Can't Help Falling in Love / Piacer d'amor2021/03/13 19:34

 [1970 with Special guest George Harrison] で初めて、ディランによる "Can't Help Falling in Love" を聴いた。[DYLAN] を持っていないのだ。
 調子っぱずれなのに、変に説得力のある、ディランの力業が堪能出来て、面白いし、楽しい。こういうディランもけっこう好き。
 もっとも、こういう昔の曲のカバーは、彼の自作の曲をたくさん聴かせてくれる合間に、ちょっとだけ入るから良いのであって、懐メロのオンパレードをディランで聴きたいわけではない。

 しかし、ディランのバージョンばかり聴いていたら、この曲の本来の良さを見失うので、ちゃんとエルヴィスのバージョンも聞かなければ。
 そう思って聴いたら、あまりのエルヴィスの上手さに、鳥肌が立った。やっぱりエルヴィスは凄い。



 この "Can't Help Falling In Love" には、元ネタになった曲がある。
 18世紀から19世紀にかけて活躍した、フランスの作曲家,ジャン・ポール・マルティーニの作品で、原題は "Plaisir d'amour" ―― 「愛の喜びは」だが、内容としては「愛の喜びは長続きしない」というような切ないものだ。
 この曲、イタリア語版の "Piacer d'amor" も非常に有名。音楽高校,大学で声楽をやった者なら、必ず歌った、「イタリア歌曲集」に入っている。
 私も音高時代に歌っており、譜面には発音に関するメモが残っている。
 私の声楽の成績は惨憺たるものだったが、音高生一般の感覚として、「イタリア歌曲集」というのは、クラシック音楽を勉強している中で、大人の領域に一歩踏み出した感じがして、すごく好きだったと思う。発声のコンコーネ,音程のコールユーブンゲンに対して、このイタリア語の歌詞で情感豊かに歌い上げる「イタリア歌曲集」は、やりがいがあったともに、格好良かった。

 動画を検索すると、フランス語版も多いし、男声も多かった。
 その中で、こちらは女声だし、調も Es-Dur (中声用)、ピアノ伴奏なので、私や音高の仲間たちが歌っていたバージョンである。
 ボブ・ディランとはかけ離れた世界だが、これを聴いてからまたディランを聴くのも、味わいがあって良いだろう。