All Things Must Pass / Day 1, 2 Demos2021/08/20 20:10

 私が購入した [All Things Must Pass / 50th Anniversary] は、5CD/BR Super Deluxe である。
 本編のリマスターが CD 2枚、さらに音質の良い(はず)Blu-Ray 1枚。
 そして、1970年5月26日と、27日のデモセッションが、それぞれ1枚の CD になっている。

 二日分のデモを聴いていて、まず印象的だったのは、ほとんどジョージの頭の中では、曲のイメージが完成形としてできあがっていたのだということだ。最終的にアルバムに収録された曲の多くが、バンド・バージョンとしては固まっていて、あとはブラスとストリングス、コーラスを足すだけという感じなのだ。
 "Wah-Wah" などは、ジョージのヨタっとしたヴォーカルが、完成形の重厚さとのギャップがあってよく笑われていたが(ブートで知られていた)、実のところ、ジョージの中では重厚なサウンドはもうイメージができていたのだろう。たまたま、一人で歌って見せたから、ああなっただけ。
 ディランが散々苦労していた "If Not For You" なんて、ジョージの威勢の良い感じの方が、説得力がある。

 アルバムに最終的に収録されなくて、もったいなかったなと思うのは、"Dehra Dun" と、"Om Hare Om (Gopala Krishna)" の二曲。どちらもインド風の曲だ。
 これらをいわゆる「ラーガロック」風の重厚でカラフルなサウンドで仕上げていたら、さぞゴージャスで格好良かっただろう。

 これは私の知識の問題だが、"Beautiful Girl" もこの頃に、ほぼできあがっていたとは、知らなかった。私はてっきり、オリヴィアに出会った後の曲だと思い込んでいた。名曲だから、[ATMP]期のサウンドで作りあげたら、どうなっていたか、興味がわく。
 "I Don't Want To Do It" も同様。これはディラン様が作った曲で、60年代末につるんでいた頃にディランからもらったのだろう。

 意外だったのは、"I Dig Love" ―― これは、アルバム収録バージョンと大きく異なる、数少ない曲の一つだ。
 これ、デモ・バージョンの方が断然格好良い。凄くエッジの効いたロックンロールで、このままドカンと爆発させててくれたら、もっとよかったのに。



 "I Dig Love" も含めて、[ATMP] ゴージャス・サウンドで仕上げて欲しかったという曲は、これからダニーが、ライブでやってくれれば良いのではないだろうか。彼は友達も多いし、簡単に大編成が作れそう。私は期待している。