Baby Britain / Son Of Sam2022/11/10 21:12

 意識したときには既に亡くなっていたポップスのアーチストの代表がジョン・レノンだが、エリオット・スミスもその類いに入る。
 正確には、彼が "Miss Misery" で名をなしたときは、そういう人がいるんだという認識はしていた。ただ、後年彼の音楽が気に入って聞き始めたときには、もう亡くなっていたのである。
 2003年、34歳のその死の詳細はともかく、彼が甚だ悲しく、いたましい魂を抱えていたことは分かる。
 そのせいか、彼の声を聴くといつも、「いたましい」という言葉が浮かぶ。シャッフルの合間にふと彼の曲がイヤホンから流れてくると、あまりのいたましさと美しさに、胸が潰れるような気持ちがするのだ。別の言い方をすると、胃が痛くなる。

 まずは、1999年の "Baby Britain" ―― このビデオを見ると、彼が非常に多彩で様々な楽器を演奏したことが分かる。ドラムまでこなす人は希だろう。その希な人のうちの二人が、ポールとトムさんだが。



 そして、2000年 ―― 結局生前に出した最後のアルバムとなった [Figure 8] に収録されていた "Son of Sam"



 エリオット・スミスのプロデューサーとしての手腕も、遺憾なく発揮されていると思う。様々な繊細なサウンドを幾重にも重ね、それでも脆さを保ったままの痛々しさが胸を突く。ギターも、ピアノも、コーラスも、あれほどゴージャスなのに、あの儚さは一体なんだろう。
 それから、彼は「顔と声が一致しない人」の一人で、容姿からはちょっと想像できないような天使ヴォイスの持ち主だ。決して太さのある、声帯の強い「シンガー向き」の声ではない。むしろいわゆる蚊の鳴くような「ギタリスト声」の人で、同じような特徴を持つのが、ジョージだ。

 ロックの悲しみの面を知りたければ、エリオット・スミスを聴くと良い。ただ、聴く側の心が痛んでいるときは、ちょっと重いかも知れない。

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