マイケル,ハワード,ベンジャミン2010/05/24 23:41

[ 追記 ]
 タイトルを訂正しました。アップして、ベッドに入ってからどうもおかしいなと考えていたら、「そうだ、ハワードだ…」と気付きました。ふふふ。

 5月23日付けで、「カントム」をCool Dry Placeにアップした。

 まず、冒頭でレコード会社との契約問題が出てくる。私が「カントム」を順番通りに翻訳していないため、前章から続いているであろう、契約をめぐる裁判沙汰の流れが、よく分からない。今回の [Hard Promises] 時期の冒頭まで、最終的な解決策は完結しなかったということだろうか。
 アルバムの価格をめぐる戦いの中で、ミック・ジャガーが登場したのが興味深かった。トムは後になって知ったのだろうが、天にも昇るほど嬉しかったのではないだろうか。

 ストーンズついでだが、章の最後で、ビートルズの話題になる。一番印象的だったのは、「彼らは周囲に惑わされず」というところ。そういえば、言われてみればそうかも知れない。私たちファンは、ビートルズはビートルズなのだから、あのようなぶれも迷いもない、自由で大胆な創作活動ができて当たり前だと思ってしまうが、実はものすごい事なのだ。
 ビートルズの音楽は良く売れ、会社を潤すわけで、それは経済活動上の利益にほかならない。そうなれば当然、会社の意向が働き、アーチストへの指示もあって当然だ。こう言った時に発生する、アーチストと会社(もしくは権力者)との軋轢は、べつに今に始まったことではなく、音楽が職業として成り立った時から、連綿と受け継がれている。
 それを思うと、ビートルズの凄みは、トムが言うように、どう横槍が入ろうと、自分たちの意志を押し通した創作活動を続けたところにある。この点に関しては、ジョージ・マーティンの存在も大きいのかもしれない。彼のプロデューサーとしての腕前もさることながら、彼はEMIからレーベル一つを任された「社長」でもあった。彼と、間違いなくヒットを生み出す小僧4人が組んでしまえば、会社もそうそう強いことを言えそうにない。こうして比較的幸せな時期を過ごし(無論、何もなかったわけではなかろうが)、そして、メンバーの中に、その自由な創作活動の不具合を感じた者が出た時点で、ビートルズが終わるのは必然なのだろう。
 ストーンズも基本的にビートルズと同種のバンドであって、学ぶべきものをきちんと学びとっていたクレバーさも、トムは示唆している。私はストーンズのそういう所も好きだし、ビートルズでは実現できなかったことを、やってのけるストーンズや、TP&HBも、ビートルズと同様に偉大なのだと思う。

 慢性的な扁桃炎を、「メンタルの問題だ」と言われ、頑張って直そうとする健気なトムさん。あの頃の可愛いルックスも相まって、愛おしさ百倍…(RDAD bookでもっとも衝撃的なトムさんのセクシーショットって、この時期?)
 そして登場、妖精(だった)スティーヴィー・ニックス。口を極めて大絶賛。でも、絶対にハートブレイカーズ入りする人ではない。
 一方、運命としてハートブレイカーズ入りするハウイ。いかにハウイが完璧なハートブレイカーだったか、おおいに語るのだが、今となっては恋しければ恋しいほど、同じ質量で悲しい。ライブ音源などで、耳がハウイのハーモニーを追っていることに、ふと気づいたりする。
 悲しいと言えば、デル・シャノンの死。それを知った時の情景が、すごく鮮やかで、物悲しい。マイクが来て、そのことを伝えるあのシーン、たぶんトムの中でも、まるで映画の一場面かなにかのように、痛いほど鮮明に焼き付けられているのだろう。

 トムの語り口を追うと、トムが自分自身を、あくまでも「ハートブレイカー」だと認識しているところが、うっすら嬉しかったりする。そのハートブレイカーズ、自分の領分でもほかの人が上手く演奏すれば、それを喜んで採用する…と、言っているが、それは大人なマイクとベンモントだからではないのか?
 どうでも良いが、突然、「マイケル」とか言われると、ドッキリする。「ベン」とかは普通だけど、突然「ベンジャミン」とか言ったら、喧嘩でもしたのかと疑いそう。
 そのベンジャミンだが、常に何らかの意見を言う、「一言居士」であるところが面白かった。道理で、ディラン様にも色々言うわけだ。
 私の記憶だと、この「カントム」には、スタンとは意見が衝突し、ハウイは中立を保ち、ベンモントは何らかの意見を持っている…と書いてあるが、マイクに関してこの手の記述がなかったと思う。実際、どうなんだろう…?マイクはトムと完全一致なのか、それともマイクの意見にだけは屈せざるを得ないので、悔しいからトムが何も言わないのか…?

 Potに関するところは、なんだか痒いような、直截さが無いような…ようするに、「悪いことだけど、やってました。でも、良くないから真似しないでね!」という虫の良い話なのだろう。ええ、真似しませんとも!