目指せ!ユークでロック・フォーク・アイリッシュ2012/05/01 21:12

 今年こそはやるぞ!…と思いつつ、実行に移せていないということは、誰にでもあることだ。
 代表的なところでは、英会話、ダイエット、ジョギング、部屋の片付け…などなど。私の場合、ここ数年ずっと、「ウクレレ」と思い続けてきた。

 そもそも、なぜウクレレなのか。

 私は音痴だが、楽器に対する感覚は悪くない。ピアノはキャリアが長い分だけ最低限は弾けるし、管楽器もこれまでモダンフルート,バロックリコーダー,ホルン,龍笛,ティンホイッスルと、それなりにこなしてきた。打楽器でさえ、能楽の小鼓(幸清流)を、満足の行く程度までは稽古していたのだ。
 しかし、弦楽器となると ― (厳密に言うと、ピアノも(打)弦楽器。ここで言う「弦楽器」は、ネックを持つ構造の弦楽器を指す) ― これまで、一度もやったことがなかった。ヴァイオリン属(擦弦楽器)はまともな音を出す自信が皆無なので、端から視野に入れていない。

 では、撥弦楽器は?そう、ギターだ!ロックンロール・ファンとしては、ギターはどうしてもやってみたい!
 しかし、ギターに関しては演奏不能という簡単に答えが出た。私は極端に体格が悪いのだ。特に手が小さい。ピアニストとしても致命傷というくらい、手が小さい。最大限でもオクターヴしか届かない。そのために、アイリッシュフルートを断念したという経緯もある。ギターとなると、ネックが太くてどうしても指が届かない。
 第一、ギターのボディを体の中心に構えると、ヘッドが体からはるか向こうに位置してしまい、演奏するどころの騒ぎではなくなる。このことは、雅楽の琵琶でも経験した。

 ギター演奏不能。と、なれば当然挙がるのが、「小さなギター」という選択肢である。そう、ウクレレだ!
 なんといっても、我が最愛のジョージ・ハリスンが、ウクレレ・プレイヤーではないか!ウクレレ大好き、ジョージ・ハリスン。まるで行商人のようにウクレレを大量に抱えて各地に出没し、友人という友人にプレゼントしまくる。トム・ペティさんなんぞ、一週間で4つもウクレレをプレゼントされた!
 私はハワイアンには全くが興味がない。目指すは、ウクレレでロック!フォークロック!ゆくゆくはアイリッシュを…!夢は膨らむ。呼び名も、ウクレレよりも「ユーク」の方がそれらしいよね。

 そんな折、私は楽器屋さんで運命的な楽器を目にする。

 マーチンのウクレレ。マーチン・ユーク!

 マーチンですよ、マーチン!ディラン様も、トムさんも、ジョージも、マイクも、みーんなマーチン・ユーザー!私もこれを買って、マーチン・ユーザーになるのだ!
 マーチンだけじゃないぞ、そのうちにギブスンとか、ゼマイティスのハート型とか…!  と、言うわけで今となっては値段を覚えていないが、速攻でマーチン・ユーク・オーナーになった。

 

 しかし、それから実際に演奏を始めるまでが長かった。残念なことに、せっかくのマーチンも弾かれることなく、おきっぱなし。
 これはいかん。私は高い英会話をやめたのを機に、一念発起した。そして、つい先週末から、ウクレレの個人レッスンに通うことになったのだ。だいたい、月に1回ペースで、1時間の個人レッスン。
 グループ・レッスンにしなかったのは、私の音楽嗜好がかなり変わっていて、人と合わないから。ハワイアンに興味が無いし、日本の歌謡曲や童謡も演奏したいとは思わない。私が目指すロック・フォーク・アイリッシュ路線は、個人レッスンでしか叶うまい。

 このとんでもない音楽嗜好の生徒の出現に、先生は大変驚かれた。…それはともかく。私はチューニングの仕方を覚え、弦楽器用のチューナーを買った。なぜか、チューナーは3台も持っている。
 音楽理論上は、頭が完全にピアノの五線譜構造になっている私は、コードに弱い。C、F、G、Am、 Am7、C7 までは分かった。分かったけど、素早く指は動かない。大汗をかきながら、「あー!」とか、「うー!」とか唸っている。それでも、完全な初心者の初回にしては上出来だとの評価で、気分を良くしている。
 宿題は、Moon River。・・・これ、すごくコードが難しくありませんか・・・?!さてはて。
 譜面も、コード表もタブ譜も見ずに、芝生でくつろぎながら適当にウクレレを弾いて楽しむジョージの真似が出来る日は来るのか?こないだろうけど、近づくのか?

 どうでも良いことだが、せっかく習うのだし、テンションを上げるために、例のマーチンのウクレレに、名前をつけた。

 マーティン・フリーマン Martin Freeman

 何かご質問は?
 ありませんね。

Tunnel Vision / Body 1152012/05/04 14:58

 ロンドンに関する面白い本を探していたら、知人から「トンネル・ヴィジョン Tunnel Vision」という小説を薦められた。
 2001年の小説で、作者はキース・ロウ Keith Lowe。私は英語で読んだのだが、日本語訳(雨海弘美訳 ソニーマガジンズ)も出ている。文庫になっていないのが惜しい。英語も読みやすく、英語学習者にもお勧めだ。

  

 ロンドンの地下鉄(通称チューブ tube)オタクのアンディは、パリでの結婚式を前に、鉄オタ仲間のロルフと酔った勢いで、とんでもない賭けをしてしまう。即ち、「一日で(始発~終電)、ロンドンの地下鉄全267駅を制覇できるか?」(駅名サインを撮影すればクリア扱い。車内からの撮影も可)。「出来ない」と言うロルフが賭けるのは、マニア垂涎のチケットコレクション。そして、「できる」と豪語したアンディは、パリでのウェディングに必要なクレジットカードやパスポート、そしてユーロスターのチケットを賭けてしまう。
 さぁ、アンディは地下鉄マニア夢の「一日で全駅制覇」を達成できるのか?アンディの幸せな結婚の行方は…?!

 ものすごく面白かった。英語となると読書速度が極端に落ちる私でも、どんどん読めてしまう。ストーリー展開がスリリングで、適度にマニアでオタクで、それでいてバカバカしくて笑える。多分、東京などの地下鉄を多少知っていたほうが楽しめる。ロンドンの地下鉄に乗ったことがあればさらに面白いが、乗ったことが無くても、面白いだろう。誰もがいつの間にか、アンディを追って、ロンドンの地下鉄マップを一生懸命に睨みはじめるに違いない。
 今のところ具体的な話は出ていないが、この作品は映画化されるらしい。結末など、やや映画向きに変更されるかも知れないが、私が好きそうな映画になるだろう。

 登場人物はとても少ないのだが、その中で一番魅力的なのは、アンディの旅の道連れとなる、初老のホームレス,ブライアン。いつもビールを飲んで酔いどれているが、なぜかやたらと体力があり、最初は煙たがっていたアンディも、やがてブライアンを頼りにするようになる。
 小説の中盤で、ブライアンはアンディに、ある話をする。1987年に起きた、地下鉄キングス・クロス駅の火災事故の話だ。

 キングス・クロス駅火災事故は、実際に起きた事件で、私もおぼろげに当時のニュースを記憶している。
 1987年11月18日19時30分。投げ捨てられたマッチが火元となり、古い木製エスカレーターなどが燃えて拡大し、31人の死者を出す大惨事となった。私の記憶にも、「木製のエスカレーター」が残っている。後年、初めてロンドンに行ったときにも、一部木製エスカレーターが残っていたのが印象的だった。
 ブライアンが語るには、31人の犠牲者の身元調査の過程で、どうしても一体だけ身元が判明しない男性の焼死体があったと言うのだ。遺体の整理番号から、「ボディ115」と呼ばれる。警察はあらゆる手を尽くしてこの「115」の身元を突き止めようとしたが、どうしても分からない。
 結局、身元不明のまま、この「115」はとある教会墓地の片隅に、葬られることになった ― ブライアンの話はここで終わっている。

 この挿話がとても印象的だった。ググってみたところ、実際、キングス・クロス駅火災事故の犠牲者の中に、身元不明の「ボディ115」があった。ブライアンの話は、実話なのだ。
 当時、この謎の身元不明遺体「ボディ115」はかなり話題になったらしい。警察は行方不明者から該当者を探そうと、大々的に情報を求めたし、法医学者が再現した「115の顔」も、公表されたそうだ。調査はUK外にまで及んだが、結局わからずじまい。

 ニック・ロウは、1990年発表のアルバム [Party of One](ジム・ケルトナーや、デイヴ・エドモンズも参加)に、"Who was that man?" という曲を収録した。この "that man" とは、まさにキングス・クロス駅の「ボディ115」のことだ。



 曰く、「国じゅうの誰にも知られていないあの男 誰にも愛されず だれも彼のために涙しない … あの男は誰だったんだ?」
 大惨事が題材になっている割には、曲の雰囲気が凄まじく正反対なので、面食らう。その辺りがニック・ロウらしさなのだろうか。

 キングス・クロス駅火災事故と、「ボディ115」に関しては、後日談がある。

 火災から17年後の2004年。「ボディ115」の身元が判明したのだ。ザ・ガーディアン紙の記事はこちら
 「トンネル・ヴィジョン」は2001年の小説なので、身元判明の前ということになる。日本語訳も、身元が判明する前の出版だ。

 「115」の正体は、スコットランド出身,当時72歳のアレクサンダー・ファロンという男性だった。妻に先立たれ、離れて住む四人の娘たちとの連絡も希で、ロンドンではホームレス生活だったが、かといって「誰にも知られていない、誰にも愛されていなかった」というわけではない。
 事故当時、「115」の年齢は「40代から、せいぜい60代」と発表されており、娘たちは自分の父親に該当するとは、まったく想像していなかったのだ。
 長いこと父親との連絡が取れていないことを心配したファロンの娘たちは、1997年ごろから「115」は父だったのではないかと疑い始める。しかし、当時は別に有力な「115候補」が存在しいた。ブライアンの挿話にもこの「候補」が登場する。そして、2004年になってようやく、ファロンが「115」として最有力視されるようになり、検証結果、その身元が判明したのだと言う。
  この「ボディ115」をめぐる話は、2006年に Paul Chambers が [Body 115 : The mystery of the last victim of the King's Cross fire] という本にまとめている。いずれ、この本も読んでみたい。

 暗い挿話の話になってしまったが、とにかく「トンネル・ヴィジョン」は面白い本なので、一読をお勧めする。特に、ロンドンに行く人、行った事がある人、ロンドンに興味がある人、ロンドンに行きたい人、そして東京に限らず、地下鉄が何となく好きな人にもお勧めだ。

 さらにロンドン地下鉄を楽しむなら、2012年1月からBBCが放映した6回シリーズのドキュメンタリー [The Tube] がお勧め。こちらはそのエピソード1。ナレーションを担当しているのは、ザ・マイティ・ブーシュのジュリアン・バラット。

New Orleans Jazz & Heritage Festival Webcast2012/05/07 21:49

 日本時間5月6日午前10時45分ごろから、ニュー・オーリンズ・ジャズ&ヘリテイジ・フェスティバルのウェッブサイトで、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのライブの模様が配信されると言うことで、PCの前でばっちりスタンバイした。よぉし、どんとこーい!
 動画が公表されたのは、4曲分。

Listen to Her Heart
 いつものオープニング曲。やっぱりこの曲で始まるのは最高!大好き。トムさんとマイクが、二人ともリッケンバッカーでキメている。

Have Love with Travel
 この曲は嬉しい選択。マイクが奏でる新しいイントロが格好良い。もちろん、"Girls & Boys" のところで大盛り上がり。

Something Big
 意外な選曲。どのアルバムに入っているのかも、とっさには思い出せない([Hard Promises])。ところが、かなりヘヴィで格好良いプレイではないか!この曲はこんなに格好良かったのかと印象を新たにした。トムさんのソロが入っている。一生懸命でいじらしい。

Mary Jane's Last Dance
 この曲を聴かずして、TP&HBのライブは終われない。この頃になると、アクセスが集中するんだかなんだか、画像が異常に粗くなった。いつものように、トムさんが頑張ってソロを弾くのだが、2010年とはまた違った感じで、良い。しかも、マイクとの掛け合いも長く、パワーアップしている。楽しそうだなぁ…入れて。ウクレレで。
 こちらでは、この曲のみ、今も視聴できる。

 そして大事なルックスチェーックッ!いや…トムさん以外はほぼ、安全なので特に気をつけることもないのだが…ベンモントの帽子が黄色い。おしゃれぼっちゃんめ。
 マイクはヘンな柄シャツは着ていないので良いのだが…うーん、シャツの色がちょっとおじいちゃんっぽいかなぁ。ハードな革ベストを着ているのだから、シャツは爽やかカラーでも良いと思うけど。…今年流行のシャーベットカラーとか
 問題は、トムさん。髪型は、最高傑作だった2010年からは変えてきている。残念。可愛かったのになぁ。カワイイ、カワイイ言われるのが嫌だったのかしらん。サイドに長くするのはあまり好きじゃ無いのですが。まぁ、いっか。許容範囲で。長さはこまめに調節してください。
 少し、スリムになっただろうか?黒だから?青いスーツもそれなりに様になっているし。脚が細いのはやっぱり強い。せっかくの金髪だから、シャツは鮮やかな色の方が良いと思う。あ、柄はよそうね。

 今年のライブ映像を見たのは、これが初めて。相変わらず格好良くて、上手くて、それでいて新機軸な演奏も聴かせてくれている。これからの展開がますます楽しみだ。

MCG Broadcaster2012/05/10 22:39

 「マイクキャンベルのギター大好き!」こと、[Mike Campbell: The Gitars] が再開。
 今回は、Chapter 3 "Irreplaceble Fender Broadcaster Part 1" 。かけがえのないブロードキャスターとのこと。
 ファーストアルバム制作時、トムさんはマイクのストラトキャスターを弾いていたので、マイクはこのブロードキャスターを弾いていた。さすがにネックが真っ黒になっているのだが、「これは絶対にクリーニングしない!する必要もないし、これも楽器の一部だから!」…と言い張っている。どうかなぁ。気持ちは分かるけど。どうなんだろう?

 ところで…ここでいきなり初歩的な質問!
 ブロードキャスターとテレキャスターの違いってどこ?私には同じ物に見えるのだけど…
 インターネットというのは便利な物で、すぐに答えが出た。なんでも、テレキャスターは当初、エスクワイア,さらに1950年にはブロードキャスターと名付けられて販売されていたとのこと。ところが、同じような名前のスネアがギブスンにあったので、翌年、改名を余儀なくされたというのだ。
 なるほど、要するに同じものらしい。そう言う訳で、マイクが所有する1950年型はブロードキャスターだというわけ。勉強になった。

 さて、マイクは "American Girl" のサウンドがいかに作られたかを披露してくれている。「トムはここに居ないので、トムのパートはループして、上に重ねる」のだが…いや、べつにトムさんを叩き起こして連れてきてくれても良いんですけど。だめ?女優は準備が必要?
 当人達は12弦を使った音を作りたかったが、二人ともまだ12弦は持っておらず、そこでトムさんのストラトとマイクのブロードキャスターを重ねた。それであの素晴らしいサウンドができたのだから、まさに必要は発明の母。
 コーダの格好良いソロについて、当初マイクは気に入らなかっただが、トムさんが「それ、いいよ!」というので採用になった。さすが、判断力に絶大の自信と信頼のあるトムさん。こういう電撃のように、「自分たちのサウンドはこれだ!」という感覚が走る瞬間には、偶然の産物にしろ、誰かの一瞬の判断にしろ、とびきり冴えたものがあるのだろう。

 そういうわけで、ブロードキャスターのパート1はおしまい。次回、パート2をお楽しみに!
 いや、ちょっと待て。今回、初めて少し気になるものをマイクの背後に見つけたのだが…



 なにこれ?!
 まさかエルヴィスの等身大パネル?!え、どっかのお店のディスプレイを失敬してきたの?!
 この「ギター大好き」シリーズ、まさか背後にチラチラと怪しいものが出没する…みたいな、細工がしてあるのか?なんだか変に面白くなってきた。

 そして…女優の方は、オースティンからファンのみんなにゴキゲンメッセージをくれましたとさ。
 なんだかウグイスみないな格好ですが。ウィンクが可愛いからいいや。

Larry Crowne : 幸せの教室2012/05/13 20:50

 私は特に映画好きというわけではないので、たまにしか映画館には行かない。
 しかし、トム・ハンクス監督・主演の [Larry Crowne](邦題「幸せの教室」) は、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの音楽が使われていると聞いていたので、見たいと思っていた。そこで珍しく、日本での公開二日目にして足を運んだ。

 スーパーで充実した店員生活を送っていた中年バツ一男のラリー・クラウン(トム・ハンクス)は、ある日突然大卒ではないことを理由に、解雇される。そこで、遅ればせながら大学に通い始める。学部長のすすめに従って、経済学と、スピーチの講義を選択。若い友人もできて、ラリーは新たな人生を拓こうとする。
 一方、スピーチの先生はであるマーシー・テイノー(ジュリア・ロバーツ)は、結婚生活にも、教えることにもうんざり気味。しかし、彼女もラリーとの出会いから人生を変えようと考え始める…




 ストーリーだけ見ると、いかにもトム・ハンクスらしい無害な作品で、なにも映画館で見なくても良さそうなものだが…しかし、TP&HBファンと、ELOファンにとっては、間違いなく映画館で見るべき作品だ。
 音楽が使われているとは聞いていたが、TP&HBは3曲、ELOは2曲も ― しかも、かなり重要なシーンに、フルで使われているという特別扱いを受けているのだ。大画面・大音量で自分の好きなバンドの曲が流れる瞬間の感激は、かなりのもの。
 曲名やシーンは伏せておくが、TP&HBの2曲目は特に、グッとくるシーンで使われる。私には、このシーンが一番良かった。この曲は他の映画でも使われたのだが、今回の[Larry Crowne] での使われかたの方が印象的で良い。
 ELOについては―これまで、これほどELOが優遇された映画があったのだろうか?
 どちらのグループにしても、トム・ハンクスのこだわりが非常に強く出ているようだ。彼が好きで、使いたいのだという意志が表れている。

 映画そのものの評価は、まぁまぁ。善良で、希望があって、大袈裟ではなく、明るい気持ちになる。
 構成的には、ちょっと飛躍があるかな…という点が惜しい。ラリーの若い友人達と関係はかなり丁寧に描かれているが、恋愛面はちょっと飛躍気味かも知れない。あと一、二ステップほしい。スピーチクラスの雰囲気が良くなっていく過程も、もう少し段階をきちんと踏んだ方が良かった。
 いいなと思ったのは、小難しい経済学のマツタニ教授と、そのクラス。別嬪なジュリア・ロバーツ先生のクラスとは対照的だが、これはこれで充実していて、新たな人生への良き糧となる様子がとても良かった。
 マツタニ教授役は、ジョージ・タケイ。どこかで見たことがあると思ったら、私が2008年にニューヨークに行った折、同性婚が合法になったとして結婚したというニュースに出ていた人だった(私はスター・トレックを全く知らない)。

 TP&HB,ELOファンは、今のうちに映画館へ!…ロングランになるかどうかは、自信がない!

R.I.P. D. Duck Dunn2012/05/14 21:03

 ドナルド・ダック・ダンの突然の訃報に、心底驚いている。職場で新聞を見て、思わず息をのんでしまった。
 東京のブルーノートでの公演を終え、帰国するという日の朝、眠ったまま息を引き取っていたとのこと。盟友,親友のスティーヴ・クロッパーがファンたちに報告してくれた。亡くなったホテルは、私の職場にも近いようだ。
 最近、こういう話題が多いのだが、ダック・ダンの訃報はことさら衝撃的だ。

 アメリカ・ツアー中の、TP&HBの楽屋に姿を現したのは、つい先日 ― 5月2日フロリダ州エステロでのこと。TP&HBのホームページにも、詳しく載っている。

Estero FL. US

 トムやマイク、ベンモントがフロリダから出てきたばかりのお上りさんだった頃から、お世話になったり、一緒に仕事をしたり、なにかと縁のあったTP&HBと、ダック・ダン。
 このフロリダでのライブでは、ひとまずハートブレイカーズが "Runnin' down a dream" を演奏し終えて、いったんバックステージに引っ込むと、ダック・ダンが奥さんと一緒に来ていたそうだ。ハグしたり、笑ったり、ジョークを飛ばしたり、つかの間の楽しい時間を過ごした、旧友たち。
 そして、オーディエンスのハートブレイカーズを呼ぶ声がたかまり、ステージに戻る ― 

waving goodbye to Dunn and his wife with promises to stay in touch.

"Good to see those boys," Duck said with a chuckle.




 ― これが本当のさようならになってしまうなんて。
 この記事をもう一度読み返して、私は少し混乱してしまった。この記事が上がったときから、文章はこうなっていただろうか…?!今日になって、書き換えられたのではないかという感覚すら覚える。

 私にとってのダック・ダンと言えば、ブルース・ブラザーズ・バンドであり、さらに、「ボブ・フェスト」の時もベースを弾く姿が印象的だった。リハーサル不足気味のこのライブの最中、アタフタするG.E.スミスに、なにやら譜面台に載った紙を指さして教えてくれていた姿が、目に焼き付いている。
 どうか、安らかに。

MCG 4: Breakdown and a bin.2012/05/17 23:00

 TP&HBはアメリカでのツアーをいったん終え、お休みを挟んでいよいよヨーロッパツアーへと出る。
 こういうバンド活動の活発な時期は、いろいろなニュースや動画が発表されて嬉しい。先日は、ニュー・オーリンズ・ジャズ・フェストにおける、バンドの「ステージ入り」の様子が公開された。

Tom Petty & The Heartbreakers take the stage at Jazz fest

 これは良い。素敵だ。いわゆる、「バグズ目線」というやつだろう。
 ステージに出る直前、なんだか視線を合わせるやら、合わせないやら、変な雰囲気で(緊張?)、そして出て行く ― まず、マイクが出て、そして退場はマイクが最後。なんだか、本当にマイクってハートブレイカーズのお母さんだね。
 ベンモントが手を擦っているのがおかしい。そんなに寒くないでしょうに。今回の"Listen to her heart" は、冒頭のオルガンの音量が大きく、格好良い。

 一方、「マイク・キャンベルのギター大好き!」こと、[Mike Campbell: The Guitars] は、チャプター4。フェンダー,ブロードキャスターの2回目。
 "I need to know" や、"Mary Jane's last dance" のイントロを再現してくれると、鳥肌が立つ。特に、後者はトムさんが弾いているとのこと。ライブではたしか、フェンダーではなかったような気がするけど。音に割れが欲しくて、そうしているのだろうか。レコーディングでのブロードキャスターによる端正な音も好きだ。

 "Breakdown" は、もともとは長い長い曲で、その半ば以降に、何となくマイクが録音したスライドが、トムさんのお気に召して採用になったとのこと。なんでも、朝っぱらからスタジオで音を聞いたらしきトムさんが、マイクの家に電話して「これ良い!」と言ったらしいが…別にマイクがスタジオに来てから言っても構わないだろうに。
 トムさんとマイクは、どういうわけだか曲作りについて、電話で話すことが多いような気がする。なんなの、それ?

 次回は、ギブスンのゴールドトップとのこと。お楽しみに!……
 ちょぉっと待ったぁ!今回も変なものが写っている!



 なんで?!どうしてゴミ箱なの?!どうしてわざわざ引いて、映し込むわけ?老眼鏡の時だって、こんなもの入ってなかったぞ!
 なぞだ。こんな大事な撮影に、ゴミ箱!グランドピアノと同一空間に、絵に描いたようなゴミ箱!!私は却下だ!絶対却下!
 そもそも、この部屋(部屋なのか?)、ピアノに向いていない。床が固そう。下手すると石っぽい?音が異常に固くなって、うるさいじゃないか。上に大きな布をかぶせているが、床への響きはかなり大きい。理想は絨毯なのだが。せめて、木の床で、ゴムの靴をはかせるべきだ!
 そして、ゴミ箱は撤去するべきだッ!!私、今から行って片付けようか?

曽我兄弟 / 曽我物語2012/05/20 22:26

 久しぶりに箱根に行ったので、仇討ちで有名な、曽我兄弟とゆかりの深いところを訪ねてみた。

 「仇討ち」というと、時代劇では美談になっているし、昨今の推理小説などでも、同情すべき犯人の犯行動機としてしばしば採用されるが、要するに「私刑(リンチ)」である。…と言うと身もふたも無い。とにかく、日本人は「仇討ち」にある種の美を見いだすようで、元禄赤穂事件はその最たる物だろう。
 残念ながら、私はいわゆる「忠臣蔵」がどうも好きではない。その一方で、妙なことに「曽我兄弟の仇討ち」に「はまっていた」時期がある。しかも、小学生のころだ。

 事の発端は、平安時代末期(元禄など、他によく知られた仇討ちに比べて極端に古い)。伊豆半島を舞台に起きた、同族同士の土地争いである。
 伊豆の有力な武士のであった伊東祐親(すけちか)が、甥である工藤祐経(すけつね)の所領を横領してしまい、それを恨みに思った祐経が、祐親とその長男,河津祐泰(すけやす)の殺害を謀った。祐親は難を逃れたものの、祐泰は落命し、当時五歳と三歳の息子が残された。  祐泰の妻は二人の息子を連れて、曽我祐信に再嫁したため、兄弟は「曽我兄弟」として名が知られるようになり、兄,十郎祐成(すけなり)と、弟,五郎時致(ときむね)は父の仇を討つ機会を待つ。

   そして父の死から十七年後。十郎が数えで二十二歳、五郎が二十歳の時、鎌倉に幕府を開いた源頼朝が、富士の裾野(現在の静岡県裾野市,御殿場市)で大規模な巻狩(まきがり。大人数を動員する狩猟。大規模なスポーツ・イベントのようなもの)を催した。この際、曽我兄弟も参加し、建久三年(1193年)5月28日、工藤祐経の寝所を二人で襲い、仇を殺害した。
 その後、当然大勢の武士との乱闘となり、兄十郎は討死。弟五郎は捕縛され、頼朝の面前で尋問された後に処刑された。

 「曽我物語」はこの仇討ちを題材に、南北朝時代ごろには成立していたらいし。私は子供向けの古典文学全集を、小学生の時に読み、「曽我物語」にはまった。

 ことの発端からすれば、曽我兄弟の祖父である伊東祐親が工藤祐経の所領を横領したのが悪い。祐経にしてみれば、仇討ちの対象にされるのは迷惑だったろう。
 一方、曽我兄弟の仇討ちは、単に「親の仇」という単純な話ではないようだ。時は平安末期。武力という実力を伴った武士が、土地を守るために争いを重ねていた時代である。
 また、事の発端となった伊豆には、平治の乱で流刑にされた源頼朝が住んでおり、源氏と平氏、どちらにどう接近して自分の所領を守るか、御家人と呼ばれるようになる武士達の微妙な駆け引きの中に、若い曽我兄弟が巻き込まれた観がある。
 実際、弟五郎は頼朝の舅である北条時政を烏帽子親としているし、兄弟を陰に陽に支援する人物の中に、畠山重忠や、和田義盛、梶原景時など、そうそうたる顔ぶれが登場する。特に景時などは、「義経物」とは違って、曽我兄弟を支援する側にあり、物語が変わるとキャラクター造形も変わってきて、面白い。

 いわゆる「陰謀説」では、曽我兄弟は最終的に頼朝殺害を意図していたことになっている。これがあながち突飛ではないのは、兄弟の祖父,伊東祐親は頼朝に殺害されているからだ。
 「幕府」という新しい仕組みがまだ定まらず、「武士道」という独特の倫理観も確立していない時代。単なる「仕返し」ではない、その時代人の「事情」が渦巻き、若い兄弟の青春を飲み込んだ。そういう単純なようで、複雑な「曽我物語」に、私ははまったのかも知れない。
 勇猛で直情的な五郎の方が、一般には人気があるようで、歌舞伎の題材などにもなっているが、私は冷静で優しい兄,十郎の方が好きだった。

 能には、「曽我もの」とよばれる曲目が幾つかあるが、現在よく上演されるのは、「調伏曽我」と、「小袖曽我」だ。特に後者は謡曲や仕舞をお稽古する人は、かならずお世話になる曲で、特にキリの仕舞は有名だ。「二人静」とならんで、二人で舞う「相舞」の代表格で、いわゆる「初めての発表会」にもよく舞われる。

 「曽我もの」は後に歌舞伎にも取り上げられた。しかし、「助六」に代表される歌舞伎の「曽我もの」はデフォルメ,創作が加わり過ぎて原型をとどめて居らず、別に「曽我」を名乗らなくても良さそうな物になっている。私は、実際の事件により近く、表現も簡素な能の方が好きだ。

 箱根神社は、五郎が少年時代を過ごした場所で、曽我兄弟とは縁が深い。ここは平安末期、神仏混淆の「権現」だったため、五郎は出家する目的で、ここで稚児として過ごしたのだ。後に、出家を嫌って脱走し、兄のもとに身を寄せて元服する。
 兄弟は富士の巻狩へ出向く際にも、箱根権現を訪れ、本懐を遂げることを祈った。後に、箱根権現の境内には、「曽我神社」が建立され、今に至る。

 また、国道一号線の最高地点付近には、「曽我兄弟の墓」なるものがある。脇のすこし小さな塔は、十郎の妻女の、虎御前の墓ということになっている。
 実際には、これらは曽我兄弟の死よりずいぶん後に作られた五輪塔で、兄弟とは関係ないらしい。しかし、大きな二つが並び、小さなものが寄り添う姿は、曽我兄弟と虎御前にしたくもなる風情がある。
 私は「曽我兄弟」にはまった小学生の時分、彼らが育った「曽我の里」に行って、彼らの墓に参っている。城前寺にある墓がそれで、おそらくこちらの方が信憑性が高い。

 

 箱根の峠から見下ろす富士山とその裾野は穏やかで、美しかった。800年前、若い兄弟が本懐を遂げ、短い生涯を終えたときも、同じようにここは美しかったことだろう。

MCG5: Goldtop2012/05/23 21:27

 まずは、訃報二題。本当に、最近はこういう話題が多い。
 ドイツのバリトン歌手,フィッシャー・ディースカウ。86歳で死去。当代随一の歌手であり、特にドイツ物に関してはヘルマン・プライとともにトップを走っていた。私が学生の頃にはもう第一線から退いていたが、その名声は聞き及んでいた。
 そして、ビージーズのロビン・ギブ。私はビージーズやその音楽のファンではないが、耳慣れた音楽ではある。
 ところで…お亡くなりになったところで恐縮だが、「ビージーズ兄弟は、生まれた順番と、頭髪の残留率(ハゲ率)が逆になっている」という話は、有名なのだろうか?私はこの話を、遙か昔、J-Waveのナビゲーターのコメントで知ったのだと思う。つまるところ、お亡くなりになる順番も生まれた順番とは逆で、要するにハゲ率とは逆だったと言うことだろうか。

 さて、「マイク・キャンベルのギター大好き!」こと、[Mike Campbell: The Guitars] は、Chapter 5。ギブスンのゴールドトップ。
 前回までの、フェンダー,ブロードキャスターと同じ日に購入したとのこと。楽器という物は、後になってアレコレ買い集めたりするが、結局最初に手になじんだ物が一番使いやすいという好例ではないだろうか。
 マイクに言わせると、フェンダーよりも「より分厚くて、ちょっとダーティ」な音とのこと。私もこのアクセントの効いた、バリッとした音が好きだ。その一方で、マイクが披露してくれたような、あの道具(何というのか良く聞き取れない)で音を増幅させてボワーンと響かせるのは、実はあまり好きでは無い。

 マイクが、このゴールドトップを弾いているものとしては、1977年ドイツのテレビ番組、Rockpalastが格好良くて好き。特に、"Dog on the Run" がイカしてしる。ドキュメンタリー作品,[Runnin' down a dream] では、ロンがハッシシをチューインガムのように噛んで、完全にぶっ飛んでしまったとうエピソードのところで出てきた。



 あの「ナントカ」という道具を使っているところもあるが、やはりバリバリと早弾きしているところが格好良い。このTシャツ姿も良い。めずらしく腕を出していて、細マッチョな観じで素敵。背が高いくせに上目づかいな表情もグッと来る。
 トムさんがしゃがんでいる姿は…なんだかお腹がすいて座り込んでいる子供みたい。

 今回は、背後に変な物は見つけなかった…と、思う。お次はいよいよ、リッケンバッカーの登場。リッケン馬鹿による、リッケンバッカー語り。これは楽しみ。背後も楽しみ。

無印BGM 17 / C.W. Nicol2012/05/27 19:52

 ロックのルーツを求めて、アイルランドのトラディショナル音楽を愛好するようになって、ずいぶん経つが、CDなどはあまり多くは持っていない。聴くよりは、演奏する方に重心を置いているからだろう。

 人に勧められるほど知らないアイリッシュ・ミュージックのCDだが、無印良品のBGMシリーズのアイルランド音楽は良い。
 BGM4 は、2009年2月11日に紹介済み。そしてこのたび、BGM 17が再びアイルランド音楽となった。



 曲目はいたって伝統的で、素朴な選択。演奏は主にハープ,アコーディオン,フィドル,そしてヴォーカル。フルートやホイッスルは少ない。私は笛吹きなので、ちょっと残念などと言っていたら、「笛吹きにとってのカラオケになるから良いのだ!」と、先生が凄まじくポジティブなことをおっしゃっていた。
 演奏もとても素朴で、正当派。私はイマドキの凝ったプロデューシングが苦手なので、こういう飾らない演奏が嬉しい。
 14の曲目は、エアからリール,ジグ,ホーンパイプなど、多岐にわたっているが、ややスロウな曲が多めか。なにせオシャレな生活用品店のBGMなので仕方がない。
 この充実した内容で、価格は1050円と、非常にお買い得。かなりお勧め。お店になければ、取り寄せてもらおう。

 今週の金曜日 ― 2012年6月1日金曜日、夜19時より、新宿の住友ビルの朝日カルチャーセンターにて、C.W ニコルさんのレクチャーコンサート「C・Wニコルの世界 - 語り継ぎたい物語、歌い継ぎたい音楽」が開かれる。こちらもおすすめ。

 私はネイチャー系の話題には縁が無いが、やはりケルト民族の音楽とその世界には触れてみたい。一緒に演奏する方々も、日本においては一流の面々。
 平日ではあるが、ロックのルーツと、なぜか日本人の心にぴったりくるケルトの音楽、豊かなお話を味わってみてほしい。