Stories We Could Tell2022/05/16 19:50

 マイク・キャンベル&ザ・ダーティ・ノブズが、ドラマーにスタン・リンチを迎えたというだけでも、じゅうぶん胸がいっぱいになる事である。
 しかも、ハートブレイカーズの曲を演奏したりして、既にファンとしては悶えて床をゴロゴロする状況。
 さらに追い打ちをかけるように、あの "Stories We Could Tell" を、マイクとスタンが一台のマイクロフォンに向かって歌ったというのだから、もう頭をかきむしって階段から転がり落ちるしかない。

 転がり落ちる前に、在りし日のハートブレイカーズで "Storis We Could Tell" をチェック。やはり一番の見どころ,聴きどころはトムさんとスタンのハーモニーだろう。(ボビー・ヴァレンティーノは脇に置いておこう。フィドルにピックアップとトーン・ノブがついているのは、初めて見た。)



 1979年と書いてあるので、まだベースはロン。当然スタンがトムさんの相棒を務めている。
 実のところ、ロンが抜けて、ハウイが入った後 ―― つまり、バック・コーラスとして強力なハウイが入った後も、"Stories We Could Tell" に関しては、スタンが主なバックコーラスを担当していたようだ。1982年のスタジオ・セッションで、トムさんとスタンが歌うシーンがある。
 ハートブレイカーズのドキュメンタリー映画 [Runnin' Down A Dream] でも、スタンが脱退したときに、その映像が使われた。ベンモントの「トムとスタンはとても親密だったと思う。でもそういう関係でも、別れるときはある。」というコメントとともに。
 ハートブレイカーズがもうすぐ20年 ―― 人間でいっても、成人となる年数を重ね、少年ではなくなっていく過程で、辛い別れを経験する。その一つがスタンの脱退だった。様々な諍いもあったのだから、仕方が無い。それでも、切ないシーンだった。

 そして、このたびのマイクとスタンの共演である。



 マイクもツボを心得ているな…と思う。明らかにトムさんを思い出して泣かせに来ているではないか。こういうのを、反則というのだ。
 ミックとキースならもっと慣れた感じにイチャイチャするのだが、マイクとスタンは、ぎこちなくて、ちょっと恥ずかしそうで、でもすごくエモーショナルな感じがにじみ出ているのが、おじさん(おじいさん?)二人、初々しい。
 私はずっと、トムさんが姫(lady)で、マイクとスタンが騎士(knights)だと思っていた。やんちゃで雄々しいスタンは去った。優しくて大人しいマイクが姫の元に残り、その死を見送る。そして二人が再会する。彼らはそれぞれトムさんを愛していたし、彼らにしか分からない想いがあるに違いない。