとどまり、もっとジョージの側にいたら、人生と才能を無駄に消耗する、不毛なジャンキー生活はどうなっていただろうか。ジョージにしても色々あった時期なので、単純な想像はできないのだろうが、そう思わずにはいられない。
 ジョージとニッキーのコラボレーションは美しい。その中でも、とりわけ美しいのが、"Give Me Love" ともにこの世には居ない二人。どこかで落ち合って、こんな美しい音楽を奏でているのなら。きっと、奏でているのだろう。優しい、ジョンも一緒にね。

Time Passes Slowly2013/09/15 20:27

 20日以上もかけて、やっとボブ・ディランのブートレグシリーズ Vol.10 "Another Self Portrait" のデラックス版が届いた。号泣。

 最近、いわゆる「デラックス・ボックス」なるものは、敬遠する傾向にある。きっかけは、映画 [Help] のデラックスDVDボックス。あれは酷かった。
 今回の場合デラックスボックスには、"Another Self Portrait" の通常版に、1969年8月31日のワイト島フェスティバルでのライブ(17曲)と、オリジナルの "Self Portrait" のリマスターという2枚が追加される。さらに、1961年から1971年にかけてのディラン様写真集!
 特にワイト島のライブは欲しい!確かに、オリジナル"Self Portrait" にも一部のライブが収録されているが、やはりフルで聞きたい。
 そのようなわけで、今回はデラックスを購入。日本盤は要らないので、輸入したというわけ。

 なんとまぁ、このブートレグシリーズ10は、本シリーズの中でもトップクラス!聞き所満載の大満足。ディラン初心者には勧めないが、ある程度聴いている人には超お勧め。どの曲も心地よくて、音楽の楽しさがあふれ出てくる感じ。
 オリジナルに収録されている曲の、別バージョンも面白い。"If not for you" もひと味違って良いし、"If Dogs Run Free" なんて、ほとんど別の曲。一体どういう経緯であちらのバージョンになって、オリジナルに収録されたのだろうか。

 私にとっての一番は、やはりジョージとの共演曲、"Time Passes Slowly" ― ジョージは、アコースティック・ギターと、コーラスで大好きなディランとの共演を楽しんでいる。



 この安らぎ、音楽の喜び、素敵な二人。永遠に記憶したい、そういう一瞬が記録されている。

 おまけの写真集。これもなかなか素敵な写真揃い。農場でくつろぐディラン様。犬やニワトリと戯れるディラン様。…食べるの?スタジオで真剣な表情を見せ、町でドラムを買う。
 面白かったのは、ところどころに、日本のレコードジャケットや、雑誌の記事などが挟み込まれているところ。漢字とひらがなが、ディランの写真と一緒になっているのが、ビジュアル的にもアピールするのだろう。
 Superdry 極度乾燥(しなさい)と同じような感覚だろうか。

Jackie Lomax2013/09/18 22:31

 ジャッキー・ロマックスが亡くなった。
 亡くなるような年齢だとは思っていなかったので ― つまりジョージよりだいぶ若いのかと思っていたので驚いたが、実際は69歳だったとのこと。ジョージより一つ若いだけだった。

Jackie Lomax: 1944-2013 (Liverpool Confidential)

 ジャッキー・ロマックスについては、ビートルズとアップル、そしてジョージつながりでしか知らないのが申し訳ない。アルバムも "Is this what you want?" しか持っていないが、とても良い作品で気に入っている。私が買ったのは、90年代のリマスター。
 生まれはワラジー、対岸の町リヴァプールで音楽活動を始め、ビートルたちとは旧知の仲。アップルから上記のアルバムを発表した。その後はアップルから離れてしまうが、何と言ってもこのアルバムが有名。ジョージがプロデュース、アレンジ、ソングライティングに深く関わっているし、クラプトンやニッキー・ホプキンズ、クラウス・フォアマン、ビリー・プレストンなどの豪華なメンバーも、ジョージが関わったからこそだ。
 クラプトンがクリーム時代に使っていた、サイケ・ペイントのギブスンSGを譲り受けた人としても有名。そしてそれがさらに、トッド・ラングレンに渡ったことも有名だ。

 ジャッキー・ロマックスと言えば、やはり代表曲は "Milk Sour Sea" ということになる。ソングライティングはジョージ。さすがにこの曲はアルバムの中でも飛び抜けて出来が良い。
 ジョージのヴォーカルでもデモが残っているが、私はロマックスの方が断然良いと思っている。ハードな曲調に彼の声が合っている。イカしたピアノは、ニッキー・ホプキンズ。



 私が持っているリマスター版の "Is this what you want?" には、5曲のボーナス・トラックが収録されているが、その中の1曲がべらぼうに良い。"Going back to Liverpool" ― 冒頭のハープシコードはビリー・プレストンだそうだ。
 メロディもアレンジも完璧。コーラスにさし込まれるハンドクラップも絶妙。そのコーラスでは、明かにジョージの声が聞こえる。なぜオリジナルのアルバムには収録されなかったのか理解に苦しむほど、素晴らしい名曲だ。



 最後に、美しく、深く染みこむような曲。"Milk Sour Sea" の次に収録されている、"Fall Inside Your Eyes" ロマックス自身の曲で、パーシー・スレッジもカバーしている。
 美しくて、泣ける、でも軟弱じゃない。バッドフィンガーの "Without You" と同様で、こう言う曲には弱い。
 R.I.P. Jackie Lomax

Jumped over the moon2013/09/21 22:33

 昨日、アサブロのアクセスランキングで、当ブログが突如、58位にランキングされて、びっくりした。いつもは100位代か、200位ぐらいなのだが…(母数は不明)。
 時々100位内に入ることがあるが、前回はオリンピックの時だったので、おそらく "Hey Jude" のせいだろう。今回は…ジャッキー・ロマックス?

 一昨日は中秋の名月だった。
 空気が澄み、観月に適した時期に美しい月を愛でるという風習だが、月は誰がどこに居ても見上げる物だろう。
 西洋でも、月は美しい物という認識があるが、一方で「狂気」と関連づける解釈もある。辞書によると、「昔は月から発する霊気に当たると気が狂うとされた」ということで、英語で言う "lunatic" には狂人,愚人などの意味がある。子供に「ルナ」という名前をつけようと考えている方は、一応気に留めた方が良いかも知れない。

 トム・ペティのソロ・アルバム、[Full Moon Fever] というタイトルには、そういう意味合いが含まれていると思う。
 オリジナルのCDスリーブには、たしか月の絵があった。さらに思い出すと、雌牛が月を飛び越えるイラストもあったような気がする…ので、確認したら確かにあった。



 この歌詞やクレジットが記されたスリーブには、月に関するシンボルや、古い絵などが用いられている。2009年の紙ジャケリマスターでは、その辺りがかなりカットされてしまい、ちょっと残念だ。


 「雌牛が月を飛び越える」というのは、マザー・グース "Hey Diddle Diddle" の一節。

Hey diddle diddle
The cat and the fiddle
The cow jumped over the moon
The little dog laughed to see such fun
And the dish ran away with the spoon

 意味らしい意味のない、ナンセンスな言葉遊びの歌らしい。講談社のしおりに使われている日本語訳では、「ねこに バイオリン」となっているが、原語では「フィドル」という語感が重要だ。
 一方、YouTubeでこの曲を探してみると、数は多いのだがいかんせん絵がかわいくない。どれもこれもイマイチ。むしろ、例の講談社のしおりの方がずっと可愛い。特に「おさらはスプーンといっしょに おさらばさ」の絵が可愛いのだが…
 ここでは、YouTubeの中でましな方の動画を上げる。亀のバンジョー弾きとご一緒にどうぞ。

iPod を新調2013/09/24 21:21

 iPod を買い換えた。私にとっては、3台目になる。

 一番左が、最初に買ったもので、ボタンの四つ並んだタイプ。30GB。iPod がWindows でも使えるようになったばかりの時期に購入。当時はMP3プレイヤーはあまり普及しておらず、音楽仲間のなかでも、iPod購入は私が一番早かった。なんと、70000円もした。
 ところが、この記念すべき1台目は短命だった。なんと、イヤホンジャックのプレートがバカになったというだけの理由で、使えなくなったのだ。酷い。以来、イヤホンは極力外さないようにしている。

 同時に、アップルは私に向いていないということを自覚した。iTunes Store はいまだにIDを複数国で使えないのだろうか。あれは酷い。一体何のためのインターネットなのか、あの会社は理解していない。
 それから、この1台目には、リモコンがついていた。これも酷いシロモノだった。リモコンとしてはひどく使いにくいし、クリップは何も挟めないというポンコツだった。すぐに捨てた。
 そのようなわけで、アップル製品はiPodと、iTunesのみにしようと決心した。



 つまらない理由で買い換えを強いられて購入したのが、真ん中のモデル。60GB。これは7、8年は使った。
 今でも音楽を聴く分には問題ないのだが、買い換えねばならぬ理由が二つある。
 まず、ディスプレイが部分的に壊れている。あまり動画は見ないのでこれでも構わないのだが、いつ全体が見えなくなるかわからない。そうなると操作不能に陥る。それは困る。
 理由のもう一つは、メモリー。60GBだって立派な物だが、とうとう使用容量が50GBを越えてしまったのだ。私は購入したロック・ポップスのアルバムは全てiPodに入れることにしている。これがあれば、CDショップで既に持っているアルバムを重複購入しないで済むし、物調べにも役立つ。クラシックは入れないため、何度か重複購入の危機を経験した。
 ひと頃にくらべれば、CD購入はずいぶん減ったのだが、いまはディラン様ラジオが毎週1時間15分間加わる。60GBに迫るのは時間の問題である。

 そのような訳で、3台目購入となった。
 ちなみに、私はスマートフォンで音楽を聴くということを想定してない。そもそも、現在ガラガラのガラケーユーザーである。他の用途と兼務させるには、私のプレイヤー使用方法がハード過ぎる。
 iPod touch の購入も考えたのだが、これはメモリーの関係で却下した。どうしても最低120GB は欲しい。

 今回購入したのは、一番右。160GB。本当は白が欲しかったのだが、シルバーか黒しかないとのこと。
 ディスプレイが左右に分かれるのが鬱陶しいが、そのうち慣れるだろう。ファイルの移動は、9597曲、ビデオ117なのだが、完了したのは9割ほど。確認作業にもう少し時間がかかりそう。デバイスの交換時にはありがちな不具合や、設定の直しなどもある。
 ともあれ、これからしばらくはこのシルバーのiPodと音楽生活を送ることになる。よろしくね。私には珍しく、保護フィルムや、透明ハードケースも購入した。

 一応、ヘッドフォンのことも追記しておく。
 iPodの箱を開けると、まず付属ヘッドフォンを捨てる。あれはゴミである。音にはあまりこだわらない私にとっても、あれはゴミ。あんな物で聴いている人を見ると、心底がっかりする。最初からつけなければ良いのに。ゴミを増やすだけだ。
 私は持ち物をコンパクトにしたいので、大きなヘッドフォンは却下。それほど高いものにも手は出ないし、ノイズキャンセリング機能は欲しいので、Sony のノイズキャンセリングを10年以上愛用している。昔は、1年以内に必ず故障したが、最近はそうでもない。
 
 さて、お次はスマホか。…なんだか面倒くさいので、しばらく買わないと思う。

and on piano... Nicky Hopkins2013/09/27 23:59

 ジュリアン・ドーソン著、ニッキー・ホプキンズの伝記 [and on piano... NICKY HOPKINS] を読み終わった。



 前半がだんぜん面白かった。音楽活動を始め、天才ピアニストとして名を馳せ、病気でいちど表舞台から退くが、60年代後半にカムバックすると、状況が一変したあたりは特に面白い。
 ビートルズやストーンズの登場によって、ポップ・ミュージックは巨大で、最先端で、そしてかなり狂った世界へと変貌を遂げていたのだ。
 その世界に「帰ってきた」若きニッキー。30歳直前まで両親の家に住み、スケジュールの管理もお母さん。ビスケットと紅茶の大人しくて気の良い青年。
 この時期のエピソードで、一番面白かったのは、キース・リチャーズの話。キースがあるとき運転している車を民家の植え込みに突っ込ませてしまい、途方に暮れていると、その家の住人らしき夫婦がでてきて、こう言った。「今日は。リチャーズさん。」…ニッキーの両親の家だった。

 ストーンズと仕事をするのは、想像以上に大変だったようだ。とにかく、べらぼうに非効率的。彼らが怠け者というわけではないのだが、キースのドラッグ次第で、何日も待ちぼうけを食らうし、ミックはそういうことをコントロールする気がない。ストーンズで「まともでいる」ビルとチャーリーによると、ストーンズでいる秘訣は、「辛抱強さ」だそうだ。
 ピート・タウンゼントは比較的真面目で、理論的に仕事をする方で、ニッキーも仕事がしやすそうだったが、キンクスのレイ・デイヴィスや、ジェフ・ベックには少なからず不快な思いをさせられた模様。
 ジョージとは以前にも書いたとおり、とても気持ちよく仕事をしたようで、音楽以前に「会ったその時からまるで兄弟のような」関係だった。

 良い事ばかりではない。バンドの正式メンバーではなく、「セッション・マン」であることの辛さが、特に後半から目立った。あれほど貢献したストーンズでも、特に金銭的に良い思いをしたわけではないし、ビートルズの "Revolusion" に至っては、たったの『6ポンド10シリング』で終わりだったというのだ。当時の物価は知らないが、そうは言っても『6ポンド10シリング』は驚きだ。
 良くも悪くも、60年代流だったのだろう。ビートルズなどは特に顕著だが、あれで意外とバンド外のミュージシャンを極力入れないようにしている。ジョージ・マーティンはピアノがある程度弾けるし、ポールも器用な方なので、そこそこのピアノで済ましてしまう。
 バンドとしての結束力と愛情が強いのは良いが、一方でニッキーのようなセッション・マンへの好待遇にはつながらず、そこが辛い。
 もちろん、ニッキーへの敬意は最高で、言葉を尽くして、誰もが彼を褒め倒す。でも、それに金銭がともなわず、なんとも言えない気持ちになる。
 ニッキーが70年代に居をアメリカ西海岸に移すのは、「季候が良いから」などと言っているが、結局は仕事が多く、払いもましだったからではないだろうか。

 70年代以降は、ドラッグに溺れ、経済的にもきつく、ドラッグの悪夢から脱しても、かつてのような輝きは取り戻せなかった。ドラッグは多分に本人の問題だが、経済的にはもっと報いられても良いのにと思う。
 90年代初頭、ニッキーは激しい痛みを伴う体の変調を訴えて入院するのだが、そこでアメリカの現実を体感することになる。保険に入っていないニッキーを、どの医者も診ようとしないし、もちろん手術もしないというのだ。お金を払う見込みのない患者は診ないというわけ。さすがにUK人や、日本人にとっては別世界。
 ニッキーの妻(二人目の妻。悪名高き最初の奥さんではない)は、ニッキーを見てくれる医者を探すのに苦労したし、1994年に彼が50歳で亡くなったのはこのような状況のせいだとも考えている。

 ニッキーの経済的苦境の話から、意外なエピソードが登場した。
 ニッキーは、1970年に購入した、1924年製造のメイソン&ハムリンのピアノを愛用していた。しかしその後、医者にかかるために、ドゥービー・ブラザーズの、ジョン・マクフィーに売却した。
 ニッキーはお気に入りだったこのピアノを、いつか買い戻すつもりだったが、それも叶わないまま他界。10年ほどした2005年9月、マクフィーは、このピアノをeBay に出品し、13000ドルを目安とした。これはグランドとは言え、古いピアノとしては、かなりのお値段。
 ニッキーの友人がこれを競り落とし、ロックの殿堂へ寄付するつもりでいたのだが、出品者のマクフィーから、こんな連絡があったのだ。「トム・ペティのバンドの、ベンモント・テンチに取られちゃったよ。彼がニッキーの大ファンだったっていうのが、せめてもの慰めだね。」

 ここに突如、登場するベンモント・テンチ!そもそも、TP&HBとニッキーは殆どつながりがない。ハートブレイカーズに天才ピアニストが居るのだから当然だが…。わずかにつながりがあるとしたら、ニッキーがある時期、トムさんのお隣に住んでいたことがあるという程度。
 そのベンモント自身のコメントはこうだ。

 彼のピアノの広告がネットに載っていると、リック・ルービンが教えてくれたんだ。ぼくがニッキーの大ファンだったっていうのもあるけど、それだけじゃなくて、メイソン&ハムリンも大好きなんだ。ジョン・マクフィーはSolvangのスタジオにこのピアノを置いていて、ちょっと寄って弾いたことがあった。
 そもそも、ぼくは1873年のべーゼンドルファーのミニ・グランドを持っていたし、スタインウェイや、ヤマハのアップライトもお気に入りだった。だから「もうこれ以上ピアノは必要ないな」と思っていた。でも、あのピアノを弾いたら、気が変わった。「やっぱりもう一台必要だな。」
 ぼくが手に入れて良かったと思うよ。ニッキーのことをよく知らない人が購入して、あれこれデコレーションなんてされるよりはね。
 ぼくはニッキーと特に親しいというわけではなかった。会ったのは1回か2回。それから、数回電話で話したことがある。妙は話なんだけど、彼がナッシュヴィルへ引っ越す前に、ぼくにピアノを引き取らないかって、電話してきたんだ。その時は置く場所がなかったからパスしたんだけど、結局めぐりめぐって、ぼくのところにたどりついたわけだ!


まさに、ピアノは天下の回り物。二人の天才ピアニストの元に行ったこのメイソン&ハムリンこそ、幸せなピアノだろう。

ウクレレ・ソロで Here Comes the Sun2013/09/30 21:21

 本当はギターが弾きたいけれど、手が小さいので、そしてジョージもトムさんも好きだから、という理由で始めたウクレレ。1年半ほどになる。
 "Here Comes the Sun" は、「いつか弾きたい曲」だったが、このたびあっさり攻略するに至った。

 YouTube を見ると、実にたくさんの人がウクレレ・ソロで "Here Comes the Sun" を弾いている。イマイチの人もいれば、もの凄く難しいものを上手に弾いている人もあり、編曲は色々。
 圧倒的に多いキーはG。原曲はおそらくDだと思うのだが、ウクレレではだんぜんG が弾きやすい。

 よし、"Here Comes the Sun" を弾こうとなったとき、まず困ったのが、譜面がないこと。
 インターネットなどを見ると、コードはよく載っているのだが、ウクレレ・ソロとなるこれが意外と少ない。  「ウクレレ・ソロでビートルズ」なる楽譜も出版されているのだが、日本のそれは全曲レノン=マッカートニーで、ジョージの曲が入っていないのだ。管理が別なので、手続き上の問題だろう。
 しかもこの楽譜、ほとんどがLow-G が指定されている。ウクレレは4弦に高いG (High-G)を張るのが大きな特徴なのだが、ポップスをソロで弾く時に音域が広く取れるように、1オクターヴ低いLow-Gを張ることを推奨するひとも居るのだ。
 しかし、私の先生はこれに反対の人。広い音域が欲しいのならギターを弾けば良いし(先生は元よりギタリスト)、そもそも4弦に高い音を配するウクレレらしさを潰してしまうことになる。私はすっかりその意見に同感だ。楽器というものは、その楽器の個性を尊重することが肝心であり、その限界も許容して弾きこなすべきだと思っている。第一、音域だの音の数だの言うのなら、ピアノで十分。十分すぎるほど。
 さらに、物理的な問題として、元々4弦にはHigh-G を張る仕様である楽器にLowを張ると、バランスが悪くなり、楽器を傷めるとのこと。身分不相応に良い楽器コリングスを買った私には、これも困る。

 とにもかくにも、ウクレレ・ソロ用の "Here Comes the Sun" の譜面がみつからない。
 そもそも、ウクレレ弾きが楽譜に頼るのが悪い…とは、理解している。が、そこはクラシック人間の辛いところで、きちんと書き留めたい。
 そのような訳で、ギター用の楽譜からコードを拾い、後は自分で譜面に起こすことにした。



 楽譜を書くという行為においては、私はかたくなにアナログの人間である。手書きでも読めれば良いわけで…。
 私の場合、まずメロディを五線に取る。これは簡単 ― いや、"Here Comes the Sun" は、有名な変拍子の曲。ちょっと丁寧に取る必要があるが、これはクリア。この曲の場合、本当に変拍子になるのは、"Sun, sun, sun..." のブリッジ部分だけで、変拍子に聞こえるパッセージは、4/4拍子のまま、アクセントの置き場所を変えるだけ。
 改めて譜面にしてみると、ジョージの独特のリズム感覚がよく分かる。

 それから、タブ譜に挑戦。タブ譜というものは最近読み始めた物で、私には難しいのだが、なんとか書いている内に形になった。リズムは面倒なので五線にだけ書いてタブ譜では割愛。
 要所に和音を入れ、特徴的なパッセージをクリアして完成。
 我ながら中々良く出来たのではないかと思いつつ、ドキドキしながら先生にみてもらうと…
 これが好評だった。簡単すぎず、難しすぎず、格好良いし、綺麗にできている。なんでも、いかにも先に五線譜を書いた人っぽい編曲だそうだ。楽器主体,タブ譜から起こす人だとやらない指使いなどが出てくるとのこと。
 なるほど、それで納得した。YouTube をみると、原曲とは明らかに違うパッセージを、多くの人が採用しているのだ。私はもちろん原曲に合わせた音のラインにしている。そういう違いは、ピアノなどが主体の五線譜人間との違いということになっているらしい。
   私がどうすれば良いのか分からなかった箇所や、別の弾き方をした方が良い箇所など、先生が直して下さり、我がウクレレ・ソロの "Here Comes the Sun" が完成した。
 「弾ければ良いな」が実際、弾ける曲になってしまった…と言うには、まだ早い。
 譜面も書けたし、一通りは弾けるのだが、テンポ的にも、音色的にも、まだまだ上達の余地はある。つまるところ、自分で書いた楽譜が自分で弾けないという、まるでチャイコフスキー状態。精進あるのみ。

 先生はすっかり、私の編曲作業が気に入ったようで、この調子でビートルズをウクレレ・ソロでどんどん編曲しよう!とおっしゃる。…しかし、白状しよう。あれはかなり大変だ。"Here Comes the Sun" は大好きな曲だからこそできたというもの。
 しかし、私もだいぶ気をよくしているので、次はTP&HB をやってみようかと目論んでいる。まずは参考に、"Full Moon Fever" のソングブックをアメリカに注文した。さて、どうなることやら。