雅楽の番組2021/10/15 22:40

 今日は珍しく、NHK が雅楽に時間を割いた。主に宮内庁楽部の演奏活動である。
 そもそも、NHKの邦楽関連の放送は、近世邦楽に偏っていると思う。確かに一番盛んだろうし、人気もあるのだろうが。能楽なんてもっとやって良いと思うし、雅楽に至ってはほとんど皆無なのだ。
 そんなわけで、「雅楽とは何か」から話が始まった。皇居楽部の舞台から、巨大な火焔太鼓 ―― やはりあの巨大な太鼓の音は、あの現場に行かないと体感できない。そういえば、楽部が春秋に行う一般公開は去年、今年はどうしているのだろう?
 私が楽部の演奏会にもっとも頻繁に行ったのは学生時代で、よくカーテンの向こう側に潜り込んで、先生たちの練習室を覗いたりした物だ。当時は先生方の間で卓球がはやっていたので、部屋の片隅に卓球台があるのには笑った。

 番組では、雅楽の装束の煌びやかさにも言及している。これは良い点だと思う。ただ、装束の話になれば、舞楽には右方と左方があることくらいは、説明しても良かったような気がする。
 それから、楽士さんと研修生の稽古の様子。陵王の練習といっても、当曲ではなくて、陵王乱序(入場の曲・舞)の練習だった。あれを見ると、音大時代に陵王一具をやったことを思い出す。私は龍笛の主管だったので、仕事も多かったが、今思えば恐れ知らずの気楽な時代だった。
 芝先生、宮田先生をはじめとする先生方と、脳天気な学生たちのただただ楽しい挑戦。屈託がなくて、純粋に楽しんでいたのだから、音楽において重要な一要素を実現していたと思う。

 こういう雅楽紹介の話になると、舞楽として披露されるのは、だいたい「陵王」だ。たしかにそれに値する名曲である。
 しかし、私の中で舞楽ナンバーワンは、近年「陵王」ではなくなっている。芝先生が作った、「瑞花苑」があまりにも素晴らしく、あれが一番お気に入りなのだ。
 伶楽舎が再演してくれることを願っているし、他の雅楽団体もどんどんやればいいのにと思う。確かに芝先生の曲・舞楽だけど、名作はみんなの名作であるべきだ。

 年末にかけて、伶楽舎の演奏会も計画されている。ここ一年半、演奏会に行くこともままならなかったが、私もそろそろ演奏会を楽しむことが出来るのだろうか。自分のピアノやティン・ホイッスルのレッスンも再開しつつある。
 籠もる生活もそれなりに好きだが、音楽と共に外に出る生活も楽しい。焦りは禁物だが、そういう日常が戻ることを願ってやまない ―― そんなことを思う雅楽の時間だった。