Heading for the Light (Movie)2021/04/01 00:00

 トラヴェリング・ウィルベリーズのドキュメンタリー映画、[Heading for the Light] が製作される。監督はフランツ・アッシャー。
 これまで、[The True History Of The Traveling Wilburys] のように、ウィルベリーズの活動時期だけにスポットを当てた短いドキュメンタリーは存在したが、今回の映画は、ウィベリーたちの生い立ち、そもそもの音楽活動から、彼らのつながり、友情などを、二時間にわたって網羅的に描きだす。
 しかも今回の映画では、ウィルベリーたちの家族,友人,関係者のみならず、ジェフ・リンとボブ・ディラン本人も新たなインタビューに応じているというのだから、画期的だ。一人一人だけではなく、グループ・インタビューもあるという。

 始まりは第二次世界大戦が終わった頃、年長のウィベリーたちの少年時代が、家族や友人たちの証言も交えて語られる。
 そしていち早くデビューするロイ・オービスンの活躍。ディランは大いに感化されたことを語り、ジョージの存命中のインタビューや、ポール・マッカートニー,リンゴ・スターなどのゲストが、ビートルズがオービスンの前座を務めたときのエピソードを語る。
 ビートルズとディランが初めて出会ったときのことは、ポール、リンゴ、ディランが揃ってのコメントが聞けるとのこと。さらにディランは、ビートルズに魅せられ、とりわけジョージに対する特別な思いを抱くに至る詳細を語る。
 ビートルズに熱狂した経験を語るジェフ・リンは、自分の音楽活動開始について語る。そしてエド・サリバン・ショーを見たトム・ペティの経験も、彼自身のインビュー映像を交えて紹介される。
 その後のハートブレイカーズ結成や、活躍の経緯については、マイク・キャンベル,ベンモント・テンチ,ロン・ブレアが登場している。

 ディランが長いジョージとの交友を語り、80年代にトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズと行動を共にするに至る経緯を、豊富な映像も交えて紹介される。当時を懐かしんで、ハートブレイカーズとディランが一緒にインタビューに答える姿は鮮烈だ。
 そしていよいよ、ロンドンでジョージとジェフがディラン,ハートブレイカーズの楽屋を訪ねる日を迎え、その後はよく知られた、トムとジェフの LA での再会、ジョージとの楽しい日々、ロイ・オービスンの復活が語られる。
 ディランの家にメンバーが揃い、ウィルベリーズ結成となるが、その後の録音エピソードについては、アラン・バグズ・ウィーデル,マイク・キャンベル,ジム・ケルトナーなども状況を語る。
 特に見物なのは、ダニー・ハリスンとジェイコブ・ディランが、子供たちから見たウィルベリーズを語るシーン。一緒にゲームをやった思い出話のついでに、リターンマッチに挑む二人にも注目だ。
 ロイ・オービスンが亡くなった後、ディランが [Vol. 3] 制作を言い出す経緯や、謎のアルバムタイトルについて、興味深い話を聞くことが出来る。ビデオ撮影の楽しい思い出も豊富だ。

 やがてそれぞれの活動に戻ってゆくウィベリーたちと、その変わらぬ友情、交流が続き、ジョージが亡くなる2001年を迎える。
 映画は [Concert for George] における、ウィルベリーズ再結成で終わりを迎える。その映像を見ながら、トムがもう居ないことを悲しむ、残されたウィルベリー兄弟たちのコメントが胸をつく。 
 エンディングでは、ウィルベリーズに影響を受けた、若いミュージシャンたちのコメントが続き、余韻を味わえる。

 既に予告動画ができあがっている。さっそく見てみよう!

Desert Island Guitars2021/04/07 19:58

 2月、Guitar Center のYouTubeにマイク・キャンベルのインタビュー動画がアップロードされた。
 題して、"Desert Island Guitars & The Dirty Knobs"「無人島ギター&ダーティ・ノブズ」いわゆる、「無人島に持って行ける物があるとしたら、何にする?」のギター版である。



 まずよく言われるのが、「ギタリストには一体何本のギターが必要なんだ?」という話。確かに、有名ギタリストたちは無闇に大量のギターを持っている。マイクもその例外ではない。私はクラシック出身のピアニストなので、楽器をそんなに大量に持ちたがる気持ちがイマイチ分からない。
 マイク曰く、「一本よりは多く」だそうだ。

 無人島ギターとして最初に挙げたのが、1950年フェンダー・ブロードキャスター。ハートブレイカーズの最初のアルバムを作るとき、マイクはストラトキャスターを持っていたが、トムが弾いていたので代わりが必要となり、入手したのがこのブロードキャスターというわけ。
 出た、トムさんの物か、マイクの物かはっきりしないギター。複数のギターがそういうギターで、ふたりで共有していたのかと思っていたのだが ―― どうやら、本来の所有者はマイクだけど、トムさんが弾いているというケースがかなりあるようだ。
 [Damn the Torpedoes] のアルバム・ジャケットでトムさんが自慢げにもっているリッケンバッカーだって、本来はマイクの物である。だがすっかりトムさんの物みたいになって、シグネチャー・モデルまで製造された。
 そういうヴォーカル・フロントマンと、ギタリストって他にあるのだろうか。ジョージ所有のギターをジョンが弾くとか、想像できない。ハートブレイカーズの二人は、ちょっと特殊なようだ。
 このブロードキャスターは、ハートブレイカーズの音を決めた重要な存在で、まず無人島ギターに選ぶとしたら、これだと言う。音色は bright (明るい)でありながら、brittle (脆い,金属的に鋭い)ではない。性能や、愛着の面でも納得の一本だろう。

 次に挙げたのが、1959年ギブスン,レス・ポール。60年代にマイクに影響を与えた偉大なギタリストたち ―― ジミー・ペイジ,エリック・クラプトン,ジェフ・ベックなどが弾いていた物と同じだという。まさにギター界の Holy Grail 聖杯。
 手に入れたのは意外と最近で、2010年の [Mojo] 制作時に持ち込んだという。トムさんがその音に惚れ込んで、アルバム全体に使うことになった。ダーティ・ノブズのアルバムにも使用している。

 無人島ギターかどうかはともかく、もう一本出してきたのが、これも最近 ―― マックのツアー中に手に入れた、白いファイアーバード。ジョニー・ウィンターのサイン入りだが、真偽は不明。その後のツアーのメインギターとなり、ノブズのライブでも弾いているという。
 そもそも、マイクはオリジナル・マッドクラッチの頃から、ファイアーバードを持っていた。しかし、あるときトイレか何かに立ったときに、置いておいたそのファイアーバードの上にトムさんが座ってしまい、ネックが折れた。ご愁傷様。その時の二人のやりとりが見てみたい。
 とにかく、ギターを置くときは、ちゃんとケースに入れて蓋をするか、スタンドに立てましょうという教訓だ。

 今回の「無人島ギター」に真っ先に選ばれた、ブロードキャスターをマイクが弾いている動画を一つ、あげておく。
 もっとも、つい最近もアップロードした動画だ。チョコミント・シャツのトムさんが、ダブルネックのリッケンバッカーを弾いている。ブロードキャスターと、マイクはまさに一体になったかのようだ。

Quijada / Vibraslap2021/04/11 20:06

 ラテンアメリカの打楽器に、キハーダというものがある。
 馬やロバの下顎の骨を用いたもので、歯肉がなくなった分、顎の骨と、歯の間に隙間が出来て、そのため叩くとそれらが細かくぶつかって、独特な音がする。



 しかし、大量生産に向いていない上に、壊れやすい。私は昔、テレビで斉藤ノヴ(当時はたしか「斉藤ノブ」だったような気がする)が、キハーダの現物を叩いたと同時に、壊れたのを見たことがある。

 キハーダの代替品として開発されたのが、ヴィブラスラップである。
 日本では、なぜか時代劇の効果音で多用され、そして一番有名なのは、「与作」だろう。開始17秒、右奥のボンゴを前にして立っている、パーカッショニストさんと、その音に注目。



 デーモン閣下は、拍子木と一緒に、もっと分かりやすくやってくれる。



 最近、自分の好きなロックをランダムに聴く機会があった。ある曲で、ヴィブラスラップの音がするなぁと、何となく分かった。しかし、ちょうど取り込んでいたので、それが誰のどの曲だったのか、すっかり分からなくなってしまって、気持ちが悪い。たしか、ストーンズだったと思うのだが、結局わからない…
 あれこれググっていたら、エアロスミスの "Sweet Emotion" で、ヴィブラスラップが使われていた。言われてみれば、確かにそうだ。
 こちらの動画の冒頭では、スティーヴン自ら、「ヴァイブラ」スラップの使用を解説してくれる。ついでに壊れた時の音も入っているとか。



 なかなか効果的な使われ方なので、エアロスミスのコピーバンドの方は、ぜひともヴィブラスラップも取り入れて欲しい。

Jeans On2021/04/15 21:47

 最近、少しではあるが、木曜日が好きだ。夜に好きなテレビ番組があるから。俳句と、「ソーイング・ビー」。
 後者は、英国の裁縫バトル番組である。有名な「ベイク・オフ」(オーブン系料理コンテスト番組)の裁縫版。私自身は、ボタン付け程度しか出来ない不器用な人間だが、それとは対照的に器用なアマチュア裁縫名人が、限られた時間内に全力を出して布を裁っては縫いまくる。出場者の個性や、仲間との絆が強くなっていく雰囲気も楽しめる。推しが決まってくると、勝敗にドキドキしたりする。どんな日本のバラエティ番組よりも面白い。
 音楽も楽しい。日本で作られた型紙や、キモノの要素があった時は、槇みちるや、坂本九が使われた。

 デニム生地が使われたとき、短かくだが、ちょっと気になる曲があった。声はグレアム・ナッシュ風のポップ。
 歌詞で検索してみて分かったのは、その曲が1977年デイヴィッド・ダンダスによる "Jeans on" という曲であることだ。
 かなりヒットした曲だったらしく、ジーンズのCMでも使われた。



 ビートルズ風のポップな良い曲だが、ちょとポップ過ぎて何回も聴いていると、イラっとしてくる。
 今やダンダスは、この曲での一発屋というカテゴリーにあるようだ。
 ヒット曲なのでカバーもある。キース・アーバンがギター・サウンドを取り入れてカバーしているのだ。上手いけど、なんかムカつくので、動画はアップしない。そもそも、キース・アーバンって、顔からしてなんかムカつく。

 「ソーイング・ビー」の日本での放映は、シーズン5が始まったばかり。アマゾン・プライムでも過去のシーズンが見られるので(ただし字幕)、興味がある人は、ぜひ。

What You Eat You Are2021/04/19 19:51

 いままで、なんとなく好きかも…と思っていたが…
 ランドー・ノリス!きみは、私の贔屓ドライバー決定だ!



 これ、一生言われるよ。さっそく川井ちゃんにもネタにされてたし。キミのアイスクリームと一緒だよ。
 もういいんです。私はセブがこの世に生きているだけで。キミがなぜかチームメイトの前で走って、ノリスが何か食べて、表彰台に上がって、セブが生きていればそれでいいんです。

 食べる人といえば、ジョージ。
 ジョージは痩せの大食いである。
 特に、ビートルズがマッシュルームだった時期、ジョージはよく食べていたようだ。[A Hard Day's Night] の脚本は、メンバーの普段の様子をよく観察して、その特徴をとらえているという。
 何かというと食べているジョージは、本当によく食べていたのだろう。
 たくさん食べるきみが好き!



 [A Hard Day's Night] のプレミアで、プリンセス・マーガレットが長居するので、ごはんがお預けになっていたジョージ。プリンセスに「Ma'am, あなたが帰らないと、食事にありつけないんです」と言ったのは有名な話だ。
 生きることは、食べること。毎食感謝しつつ、いただきます。

Take Good Care Of My Baby2021/04/23 21:03

 YouTubeが、「あんたこれが好きだろう」と勧めてきた、ビートルズによる"Take Good Care Of My Baby" ―― 1962年1月1日の、デッカ・オーディション・テープからの一曲である。



 そりゃぁ、好きに決まっている。動画からして、若ジョージ・マニアがうっとりする物ばかり連ねているのだから。ジョージの余りのハンサム加減に、身震いがする。
   この曲は、キャロル・キング&ジェリー・ゴフィンの名コンビによる1961年のヒット曲で ―― この二人の早熟ぶりには驚きだ ―― ボビー・ヴィーが歌って全米一位になった。

 それにしても…私は、今回この動画を見るまで、このデッカ・オーディションの録音を知らなかった。ブートレグ界ではよく知られているらしいが、私は音楽好きの割にブートをほとんど聴かないので、知らなかったのだ。
 [Anthology] にも数曲、デッカ・オーディションの曲が収録されていて、ヴォーカルとしてのジョージは好調だったことが知られているが、全曲を網羅しているわけではなかった。
 Amazon に [The Complete Decca Tapes 1962] なるCDが売っていたので買ってみたが、まるでオフィシャルのような顔をした、立派なブートである。堂々とした物だ。

 この話には続きがある。
 つい二週間ほど前に、故障していた CD プレイヤーが修理から戻ってきた。修理には二万円もかかっている。そのプレイヤーに、この[The Complete Decca Tapes 1962] を入れて、何回か聞いた。一日仕事が終わって、電源を切る。そして翌朝、電源を入れてまた聞こうとすると ―― なんと、再生できないのだ。
 CD を入れ替えて他の物、ブートなどでは無い、由緒正しいCDのどれを挿入しても、再生不能。要するに、また壊れたのである。ほとんど発狂しかけた。やむなく、プレイヤーは再入院。
 私は、この不埒なブートレグ CD を、大事なプレイヤーに挿入したことが間違いだったと信じている。用心されたし ――

Angel Dream2021/04/27 21:34

 "Angel Dream" は1996年、[She's the One] に収録された。
 トムさん曰く、二人目の奥さんに出会ったときに、彼女のために作ったとのこと。ああ、はいはい。

 ケルト音楽には、特にヴォーカルに特化したジャンルがあり、中でもケルト風の女声が人気だ。ケルティック・ウーマンなども、ヴォーカルを前面に押し出している。
 イーマ・クインもそういった女性歌手の一人だが、なんと "Angel Dream" をカバーしているのだ。



 うーん。こういう歌い方や演出をする気持ちは分かるけど、ちょっとつまらないかなぁ。

 せっかくなので、ほかのカバーも探すと、ノラ・ジョーンズ登場。彼女はジョージも好きだが、トム・ペティも好き。独特のハスキー・ヴォイスで、下手にためずに、淡々と歌うところが良い。



 トムさんご本人は、2003年のサウンド・ステージ。サビでのビブラートがぐっとくる。そして、マイクがよく使っている、緑色のリッケンバッカー風マンドリン。最高。
 ちなみに、タイトルに "No.2" をつけたのには、特に意味はないそうだ。