Hanon2019/09/25 22:27

 某「クラシック紹介番組」で、ピアノ教則本「ハノン」を作曲した、シャルル=ルイ・アノンが今年生誕200年だということを知った。

 この「クラシック紹介番組」、クラシック音楽になじみの無い人向けなので、カジュアルに、楽しめるように作られているのは良いのだが、その分詰めが甘く、説得力にやや欠ける。
 スタジオに登場する演奏者は物足りない人が多く、「この曲なら、もっと上手い演奏を知っている」と、たびたび感じる。
 伝説のテノール,マリオ・デル=モナコの紹介の時、ある日本人歌手(私と母校が一緒)が、
「では、まず普通の人の歌い方をお聴かせします!(歌う)では、次にデル=モナコの歌い方をします!(歌う)どうですか、凄いでしょう?!」と言ったときには、ばかばかしくなってしまった。
 デル=モナコのように歌えるなら、四六時中デル=モナコで歌えば今頃世界一のテノールで、デル=モナコの再来、それ以上になれるではないか。

 それはさておき。
 ハノンの話。作曲者はフランス人のため、現地語では「アノン」という発音だが、ドイツ語,英語風に発音して日本では「ハノン」で親しまれている。
 「ハノン」を語るとき、だいたいの文脈は「退屈な反復練習ばかりでつまらないけど、やればピアノがうまくなる」という話。番組もそういう流れだったし、音楽的にも優れているという主張だった。
 私は後半「やればピアノがうまくなる」という点は同感だが、「退屈な反復練習ばかり」という点に関しては微妙だと思っている。そもそも、ハノンだけしか弾かせない先生はいない。必ずハノン、もしくはそれに似た教則本と、何か「曲」を一緒に習うはずだ。
 反復練習はどんな曲でも ―― ショパンでも、リストでも ―― 必要なので、結局は根気がなくて上達しなかった人が、言い訳として教則本の音楽性にケチをつけているだけだ。
 反復練習ができない人は、クラシックに向いていない。ほかのジャンルに転向するべきだろう。この考えは、以前にもチェルニーに関しての記事でも書いた。

 ところで、私は「ハノン」をちゃんとは習ったことがない。私のピアノ教育の過程では、「ハノン」は用いられず、似たような別の物を使っていたのだ。
 ただ、音大に入ったとき、副科ピアノの課題で全調の音階と和音があり、これをクリアするためにその箇所だけ、「ハノン」をやったという次第。副科ピアノなんて、これ以上いい加減な物はないというくらい、いい加減だったが、とにかく暗譜で当日指定された調を弾かなければならない。自分でクジを作り、それを引いては練習していたことを思い出す。

 テレビで「ハノン」の話をやっていたというだけなら、記事にするまでもない。
 ただ、ある大変なピアニストが、最近も「ハノン」をさらっているらしいのだ。

 その名は、ベンモント・テンチ!今年66歳、ロック界にその人あり、超のつく大ピアニストである。

 彼は子供の頃にクラシックを始めて、それからロックに目覚め、大学でバンドを組み、トムさんに攫われるようにハートブレイカーズとなって、はや50年。それでも気合いを入れて技術の向上をはかるべく、「ハノン」に挑んでいるのだ。
 格好良いとしか言いようがない。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
このブログの制作者名最初のアルファベット半角大文字2文字は?

コメント:

トラックバック