テネシー軍の終焉2013/07/01 21:34

 確認してみると、最後に南北戦争の記事をアップしたのが、今年の1月。アトランタ陥落で終わっている。

 実のところ、1864年9月アトランタ陥落で西部戦線の南部連合軍 ― ジョン・ベル・フッド中将率いるテネシー軍は、引導を渡されたも同然だった。軍隊を養うには、食料も、装備も、駐屯地も必要なのだ。南部最大の拠点を取られては、もうどうにもならない。ナッシュヴィルなど、とっくの昔に落ちている。
 北軍総司令官のグラントは、彼自身こそロバート・E・リーとの対決で東部戦線から動けないものの、忠実な部下であるウィリアム・T・シャーマン少将が西部戦線で勝利したと確信していた。
 これはリンカーンも同様で、彼は同年秋の大統領選挙での勝利を力強く手元に引き寄せた。

 あとはシャーマンが西部全体を掌握することを残すのみ。アトランタから、太平洋側のジョージア州サバンナへの進撃を開始しようとした。
 ところが、フッドは諦めていなかった。彼はテネシー軍残りの35000を率い、アトランタの西をぐるりと回って北に出ると、シャーマンの背後を襲うような動きを見せた。この時、フォレストやウィーラーに率いられた南軍の騎兵がその機動力を生かして活躍するのだが、さすがにこの時期となるとかつてのスチュアートのような機敏さはなく、あまり大きな成果は上げられなかったようだ。
 フッドは9月から10月にかけて、フラフラと北上しながら、点在する北軍との小競り合いを繰り返した。この行動は、一応は南部連合大統領デイヴィスの承認を得ていた。さらに、このフッドの行軍の最終目的は、点在する北軍を突破して、東部戦線のピーターズバーグ包囲戦にあったリーの北ヴァージニア軍と合流することだった。
 ここまで来ると、切なくなってくる。夢物語ような計画だ。

 シャーマンはフッドの行動には惑わされなかった。彼自身はサバンナへ進撃し、背後はトーマスやスコフィールドの分隊に任せた。
 アトランタを放棄したとき、35000あった南軍テネシー軍の兵力は北上するにしたがって小規模な戦闘で数を減らし、11月30日には27000に減っていた。
 この日、ナッシュヴィルの南30キロほどのフランクリンでスコフィールドの北軍と、フッドの南軍が正面衝突。フッドが仕掛けた。全兵力でもって攻めたのはフッドだけで、スコフィールドの本隊は早々に退却してナッシュヴィルのトマスと、無事合流。あまり実のない戦闘で、南軍は大損害を被った。12人もの将官が死傷したというのだから、凄まじい。

 翌12月上旬には首尾良く北部連邦の小部隊がナッシュヴィルに集結し、その数は54000にふくれあがっていた。一方、フッドは冬の悪天候のもと24000に減っている。
 12月15日、ナッシュヴィルの北軍が南軍へ攻撃を仕掛けると、もうなすすべ無く、テネシー軍は18000に縮小し、ミシシッピ州トゥペーロに退却した。そして年明けに、フッドはテネシー軍司令官を辞任。
 戦争はあと半年ほど続くが、ともあれテネシー軍はおおよそ、この時点で終わったと見て良い。

 一方、シャーマンはサバンナへの進軍を続けていた。
 南軍はこれに対する兵力にとぼしく、めぼしい将官も見つからない ― ただ、デイヴィスと折り合いが悪く、アトランタ陥落前にテネシー軍司令官職を解かれていたジョウゼフ・ジョンストン大将だけが居た。
 このジョンストンのもとに、最後の、ボロボロの、でも南部の誇りだけは固持している南軍兵士が集まった。その中に、ジョン・ウォルター・テンチ ― ベンモント・テンチの曾祖父と、その弟の姿もあった。彼らが開戦とともに故郷ジョージア州ニューナンを立ってから、3年が経っていた。

It's Just Not Cricket2013/07/04 21:45

 野球はもうすぐオールスター。
 私はあまりオールスターというものにそそられない。楽しいお祭りではあるが、真剣勝負という点ではちょっと物足りなく、テレビ中継の雰囲気もだらけていて好きではない。もっとも、オールスターならではの珍妙な事件は色々おこって、それはそれで面白いのだが。
 パ・リーグは応援しているチームが良いところを走り、セ・リーグはいつもの通り低迷している。

 一方、F1はヨーロッパラウンド。シルバーストーンでのブリティッシュGPはとんでもないことになった。
 タイヤバーストした車が…5台?6台?
 タイヤバーストなんて、1年に1回か2回、あるかないかのはずが、1日でドッカンドッカン大発生してしまった。次戦のドイツまで休みがなく、大騒ぎになっている。
 F1は技術と政治と経済がその要素に加わるスポーツなので、ゴタゴタには慣れているし、それもF1の面白さだと思っている。しかし、さすがにレーサーの命を危険にさらすのはやめてほしい。
 いつだったか、アメリカでミシュラン・タイヤの車が決勝を棄権してしまったことがある。今回は全チームが同じピレリ・タイヤだ。最悪はレース中止だが、死傷者が出るよりは良いだろう。それにしても、ファンとしてはレースが見たい。さて、どうなることやら。

 スポーツを自分がやるならともかく、観戦するだけで熱くなるのは、ある意味バカバカしいが、それでもやめられない。

 一方、興味はあるけど、なかなか触れる機会がなくて結局分からないでいるスポーツもある。それがクリケット。
 英国連邦では絶大な人気を誇り、UKカルチャーにもたびたび登場する。「銀河ヒッチハイクガイド」シリーズにも登場したが、クリケットが分からない私には分からないネタがほとんどだった。
 モンティ・パイソンにも頻出。
 試合が長すぎることをネタにして、心臓発作で倒れる人あり、動かないプレイヤーに変わって登場するソファーあり、そして飲んだくれる中継解説者。特にグレアムの酔いっぷりが可愛い。



 この中継解説者が飲んだくれるというのは、よくある事なのだろうか。クリケットをテーマにしたアルバムを作っている、ザ・ダックワース-ルイス・メソッドの "It's just not cricket" にも登場する。
 この珍妙なバンド名は、どうやらクリケット界では有名なセオリー…たぶん、データに基づいた作戦とか、守備体型の考え方とか、そういうものらしい。
 音楽はすごくポップで高クォリティ!ボンゾ・ドッグや、XTC, そしてELOやMoveを彷彿とさせる作りが素晴らしい。ビデオに登場する青いリッケンバッカーも格好良い!アルバム、買おうかな。

Be more dog / Flash2013/07/07 20:36

 ウィンブルドンはいよいよ最終日。アンディ・マリー(English的には日本語で表記すると「マレー」だが、Scotish的には「マリー」だそうだ)対、ノバク・ジョコビッチ。実は両方ともすきなプレイヤー。
 しかし、やはりここはUK勢久々の優勝者として、マリーに頑張って欲しい。そのようなわけで、今回のF1 ドイツGPは録画で明日見る。私に結果を知らせる不届き者には、神様仏様ディラン様の天罰が下るので、そのおつもりで。

 さて、まずはこのCM動画をどうぞ。



 英国のO2という通信会社のCMで、テーマは "Be more dog" …もっと犬っぽく…?!アクティブでアグレッシブでスピーディーなサービスのイメージなのだろうか。
 ナレーションは、ジュリアン・バラット。私が好きなコメディ・デュオ,ザ・マイティ・ブーシュの片割れであるジュリアンは、その声と口調が買われてナレーションの仕事も多い。
 一体、この犬っぽいネコはどうやって撮影したのだろうか。訓練したのか?犬の映像をここまで加工できるものだろうか?

 ネコが突如、犬っぽくなる瞬間の音楽は、お馴染みクィーンの "Flash"。
 私はクィーンが特に好きというわけではないが、それでも少しは好きかも知れない。この曲はその少し好きな曲でもないが、やはりインパクトが強い。
 オリジナルが強烈過ぎるのでカバーがしにくそうだが、テネイシャスDのライブバージョンがあって、これは面白い。後半は、テネイシャスDのオリジナル曲 "Wonder Boy" になる。



 テネイシャスDは、俳優ジャック・ブラックとカイル・ガスのユニット。太っちょの二人が、お腹にギターを載せ、ネックを上げてかき鳴らす姿は決してロック的には格好良くないが、なんだか憎めない爽快さがある。
 ちなみに、このテネイシャスDはジュリアン・バラットとも交流があり、ギターの腕前も一流のジュリアンが彼らのライブに参加したこともある。
 10月にLAで行われるテネイシャスDが中心となるコメディ・ミュージック・フェスティバルには、ザ・マイティ・ブーシュの出演も決まっている。ブーシュはここ4年ほど活動を休止しており、今年再開となった。

 音楽は関係ないが、ジュリアンがナレーションをしているCMをもう一つ。
 とてもとても可愛いハリネズミ。UK人のコメントでは、「マーティン・フリーマンだ!」「ジョンがミルク買いに来た!」…マーティン師匠、どうやらハリネズミ認定らしい。モータウン大好きハリネズミか…。
 去年、私が渡英した際に買ったミルクは、もちろんこのブランド。

Mike Campbell 2013 Tour Journal2013/07/11 21:27

 ツアーも終わり、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズはつかの間の休暇、そしてレコーディング再開、来年には新譜の発表となる模様。

 ツアーが終わって寂しさを覚える暇もなく、ファンにはたまらないオークションが行われている。
 マイクが動物保護のために設立した基金 Rock the Dogs/Tazzy Fund の資金集めに、今回のツアーの副産物をたくさん出品しており、ただいまビッドの真っ最中。

Rock The Dog / Tazzy Fund, Ebay

 去年は、
 ベッドの上でバンジョーをかき鳴らしつつ、挑発的に手招きしながら(しかも薄着)、秘密のスタジオにご招待…って、何をどう狙っての所行だ!?
 …と私をノックアウトしたマイク先生。(そのときの記事はこちら
 今回のオークションの目玉は、何と言っても「マイクのハートブレイカー日記」で間違いない!



 マイク…字が…字が…汚い。
 私も酷い悪筆で人のことを言えたものではないが、ここまでひどくないぞ!マイクの数少ない欠点、部屋が汚い。字が汚い?
 ともあれ、ハンドライティングは筆記体なのは良い(読めるかどうかは別として)。私も手書きの時は筆記体が多い。
 「ツアーで考えたこととか、周りの出来事を、ぼくトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのリードギタリスト,マイクがつづります」…みたいなことが扉に書いてあるらしい。「エンジョイ!(←ペン 悪っ!)」…とか。

 おおおおお…こ、これは…!とうとう出た、ハートブレイカーズの暴露本?!平均年齢還暦オーバーご一行の、あーんな事や、こーんな事が、赤裸々に綴られているのか!いないのか?!
 やっぱり続編は「マイクのキレそうなハートブレイカー日記」になるのだろうか。
 これは欲しい!これは欲しいぞ!スティーヴ・フェローニなんて、クラプトンのパンツの色を暴露していたからな。マイクも何を書くか分からない。きっと分からない。

 ただいま、日本円で60000円ほど。でも、日本への発送はしてもらえないらしい。バンド全員の サインつきセットリストなど、他のどれよりも高い。
 一体誰が落札するのだろうか。

Baloo My Boy2013/07/14 21:32

 私は特に映画が好きだと言うわけではないが、どうせ見るなら、明るく楽しいコメディ、そして構成と脚本が良く出来ていて、できれば音楽もイカしていると良いと思う。
 その点、きのう輸入DVDで見た映画、[A Field England] はまったく逆の映画だった。監督はベン・ウィートリー。
 ジャンルはホラーということになっている。ピューリタン革命の内戦時を舞台としているが、あらすじはあるような無いような。ホラーに麻薬(この場合キノコ)作用による幻覚幻聴、暴力と精神支配とか、とにかく私が好きになる要素が一つもない。
 ではどうして見たかと言うと、私の好きなコメディ・デュオ,ザ・マイティ・ブーシュのジュリアン・バラットが出演したから。



 ところが、その目当てのジュリアンが冒頭2分くらいで退場してしまう。見るのを止めてやろうかと思ったが、大どんでんがえしをされると困るので最後まで見たが…やはりダメだった。たぶん、もう二度と見ない。
 せっかくジュリアンと、リース・シェアスミス(リーグ・オブ・ジェッントルメン)が揃っているのだから、やはりコメディが見たい。

 どんな映画なのかが分かった以外、ほぼ収穫のない映画鑑賞だったが、一つだけ、挿入歌が良かった。エンディングにも使われている。心優しいキャラクターのフレンドが歌う、素朴な歌だ。



 "Baloo my boy" もしくは、"Lady Anne Bothwell's Lament" というタイトルで知られる、古いスコットランドの歌だ。古いというのは、16世紀末ごろにはその原型は出来てただろうとのこと。
 歌詞はバルーと呼ばれる幼子のために、母親が子守歌を歌っているという内容。最後の歌詞には、外国の戦場にでかけた父親が血を流した姿で母子の夢枕に現れ、子供にキスをする。そしてバルーは母親に残された最後の喜びとなる。
 ありきたりな内容だが、美しい。

 メロディは色々なバージョンがあるようだが、この映画で使われたものが一番良かった。出だしが少しチャイコフスキーのピアノ・コンチェルトに似ている。
 映画はともかく、この曲はとても気に入ったので、ティン・ホイッスルで吹くために楽譜にしても良いかも知れない。スコットランドの曲だが、そこは気にしないことにする。

ポール・マッカートニーがやってくるヤァ!ヤァ!ヤァ!2013/07/18 22:11

 ビートルズ・ファンである私にとっても、大きなニュースが報じられた。11月にポール・マッカートニーが来日公演をすると言う。
 私は12歳でビートルズ・ファンになった割に、ビートルのコンサートは今年のリンゴが初めてで、ポールを見ようと思ったことがない。さて、今回はいかに。
 何と言っても、もの凄い値段のチケットに度肝を抜かれている。凄いな、ポール…。

 さて、ポールの来日と来たら、絶対に外せないのが、これ。スネークマンショー。伝説の名作。もちろん、1980年。



 やはりツボなのは、英語要員である、小林克也の無駄遣い。そしてアニメ・ザ・ビートルズではジョン役だった伊武雅刀。どんどん偉くなっていく菊池さん。私にも1枚…

 Yellow Submarine のリメイク話があった頃に、一度話題にしたことがあるのが(2010年1月12日の記事はこちら)、ピーター・セレフィノウィッチ。特にポールのもの真似が上手い。
 そのピーターによる、ポールのもの真似をもう一つ。名作 "Black Bird" が何故か、ケジラミになっている。



 2009年ステラ・マッカートニーの店舗で、クリスマス・デコレーション点灯イベントがあったのだが、ゲストがなんと、ザ・マイティ・ブーシュ!!



 なぜ彼らがおばちゃんコスプレをしているのかとか、細かいことは気にしないでいただきたい。説明すると長くなる。詳しくは、ザ・マイティ・ブーシュのシーズン2,エピソード3「ナナゲドン」を見ること。
 やっぱり、リッチ・フルチャーの女装は迫力あるわ…エレノアね。なぜか点灯スイッチオンの大役を務めているし。ジュリアンが白いSGを抱えて、ギターの腕前の無駄遣いをしているところも好き。
 もはやポール全然関係ない。…まともなポールの動画もまったくない。

Detroit Bankruptcy2013/07/21 21:17

 先週、アメリカから大きなニュースが飛び込んできた。  デトロイト市が負債180億ドルをかかえ、財政破綻したという。要するに破産。英語では "bankruptcy" と表現されている。

 19世紀末、自動車産業の始まりと共にデトロイトは繁栄の町へと突き進み、アメリカの自動車メーカービッグ3が本拠地とし、人口は最盛期で180万人。モータータウン,モータウンとしての繁栄を謳歌していた。
 1960年代から日本車などの攻勢もあり、衰退の一途をたどり、財政難に、治安の悪化など、苦しい状況は伝え聞いていたが、厳然たるそして、冷たい事実としての "bankruptcy" を突きつけられると、ぞっとする。
 今や人口は70万人。目抜き通りですら少し進めばゴーストタウンのようになり、治安は最悪と表現され、全米でもっとも危険な町とされている。

 デトロイトは、私にとってはもちろん、音楽の町だ。最近聞き始めたモータウン・ミュージック。この商業的にも大成功した音楽の一ジャンルは、デトロイトの発展をバックグラウンドとして誕生した。
 1950年代、隆盛を極める自動車工場で働くべく、多くの労働者達がデトロイトに集まり、そんな人々の中から ― とりわけ黒人たちの間から、あの素晴らしき音楽が生まれ、それを以てアメリカンドリームをかなえようとする野心がそれを表舞台 ― メディアの表層へ引き上げ、実際に大成功を収めたのだ。
 私は、60年代のあの野心満々で、自分たちの音楽を臆することなく叩き出し、弾けんばかりの活気にあふれたモータウンに惹かれている。マーサ&ヴァンデラスの "Dancing in the street" はその最たる物ではないだろうか。この曲は、"The tears of a clown" と並んで、モータウンの最高傑作だと思っている。



 わがモータウンの師(と勝手に思っている)マーティン・フリーマンが、モータウンの町を訪ねるBBCの番組、[Martin Freeman Goes to Motown] では、最初にデトロイトを訪れ、モータウンミュージックの伝説を追う。あのファンク・ブラザーズのメンバーのライブを見に行って、大いに盛り上がったり、レコーディングに関わった人々を訪ねたりしている。
 モータウンミュージック誕生の地、ヒックスヴィルUSAは、今はミュージアムになっている。マーティンは目を輝かせて楽しんでいる。モータウンファンなら誰でも行ってみたいだろうが、これが治安の悪い地域にあるらしい。(小柄で金髪で可愛い師匠、よくぞご無事で…)
 この番組が作られた2009年当時、マーサ・リーヴスは、デトロイト市議会議員を務めており、その事務所を訪ねるシーンもある。この動画では、6分25秒から。



 輝かしいモータウン・ミュージックの記念が壁を埋め尽くす様子は、当時の誇らしい活躍が窺われる。その一方で、マーティンも話題にしているが、1972年モータウンミュージックはLAに本拠地を移す。マーサはデトロイトに残り、モータウン・レーベルとは決別する。
 これもまた、デトロイト繁栄の、一つの終焉だった。その少しまえ、1967年には大規模な暴動が起こり、治安の悪化はすでに表面化していた。モータウン・ミュージックはそんなデトロイトを捨てたように見えるが、実際はモータウン・ミュージック自身も、黄金期の輝きを取り戻すことはなかったと思うのだ。
 今のところ、私が聞く限り素晴らしきモータウンは、せいぜい1970年代初頭くらいまでで、以降は1960年代には及ばない。これからもっとたくさん聞くことになるとは思うが、この印象が変わるという予感はしない。モータウン・ミュージックの成功はは、決してデトロイトとは切り離すことの出来ない ― 運命を共にする、そういう輝きだったのではないか。

 デトロイトはこの財政破綻を克復し、復活するのだろうか。時代は進み、時間は巻き戻せない。デトロイトのかつてのような繁栄と、モータウン・ミュージック黄金期の輝きは戻らないだろう。それでも、デトロイトは新たな一歩をこれから踏み出すのだと、信じたい。

 Give me one more chance,That's all I ask of you
 Just one more chance,I'll make it up to you

Another Self Portrait がやってくる ヤァ!ヤァ!ヤァ!2013/07/25 22:10

 ボブ・ディランの新しいブートレグ・シリーズ [The Bootleg Series, Vol. 10 - Another Self Portrait (1969-1971)] が8月27日に発売になる。日本盤は28日発売。
 これは、1969年から1971年にかけて、アルバムで言うと[Self Portrait] と、[New Morning] の未発表音源や、ライブ音源を収録したもの。楽しみ!私はこの時代のディランはけっこう好きだ。いや、ディラン様ならいつでも好きだ!



 わざわざ「ジョージ・ハリスンとの未発表音源を含むよ!」とうたっているあたりがニクい。多分、"If Not For You" の別バージョンだろう。
 60年代末のディラン様とジョージと言えば…これだ。



 あー、こっちまで幸せになる。

 ジョージを別にしても、聞き所満載。"If Dogs Run" の初期バージョンなんて、特に興味ある。
 そして、豪華なオマケと言うべきか、1969年ワイト島での、ザ・バンドとのライブも収録されている。"Wild Mountain Thyme" !!! この名曲、確かオフィシャルでは今回が初めての収録ではないだろうか。
 楽しみすぎて、今から待ちきれない。

 問題は、どのエディションを買うかだが…
 日本盤には、限定1500セット4枚組、19800円というお高いものがある。Blu-Specとはなんぞや?オーディオ関係の話題に弱い私。
 実のところ、やたらと豪華すぎるシロモノには、何年か前の映画[Help!] のDVD化で懲りている。正直に白状すれば、私は音質に比較的無頓着な方だ。それに最近は、日本語の解説のようなものを殆ど読まない。
 そのような訳で、どうも輸入盤で決定になりそうだ。多分、盤が届くのが待ちきれず、iTunesで購入し、なおかつ盤も買うという不経済なことになるのだろう。それでも、日本盤のデラックスディションよりは安いはず。

 これで、残すはTP&HBとのライブということになるのか?!権利関係をブルドーザーと、ディラン様光線でで粉砕して!心待ちにしております!

Mo Ghile Mear2013/07/28 21:01

 今日は年に2回恒例、アイリッシュ・パブにおけるセッションがあった。前回、私はソロで "Congress Reel" を吹いたのだが、今回は特にソロ曲もなく、気軽に参加。暗譜が怪しいところがいくらかあったが、楽しめた。

 セッションで誰もが演奏できそうな、定番になっている歌の曲がある。タイトルは "Mo Ghile Mear" なのだが、正確にはどう発音すれば良いのか分からない。カタカナでどう書くべきかも良く分からないが、一応「モギレマー」と呼ばれている。
 この曲は、ザ・チーフテンズと、スティングのコラボレーションが断然格好良い。



 この堂々たる演奏、圧倒的だ。ハーモニーの重厚さも、潔さがあって良い。私はエコーの強すぎる音が苦手だが、これには降参。
 歌詞はアイルランド土着の古い言語である、アイルランド・ゲール語。文字を見ただけではどう読めば良いかわからないし、英語の知識も全く役に立たない。イングランド,ニューカッスル出身のスティングは、頑張って覚えたのだろうか。

 歌われている内容が面白い。「わが輝かしき(雄々しき)かの人よ」と歌われているのは、チャールズ・エドワード・スチュアート。名誉革命で退位に追い込まれたイングランド・スコットランド王であるジェイムズ2世の孫にあたる。
 そもそも、スチュアート王家はスコットランドの王家だった。
 イングランドのエリザベス1世が亡くなったとき、彼女には子がなかった。一方、エリザベスの父方の叔母はスコットランド王家に嫁しており、そのひ孫がジェイムズ6世としてスコットランド国王になっていた。エリザベスの後は、このジェイムズがイングランド王としてはジェイムズ1世として、二つの王国の王を兼ねることになったのだ。
 つまり、スコットランド人であるスチュアート王家がイングランドの王になったというわけ。その後、ピューリタン革命,王政復古を経て、ジェイムズ2世(スコットランド王としてはジェイムズ7世)が即位したのだが、名誉革命で王位を追われ、娘とその夫であるメアリー2世と、ウィリアム3世のオラニエ=ナッソウ家に王位が移った。
 その後、アン王女を経て、次の王はもの凄い代を遡り、ハノーヴァー(今のドイツ)王家に移ったのだが、このハノーヴァー王家の時代に、ジェイムズ2世の孫にあたる、チャールズ・エドワード・スチュアートが、正当な王位継承者であるとして、兵をあげたのだ。
 通称、小僭称者,ザ・ヤング・プリテンダー。美男だったらしく、「麗しきプリンス・チャーリー」,ボニー・プリンス・チャーリーとも呼ばれる。

 ハノーヴァー王家はほぼ100パーセント「ドイツ人」であり、イングランドでも一部不人気であったらしい。一方、ボニー・プリンス・チャーリーはスコットランド人であり、カソリックの信者。そのスコットランド人の一部や、カソリックの支持を受けて、彼の王位を賭けた反乱は勢いを持っていたが、結局は鎮圧されている。
 このハノーヴァー王家がその後女王(ヴィクトリア)を経て、今に至るわけだ。

 "Mo Ghile Mear" は、ボニー・プリンス・チャーリーが敗北し、去っていったことを嘆く美しい曲だが、歌詞の途中で‘S Éire go léir faoi chlócaibh dubha という言葉が入る。Wikipediaに載っている対訳では、And Ireland completely under black cloaks となっており、「アイルランドは黒衣(喪服?)に覆われた」とでも解釈するべきか。
 スコットランド人であるボニー・プリンス・チャーリーに対して、当時のアイルランド人は期待をかけていたのだろうか。イングランドの支配下にあり、熱心なカソリック国であるアイルランドに、このような歌が残っていると言うことは興味深い。
 ボニー・プリンス・チャーリーに関しては "The Skye boat song" という曲もあるが、だんぜん "Mo Ghile Mear" の方が良いと思う。

 私はケルティック・ウーマンには興味がないが、彼女たちもこの曲を歌っている。YouTubeで見たが、まず歌詞が違う。何よりも、この曲をこんなにしてはいけないよ…という感じだったので、またチーフテンズとスティングを聞くことにする。

Remembering J J Cale2013/07/31 21:06

 JJケイルが亡くなった。
 特に彼のファンという訳ではないが、彼のカバーや、彼の影響を大きく受けた音楽も聴いている。ご冥福をお祈りする。

 JJケイルと言えば、まず思い浮かぶのは、クラプトンがカバーした "Cocaine"。私も好きな曲だ。ここは、ケイルのオリジナル録音で。



 気張ってハードな音を出すことに一生懸命になりがちなロックに、リラックスして(まさにレイドバック)、穏やかで、優しくささやきかけるようなサウンドをもたらしたケイル。彼の存在のおかげで、ロックの表現力はさらに広がったと言えるだろう。

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのマイク・キャンベルは公式ページで、コメントを発表している。

Remembering J J Cale

 ギタープレイの素晴らしさを言うと同時に、歌詞にも言及しているところが、いかにもマイクらしい。あらためて彼は歌が好きなのだと実感させられる。
 そういえば、2008年にマイクが雑誌「プレミア・ギター」のインタビューを受けたとき、「最近のプレイヤーでは誰を聞く?」と尋ねられ、
「最近の人となると、ちょっと考えないと。ぼくの原点に影響をあたえた、年上のプレイヤーの方がぼくにとっては魅力的になりがちだからね。J.J.ケールは好きだな。でもけっこうキャリアがあるか。マーク・ノップラーも、J.J.と十分張り合える。」と応えている。
 Cool Dry Place 翻訳があるので、参考までに直リンクをはっておく。

Cool Dry Place:Runnin’ Down a Dream : Mike Campbell by Tom Guerra

 TP&HBは、今年のツアーでもケイルの曲をカバーしているし、[Live Anthology] にも "I' like to love you baby" が収録されている。