Pastoral2020/12/18 20:04

 めでたく、ベートーヴェン先生の250回目の誕生日を迎えた。
 テレビなどを見ていると、彼の凄さについて、「一つの短いモチーフを徹底的に展開し続けた」という点を強調することが多く、「メロディ・メイキングの名手ではなかった」とまで言っている番組もあった。
 そうだろうか…
 私は、音楽家として、世紀の大天才だったと思う。

 仕事をしている間に聴くCDを、入れ替えるのが面倒で、ここのところずっとベートーヴェンの交響曲ばかり聴いている。
 一番好きな交響曲だということがわかったのが、6番の「田園 Pastoral」だ。
 ロンドン・レーベルの、ウィークエンド・クラシックスというシリーズの中の1枚として、6番「田園」と、1番の入ったCDを持っている。自分で買ったわけではなく、たぶん音大時代の「CD頒布会」で入手したのだと思う。音大の学科がら、研究室にはレコード会社から、大量の試聴版が届く。先生たちも面倒なので、それらをいちいち聴くこともなく、かと言って捨てるのももったいないので、学生たちに、ただで配ってくれたのだ。



 演奏は、ウィーン・フィルで、指揮はシュミット=イッセルシュテットだから、古いなぁと思って確認したら、1969年の録音だった。いい音だ。
 実にスタンダードな演奏で、クセもなく、誰にでも好かれる演奏だろう。

 この版をあまりにも聞き倒したので、他の指揮者,オーケストラでも聴いてみたくなった。ネットで検索すると、だいたいのクラシックに詳しい人は、ブルーノ・ワルターを薦めている。あとは、カラヤンとか。
 せっかくなら、新しい、最近の録音が欲しいと思ったら、選択肢があまり多くないのだ。クラシック音楽なんて、売れないから、あまり出ない物なのか…?

 ともあれ、サイモン・ラトルと、ウィーン・フィルののバージョンが目に入ったので、これを購入。本当はウィーン・フィル以外が良かったのだが…
 ネットで注文したっきり、なかなか届かなくて、半分忘れかけていた頃に、いずこかの外国から届いた。梱包を開けてびっくり、実はベートーヴェンの交響曲9曲の全集だった。ろくに見ていなかった…
 そのような訳で、シュミット=イッセルシュテット、カラヤン、バーンスタイン、ノリントンに、ラトルが加わったという次第。

 ラトルの版は…うーん、人の評論も微妙なところだし、私の評価も微妙…よく言えば、軽やかでポップな感じ。意識して重厚感を除いている感じがする。
 巨匠たちの「名盤」と呼ばれる演奏に耳が慣れていると、それらが基準になってしまって、重厚感と貫禄がどうしても、軽やかさを圧倒してしまっているようだ。

 そもそも、「田園」の何が良いのか考えた。
 明るくて、楽しくて、爽やか。健康的な音楽で、屈折したところがない。その晴れやかさは、この曲の一番の特徴だと思う。
 それから、最近思ったのは、「田園」は、「フォーク・ロックだ」ということ。
 3番「英雄」や、5番「運命」がゴリゴリのロックンロールだとしたら、そこにフォークの風合いが加わった、フォーク・ロックの感触がする。ビートルズとディランが混ざって、バーズになる感じ。
 そういう、バランスの良い音楽が「フォーク・ロック」で、その流れでトム・ペティが好きなのだし、ウィルベリーズなんて本当に最高なんだと思う。
 私が「田園」に感じるのは、そういう良いミックスのされ方、心地よさ、絶妙さなのだと思う。